A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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第91話 奇襲

 

ふむ。

 

少し遊び過ぎたか?

 

 

 

弔が叛逆してくることが分かった上でこちらから乗り込み、対立。

 

連れてきた戦力も、弔側が圧倒的に上。

 

 

 

一対一でなら、まだまだ負けるつもりはない。

 

けれど、連携されると先日の二の舞になってしまう可能性がある。

 

 

 

だから空中戦を選んだわけだが、

 

周囲をヒーローたちに囲われてしまった。

 

 

 

いや、気付いてはいたとも。

 

 

 

それでも、オールマイトにエンデヴァー、ベストジーニスト。

 

加えて志村菜奈の相棒だった老骨、グラントリノ。

 

 

 

有力なヒーローたちがこれだけ揃っている状況は、なかなかにハードだね。

 

 

 

特にオールマイトとエンデヴァー。

 

このトップツーヒーローが厄介だ。

 

 

 

両者共に、精神的弱みを握ってはいる。

 

 

 

だが、その弱みそのものである本人たちが、この場にいてしまっている。

 

しかも、弱みであることを暴露したとしても、

 

もしかしたら弱みになり得ない可能性すら出てきた。

 

 

 

皆が皆、僕と対立している構図になっている。

 

 

 

自ら望んで整えた状況ではあるが、

 

些かやり過ぎたかな?

 

 

 

ああ、でも、

 

 

 

「スマッシュ!!!」

 

 

 

オールマイトが笑いながら飛び込んでくる。

 

その拳に込められた圧は、昔と何も変わらない。

 

 

 

筋力・持久力・俊敏・柔軟・体幹・握力を増強。

 

パワーだけにこだわらず、戦闘に必要な能力を補強する。

 

動作・技術・経験、それぞれを模倣。

 

ワンフォーオールの超パワーに、パワーだけで対抗などできるはずがない。

 

だからこそ、技で迎え撃つ。

 

瞬発力・反射神経・動体視力・空間認識能力・マルチタスク能力・集中力をそれぞれ向上。

 

複数人を相手取るために必要な対応能力を高め、

 

もう隙は見せない。

 

 

 

さらに、

 

鋲突、槍骨、異骨を掛け合わせ、

 

大振りな矛を作り出す。

 

両手で矛をしっかりと握る。

 

エアウォークと光輪で足場も問題ない。

 

 

 

空中であろうと、地上であろうと、

 

今の僕にとって戦場に違いはない。

 

 

 

「ゼェェッイ!!!」

 

 

 

奪ったものではあるが、込められるだけの技量と肉体を、この一振りに込める。

 

 

 

そして、

 

心技体の『心』だけは自前さ。

 

 

 

さぁ、我が宿敵オールマイトよ。

 

少しの時間だが、戦いを楽しもう。

 

僕の心を込めた一撃を、是非味わってくれたまえ。

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ゼェェッイ!!!」

 

 

 

奴が、オールフォーワンが矛を作り出し、振るってくる。

 

 

 

報告は受けていたが、意外な光景である。

 

 

 

奴の戦い方といえば、複数の個性を掛け合わせた物量攻撃や遠距離攻撃が基本だった。

 

 

 

オールフォーワンの個性の特性を考えれば当然だ。

 

 

 

私以外で、

 

ワンフォーオール継承者以外で、

 

奴に近づくという選択肢は本来あり得ないのだから。

 

 

 

近づくだけで個性を奪われる。

 

 

 

……まぁ、無個性である緑谷少年や、

 

爆豪少年のように、

 

個性を持っているのに、

 

近づかれたら即爆破、という考えのもと突っ込んでいく変わり種もいるにはいるが。

 

 

 

それでも、普通なら選ばない。

 

奴の間合いに入るなど、自殺行為に等しい。

 

 

 

だからこそ、例外である私に対して、

 

奴が、この近接戦を選んだことは予想外だった。

 

 

 

私の拳と奴の矛が激突する。

 

同時に、周囲へ衝撃が広がった。

 

 

 

「互角!?」

 

 

 

思わず声が漏れる。

 

 

 

「そっちが小技の拳なのに対して、こっちは渾身の一撃。互角じゃあないさ!」

 

 

 

オールフォーワンはすぐさま連撃を繰り出してくる。

 

 

 

SHIT!!

 

良い攻めをするじゃあないか!

 

熟練の武芸者の模倣か何かだろう。

 

矛の扱いに無駄がない。

 

間合いの取り方、踏み込み、攻撃後の戻し。

 

どれも素人のそれではない。

 

隙すら見せないことから、動きを模倣しているだけではないな。

 

だが、本来いくら模倣したとて、

 

それに真なる力が宿ることはない。

 

 

 

『力』だけではだめなのだ。

 

 

 

『心』宿らぬ力は、真の力たり得ない。

 

 

 

だからこそ、義勇の結晶たるワンフォーオールが負けるはずはない。

 

そのはずなのに、

 

奴の薙ぎ払いを躱す。

 

そこから繋がる突きの連撃。

 

一撃。

 

二撃。

 

三撃。

 

鋭く、重く、速い。

 

いつか緑谷少年が言っていたな。

 

 

 

『連打は一撃一撃に殺気を込める!』

 

 

 

奴の攻撃に、殺気を感じる。

 

奴の突き、一撃一撃に感情が込められている。

 

これはただの模倣ではない。

 

この男自身が、今この戦いを楽しみ、

 

そして本気で私を倒そうとしている。

 

というか空中戦だと私が不利過ぎないか!?

 

いや、被害を考えれば空中戦は望ましいのだが。

 

長物を使う奴にとって、本来空中は踏み込みが出来ず、重心も安定しないはずなのだが、

 

 

 

グッ、

 

「ジッッッ!!!」

 

 

 

すっごいしっかりと空中を踏みしめていやがるぜ!

 

空気を切り裂きながら迫る鉾の刃を避けながら、内心での叫びが止められないぜ!

 

 

 

「どうしたオールマイト!? 僕と弔の戦いに割って入ってきたんだ。しっかりしてもらわないと困るなぁ!」

 

 

 

「だったら俺に集中しろよ先生!」

 

 

 

私とオールフォーワンとの間に割って入るかのように、

 

 

実際は私が割って入ったのだが、

 

 

死柄木弔が空を駆け、

 

オールフォーワンの背後から蹴りかかる。

 

 

風を足場にし、死角を突くような一撃。

 

速度もタイミングも悪くない。

 

 

 

だが、声を上げながら攻撃したためか、

 

奴はしっかり反応し、死柄木の攻撃は受け止められてしまう。

 

 

 

「弔、声を上げては奇襲の意味はないじゃあないか。」

 

 

 

呆れたような、

 

叱りつけるような、

 

そんな声を上げるオールフォーワン。

 

 

 

………見えていないのか?

 

 

 

今、

 

 

 

死柄木弔は………

 

 

 

ヴィランのお手本のような、悪どい顔をしているぞ。

 

 

 

直後、地上から蒼炎を纏った刃が飛来する。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「合わせろよ、スピナー。」

 

 

 

「任せろ。」

 

 

 

荼毘が渾身の炎を燃え上がらせる。

 

蒼い炎が夜の闇を照らす。

 

その熱は周囲の空気を歪ませ、瓦礫の端をじりじりと焦がしていく。

 

 

 

「ハァッッッ!!!」

 

 

 

つい先ほど、エンデヴァーがニケを瞬殺するのを見ていたためか、

 

戦意が滾っている荼毘から立ち昇る蒼炎は、普段以上の勢いである。

 

 

 

「シッッッ!!!」

 

 

 

その蒼炎に向けて繰り出されたのは、

 

超加速・急停止によって、

 

A.Tに十分過ぎるほど溜められた制動エネルギーを使って放たれた、

 

スピナーの真空の刃である。

 

 

 

スピナー自身も、

 

自分の相棒が反旗を翻し、

 

魔王に対して叛逆するというのだ。

 

気合いが入っていないわけがない。

 

 

 

A.Tが地面を走り、

 

鋭い真空の刃が生まれる。

 

 

 

牙、ファングと呼ばれる一撃が荼毘の蒼炎を纏う。

 

 

 

炎によって鍛えられ、

 

より大きく、

 

より鋭く、

 

その姿を変える。

 

 

 

ただの牙ではない。

 

蒼炎を宿した、灼熱の牙。

 

 

 

「あ、技名考えてねぇ。」

 

 

 

「そのままで良くねぇか?」

 

 

 

「そうか? なら、」

 

 

 

スピナー×荼毘。

 

 

 

「「ブルーブレイズ・ファング!!!!」」

 

 

 

蒼牙が闇を切り裂き、天を昇る。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「チィッ!?」

 

 

 

迫り来る奇襲に流石に驚いたのか、

 

慌てて矛を構え、防御の構えを取るオールフォーワン。

 

 

 

蒼炎を纏った刃が、一直線に空を切り裂き進む。

 

まともに受ければ、ただでは済まない一撃。

 

それ故に、本気の防御を固めたはずだった。

 

 

しかし、

 

 

 

「ガッギャッッッ!?」

 

 

 

オールフォーワンの身体が大きく揺れる。

 

防御のために身体を向けた、

 

その真反対の方向から攻撃が飛来。

 

蒼炎を纏った真空刃が、背中側から叩き込まれていた。

 

 

 

「風を操ってレンズを作るわ、温度や音を調節する必要があるわで手間はかかったが、」

 

 

 

死柄木がオールフォーワンに向けて指を、

 

中指を立てる。

 

 

 

その顔には、挑発とは異なる笑みが浮かんでいた。

 

 

 

獲物を騙し切ったヴィランの笑みだ。

 

 

 

「奇襲はこんな感じで良いかい、先生?」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ッ~~~~。

 

効いたなぁ、今の一撃は。

 

保須市での合宿中、緑谷出久から受けた真空の弾丸。

 

あれと同種の攻撃に、荼毘の炎を織り交ぜた強烈な一撃をまともに受けてしまった。

 

咄嗟に異骨で全身の骨格を強化し、防火の個性も発動したおかげで致命傷だけは避けられた。

 

だが、それでも決して浅くないダメージだ。

 

距離による威力の減衰がなかったらと思うと、さすがの僕でも背筋が冷える。

 

……もっとも。

 

至近距離で撃たれていたなら、いくらでも対処のしようはあった。

 

やはり厄介なのは弔、君だ。

 

オールマイト、そして自分自身すら囮に使い、僕の意識を逸らす。

 

二重、三重の陽動を重ね、その末にこれだけの一撃を叩き込んできた。

 

攻撃を受け、空中を落下しながら周囲の気配を探る。

 

追撃を狙うオールマイトが真上から迫り、落下地点ではエンデヴァーが炎を放てる姿勢で待ち構えている。

 

スピナーや荼毘がいる地上を避けるため、あえて空中戦を選んだというのに。

 

そこへエンデヴァーまで加われば、さすがに分が悪い。

 

……さっきから後手に回ってしまっているな。

 

まあ、仕方がない。

 

数で囲み、逃げ道を潰し、獲物を追い詰める。

 

普段、僕が敵に対してやっていることを、今度は僕自身がやられているだけだ。

 

必要な過程とはいえ、実際に味わうと中々に骨が折れる。

 

さあ、ヒーロー共。

 

そして、弔。

 

僕の手を潰してみせろ。

 

僕をもっと…………追い詰めてみせろ。

 

ーーーーー

 

 

 

「挟み込むぞ、エンデヴァー!」

 

 

 

「おう!」

 

 

 

オールフォーワンを追うオールマイトが拳を振り上げる。

 

その叫びに応えるように、エンデヴァーも全身から灼熱の炎を噴き上げた。

 

 

 

「(限界を超えて熱を溜めた俺の全力火力……一撃だけならオールマイトの本気を支えられるはずだ。)プルス・ウルトラ!!!!!」

 

 

 

太陽のような灼熱を身に纏い、フレイムヒーローが咆哮する。

 

 

 

「(もう俺は、あいつらに情けない姿は見せられんのだ!)プロミネンス・バーーーーーン!!!!!」

 

 

 

極光のような熱線が、一直線に魔王へと突き進む。 

 

 

 

「(素晴らしい攻撃だ、エンデヴァー!)」

 

 

 

オールマイトは、その炎を見て心から称賛した。

 

自分の力は代々受け継がれてきた、義勇の結晶。

 

 

 

だが、エンデヴァーの力は違う。

 

誰からも受け継ぐことなく、自ら鍛え、磨き上げた努力の結晶だ。

 

その成果こそ、本来称えられるべき偉業なのだ。

 

 

 

「(君と共に戦えることを、私は誇りに思う!)デトロイトォォ・スマァァァァァッッッッシュ!!!!!」

 

 

 

トップツーヒーローの必殺が、上下からオールフォーワンを挟み撃ちにする。

 

だが――

 

 

 

「舐あぁぁぁめえぇぇぇるうぅぅぅなァァァッ!!」

 

 

 

怨嗟を吐き出すような絶叫と共に、オールフォーワンが迎撃へ移った。

 

攻撃の軌道に合わせ、鋲突を無数に伸ばす。

 

 

 

「(回転、旋風、独楽の個性で……回れ!)」

 

 

 

身体を横倒しにし、高速回転。

 

鋲突を軸に、槍骨と異骨を幾重にも伸ばしていく。

 

巨大に。

 

さらに強固に。

 

異形の丸鋸が、空を裂いた。

 

 

 

「ジャァァァァァァァッッッッ!!!!」

 

 

 

回転する異形の刃がオールマイトの拳圧を真正面から弾き返し、その勢いのままエンデヴァーの火線までも薙ぎ払う。

 

 

 

「馬鹿な!?」

 

 

 

「ぐぅっ!?」

 

 

 

必勝の間合い。

 

必勝のタイミング。

 

 

 

そう確信して放った全力の一撃が、あまりにも容易く防がれた。

 

二人の表情に驚愕が走る。

 

 

 

「ジィィィッッ!!」

 

 

 

次の瞬間。

 

高速回転していた異形の鞭が軌道を変え、今度はオールマイトだけを狙って振り下ろされる。

 

 

 

「俺を無視するとは余裕――」

 

 

 

「余裕などないさ、エンデヴァー。」

 

 

 

オールフォーワンはオールマイトだけを見据えたまま、静かに笑う。

 

 

 

「だから僕は…………もう、遠慮をしない。」

 

 

 

その背後。

 

これまで姿を見せていなかったゴームのワープゲートが音もなく展開される。

 

しかし、その規模は常軌を逸していた。

 

「エンデヴァー。君の相手は、僕の配下最大戦力――ギガントマキアにしてもらおう。」

 

宣言と同時に、神野市の上空へ巨大な影が姿を現す。

 

「我が主のたっ――」

 

そして。

 

その巨人は、出現した瞬間に空中で静止した。

 

 

 

「「「は?」」」

 

 

 

「な、何が起きた!?」

 

 

 

戦闘時には二十五メートルにも達するギガントマキア。

 

その巨体は宙に浮かんだまま、手足をばたつかせることしかできない。

 

 

 

「ゼログラビティ・ブーステッドフィールド!!!!」

 

 

 

黒霧と共に市民を雄英へ転送していたお茶子は、危険区域から人が完全にいなくなったことを確認し、参戦のタイミングを見計らっていた。

 

ギガントマキアほどの巨体が落下すれば、それだけで甚大な被害が出る。

 

そう判断した彼女は、直接触れなくとも範囲内へ無重力を付与できる超絶技を発動したのだ。

 

そして。

 

ゼログラビティを付与したのは、ギガントマキアだけではなかった。

 

 

 

「イフリートソール!!!!」

 

 

 

「フルクラスター!!!!」

 

 

 

炎の魔神、緑谷出久。

 

ヒーロー名、マイティ・デク。

 

 

 

大爆殺神、爆豪勝己。

 

ヒーロー名、キャプテン・ダイナマイト。

 

 

 

神野決戦に参戦!

 

二人が、ついに戦場へ舞い戻る。

 

 

 

「なに?」

 

「なんと!?」

 

 

 

エンデヴァーの脇をすり抜け、爆豪が超爆速でギガントマキアへ向け急上昇する。

 

さらにその上空。

 

オールマイトすら追い越した出久が、炎を纏いながら隕石のような勢いで急降下した。

 

 

 

「チィッ……本当に後手に回る!」

 

 

 

射線にギガントマキアがいる勝己を無視し、

 

オールフォーワンは出久を撃ち落とそうと手を向ける。

 

しかし、

 

 

 

「だから、俺に集中しろって。先生。」

 

 

 

弔が再び肉薄し、オールフォーワンの自由を奪う。

 

 

 

「イフリート・スマッシュ!!!!」

 

 

 

「フルクラスター・ダブルインパクト!!!!」

 

 

 

主の援護を受けられなかったギガントマキアは、腹部へ超爆裂の一撃を受けた直後、

 

背中へ魔神の業火を叩き込まれる。

 

 

 

二人の必殺が、巨人の巨体を容赦なく貫いた。

 

 

 

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