リアルが忙しく、投稿が進まずすみません。
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戦場から離れたビルの屋上。
「弔くんたちはっ!?」
「アイツらはそう簡単にくたばったりしないだろうけど、アジトが! ってか俺の私物が!?」
「そこかよ!? それよりも、皆の努力で人死には出てねぇんだよな!?」『みんな死んじまって全滅だ。』
オールフォーワンの一撃。
ギガントマキアの落下。
空前絶後の災害――いや、人災、いや個性災を目の当たりにし、渡我やミスタ、トゥワイスが悲鳴にも似た声を上げている。
そんな仲間たちをよそに、巻巻は明とともに、まだ生き残っている監視システムによる状況確認に全神経を注いでいた。
「くそっ。街の中心部はほぼ壊滅、辛うじて生き残っているカメラも砂煙で何も見えん。」
再起動しようにも街の様子を知るためのカメラなどのほとんどは壊れ、生き残っているものも砂煙のせいで役に立っていない。
こんな状況に陥っても、お茶子の風探知さえあれば戦場の情報が途絶えることはない。そう考えていた明であったが、
「お茶子ちゃんの風探知でも状況が確認できない? これはもしや、妨害されている?」
その事実に息をのむ。
だが、驚愕したのはほんの一瞬だけで、
「ならばドローン発進!」
即座に次善策へ切り替え、コンソールを素早く操作する。
格納されていた複数の小型ドローンが次々と射出され、爆煙立ち込める戦場へ飛び立っていった。
「望遠カメラ搭載のドローンです。このベイビーたちで出久さんたちの様子を確認しましょう。お茶子ちゃんも引き続き風探知を試みてください。……お茶子ちゃん?」
返事がないため、明はモニターから視線を外してお茶子を見る。
戦場が混乱に陥ろうとも、風探知の展開と個性の発動を続けているお茶子だが、その表情は険しく、ギガントマキア落下地点付近を睨みつけていた。
「気持ち悪い風から、まったく違う風に変わった?」
圧倒的な出力を誇るお茶子。
キーを手にしてからの二年間、戦闘で後れを取ることはあっても、風そのものの強さで誰かに押し負けたことは一度もなかった。
だが、
「気を抜くと、風の制御を奪われる。」
戦場に新たに発生した風は、お茶子の風をゆっくりと侵食し始めるほど、
「この人、強い。」
お茶子が呟いた直後――
戦場の中心部で再び衝撃が爆ぜる。轟音とともに砂煙は吹き飛び、ドローンの望遠カメラが捉えたのは、
激しく拳と矛をぶつけ合うオールマイトとオールフォーワンの姿。
さらに――
戦場の中心から少し離れた空域では、
咆哮を上げながらも、強大な風によって叩き潰されるギガントマキアがいた。
ーーーーー
「我が主の敵を撃滅すっ、」
街に落下し、周囲に甚大な被害を与えた巨獣は鋭い爪を地面に突き刺し、浮かび上がることに耐えながら叫んでいた。しかし、
「デカいんやから沈んどけ、ボケが。」
風が吹き荒れ、大地へと叩きつけられる。
「ゴギャァ!?」
元々、緑谷たちの強烈な攻撃をモロに受けていた巨獣は限界が来たのか、今の一撃で気絶したようだ。
そして、俺の前に現れたのは先ほど確かに倒したはずのニケ…………と同じ姿をした別の誰かが立っている。
「………貴様、何者だ?」
「ほう? ワイが、さっきアンタが軽く捻ったゴミクズとは別モンやと確信しとるみたいな言い方やな。分かるんか?」
「質問に質問で返すな、愚か者が。」
分かるか、だと? 別人に決まっている。目の前の男からは、先程までの小物感が微塵も感じられない。それどころか、今のコイツからは緑谷や爆豪に比肩する強者の気配が漂っている。
そして会話の最中、
「ハッ、偉そうに。まあええ、ワイは、」
奴が視界から消えた。
「ッッ!?」
反射的に肩から炎を噴かし、後方に跳ぶ。
目の前を通り過ぎたのは、鑿岩機のような風を纏った蹴り。
ギリギリで回避に成功したが、直撃していれば終わっていたな。
「記憶や。」
会話を攻撃と並行しながら続けるんじゃない!
「グッ、記憶だと?」
「せや。ただの記憶、亡霊が出てきたとでも思っときや。丁度夏やし。」
風で炎を掠め取られたら厄介だ。こちらの攻め手は返されても問題ない牽制の弱炎か、赫灼熱拳レベルの大技ぐらいしか選択肢がない。
接近戦も不利。
奴の動き、A.Tのキレは桁違いに洗練されている。一つミスするだけで、一瞬で蹴り殺される。
チャンスが来るまで距離を取りつつ、奴が撃ち出してくる風弾を炎で叩き落とす。
「亡霊だと言うのなら、何故この戦いに干渉する!?」
「まだ出てくる気は無かったんやけどな。身体がムショ入りするんも、死ぬんも困るんや。んで、出てくる時にチイっと契約があってな…………死んでもらうで、オッサン。」
「………元々の人格にも言ったがな。償わなければいけないことが山積みなのだ。俺の命はやれん!」
叫び、更なる炎を捻り出す。
そうだ、死ねんのだ。焦凍を、冬美を、夏雄を、冷を、家族に償うために俺はまだ死ねんのだ!!
ーーーーー
………ああは言ったものの………強いわ、このオッサン。
炎を風で絡め取って、倍返ししたろうと思ったら、
「赫灼熱拳、ヘルスパイダー!!!」
熱線、ビームみたいな炎をぶん回してくるさかい、風では返し難い。
しかも、
「おらぁ!」
「喰らわん!」
火力だけやなく、速さも一流。
間合いを詰めようにも、しっかり躱され、距離を取られる。
高機動と高火力を兼ね備えたオッサンとか流行らんわ。
どこに需要あんねん、せめて美少女連れてこんかい。
「ハァッ!」
こっちが風を撃ち出してもしっかり迎撃されとるな。
高火力の合間に撃ってくるんは、返したところで旨味がない低火力の牽制技。せやけど、そんだけボカスカ撃ってきたんなら、
「そろそろ熱が溜まってキツイんとちゃうか?」
確かこのオッサン、個性を使い続けると体に熱が溜まるデメリットを持っとったはず。そろそろ間合いを詰め、
「甘い!」
よう思ったら、普通に高火力撃ってきおった。
ーーー『説明しましょう! エンデヴァーさんは出久さんの特殊耐火スーツを元に開発した特殊排熱冷却スーツを着用しています。体温がある一定の値を超えた場合に熱を冷気に変換する機能があり、これにより長時間の戦闘が可能になりました! あ、ただ、このスーツを紹介した時にエンデヴァーさんが、「これほどのものがあるのなら、アイツもッ!」と、まるで過去を悔い、血を吐くように呻かれていましたが、どうされたのでしょう?』ーーー
なるほど、あのメンタルゴミクズじゃ相手にならんわけや。ナンバーツーは伊達やない。
「(予想は出来ていたが、速さと強さを兼ね備えた特A級のA.Tライダー、厄介だ。加えて、前情報を考慮すると地に足をついた状態で間合いを詰められた瞬間に終わる。)ハァッ!」
それに無闇に攻めてこず、こっちを観察してくる冷静さもやり辛い。
ワイが間合いを詰めるたびに飛び上がるか退がるちゅーことは、大地の道の特性も把握しとる。
「ワイ相手に近接で戦わんのは賢い選択やな。誰かの入れ知恵か? せやけど、撃ち合いでも負ける気はあらへんで。」
「グッ、(風で細かい瓦礫を散弾のように撃ち出す技、ということは緑谷同様、風の道も複合してくる戦い方か!)赫灼熱拳、ジェットバーン!!!」
瓦礫を蒸発させる火力! その技なら風を操作して炎の奔流を巻き取れる。
ワイの風に奴の炎を乗せて、
「喰らえ!!」
「シッ!!」
「見え見えじゃボケが!!」
下手くそな奇襲を仕掛けてきたアホ二人を迎え撃つ。
ーーーーー
両脇からニケを奇襲した荼毘とスピナーだったが、繰り出した蒼炎と牙は、エンデヴァーの炎を絡め取ることで放たれたニケの炎風に迎撃された。
追撃をかけようと前に出る二人だが、
ギィィッ!!!
ニケの足元から何かを軋ませるような音を聞き取り、スピナーが声を上げた。
「荼毘、退がれ! ラァッ!!!」
「チッ!」
指示に従い、炎を吹かして後方へと飛び上がる荼毘。
スピナー自身は軽めの牙の連撃を放ち、地面を切り裂く。
二人の対応に、ニケは舌打ちをする。
「チッ。どいつもコイツも大地の道は予習済みかい。(あのゴミは氷に振動を送って強度を上げるぐらいしかやっとらんかったのにな。まあ、大地の道はハメ技が多いさかい、注意しとったちゅうわけか?)」
ニケとエンデヴァー、そして荼毘とスピナーの三陣営が睨み合う形になるが、実質的には三対一。
オールマイトであっても打倒する可能性を持った相手に囲まれ、ピンチにしか見えない状況であるにもかかわらず、ニケは、
「でもまあ、俺ら相性は良さそうやな。」
怪しげに余裕の笑みを浮かべていた。
「「ハァッ!!」」
そんなニケ目掛けて、同じタイミングで炎を撃ち出すエンデヴァーと荼毘。
いい加減返すのも面倒になったのか、ニケは二人の炎目掛けて大振りの蹴りを繰り出す。風を纏った蹴りは、世界有数の炎個性によって放たれた炎撃を、
「シィッ!!」
文字どおり、一蹴した。それだけで終わらず、
「オマケや!」
もう片方の脚から礫の弾丸を放とうとする。
スピナーは待ったをかけるように間合いを詰め、
「(別の技を繰り出す出鼻を挫く!)」
カミソリが如きスピナーの蹴りで蹴りの出鼻を挫く。膝を狙った蹴りは確かに当たった。普通の相手であれば膝の皿が割られ、駆けることなど出来なくなるはず。しかし、今この戦場に“普通”はいない。
「硬ぇ!?」
「キレのある良い走りや! せやけど切れ味は足らんな!」
確かに直撃したスピナーの蹴りはニケを切り裂くことは叶わなかった。それでもスピナーの攻撃は止まらない。
「シャァラァッ!!」
ニケに大地を踏み締める余裕を与えず、連続攻撃を続ける。
目、首、肩、鎖骨、脇、肘、手首。
急所や関節、更には太い血管が通っている箇所を重点的に狙っていく。
「(こちとら元々ひきこもりの一般人。殺気なんて持ち合わせてねぇんだよ。だがな、テメェが仲間の、ダチの障害だってんなら、)刻むだけだ、このヤロウ!!」
泣けなしの闘志を燃やすスピナーの攻撃を、ニケは冷静に捌いていく。
大地の道の特性である振動。その振動により物を固めることが出来るニケは、的確に己の身体の硬度を上げることで、スピナーの斬撃が如き蹴りを防いでいく。
ニケの硬さを超えて叩き切るには、スピナーは牙を撃つしかない。
しかし、そうなるとこの勝負は西部劇のガンマンのような早撃ち勝負となる。その上、ニケが早撃ちで勝った場合、そのままハメ技コンボを差し込まれる可能性が高いが、スピナーの牙がニケを一撃で倒せる保証はない。
完全に、
「(分が悪過ぎるだろ!)」
内心で愚痴るスピナーだが、
「(ま、タイマンならの話だけどな!)」
一歩。
連撃で前のめりになっていると見せかけてからのバックステップ。
そして、その一歩に完璧に合わせたタイミングで炎が奔った。
エンデヴァーと荼毘による十字砲火がニケを襲う。
炎に呑まれるニケ。風で炎を防いだ様子も、絡め取った気配も無し。
チャンスと見たスピナーは全力の牙を蹴り出した。
「ラァッ!!」
真空の刃は炎を切り裂いてニケに直撃し、
直後、ニケの拳がスピナーの顔面を殴り潰した。
「「は?」」
ビギィィィッッッン!!!!
世界ごと軋むような音が響き、
「言うたやろ、相性が良ぇて。」
ギリシャ神話にて”勝利”を意味するニケの名を真に冠する男。
「タイミング測っとったのが自分らだけやと思うなや。消し飛べ。」
竜巻が瓦礫を、砂を巻き上げ、ギガントマキアの落下の衝撃により崩壊した街を更に削り取る。
『大地×風 クリスタル・サンド・ウィンド』
「キー使うだけで、強うなれんのや。元になった奴はもっと強いに決まっとるやろ。」
ーーーーー