The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
【呪厄災害カースラミティ】
コスト8 モンスター 種族:アウトサイダー パワー20000
・自分の墓地にモンスターが8枚以上あれば、このモンスターをコストを支払わずに召喚しても良い。
・【速攻】
・自分の【呪厄災害カースラミティ】が攻撃するとき、相手のライフを1つ破壊する。
‐とんで、とんで、やくまみれ。けがれて、おちて、くちはてて。そのとりは、もう、そらにいられない‐
【妖艶英雄マイ・コハーン】
コスト6 モンスター 種族:マシン・ヒーロー、バルカン事務所、メカ・サポーター パワー6000
・【反撃】
・【守護】
・このモンスターがバトルゾーンに出た時、相手のモンスターを全てレストさせる。
「残念だったな、今年も」
『全くだぜ。去年は2回戦まで行けたんだけどな。また初戦敗退しちまった』
「3年連続で出場できているだけでも、実績として十二分だとは思うがな」
スマートフォンを耳に当て、ライバルであり友である少年───紅ヒイロと言葉を交わす。
Masters Cup、決勝戦当日。全世界が注目する一戦をテレビ越しに見ながら、騎士は前日に行われた予選で敗れた友を慰めた。
無論、それが響くことは無いだろうと分かった上で。
「それにしても………今度は【ダークマイザー】か。これで3枚目だな」
『あぁ。俺らが昔倒した奴らと、同じ切り札………闇の伝説を、また使ってやがらぁ』
映る試合は、今まさに佳境を迎えていた。大量展開し、一斉攻撃を仕掛けたプレイヤーの攻撃が、Abyssの【反撃】によって止められ、ターンが返る。ライフを失った代わりに、手札を手に入れたAbyssは、そのまま【D・パンク】を出して【ダークマイザー】へと【ヒーローズ・スクランブル】。大量に並べられたモンスターは、もはや威圧感と圧迫感の象徴では無く、【ダークマイザー】の攻撃回数を可視化したものに過ぎなかった。
その上、【THE LAST BLASTER】まで発動され、防ぐ術を失った。手札があれば、まだ【命乞い】や【絶体絶命カウンター】のチャンスがあったかもしれないし、警戒させることもできたかもしれないが───前のターンの展開のために、全て手札を吐ききった状態。対戦相手は、もはや何もできずにモンスターを蹂躙され、ライフを燃やされ、敗北した。
『Abyss選手、勝利ーッ!!優勝はAbyss選手ッ!ついに前人未踏の三連覇を果たしましたァーッ!!』
「三連覇、か。いよいよ伝説だな、あの男も」
『俺のとーちゃんですら二連覇だってのに。記録、塗り替えられちまったな。俺が塗り替えてやるぜー、って思ってたんだけど』
苦笑する二人。とはいえ、騎士とヒイロでは少し込められた感情が異なる。
両手を挙げて勝鬨を上げるAbyssを見つつ、騎士が険しい顔で呟いた。
「まだ、あの男から闇の伝説を回収していないのか?」
『それどころか、会って話した事もねぇ。………けど、前も言ったろ?アイツは大丈夫だって』
「そんなはずがないと、俺も言ったはずだ。闇の伝説が人を狂わせるのは、どうしようもない事実なのだと」
騎士がAbyssの存在を知ったのは、ヒイロからの連絡を受けたからだ。
『闇の伝説を使うプレイヤーがいた』。その言葉に、違う選手の試合を映した中継映像では無く、個別にアップされた試合映像を確認し、そして見た。
かつて彼らが協力し、なんとか倒す事が出来た巨悪、【亜POカ離プSU】を平然と使うAbyssの姿を。
騎士は、彼を放っておくのは危険だと、闇の伝説を今すぐ回収すべきだと、主張した。
だがヒイロは、そしてヒイロの相棒カード【バルカン】は、ソレを拒否した。
Abyssと【亜POカ離プSU】は、これまで見てきた闇の伝説使い達とは違うと。二人の間には絆があり、闇に呑まれた様子も無く、ただ自分が楽しみ、人を楽しませるファイトをしていると。そう主張したのだ。
「………カードとの絆は、生涯を通じて深めていくものだ。二つのデッキを扱える人間もいない事は無いが、三つ以上はまずあり得ない。普通のカードでさえ、あり得ないんだぞ。闇の伝説という、人の身に余る力を………三枚も切り札にして、まともでいられる人間がいるか?」
『それがアイツなんだろ。三年前に初めて見た時から、アイツは何も変わってねぇ。邪気もねーし、見ての通り、人を楽しませるような、何より自分が楽しんでいるようなファイトをやってる。───信じてやろーぜ、闇の伝説だろうと、人を狂わせずに共存できるって』
何度説得しても、平行線のまま。騎士は溜息を吐くと、腰のデッキホルダーにそっと触れた。
ヒイロのソレは、希望的観測に過ぎない。信じるなんてことは、多くの悲惨な前例を見て、その対処に奔走してきた身としては土台無理な話だった。
とはいえ、彼よりもよっぽど巨悪と対峙し、闇の伝説とも渡り合ってきたプレイヤーであるヒイロが言うのなら………と、心のどこかで思っているのも、また事実。
彼とてカードを愛し、モンスターを愛するプレイヤー。存在することが悪、と断ぜられてしまうカードなど、あって欲しくはない。安全に使う事が出来る誰かが、共存してやれる誰かが、いて欲しいと思っていないわけでは無いのだ。
(―――だからこそ、彼に挑まんとする生徒の波が落ち着くまでは様子を見るだけにとどめようと決めていたのだが)
金曜日の5、6限目。それは
遠巻きに眺め、その実力と思想、闇の伝説による浸食の程度などを観察するにとどめていた彼は、なんの因果か今まさに、ナラクとファイトしていた。
状況としては、ナラク側が切り札を着地させている分、優勢と言ったところ。これが他のデッキの他の切り札なら、まだ早期着地した切り札を除去し、一転攻勢を仕掛けるという展開もあり得たが………【ダークマイザー】は強力な除去耐性を持つモンスター。既にブロック時に破壊した【バーサーク・ナイト】の分、山札の上から1枚を自身の下に入れている。
「【守護】を持たないモンスターな事が救い、とでも言うべきだったのだろうが───【陣形】は
「でしょうね。俺のターン。ドローして、【ダークマイザー】の効果で自身のターン開始時山札の上から1枚をこのカードの下に入れる」
この『自分のターン開始時』というテキストは、レストしたカードをアクティブにする『アクティブフェイズ時』を指す場合と、『
なぜそんな意味のわからない状態に、と思うかもしれないが、それは誰にもわからない。
一応、ナラクの前世では、プレイヤーたちの間で『主人公カードにターン開始時系の能力を与えすぎたせいで、どっちに統一してもどれかが紙ゴミになってしまうから』という噂がまことしやかに囁かれてはいた。
例えば【始まりを告げる者ビギニング】の場合、【
例えば【
とはいえ、真実が語られた事は無い。所詮は噂。それも、彼らが今いる世界には関係の無い噂だ。
「【時を統べる者ダイン】をチャージして、4コスト。【
「これで、除去カードの実質要求数はプラス1………いや、2か」
‐【卍死猛犬W・ドッグ】 パワー3000‐
機械で出来た犬が飛び出し、【ダークマイザー】を庇うように立ちふさがる。
仮に【反撃】が来たとして、指定除去だった場合は【W・ドッグ】に吸われてしまう上、【W・ドッグ】が場を離れた事で【超魂成】がさらに1枚追加される。
騎士のデッキは、受け札の大半を【守護】を持つ【騎士】モンスターに頼っている。【騎士】を大量に踏み倒し、積極的に【陣形】を組み立てながら攻撃を繰り返す構築にしている為だ。防御に寄った構築ならば【騎士】以外の受け札を積極的に搭載することも可能だっただろうが、それは所詮たらればである。
「そして2コスト。【ネオンライトサイン】。山札の上から1枚をエナジーゾーンに置いて───【
手札に加わったカードを見て、少し固まる。理由は単純、【
無論、重要な局面で必要なカードを引けないということが、これまで無かったわけでは無い。手札事故に泣いた日もあれば、細い勝ち筋を掴めず敗北したことだって、彼にはある。
だがソレは前世の話だ。カードと絆を深め、運命力を高める事の出来るこの世界では、まず『ここ一番』に失敗が来ることはない。
あるとすれば、相手も自分と同等かそれ以上にカードとの絆を深めている、或いは高い運命力を持っているのどちらか。
(まぁ、
絆ないし運命力という点においては敗北済み。であれば、このまま【
(―――何より、【THE LAST BLASTER】
「そのままバトルフェイズだ!【リベリオン・ダークマイザー】でプレイヤーに攻撃!攻撃時、効果で【ナイト・リーダー】とバトル!
《私の刃は、世界すら断つ》
‐神原騎士 ライフ5→2‐
大剣が【ナイト・リーダー】を切り裂き、返す刀で騎士へと斬撃を飛ばす。その衝撃によって吹き飛ばされたかのように、ライフが3枚、騎士の手元へと飛んでいく。
【反撃】は───無い。
ライフゾーンから離れた分、さらに追加で3枚のカードが【ダークマイザー】の下に敷かれた。
「【ダークマイザー】は勝利した時点でアクティブ状態だ!再びプレイヤーに向かって攻撃する時、今度は【ワンモア・ナイト】を選んでバトルする!」
「それは構わんが───相手のターン中、自分の【騎士】を持つモンスターが2体以上破壊された時、このモンスターをコストを支払わずに召喚しても良い!【恩讐の騎士モンテ】を召喚する!」
‐【恩讐の騎士モンテ】 パワー7000‐
‐神原騎士 ライフ2→0‐
獣のような雰囲気を纏う鎧姿の騎士が、幽鬼のごとく現れる。
【ワンモア・ナイト】が【ダークマイザー】の刃によって爆散した直後、その煙の中から現れた【モンテ】は、両の手に巨大な剣を生成したかと思えば、ソレを躊躇なく【W・ドッグ】と【ダークマイザー】へ投げつけた。
突然の攻撃に、犬も少女も回避できない。大剣に体を貫かれ、犬は爆散し、少女は不快そうに眼を細めた。
《………システム【
「【モンテ】の効果で、このターン破壊された俺のモンスターと同じ数、相手は自身のモンスターを選び破壊する。お前の場には、2体のみ。よって2体とも破壊だ」
「まぁ、【超魂成】は1減ったが。【W・ドッグ】が破壊された事で1枚追加された上、ライフを破壊した分で2枚増えている!【超魂成10】こそ達成されていないが、【ダークマイザー】は離れず残るしアクティブ状態だ!既にライフは0、【モンテ】は【守護】を持たないし、もう終わり───」
「―――とは、お前も思ってはいないだろう。【反撃】発動!呪文、【騎士の降臨】!」
デスヨネー。
ライフの内1つが、いつまで経っても手札に加わろうとせず浮遊し続けていた時点で、ナラクは察していた。
ソレは、アニメでよく見た演出だった。追い詰められたキャラが、最後のライフから【反撃】を引き当て、大逆転を果たす、熱いシーン。
それが自分との戦いで、見事に再現されていた。カードゲームとしてのウォイトだけでなく、アニメ『ウォイト!!』も愛する彼にとっては、感動モノであり、同時に苦しくもあった。
―――じゃあ逆転負け決まったようなもんじゃん!!
とはいえ、泣き言は心の内で叫ぶだけにとどめ、不敵な笑みを浮かべ続ける。
唱えられたのは、種族に【騎士】を持つモンスターを2体まで踏み倒す事が出来る呪文だ。出てくるモンスターによっては、まだまだ勝てる。
「効果で、俺は手札から【円卓の騎士王アーサー】と───我が相棒を出す!絶望を断ち、希望を生み出す至高の騎士よ!今、勝利をここに!【
‐【円卓の騎士王アーサー】 パワー13000‐
‐【煌騎羅英雄ライジング・ホープ】 パワー25000‐
小さな王冠を頭に乗せた少年と、騎士甲冑を思わせる装甲の巨大ロボが、魔法陣から姿を現す。
【煌騎羅英雄ライジング・ホープ】。彼の最初の切り札、その最終形態であり───種族に【騎士】と【マシン・ヒーロー】を持つ、ヒイロとの友情によって生まれたモンスターでもある。
「ら、【ライジング・ホープ】だァッ!!」
「………。なぜそこまで喜んでいるのかはわからないが───まずは【アーサー】の能力を発動!自身の手札を好きな数捨て、同じ数だけ山札の中から【円卓】と名に付くモンスターを出す!俺が捨てるのは2枚!」
捨てられたのは【シールド・ナイト】と【円卓の騎士ガウェイン】。どちらも【バーサーク・ナイト】の効果で見えていたカードだ。唯一残ったのは、ナラク目線からはわからないカードのみ。
(わざわざ残したってコトは、延命が可能なカードと見た方が良い、か。或いはハッタリか)
「山札から出すのは【円卓の騎士ランスロット】と【円卓の騎士ペレアス】!登場時効果は無いが、どちらも【陣形5】を持つモンスター!バトルゾーンに5体の【騎士】が揃っている今、【ランスロット】の効果で『自分のモンスターは破壊されない』が、【ペレアス】の効果で『自分のモンスターは破壊以外でバトルゾーンを離れない』が付与されている!」
‐【円卓の騎士ランスロット】 パワー8000‐
‐【円卓の騎士ペレアス】 パワー9000‐
2人の騎士が、【アーサー】の前に現れる。
5体の【騎士】モンスターによる、より強固な【陣形】。能力により崩されることがなくなったソレは、あまりにも凶悪だ。
畳みかけるように、騎士が手を横に薙ぐ。
「さらに【ライジング・ホープ】の能力!このモンスターがバトルゾーンに出た時、次の自分のターンのはじめまで自分はゲームに負けず、相手はゲームに勝てない!」
「まさに絶望を希望に変えるモンスター………」
悠然と佇む巨大ロボ騎士。
これがファイト・フィールドでの試合だったら、一体どうなっていただろうか。
そう自問してしまう程に荘厳で、雄大で、力強い【ライジング・ホープ】に、しかしナラクの表情は曇らない。
いや、それどころかむしろ
「【ライジング・ホープ】には他にもライフ焼却や【騎士】、【英雄】の踏み倒しなんかがあるが………どれも攻撃時効果や自ターン発動効果だ、今は何もない。―――俺の勝利は止められても、
「確かに、俺は負けないだけで攻撃までは止められないが──―バトルに勝ったところで、俺のモンスターが離れないのなら【超魂成】は発動しない。【モンテ】の効果で1枚減らしたことで、総枚数は9枚。効果発動には、後一歩届かない───」
「【騎士】デッキを相手にする上で、除去カードを警戒しない理由は無い。まして、ライフ焼却の手段がない状態なら猶更」
騎士の言葉を遮るように、口を開く。
どこか芝居がかったその態度は、まさにアニメ『ウォイト!!』の登場人物を思わせる喋り方。
「【K・ネグラ】でのドローで、既にサブプランは手元に来ていた。攻撃を封じられる事があれば話は違ったが、【騎士ビート】という事前情報がある時点でその警戒は実質不要―――だから、最後の最後まで握っていた!」
「そうか、アレか───ッ!!」
「最後の攻撃だ!【ダークマイザー】でプレイヤーに攻撃―――
眉間に皺を寄せた騎士へ、【ダークマイザー】が突撃する。
その時、【ダークマイザー】の能力を処理するよりも先に、ナラクの手札からカードが飛び出した。
「自分の【マシン・ヒーロー】が攻撃する時、自分のライフを1枚墓地に置くことで、このモンスターをコストを支払わずに召喚できる!【
‐【卍死強襲Z・バーク】 パワー7000‐
六つの腕を生やした魔人の機械が、【ダークマイザー】の横に着地する。
彼女はソレを静かに一瞥し、【ライジング・ホープ】を切り捨てた。
「【Z・バーク】は【速攻】を持ち、攻撃時にアクティブ化する効果を持つモンスターだが───今重要なのは、ライフを1枚墓地に置く効果!」
カードが離れたことで、【ダークマイザー】の下にカードが入れられる。
これで、10枚。
《システム【超魂成】、
【ダークマイザー】のアーマーが、展開する。背後にはメカウィングユニットが出現し、1680万色に輝いていた。
彼女の持つ剣もまた光り輝き、さらに巨大に、さらに派手に変形する。
「攻撃しても、俺は勝利できない。【ライジング・ホープ】も離れないし、ターンエンドだ」
「………だが、
ニヒルな笑みを浮かべ、ターン開始時のドローをしようとして───山札の上から、カードが動かない。
代わりにナラクがドローして、両手を広げた。
「ご存知の通り。【卍死喝采リベリオン・ダークマイザー】の【超魂成10】!このカードの下にカードが10枚以上含まれているなら、自分は相手のターンを任意のタイミングで終了させて良い!!当然、そっちのアクティブフェイズが終わると同時にターンを終わらせる。―――チャージ無し、正規コストを支払って【D・パンク】召喚!そのままバトルフェイズ!【D・パンク】でダイレクトアタック!攻撃時、相手の手札を1枚捨てさせ、モンスターを1体破壊する!」
「【命乞い】すらさせてもらえんとはな。―――ブロックはしない。潔く、敗北させてもらおう」
『試合終了。勝者、黒井ナラク』
肩を落とし、穏やかに微笑むと同時、機械音声が勝者を告げる。
(………敗北したというのに、命を奪われることも、闇の力を感じる事も無い。Abyssは、黒井ナラクは、本当に闇の伝説を制御しきっているということか)
カードを片付け、握手を求めてくるナラクに快く手を差し出しつつ、騎士はひっそりと肩の力を抜いた。
気づいてくれた人がいたので言っちゃいますが、この作品の『ヒロイン』は全員ある要素を紛れ込ませています。
デート・ア・ライブの、ヒロイン全員の名前に数字が入ってるみたいなヤツです。
早くも試合展開を考えるのに行き詰ってまいりました………!!