The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
【ドドド・ドラゴン】
コスト6 モンスター 種族:ブレイブリー・ドラゴン パワー12000
・【速攻】
・このモンスターは相手のライフを2つ破壊する。
・このモンスターが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目を表向きにする。それが種族に【ドラゴン】を持つモンスターならコストを支払わずにバトルゾーンに出す。それ以外なら墓地に置く。
‐その竜は、常に怒りを忘れなかった。‐
【虚無なる使徒バニ・ラビンズ】
コスト6 モンスター 種族:エンジェル、アポストルズ パワー131313
‐遥か彼方より飛来した、滅びを齎す者【亜POカ離プSU】。不完全な状態ながらもリネヴェの大森林を焼き尽くし、ゼヘルの大海を干上がらせた【亜POカ離プSU】に、モンスター達は全てを諦め、終末を受け入れんとしていた───。しかし、そんな中【亜POカ離プSU】を打ち滅ぼさんと立ち上がる、勇気ある者たちが現れた!彼らはブレイブリーと名乗り団結し、理不尽なる巨悪に宣戦布告!かくして、モンスターワールドの存亡をかけた戦いが、始まったのだ!!‐
分類上は学園モノに含まれる『IGNITE』だが、序盤のストーリーは主に学園の外で展開されていた。
それは龍牙カイナの友人が、別の学校に通う少女、三塚井エルしか居なかったというのもあるし、まだ本来の明るさを取り戻しきれておらず、学園で友人を作ろうという考えに至っていなかったのもあるが、何より無視できない巨悪と遭遇してしまったことがあげられる。
その巨悪の名は、カードハンター。
『ウォイト!!』の最初の敵組織にして、後にウォイト関連作品全てに登場することになる、ウォイトプレイヤーなら誰もが知る組織だ。
紅ヒイロの手によって壊滅させられたはずのカードハンターは、『IGNITE』においても復活していた。首領を替え、名前はそのままに、まるで異なる思想、目的の為の組織として新生していたのだ。
龍牙は【フィナーレ】を追う中で彼らと遭遇し、もう一つの宿敵として認識するようになる。
だから、というわけでもないが、今の時期の学園での出来事を、俺はほとんど知らない。
この時期はほんの一コマの雑談シーンに挟まれたセリフからしか、学園のイベントを知ることができなかったのだ。
「【ヘルメン】でダイレクトアタック」
「ま、負け………た」
対戦台の向こうで、男子生徒が崩れ落ちる。
これで、今日だけで17人抜きだ。挑まれるのは良いし色んな相手と戦えるのは良いが、ノンストップすぎて流石に疲れてきた。
入学してから、早4日。ホームルーム前にファイトを挑まれ、休み時間にファイトを挑まれ、昼休みにファイトを挑まれ、放課後にはファイトを挑んでくる連中を速攻でねじ伏せ、挑戦者の波が落ち着いた隙に学校を出て、カード喫茶魅上へ駆け込む。そんな日々を繰り返していた俺は、未だに話題の中心人物のままだった。
MASTERランクの衝撃はそれだけ大きかったということだ。
まぁ、挑んでくる連中がほぼ全員男子な辺り、桃倉と暁が友達な事が原因な気もするけど。
「黒井君、おつかれさま〜」
「暁、見てたのか」
「うん!ね、黒井君、まだお昼食べてないでしょ?一緒に学食いこっ!」
「おう、行こう行こう。───じゃ、対戦ありがとうございました」
「こ、こっちの方でも負けてた………!」
両手で顔を覆い嘆く男子生徒を置いて、暁と一緒に食堂に向かう。
道中彼女から聞いた話によると、先に桃倉と龍牙が席を取ってくれているらしい。
着くと、確かに二人が端の方に座り、大量のフライドポテトをつまんでいた。
「ここの学食ってパーティーサイズのフライドポテトバスケットとか売ってんのか………」
「いらっしゃーい黒井っち。隣、座りなよ。ポテト一緒に食べよ?」
「ナゲットも入ってるよー!」
「そりゃ凄い。けど俺はソレじゃ足りないし、なんか買ってくるよ」
「あ、じゃあ一緒に行こうよ!私も足りないなーって思ってたんだ!」
「え゛、カイナっちまだ食べれるの?その細さで?」
積み上げられたラーメンどんぶりと龍牙を交互に見やって、絶句する桃倉。
もしかして、アレ全部龍牙一人で食べたのか?別に原作だとそんな大食いキャラだったイメージ無いけど。
「月夜ちゃんこそ、それしか食べなくて平気なの?ナゲット&ポテトのバスケット、少し食べただけじゃん」
「ソフトクリームも食べたし、コーヒーも飲んだし、十分だと思うけど………」
「えーっ!?飲み物は食べたのカウントに入らないでしょー!?」
「ウソでしょ、この子ソフトクリームを飲み物だと思ってる………!?」
えっ、ソフトクリームって飲み物じゃないの?ドリンクバーと一緒に付いてくる事多いし、ちょっと固形になってるだけで実質ジュースみたいなもんだと思ってたわ。
龍牙は暁の言葉に「アイスもソフトも飲み物だよー」と返しつつ、時間も無いし、と俺の手をとって、カウンターまで引っ張っていった。
俺としては原作主人公と手が繋げて大興奮なのだが、それを表に出そうものなら第三者目線、女子と手を繋いで喜ぶド変態になってしまうので、何とか舌を噛んで表情を引き締める。
「学食来るの、実は初めてなんだけど………メニューの横に書いてある数字は何なんだ?」
「学内ランキングの数字だよ。順位が高ければ高いほど、頼める料理のバリエーションが増えるの。―――すみませーん、カツカレー大盛一つくださーい!」
「なるほど………」
リアルだと大炎上間違い無しな学校運営だな、架空の学校だしこれくらいの方が良いんだろうけど、とか思いながら見ていたが、いざ自分が直面すると笑いしか出てこない。絶対クレーム入ってるだろ、このレベルの実力差別。
………いや、むしろこれくらい徹底しているからこそ高い評価を得ているのか?ウォイトが何よりも優先される世界だし、あり得なくもない………のか?
俺の学内ランキングは、ここ数日で信じられないくらい上昇している。この四日間で、もう100戦以上戦ってるからな。具体的に数字を出すと、
学内ランキングって、連勝ボーナスとか格上撃破ボーナスとかあるから割と上げやすいんだよな。もちろん、連敗したり格下に負けたりすると凄まじい落ち方をする事になるらしいけど。
「彼女の説明、少し不足がありますね。確かにその説明で合っていますが、例外もいます。ランキングの順位を問わず、好きな商品を無料で頼むことが出来る人物が。その一人こそ、君ですよ。転入生の黒井ナラク君?」
「………ど、どうも。初めまして」
「ええ、初めまして。私は
「若輩も何も、先生よりも俺の方がよっぽど若造ですよ」
「ははは。それは違いありませんね。―――ですが、その実績も、その実力も、私のソレを優に越えている。その若さで、素晴らしい事です。これでも大会優勝トロフィーはいくつか持っている身ですが、あのMasters Cupの舞台には立てた事すらありませんから」
穏やかに微笑む安久寺先生に、愛想笑いを返す。
ウォイト応用の安久寺先生。もちろん知っている。あの顔芸、あのキャラ崩壊、あの伝説の『IGNITE』2期5話。忘れる方が難しいくらい、彼はインパクトのあるキャラクターだった。
この人、清々しいくらいのクズだったし、見てる分には面白かったんだけど………いざ目の前にすると、つい身構えちまうな。そんなすぐに本性現したりはしないと思うけど。
「午後の2コマは全てウォイト応用。君にとっては初めての授業となりますが………まぁ、君なら問題ないでしょう。楽しみにしていますよ。―――ざるそば特盛で」
素早く提供されたざるそばを受け取り、去っていく安久寺先生。
残された俺は、カツカレーを既に受け取っているにも関わらず隣で待ってくれている龍牙を見て、
「………なんか食べたいやつあったら頼んで良いよ。俺なら何でも頼めるはずだし。なんならタダだし」
「ほんと!?」
×―――×
ウォイト学園の選択授業は、毎週金曜日に2コマ分行われる。
どれも大きな教室を広々と使うのだが、中でもウォイト応用は一際大きく、一際豪華な教室を使う。
アニメで見て知っていたことではあるが………シャンデリアが光源になってる教室ってなんなんだコレ。
「では次に、メタカードと発生する事象について───」
教壇に立つ安久寺をボケーッと眺めながら、シャーペンを走らせる。
当たり前のように既知の内容だし、全然どうでも良いのだが、これでも学園長に選ばれて入学した身だ。気を抜いて不良生徒扱いなんざされたくない。
それに、普段の授業(ウォイト実習を除く)と違って、この授業は原作でも受けているシーンが描写されていたのだ。
例えば今みたいに、小難しい話に鼻提灯を膨らませている主人公が───
「ふむ。では龍牙カイナさん」
「っ!は、はい!!」
「【王道を行く者バレン】がバトルゾーンに居て、相手プレイヤーが自身のモンスターが攻撃する時に【ヒーローズ・スクランブル】を使用してモンスターを入れ替えました。その時、そのモンスターの攻撃はどうなるでしょう?」
「えっ、お、【王道を行く者】………?」
視線をあちらこちらに泳がせて、必死に考える龍牙。小さく呟かれた言葉から察するに、彼女はそもそも【バレン】の効果も知らないようだ。
怒られるかもしれないが、助け舟でも出してやるか。
「相手のモンスターはバトルゾーンに出たターン攻撃できない」
「!そ、そっか。ありがとう、ナラク君。―――はい!攻撃は無かったことになります!【バレン】の能力で、相手のバトルゾーンに出たばかりのモンスターは攻撃ができないからです!」
「ふっ………残念ですが、間違いです。黒井君、先ほど彼女に【バレン】の能力を教えましたね?ならば、君に正しい答えを、理由と一緒に説明してもらいましょうか」
矛先が俺に向けられた。
当てられてしまったなら仕方ない。自信満々の解答が間違っていた事に、ええーっ、とショックを受けている龍牙に代わり席を立つ。
「【ヒーローズ・スクランブル】はレストしたモンスターと手札のモンスターを入れ替える能力ですが、この入れ替えの際に、レストしたモンスターの『状態』を、入れ替わった後のモンスターが引き継ぐことになります。ここで言う『状態』は【潜伏】や【破壊されない】と言った継続効果の話では無く、攻撃している状態、防御している状態という意味です。例えば攻撃の為にレストして【ヒーローズ・スクランブル】を発動した場合、入れ替わったモンスターは元のモンスターの攻撃している状態を引き継いで、そのまま最初に指定された攻撃先へ攻撃を実行します。―――そして、【バレン】の能力はバトルゾーンに出たばかりのモンスターが攻撃する
「………流石ですね。満点の解答です。【ヒーローズ・スクランブル】は君の戦略の要でもありますし、知っていて当然ともいえますが。それでも、ここまで淀みなく答えられるのは流石の一言に尽きます」
なんだか悔しそうにされているが、教師としてソレは良いのだろうか。
その後も、裁定やカードの能力、効果の講義は粛々と進み、一コマ分が終わる。
ウォイト応用は最初のコマを座学、次のコマを実習に分けているので、このあとはずっとファイトだ。
龍牙を誘うでもいいし、暁を誘うでもいいし………他にも、もうちょっと後の方でストーリーに関わってくる少女が沢山いるのがこのクラス。選り取り見取りだ。
え、少年は出ないのかって?そりゃ出るけど、『IGNITE』は百合アニメだぞ?影なんて薄いに決まってるじゃないか。
………まぁ、一部途轍もない存在感を放ってる奴らがいるけど、大体学園関係ないか、ウォイト応用に参加してないかのどっちかだし。
意外なのは生徒会長すら音楽を受講しているというところだ。あの人、基本的には非人間的というか狂気の人なんだけど、ヴァイオリンを弾いてる時だけは普通の人に戻るんだよな。
唯一母親との間に残った記憶だからかな?
「では早速ですが、皆さんいつものようにクジを───あぁ、黒井君には説明が必要ですね。このクラスでは、実習のペアをクジで選び、対戦と感想戦の時間を設けるようにしているんです。さ、何はともあれ引いてみてください」
「ありがとうございます」
手作りの箱に手を入れ、紙を一枚取る。番号は8だ。
みんながクジを引き、お前は何番だ誰が相手だと騒がしくなる中、龍牙と暁がこちらに歩み寄ってきた。
「黒井君は何番でし───だった?」
「8番。二人は?」
「私13番ー」
「私は3番。ペアじゃなかったねー」
間延びした声で答える龍牙と、寂しそうな顔を見せる暁。まぁ、この後いつも通り、魅上さんの店でファイトするんだから良いだろう。
互いにペア相手を探さないと、と言って解散し、紙を掲げて歩くこと数秒。少し離れたところから「俺も8番だ」との声が聞こえたので、声の主と合流することに。
「―――驚いた。兼ねてより戦ってみたいと思っていた相手と、ペアになれるとは」
「………」
「あぁ、すまないな黒井ナラク。自己紹介が先だった」
右目に眼帯をつけた、黒髪金目の男。俺のペア相手は、堅苦しい口調で話す彼だった。
―――声の時点で、なんとなく察していた。
だが、そんなはずがないと可能性を否定して、平常心を装って接近し───見事、繕った余裕を引き剝がされた。
俺は彼を知っている。その容姿は確かに成長しているし、声も心なしか
「俺の名は
―――『ウォイト!!』のキャラ来たァああああああああッ!!!
『IGNITE』は別に百合作品というわけではありません。ナラクの中では女の子ばっかり出てるアニメ=百合アニメという認識なだけです。