The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
【守衛竜プロテクトドラゴン】
コスト5 モンスター 種族:ドラゴン パワー7000
・【守護】
・このモンスターがバトルに勝った時、アクティブにする。
‐その竜は、龍達の住まう地を守る役割を、自ら進んで担い始めた。‐
【卍死喝采リベリオン・ダークマイザー】
コスト10 モンスター 種族:マシン・ヒーロー、アウトサイダー、デストラグラー、卍死
パワー98765
・【ヒーローズ・スクランブル/D‐side・7】
・【速攻】
・このモンスターが相手のライフを破壊する時、3つ破壊する。
・このモンスターが攻撃する時、または【ヒーローズ・スクランブル/D‐side・7】によってバトルゾーンに出た時、相手のモンスターを1体選び、このモンスターとバトルさせても良い。
・このモンスターがバトルに勝利した時、アクティブにする。
・【超魂成10】:自分は相手のターンを任意のタイミングで終了させて良い。
原作で起きた悲劇をぶち壊す。
ここが『IGNITE』の世界でもあると知って以来、心に決めていた事だ。
何度でも言うが、『IGNITE』は鬱作品だ。主人公の家族は全員焼死するし、友人も大抵は死ぬか精神崩壊して退場する。信じていた人には当然のように裏切られるし、本人が酷い目に遭う事も一度や二度ではない。
そして主人公だけが悲惨な目に遭うのかと言うと、それも違う。ライバルにしてラスボス、羽々斬セツナだってかなり辛い目に遭うし、他にも沢山の人が碌な目に遭わず、大半死ぬ。なんなら、世界も一度滅亡するし。
そんなの、普通に嫌じゃん?
俺ももう当事者なわけだし、そうでなくとも、物語として見ていただけでも相当嫌な気分にさせられるような展開の数々だったわけだし。そりゃ、ぶっ壊そうって結論にもなる。
幸い、今の俺にはそれを可能にするくらいの力がある………はず、だからな。
「黒井っち、ご機嫌じゃん。なんか良い事でもあった?」
「んー、まぁ。憧れの人とファイトできた」
「黒井っちの憧れって………確か、紅ヒイロだっけ?」
「違う違う、そっちも確かに憧れてるけど、今日会ったのは違う人。神原騎士って人だよ」
すっかり俺らの専用席になってしまった、カード喫茶魅上のカウンター席。そこに腰掛けながら、ダラダラと雑談していた。
この店は、基本的に人がいない。
土日には多少来客があるが、それだけだ。平日に来る人はほぼおらず、原作では常連客設定の三塚井と主人公こと龍牙、そして友人達が訪れていたが、それだけだった。
当然、原作初期にあたる今は、ほぼ無人だ。龍牙の友人はまだ桃倉くらいしかいないし、何故か常連のはずの三塚井もいない。おかげで、ここ数日は俺たち4人の貸切状態である。
「豚骨ラーメンください」
「まいど。───その、毎日色々頼んでくれてるけど、無理しなくて良いんだからね?確かに客少ないし、カード喫茶の利益だけ見たら大赤字だけど、子供の君に気遣ってもらう必要はないからね?」
「いやいや、俺が腹減ってるだけですよ。それに、大会の賞金とかチンピ───んんっ!まぁ、色々稼いでるんで。金は相当余裕ありますから」
流石にチンピラから巻き上げてます!と堂々と言うのは良くないだろうと思い直し、誤魔化す。
善良な少女達の前で、わざわざ悪行を自慢するのもな。
隣に座る少女達を横目に見る。俺の収入源を知っている暁と桃倉は苦笑し、龍牙は喫茶店らしからぬ商品を注文した俺を羨ましそうに見つめていた。
………ご丁寧に、ヨダレまで垂らしながら。
「………だから、食べたいなら好きなの頼んで良いんだぞ、龍牙」
「ホント!?───あっ、いやいや、ダメだよ!昼はタダだって話だったし、それなら良いかな〜とか思ったけど!こっちはお金かかっちゃうんだよ?!」
「いや、そんなヨダレ流しながら見つめられてたら落ち着かないし。………カッコつけたいお年頃なんだよ。ほら、なんでも良いから頼みな」
「うん!わかった、ありがとう!!魅上さん、私も豚骨ラーメン!あとカレーときつねうどん!」
「昼あんな量食べてたのに!?」
「ソレでこの細身はどういうことなの………?」
大喜びで注文し始めた龍牙に、戦慄する2人。彼女達にも何か頼みたければ、と言ってみるも、そちらは龍牙ほどは頼まず、カフェオレ一つを頼むだけに終始した。
………いや、龍牙ほど頼むようなヤツって早々いないよな。感覚麻痺ってたわ。
「おーっと、こんなところにカァァドショップがあったとは!ん〜〜〜無知ッ!既にここら一帯は
「そうですね、兄さん」
魅上さんが裏の調理スペースに消えたタイミングで、2人組が入店してくる。
味の濃い2人だ。少女3人も、驚きのあまり目を丸くしてしまっている。
「お客さんかい?いらっしゃい、空いている席に座ってくれて良いし、カードだけが見たいならそれも自由───」
「おぉぉっと店員さん、残念ながらワタシ達はお客じゃない。お客じゃあ〜ないっ!違うのだよ、なぁ妹よ!」
「そうですね、兄さん」
………なんか変な奴らだな。
うるさい方───発言から察するに、兄の方。ミラーボールみたいな服に、金と緑のやかましい髪色、そして頬に彫られたハートのタトゥーと、見た目からうるさい男だ。
そして静かな方、推定妹の方は、ドギツいメイクの施された、ゴテゴテしたゴスロリの少女。いわゆる白ゴスで、表情の硬さも合わさってまるで人形のようだ。こちらも知らない。
原作には登場していないカードハンター………?ナレ死した連中の中に居たのかな?
客じゃない、との発言に、魅上さんが裏から顔を出す。訝しむような表情は、味の濃いビジュアルの2人を目視した瞬間露骨に顰められ、引き気味の声が漏れた。
「客じゃないなら、一体なんの用かな。悪いけど、冷やかしに優しくできるほど私は出来た人間じゃないんだが………」
「冷やかしっ!それもまた、否!否なのだよ!ワタシ達は
「は?」
「…………ふーん?」
「クルーエル、アビス………?」
桃倉の額に青筋が浮き、暁が目を細め、龍牙が首を傾げる。2人が何故苛立ってる風なのかはわからないが、俺は知らない名前だ。
そう、
原作に登場していないはずだし、別の作品に登場していた記憶も無い。もしかすると、俺が死んだ後に作られた関連作品の敵なのかもしれないが………よくわからん。
クルーエル・アビスと名乗った男は、ツカツカとカウンターへ近づくと、テーブルに1枚の紙を叩き付けた。
見ればそこには、『誓約書』の文字が。
「何を隠そうこのワタシ、かつてはカァァドハンターなんぞを生業としていた身!だからこういう仕事はお手の物!どういうお仕事か、わかるかな妹よ!」
「そうですね、兄さん」
「ん〜〜〜無視ッ!───まぁ、見ての通り読んでの通り!この店、ワタシ達クルーエル・アビスの傘下に加わっていただきます!」
「なっ………!?」
慌てて誓約書を読む魅上さん。覗いてみると、そこには「店にあるカードを全部献上する」とか「活動拠点として店を運用する」とか、ふざけた事がツラツラと書かれていた。
元カードハンター、とか言っていたが、あながち嘘でもハッタリでも無さそうだ。やり口が同じだし。
組織が名前違うだけで実体同じの謎グループってだけか?
「こ、こんなの誰がサインするっていうんだ!」
「それはもちろん、この店の責任者ですが?あぁご心配なぁく!ワタシ、荒事大好き大得意!抵抗されたり無視されたり、門前払いを受けようものなら即コ・レ!
黒い丸薬のようなモノを取り出し、見せつける。
『ウォイト!!』の、『IGNITE』の、その他メディアミックス作品の敵役が使う
フィールド・ボムは異空間を生成する兵器。叩きつけて炸裂させることで異空間を生成し、範囲内の人間を幽閉することができる違法アイテムだ。
中には対戦台が一つ置かれているだけで、ここで試合を行い、勝敗が決するまで、誰も脱出できないようになっている。
………そして、この空間で行われるファイトでは、
命も、尊厳も、なんでもだ。
「フィールド・ボム………!?随分と、穏やかじゃないものを使うね」
「勿論、ワタシは穏便に済ませられるのが一番だと思っているよ。だーが!もしも、もしもの時はァ仕方ない!クルーエル・アビスの名の下に、ひれ伏してもらうしかないっ!」
「………随分、勝手なコト言ってんね?」
「つ、月夜ちゃん!?」
桃倉が、ゆらりと立ち上がる。
冷静さを繕ってはいるが、声が震えているところから察するに本気でキレてるな。店を自分達のものに~、とか言われたのがよっぽどイライラしたのだろう。
まさか子供が嚙みついてくるとは思いもしなかったのか、男は不思議そうに桃倉を観察して、少し間を置いてから口を開いた。
「おやおや、ワタシに何か文句でも?」
「大有り。何から何まで文句しかないよ。―――でも、そういうの聞かないタイプっしょ?めんどいしさっさと
「―――ぷっ、はははは!!これはこれは、随分と活きの良い子供だ!余程自分の力に自信があるのか、それとも子供だから手出しされないだろうと勘違いしているのか………なんにせよ、お仕置きが必要だ!そうだろう妹よ!」
「そうですね、兄さん」
妹が頷いたのを見て、フィールド・ボムを持った腕を振り上げる男。
流石に黙って見ているわけには──―と動こうとした俺と龍牙を、桃倉が手で制した。
「黒井っちもカイナっちも、心配しなくてもだいじょーぶ。―――んじゃ、ちょっと行ってくるね~」
フィールド・ボムが炸裂する。
黒い靄が広がり、男と桃倉を包み、そして消える。
ああも屈託のない笑みを浮かべてしまわれては、何も言えない。それに、もう異空間の中に入ってしまったのだ。こうなれば、どちらかが勝つまで2人が出てくることは無い。
心配はある、が………桃倉は決して弱くない。原作に登場しない謎の敵が相手、というのが少し気がかりだが、きっと彼女なら大丈夫………だろう。
なら、信じて待つだけだ。どうせ異空間に入ってしまった時点で、俺達に出来る事は無いしな。
―――と、なると。
「………妹さん?の方はどうすんの?」
真顔のまま立ち尽くしている推定妹に、声をかける。
兄と同じでフィールド・ボムを持っているなら、今度は俺が戦う事になるだろう。
最近、
そう考え、いつフィールド・ボムを使われても良いように身構えていたのだが、返ってきたのは意外な反応だった。
「お願い、助けて………ッ!!」