最近、明ばかりが目立ってますが、どこかでお茶子が挽回します。させます。なぜなら私は原作の飲み会後の流れに、喜びで発狂したからです。
劇場版二作目の出久のお茶子救出→お姫様だっこ、も大好きです。
雄英高校2日目、今日からなんとヒーロー科は通常授業が始まるらしい。
「ガイダンスとかレクリエーションとかはないんかな?」
「普通科目を午前中に詰めて、午後は全部ヒーロー基礎学にしてるからカリキュラム的に余裕がないんじゃないかな。」
「それより。おい麗日、発目はどうした、一緒じゃないんか?あいつを一人にしたら何が起こるか分からねーだろうが。」
「・・・朝起きたらもうおらんかった。メモに『先にいきます!ご飯はおにぎり食べました!』ってあったから学校に行ってるとは思うんやけど。」
「流石に明さんも2日目から暴走なんて、」
チュドーン!
「聞こえない、聞こえない。あの夏、よく聞いた気の抜ける爆発音なんて聞こえない。」
「おい、麗日、出久。テメェらが担当だろ。はよ行って謝ってこい。」
「まだや、まだ明ちゃんと確定したわけやない。なんなら雄英の施設での爆発なら、それはもはや雄英の先生たちの監督下や。もうそっちに任せたほうが、」
「発目ーーー!お前、2日目からいったい何をやってるんだ!!」
「ああ、もうだめや。」
かなり距離があるにも関わらず、パワーローダー(サポート科1年担任)の怒号が聞こえてきた。
「「・・・。」」
「おら、行ってこい。」
勝己が二人を置いて先に行こうとすると。ガシ!
「カッちゃん、僕ら仲間じゃないか!」
「せや!一緒に戦い抜いた仲やないか!」
「やかましいわ!麗日の親父さんたちがいねーときはオメェらが保護者だろうが!責任もって謝ってこいや!」
「カッちゃんだってA.Tの整備や調整でお世話になってるでしょ!」
「爆豪くん、ほんま頼むから!」
「は〜な〜せ〜や〜!」
雄英高校、朝のひと時である。
ーーーーー
サポート科に赴き、発目とともに謝罪を行い(発目も、爆発させてしまったことは、謝っていた)、A組教室に戻ってきた面々。午前中は通常科目を受け、普通の高校生活を過ごした。
昼になるとお茶子が発目を研修室から連行、半強制的に食事を取らせ、午後の授業、ヒーロー基礎学の時間となった。
「わーたーしーがー、普通に扉からきたーーー!」
オールマイトが勢いよく入ってきて、教室全体が活気ずく。
「それではヒーロー基礎学の授業を行なっていくよ。この授業はヒーローとしての基礎的なスキルや知識を習得することを目的とし、個性を扱う訓練や、ヒーローとして活動するための心構えを座学や実技で学んでいく。」
オールマイトがチラチラとカンペを読みながら説明していく。
「そして、今日は演習を行う!」
「え!いきなり演習なんスか?」
赤い髪を逆立たせた切島鋭児郎が2日連続の急展開に驚く。
「天下の雄英高校が基礎学習を疎かにするのですか!?」
飯田が挙手しながら自身が思ったことを率直にオールマイトにぶつける。オールマイトは予想していたであろう質問に対し、
「その基礎を学ぶ前に、自分に何が足りていないかを実践形式で、その身をもって学んでもらうための演習をこれから行うのさ!そのために!」
オールマイトが教室にあるスイッチを押すと、教室の壁から大量のアタッシュケースが飛び出し、
「先ずは格好から入る。さあ、このヒーローコスチュームを着るんだ、ヒーローの有精卵ども!」
生徒の大半は、雄英高校合格後に被服控除というものを申請した。ヒーローコスチュームを提携企業から提供してもらえるシステムであり、その際にデザインや機能を生徒側から提案することができるのだ。
生徒たちは自身が考えたコスチュームが現実のものとして眼前にある状況を喜び、目を輝かせた。
しかし、
「あれ、ない。」
「ねーな。」
「私も。」
出久、勝己、お茶子のアタッシュケースがなかった。
「わーたーしーがー、ベイビーたちを持ってきましたーーー!」
ジャージ姿の明がアタッシュケースを持ち(後ろに複数人のサポート科らしき生徒が同様にケースを持って)教室に駆け込んできた。
「すみません、ギッリギリまで調整してたら遅れてしまいました!流石に入学2日目でヒーローコスチュームを3人分を間に合わせるのは無理でしたが、午前中の授業全部サボってA.Tを含めた調整をやりきりました!朝、爆発したのは勝己さんの装備の点検してたらミスったからです!ごめんなさい!」
凄まじいテンションで明から出久に、そして運ぶのを手伝ってくれたのか、他のサポート科の生徒たちが勝己とお茶子にヒーローコスチュームとA.Tを渡していく。
「出久さん、どうぞ。正直ヒーローコスチュームに関しては間に合わせ程度の直ししか出来ませんでしたが、A.Tに関しては今の私にできる最高の調整ができたはずです。」
「わぁ!本当にありがとう明さん。」
出久が明からA.Tの入ったケースを受け取り、純粋な気持ちに溢れた満面の笑みでお礼を伝える。その後、明は両手で出久の片手を取り、そしてそのまま自身の胸元までその手を持っていった。
「「「「!!!!!?????」」」」」
クラス全体の動きが止まる。だが、本来すぐにでも止めに入りたいお茶子や普段ならツッコミなどを入れる勝己も、これが明にとって大事な儀式であることを知っているため何も言わない。
「この子は、この子たちは、出久さんたちが、より高く、速く、そして自由に飛ぶための翼です。どうかこの子たちと、無事に私のもとへ帰ってきてください。」
その言葉は出久にだけに向けられている言葉ではなく、勝己やお茶子にも向けらていることばである。
今、そして過去でも明は直接戦うことはできない。かつて、自身のせいで戦いに巻き込んでしまったにも関わらず、自分にできることは後ろから見ているだけ・・・そんなこと、天災である自分が納得できるわけがない、とアメリカでは新型の戦闘特化型A.Tを開発、整備、調律を通じて、全員が万全で戦うための最大限の努力をし続けた。
奇跡的に、誰一人欠けることなく日本に帰って来れた。それでも明は思わずにはいられない。あの時、救けを求めなければ、手を伸ばさなければ、あの時、明が伸ばした、その手を出久に取らせなければ、違った未来があったのでは、と。だから妥協など許されない。最高を、最良を、最強を届ける。
今行っているのは、明にとっての儀式であり祈りである。
ひどい怪我をしませんように。無茶はするだろうが無理はしないように。無事に戻って来れますように。そんな願いを込めるために、明は仲間の手を取るのだ・・・勝己は胸元まで持っていかれるのを渾身の力で逃れるので握るだけだが。
「うん!安全第一、どんな時でも、絶対に帰ってくるよ!」
そんなやり取りを見てクラスメイトたちは、今日はだたの演習なんだけどなー、と思ったが、ただならぬ雰囲気もあるため、空気を読んで黙っていた。
ーーーーー
「緑谷のやろ〜〜〜!麗日だけじゃなく、別の女子にも粉かけてんのかよ、あのスケコマシが〜〜!」
峰田実、モテるためにヒーロー科に入学したが、すでにモテるとかいう次元にいないクラスメイトを見て血涙を流していた。
ーーーーー
騒動はあったが、全員コスチュームに着替え終え、実技演習の会場に集まった。明も自身が最終調整したA.Tやコスチュームのデータを取ろうと、そのまま付いてこようとしたがパワーローダーを含めたサポート科メンバーに連行されていった。
出久は防火性と耐刃性の高い濃い緑色のジャンプスーツを着用。最初は大きめのプロテクターが体の各所に付いていたが、明による出久の走り、戦闘パターンの分析によって、必要な箇所のみに厳選、邪魔にならないよう再配置されている。A.Tはこれまでの市販品のカスタム使用から、お茶子と同様に明のフルオーダー品になっている。出せる火力やスピードが上がり、特に炎操作の精密性に関しては、かつて使用していた戦闘特化型以上の性能になっている。
勝己の場合、原作(メタ)の冬使用のコスチュームに近い仕様になっている。入試でクラスターを使用した際は腕全体のみを使用していたが、明が調整したコスチュームでは全身のどの箇所でクラスターを発動してもコスチュームが破損することはない。爆汗を溜める機能もある。朝、爆発していたのは、クラスターを発動した際に溜めてある爆汗が誘爆しないようにする作業を行い、失敗したからである(改善済み)。勝己のA.Tもフルオーダー品になっており、かつては戦闘特化型を身につけていなければ出来なかった全力クラスター・ターボの完全制御が可能になっている(体へのダメージはかなりでかい)。
お茶子のコスチュームもデザインはほぼ原作(メタ)通りである。しかし、ヘルメットやヘッドギアは風を感じるのに邪魔、っと判断した明が取っ払っている。デザインは原作(メタ)通りパツパツスーツであるが、素材や作りが変わっており、より風を体全体で感じられ、空中機動ではより繊細な動きができるようになっている。
3人が自身のヒーローコスチュームの感触を確かめていると、
「それでは、ただいまより、屋内での対人戦闘訓練を行う!」
オールマイトが演習の詳細な内容を説明していく。
「現代のヴィランたちは狡猾だ、誘拐、監禁、裏商売。奴らは闇に潜み悪事を働いている。そのような凶悪ヴィランたちに対抗するための第一歩として、2対2の屋内対人戦闘を君たちには行ってもらう。」
「さっき飯田ちゃんも言っていたけれど、基礎なしで行うんですか?」
蛙吹がほぼ全員が思っていることを代弁する。
「(ちゃん呼びだと!)」
一人違うことを考えているメガネもいるが。
「これから行う対人戦は自分たちに何が足りていないかを知るための重要な演習さ!これから学んでいくヒーロー基礎学には当然ながら座学がある。その中には、君たちからすれば、何を当たり前なことを、と思うような内容も含まれているだろう。しかし!演習を通じて、それらの重要性を知っている状態でなら、座学から得られる知識も、知識を得ようする姿勢もガラリと変わるものなのさ。」
その後、屋内対人戦闘のルールを一通り説明し終えたオールマイトは、持っていたクジを全員に引かせ、今回の演習のコンビが決定したのだが、初戦の組み合わせが、
ヒーローチーム、麗日お茶子・緑谷出久
ヴィランチーム、飯田天哉・爆豪勝己
ヤバい組み合わせになるのであった。
原作(メタ)通りではあるが、そんなことを知らない当人たちは、
「カッちゃん、どう思う。」
出久がランダムだというクジの結果に違和感を覚え、勝己に話を振る。
「組み合わせを見りゃ分かんだろ。あのクジ、完全ランダムだと思わせてしっかりと考えられてやがる。オイ、メガネ野郎。テメェ入試は何位だった?」
「メガネ野郎とは僕のことか。なんて失礼な。僕には飯田天哉という両親からもらった立派な名が、」
「いいから、はよ答えろや。」
「・・・7位だった。救助活動ポイントがあまり稼げていなかった。」
「てなると、やっぱ入試順位じゃなく能力的な部分か。機動力に自信がある俺らに最初屋内戦をやらせることで、閉鎖空間での動きを見る、そして学ばせようとしてんだ。」
勝己が自身の推測を述べていると、
「それ以外にも、この前の個性把握テストで確認しきれなかった部分を学校側が見るっていうんもあるんやない?今回の演習、戦闘力もやけど、索敵能力とか、隠密性とかも求められとる感じやし。」
お茶子も自身が感じていることを伝え、考察が続いていく。
「うん。でも、やっぱし初回の演習だから内容はシンプルだね。15分も貰えてるし。ヒーロー側が不利そうに感じるけど、攻め方を工夫すればヴィラン側は防御に回らざるおえないから2対1の戦闘を強いられる展開にもなりえる。本来ヴィラン側に雑兵がいたり、人質を取られていたり、ヒーロー側はもっと考えなきゃいけないことがあるのが実戦だけど、今回は屋内での戦闘力、索敵、判断力、あと連携を見るのがメインなんじゃないかな。」
出久が締め、三人の考察によって、今回の演習が凄まじく練られたものであると生徒たちが錯覚しはじめた。
「(え?そこまで深い意味もないし、クジも完全なランダムなんですけど。)」
焦るオールマイトだが、
「申し訳ありませんでした、オールマイト!それほどの深い意味がある演習だと気づけず、基礎を疎かにするのか、などと失礼な発言をしてしまいました。一生の不覚です!」
「ケロっ、私もごめんなさい。」
生徒二人に謝罪をされ、引くに引けなくなってしまった。
「も、問題ない、これから学んでいけば良いだけさ!それでは初戦の4人のうち、ヴィランチームは屋内に、ヒーローチームは屋外で待機し、通信機からのスタート合図を待っていたまえ。他の生徒たちは私と一緒にモニタールームまで移動するぞ。」
オールマイトはボロが出る前に演習の準備を進めていった。
ーーーーー
「さて、どういった作戦でいこうか、爆豪くん。」
飯田が勝己に対して、作戦の確認を行う。
「あぁ、なんで俺に聞いてくんだよ。」
「先ほどの考察、素晴らしいものだった。個性把握テストも踏まえれば、君の方が確実に僕よりヒーローとしての実力は上だ。だから君の作戦を聞きたい。よっぽど酷いものでない限り、僕は君の作戦に従おう。」
勝己に対して自身の考えを伝えた飯田に対し、
「ハッ、ただの坊ちゃんってわけじゃネェわけだ。」
「誰が坊ちゃんだ!」
「うるせぇよ。わぁった、作戦だな。あの二人を相手にすんだ。作戦もなしに突っ込んだら瞬殺されんのはこっちだかんな。」
「そうだな。実技試験であの二人の戦闘を少し見たが、屋外であの二人と戦うのは避けたいものだ。今回は屋内戦で良かった。」
飯田が出久とお茶子の実技試験での攻撃、その破壊力を思い出し、あれを食らった自分を想像して、一人慄いていると、
「何言ってんだ、麗日はともかく、出久は室内戦もめっぽうツェーぞ。」
「何?」
「あいつの個性・・・は使ってなかったが、昨日の個性把握テスト見てたろ。あいつは身体の操作と制御のバケモンだ。室内であっても、その戦闘能力が落ちることはねぇし、なんならコッチに核がある設定じゃなければ、通路の奥から燃やされて終わっとるわ。」
「改めてきくと、彼が無個性であることなど関係ないのだな。」
「流石にスケールは落ちるが、オールマイトとエンデヴァーを足して二で割った奴が向かってくると思っとけ。」
「それこの国のヒーローの、ナンバーワンとナンバーツーなんだが!」
ーーーーー
「デクくん、作戦はどないしよ?」
お茶子が出久に作戦を確認すると、
「うーん、こんな雑居ビルにあるにしても、核ってことは流石にある程度の衝撃耐性があるって設定だと思うから、直接炎を当てなければ、いや近くで使うことはNGか。核がある部屋で僕は炎使わない方が良いと思うから、最終的なアタッカーはお茶子さんで良いかな?」
「うん、任せて。そうなると飯田くんが最初に攻めてきた場合、私が爆豪くんの相手をせなあかんね。」
「いや、攻めて来るのはカッちゃんだと思う。」
出久がお茶子の考えに訂正をいれ、
「今回、カッちゃんが避けたいのは僕とお茶子さんの二人がかりの状況だと思う。核に触れさえすれば良いっていう条件だから、流石のカッちゃんも2対1の状況、しかも屋内じゃ対応しきれない。だからこそ攻めてくる。」
ーーーーー
「(いや君たち本当に1年生かい?)」
出久と勝己、そしてその二人と作戦を練り、それぞれ今回の演習に挑もうとしている生徒たちを見て、オールマイトは昨日の放課後、相澤が言っていた言葉を思い出した。
「あいつらの優秀さを嫌というほど思い知らされました。個性の使い方や戦闘能力だけじゃない。こちらの発言から意図を読み、最善の行動を取ろうとする姿勢、あいつらが中学2年の夏、どれだけ濃密な2ヶ月間を過ごしたのか全く測れなくなりましたよ。一体どんな戦いを経験すれば、あんな15歳が出来上がるんですかね。」
疲労を感じさせる相澤の発言に、流石に大袈裟では、と思っていたが、想像以上であった。
しかし、演習は実施しなければならない。
「それでは対人戦闘訓練、スタート!」
ーーーーー
出久とお茶子が窓からビルに侵入する。モニターから映像を見ているだけの他の生徒たちは気づかないが、音声も拾っているオールマイトはおかしいことに気づく。
「足音すらしていない?」
出久とお茶子は侵入する際の気配消しの手段の一つとしてお茶子の個性を使用し、無重力状態で行動していた。そしてA.Tの本来の用途は無重力下において、より自由な行動を可能にすることである。また二人ほどのA.Tライダーにもなると、無重力状態であるなし関わらず、A.Tを履いた状態での無音移動も可能である。
A.Tを使って移動し、無重力×無音A.T走行で可能な限り気配を消して侵入していた二人であったが、
ボボボボボン!建物2階を移動中に大量の爆撃に襲われる。
「「「「「な!?」」」」」
モニターを見ていたクラスメートたちは急な爆発に驚く。
「爆発ってことは爆豪の個性だよな。」
「ああ、でも爆豪いねーぞ!」
金髪頭の上鳴電気がとんがり赤頭の切島に話を振り、状況を確認しようするが、展開は止まらず進んでいく。
急な爆破に対しても出久とお茶子は冷静に対処していく。
この技は勝己が実技試験でも使用した設置型爆破クラスター・エクスプロージョン、お茶子は、おそらく居場所も今の攻撃でバレたであろうと判断し個性を解除、エアフォースを使い爆破の衝撃を逸らすことを優先した。
出久はお茶子の行動を信じ、自身での防御は行わず索敵を優先、風による索敵を通じて、接近してくる敵を迎え撃つ。
「させない!」
出久が蹴りを繰り出し、爆速は使わず、A.Tによる無音移動で近づき、お茶子を狙った勝己を迎撃する。
「チッ、気付いてやがった!」
驚きもなく反応されたことから、作戦が読まれていたと判断する勝己。出久が想定しているパターンの中で最悪だったのは、自分が奇襲に合い、お茶子を一人で戦わせること。
そして次点が、お茶子が奇襲され自分が一人残ること、である。だからこそ、お茶子と防御のパターンをいくつか用意しておき、その一つがハマったのである。
だか相手は勝己である。作戦が一つ上手くいったからといって、簡単に勝てるとは二人とも思ってはいない。油断なく対応しようとした。しかし、次の勝己の行動に驚愕してしまう。
「ヘッ、あばよ。」
まさかの逃亡である。
ーーーーー
「不味い!」
想定していなかった訳ではない。しかし、相手が勝己と飯田であったこともあり、正面からくると予想し、迎撃のパターンを考えていた分、相手の行動に焦りを感じてしまう。
「デク君、このパターンは!」
「うん、あのカッちゃんが時間稼ぎを、僕らを倒さないで勝つ作戦を取ってる。」
ーーーーー
「さっきの攻防、一瞬だったけど凄かったな。」
自身も高い身体能力を持っている瀬呂範太は、勝己の速攻、そしてそれに反応した出久のレベルの高さに感心していた。
「ああ、緑谷の蹴りは理想的だった。同じことをやれと言われても、できる自信はないな。」
尻尾を生やした、尾白猿夫も武術をやっているものとしての視線から感想を述べる。
「でもよー、奇襲からの逃亡って、あんま昨日今日の爆豪の印象と合わねーよな。漢らしくもねーし。」
切島は爆豪の行動に違和感を覚えると、
「勝利条件を正しく理解した上での行動ですわね。」
推薦入試組であり、抜群のプロポーションを持ち、なんならヒーローコスチュームも若干エロく、峰田を悶えさせている、八百万百が爆豪の考えを予想する。
「おそらく、爆豪さんは15分間ヒットアンドアウェイに徹していくのではないかと。」
そんな八百万の予想を超え、演習はさらに混沌化していく。
ーーーーー
連続する爆音がビルの廊下に鳴り響く。勝己が階段手前で即席のバリーケードを作り、壁に身を隠しながらA.Pショットを乱射していた。そして、
「ボサっとすんな飯田!投げろ!」
「わ、分かった!」
撃ち終わりから間をおかず、飯田が勝己の爆汗入り手榴弾を投げる。軍隊さながらの防衛戦を敷いていた。
一際大きな爆音が鳴り響くが、勝己がA.Pショットの乱射を再開するよりも速く、炎の波が二人に襲いかかってきた。
「なぁ!?」
「だから、ボサっとすんなっつってんだろうが、メガネ野郎。」
勝己が飯田の首根っこを掴み、バリケードの内側に投げ捨てる。
「オラ!吹き飛べ!」
攻めてこようとしている出久たちに向け、勝己は籠手の装備を使い、擬似ブラスターを発射した。その攻撃も出久の足から伸びた炎の翼によって相殺されたが、足を止めることには成功する。
「次だ、引くぞ。」
「君に従うと決めているから不満はないが引いて良いのかい?せっかくバリケードも作ったのに。」
次の作戦ポイントまで移動しながら飯田は疑問を伝える。
「あんな迎撃、あの二人にはすぐ対応される。特に出久はあそこで擬似ブラスターをブッパしてなければ構わず突っ込んできてたわ。いいか、あいつを屋内で相手する場合、人間サイズのゴキを相手するもんだと思え。」
ーーーーー
「(誰かにすごい失礼なことを言われた気がする。)」
攻撃が止み、追撃を始めた出久とお茶子だが、いつ勝己からの砲撃が来るか、警戒しながらの移動となり、思うように進めていない。
「デク君、もう7分過ぎてる。ここからはプランDでいこう。」
お茶子から出久に作戦の変更が提案され。
「今回の演習、ヴィランが核を手に入れているって想定や。なら私らヒーローチームは絶対に負けたらあかん。リスク覚悟で攻勢に出よう。」
確かな決意を感じさせられる言葉を聞き、出久は、
「分かった、お互い最善を尽くそう。」
「うん、じゃあまた後で。」
そう言って、脇道に入っていくお茶子。プランDは出久とお茶子が別れての作戦となる。
そして、綠谷出久は加速する。
ーーーーー
モニタールームでは繰り広げられる怒涛の展開に多くの生徒たちは大盛り上がりである。
「せ、先生!演習であんな超火力打って大丈夫なの。」
表情は見えないが、焦った声で、勝己の攻撃の威力からお茶子、出久の安否を気にする葉隠。
「だ、大丈夫、おそらく爆豪少年は緑谷少年や麗日少女の実力を考慮した上で攻撃を行なっている。・・・たぶん。」
「せんせー!?」
大分不安な返答に葉隠が声をあげていると、
「んー?」
「どうした芦戸?」
同じ中学出身である、芦戸が何かに疑問を持っている様子をみて、切島が声をかける。
「いやね〜、さっきの緑谷の技、どっかで見たことある気がして。どこだっけ〜、て思って。」
「あ、分かる。私もそんな気がした。」
と、耳郎も芦戸同様に緑谷の技に既視感を感じていた。
「技っていうとあの炎の波みたいなやつか?」
「んーん。それもだけど、どっちかっていうと、その後の炎の翼見たいなやつ。どっかで見たことある気がするんだよな〜。」
「皆さん、雑談はその辺で。緑谷さんたちが勝負に出たようですわ。」
話が逸れていたクラスメイトたちに、モニターに注目するよう声をかける八百万。モニター上では、単身先行した出久と、それを迎え撃つ勝己のタイマン戦闘が始まっていた。
ーーーーー
「緑谷くんが突っ込んでくる?本当かい?」
勝己が出久の次の行動を予想し、その内容に対して、飯田が怪訝そうな顔をする。
「ああ。時間も残り6分だ。麗日と別行動なのか一緒になのかは分かんねーが、この状況なら出久は必ず突っ込んでくる。」
勝己は確かな確信がある顔で話を続けていく。
「ヴィランチームなら、より堅実な作戦を選ぶんだろうが、あいつらはヒーローチームだ。死にものぐるいで勝ちにくるぞ。」
「死にものぐるいって、えらく物騒だな。彼らの印象からしてもっと、・・・っ!」
最初は勝己の口が悪いだけだと考えていた飯田も、その表情が真剣そのものであることに気づき、口を閉ざす。
「俺らの感覚だと、ヴィランが大量破壊兵器かそれに準ずるなんかを保有しているって展開は、敗北が許されない戦いを意味してんだよ。だからあいつらは来るぞ。飯田、ここからは完全に別行動だ、お前は核を守れ。出久の相手は俺がする。テメェは麗日の奇襲を気をつけてろ。」
「別行動をするといっても核があるあの部屋までは一本道だ。君を抜かない限りは部屋には辿りつく手段がないのだから奇襲は無理だろう。」
飯田の発言に対して出久を迎え討つため、と移動を始めようとしていた勝己が足を止める。
「ハッ、そこをなんとかすんのがヒーローだろうが。飯田、テメェはモブじゃねぇ、それは認めてやる。だがな、そんな思考じゃ俺たちには追いつけやしねーぞ。」
不敵な顔をした勝己は振り向きながら、そんな言葉を飯田に伝えた。
そして、
ーーーーー
モニタールームに映る戦闘に、クラスメイトの生徒たちに加え、オールマイトですら言葉を失っていた。
『ハァーッ!』
『消し飛べや!』
勝己と飯田は5階建のビルの最上階、その一番奥の部屋に核を設置した。その部屋には階段から伸びる一本道の廊下を通れば辿り着くことができる。その廊下は今、炎と爆破が飛び交う戦場と化していた。
『ウィング・スマッシュ、エアフォース!』
出久は勝己からの連続爆破を防ぐと同時に反撃を加えるため、攻防一体の技を繰り出す。熱風を叩きつけ勝己を後退させ、その隙を突いて抜こうとする。しかし、
『爆速ターボ!』
勝己は全力ですらない移動で出久の前に回り込む。A.Tのみでの移動とA.T×個性の移動では、軍配は個性込みの移動に上がる。
前に躍り出た勝己に対して、
『スマッシュ!』
とA.Tで加速しただけの、それでも常人を粉砕するには十分な威力の蹴りを出久が繰り出す。
『くらってやるよ!』
『クッ。』
勝己は出久の蹴りをあえて、さらに前に出ることで喰らいながらも打撃点をズラした。中途半端な威力になってしまった蹴りを放った状態の出久に対し、勝己は右の爆破を叩き込もうとする。しかし、出久は先ほどの蹴りとは逆足から膝蹴りを繰り出し、勝己の顔面に叩き込む。勝己は咄嗟に額で受け、衝撃を敢えて殺さず、後退する。
両名の間に一瞬距離ができ、
『『スウ。』』
互いの呼吸のタイミングが重なったかと思えば、
『フェザー・スマッシュ、フレイムソール!』
『羽程度で足りるんか!?』
出久の両足に炎が灯るが、これまでと違い射出はされず、炎を纏った状態となる。そこから連続蹴りを打ち込み続け、両手の爆破で迎撃する勝己を押し込んでいく。
このままの接近戦は不利、と判断した勝己はクラスター・ターボを使い、後ろに下がる。出久は超爆速による後退については行けず、距離を取られるも、逆に出来た距離を利用して加速、摩擦により更なる熱を足に溜め、大技の準備を済ませる。勝己も負けじと下がった分、前に出ようと強力は技で迎え撃つ。
『フェニクス・スマッシュ、パイルトルネード!!』
『ハウザー・インパクトー!!』
炎と爆破の激突により、ビル全体が大きく揺れる。
激突を制したのは炎。出久が追撃をかけようとし、勝己も体制を整え、戦いが再開されようとした瞬間、
「しっ、試合、終ー了ー!」
モニター室からオールマイトの終了の合図が響く。時間はまだ15分経っていない。つまりは、
「ヒーローチーム、核を確保!ヒーローチームの勝利!」
出久、お茶子の勝利アナウンスであった。
ーーーーー
出久と勝己が激闘を繰り広げている最中、飯田が待機していた核が置いてある部屋でも戦いが始まろうとしていた。
「音はまだ遠いのに、ここまで細かい振動が届いてくる。一体どれほどの戦闘をしているんだ。」
間違いなく、自分とは一線を画す二人の戦いが始まる直前に入った、勝己からの通信の内容を思い出す。
『やっぱしだ、麗日がいねぇ。窓警戒、上がって来っぞ。』
それだけを伝え、戦闘に入ったチームメイト。粗暴ではあるが実力も冷静さも保有している彼の言葉を信じ、警戒を続ける。そして、
カランッ、
集中して、警戒をしていた飯田は戦闘音が響く中、小さな物音にも気づいた。いや、気づかされてしまった。一瞬、音がした方に意識を向け、
「(戦闘の振動で壁のコンクリートでも落ちたか?)」
転がったコンクリート片を視界に入れ、再度部屋全体を見回った飯田は気づく。
先ほど物音がし、視線を向けた方向と真逆の窓から、物音を立てずA.Tで移動し、真っ直ぐ手を伸ばすお茶子の姿に。
「!?さっ、させるか!」
咄嗟に、飯田は実際はハリボテである核を掴み、そのまま移動した。あと一瞬判断が遅ければ、そこで試合は終わっていただろう。
「(あっ、危なかった。まさかさっきのコンクリート片も?)」
そう、お茶子はA.Tと個性を使ってビルの屋外から5階まで移動。風を通じて大体の飯田と核の位置を把握し、自分が突入しようとしている窓と真反対の方向にある窓から個性で浮かした石を風の操作で落とし、音を立てたのである。
なんとか奇襲に反応した飯田。
「(対応できて良かった。あれだけ奇襲を警戒するよう言われていたにも関わらず、その奇襲で負けようものなら、爆豪くんからの呼び名がまた降格してしまう。)」
飯田は意外と高い評価を得ているため、名前呼びだが、降格すると、メガネ野郎>メガネモブ>クソメガネ>クソモブの1人、とかなり酷い呼び方に変わるのである。
「ハッ、フハハハ。よく来たなヒー、ローッうおっと!?」
お茶子に対してヴィランロールプレイを行おうとした所、風圧を蹴り出され、間一髪でそれを避ける。お茶子はヴィランチームと会話をすることなく、冷静に攻勢に出る。
そこからお茶子の攻撃が連続して行われるが、
「くっ!(熾烈な攻めだが、なんとか対応できる。)」
核を持ったまま回避を続けていく飯田。お茶子はA.Tを使って走り回り、遠距離からの風攻撃を続けていく。そして、
「そろそろ。本気でいくね、飯田くん。」
お茶子からゾッとする、殺気すら感じる声がしたかと思えば、
「ゼログラビティ・エアライド!」
お茶子が空中を走り始める。先ほどまでの攻撃、そして走り回っていたのは、室内に強い風の流れを生み出し、風の道の上位技である空中走法を発動するための下準備であった。
「(先程までより速い、それに動きが!?)」
まるで見えないスロープがあるかの如く、自由自在に空中を走るお茶子の動きに追い込まれていく飯田。
そんな中、お茶子に出久から、
『いくよ!』
と一言だけ通信が入る。
次の瞬間、今日一番の轟音と共に、強烈な振動がビル全体に起こり、飯田は足を止めてしまう。
ビルの振動の影響を受けない空中にいたお茶子が飯田に突っ込み、
「エアライド・キック!」
空中走法からの飛び蹴りを飯田の腕に叩き込み、手放された核にすかさず手を伸ばし、
「ゼログラビティ・キャッチや。」
どんなサイズ、重さのものも安全にキャッチすることができる便利技を発動した。
「しっ、試合、終ー了ー!ヒーローチーム、核を確保!ヒーローチームの勝利!」
ーーーーー
演習を行なっていた生徒たちがモニタールーム戻り、オールマイトが講評を行う。
「今回ベストだったのは、」
「俺じゃねーな。反省点が多すぎる。」
「僕も。正直最初のカッちゃんからの奇襲への対応の段階から、ミスがあったと思う。」
「僕は完全に実力不足だ。爆豪くんにおんぶ抱っこになってしまい、最後は麗日くんに負けてしまった。」
「うちは今回屋内演習やのに外からの奇襲って、演習の目的に沿ってないし。窓が強化ガラスとかやったらどうするとか考えとらんかった。」
「・・・。」
各々が自分の演習内容に課題を感じていた。
「爆豪、お前の反省点って例えばなんだ?」
切島が物怖じせず爆豪に質問していく。
「もっと連携すべきだった、だな。最初の奇襲も、俺からの単独奇襲は予想されてたみたいだが、あそこで二人がかりだった場合、麗日を討ち取れてた可能性もある。あと時間稼ぎをもっとすべきだった。乱戦を嫌っちまったが、一番速ぇのが俺なんだから、抜けられても対処できてたかもしれねぇ。・・・あとテメェ誰だ?」
「切島だよ!昨日個性把握テストの後で、改めてみんな自己紹介しだじゃねーか!」
「忘れた。覚えて欲しけりゃ、覚えさせてみろ。」
「・・・オッシャァ、俺の演習しっかり見とけよ!んで後でアドバイスくれ。」
「緑谷くん、君が無個性なんかあり得ない。なんだいあの炎は?あんなに煌めいている君が無個性?流石に怒るよ僕も。」
「あっ青山くん、だよね?圧が強いよ。あれはウィールに走りから生まれる摩擦熱を溜めてるんだ。A.Tの機構と特殊な走法をすることで、その熱を炎に変換してるって感じかな。」
「・・・それは、そのA.Tを履けば誰でもあれだけの炎を出せるということかい?」
「んー、規模は下がるけど練習すれば出せるようになるよ。」
「ついでにA.Tにかなりの自信がある俺や麗日の場合、ロウソクぐらいの火が少しつくぐらいだ。オイ出久、雑な説明すんな。テメェの炎は異常だって自覚せいや。」
「あー、オッホン。みんな、意見交換も大事だが、まだ4試合もある。全員が己に課題があると自覚してくれてとても嬉しいよ。ただ今回のMVPは麗日少女だね。なぜかわかる人。」
オールマイトからの問いに対し、八百万が挙手し、
「麗日さんは今回、失敗のない行動をされていましたわ。爆豪さんが先程言っていたように、ヴィランチームは連携不足。緑谷さんは当初の作戦が狂われた際、視野が狭まってしまっていたように感じます。麗日さんだけが終始落ち着いていた。ご自身が述べていた反省もルール上はなんの問題もありませんもの。」
「素晴らしい!良い分析だ八百万少女。では、より細かい部分については後日にしよう。第一試合の大まかな反省は以上にして、次、行ってみようか!」
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その後、残りの4回の対人屋内訓練が実施された。
八百万と同様に推薦組であり、半冷半燃という強力な個性を持つ轟焦凍の実力は圧倒的であり、二組目の演習は一瞬で終わってしまった。
それ以降の演習は、一組目の激戦に感化されるも、熱くなるのではなく、屋内戦で自分にできるのは戦闘なのか索敵なのか、各々がよく考えて行動した結果、実りのあるものになっていた。
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放課後、クラスメイト同士で今日の訓練の反省会を行なっていたが、お茶子はキリの良いところで、A.Tを納入その日に激しい戦闘で使用したこともあり、簡易なメンテをしてもらうためにサポート科に向かおうとしていた。ただ。一緒に行く予定の二人のうち、一人が来ていないことに気づく。
「あれ?デクくん、爆豪くんは?先に明ちゃんとこ行ったとかはないよね。」
「カッちゃんは切島くん、あと飯田くんともう少し反省会してくって。A.Tは僕が預かったよ。」
「へー、やっぱ爆豪くんって面倒見良いんやね。」
「うん、残ってる他のみんなもカッちゃんに自分の演習の時の動きを評価してもらいたそうにしてたし、結構かかるかも。」
「そっか、じゃあ二人で行こっか。」
「うん。」
サポート科への移動中、演習の振り返りや雑談をしながら移動していると、廊下の窓の外に、自分たちと同じ新入生か、はたまた先輩たちなのか、男女が仲良さげに二人で下校している姿がお茶子の目に入った。
「・・・ええなー。」
「ん?何か言った、お茶子さん?」
「えっと。入試の結果が出てから、引っ越しとかで忙しくて、せっかくデクくん・・・たちと近くにいるのに、まだお出かけとか出来てないなーって思って。」
「そういえばそうだね。せっかくだし、週末みんなで集まってご飯でも行こっか。」
出久の提案に顔を綻ぼさせるお茶子。
「ええな、それ。うん行こう、約束や。」
「うん、約束。」
新学期早々、そんな光景を見せられた偶々廊下にいた生徒たちは自販機に走りブラックコーヒーを買い漁ったとか。
また、週末の出来事だか。明は出久たちのコスチュームの直し作業のため、パワーローダー監督の元、日曜の昼には帰ることを条件に、土日は泊まり込みで作業することにしたため不参加。勝己も馬に蹴られたくは無い、との理由で不参加。出久と、実質デートになってしまい軽くパニックになるも楽しい休日を過ごすことができたお茶子であった。
訓練でこの量だと、USJどうなるんだ。
コメント、評価、お待ちしています。
アニメ8期 第2話 発狂しそうなほどカッコよかった。あのクラスターによる移動の簡易版をこの作品の勝己はしています。・・・表現できる気がしない。