The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
【魂の絶叫】
コスト8 呪文
・【反撃】
・バトルゾーンのモンスターを全て破壊する。その後、破壊した数だけ山札の上からカードを墓地に置いても良い。
【
コスト8 呪文
・この呪文を唱える時、コストを支払う代わりに、このカードを除いた自身の手札を全て捨て、5を支払って唱えても良い。
・全てのプレイヤーはバトルゾーンにあるモンスターを全て山札に戻し、手札が五枚になるように引き、ライフが五枚になるように山札の上からライフゾーンに置く。
フィールド・ボムによって生成された異空間は、黒一色の殺風景な場所だ。
対戦台が空間の中央に設置されている以外には何もなく、光源も無いのに何故か明るい。
常人であればこの場所に幽閉されただけで取り乱すものだが、月夜は慣れた様子で対戦台へと近づき、シャッフルを始めた。
「時間の無駄だしさっさと始めよ。話したい事は色々あるけど………別に、戦いながらでも聞けるし?」
「余裕なのは良い事だけどねぇ、それは蛮勇と言うのだよ、小娘よ。クルーエル・アビスは確かに、あまり知られていない組織だ。だぁが!知らないからと言って舐めてかかると痛い目を───」
「知ってるに決まってんじゃん、クルーエル・アビスが何なのかくらい」
「………うん?」
淡々と準備を整える彼女に、流石の男も違和感を覚え始める。
調子に乗っているだけ、にしては様子がおかしい。闇のファイトの重みを知らない?いいや、そんな様子も無い。
彼女は全てを理解した上で、余裕を見せている。
その瞳に、煮えたぎる怒気を纏わせながら。
「逆に聞きたいんだけど、アンタみたいなのにはなんて言って教えてんの?真面目に働いてる人の店奪って、カードも根こそぎ回収するような組織です、って?だとしたら誰に勧誘されて、誰に教育してもらったのか聞かなきゃいけないんだけど」
「まるでワタシの上司かのような口ぶりだねぇ。………だ、が!君のような小娘がいくら眼光を鋭くしても、ん~~~無駄ッ!脅しもすかしも、ワタシの手を鈍らせるには足りない!!」
「あっそ」
シャッフルが終わり、対戦台の上にカードが置かれる。
異空間の対戦台に、承認機能も何もない。必要なのは、双方の意思のみ。
「ワタシが勝ったら、君
「………やっぱアレ、闇のファイトで無理矢理妹にしてたんだ」
「おや、気づいていたのかね。まぁ、最大限の反抗か、言葉をロクに話さなかったからねぇ
狂気に満ちた瞳を見せる男に、月夜はただ一言「キモ」と呟いて、ライフと手札を揃えた。
「ウチが勝ったら、知ってること全部吐いて………いや、メンドーだし良いや。絶対服従ね。テキトーに飼い潰してあげる」
「できるものならっ!やってみるが良いッ!!」
男も完全に準備を終え、ファイトが始まる。
先行プレイヤーを知らせるように、対戦台の男側半分が発光した。
「ワタシの先行だ!【暗黒人形ヤミ】をチャージしてターンエンド!」
「ウチのターン。ドローして───【簒奪するデスワーム】をチャージ。そして0コストで
「何!?」
カードを構え、淡々と宣言する月夜。
ウォイトの基本は「チャージしてプレイ」だ。呪文もモンスターもフィールドも、どんなカードであれ相応のコストを要求する。
勿論【ヒーローズ・スクランブル】や【反撃】など、コストを支払わなくする効果も存在する。だが、そうしたカードには条件があり、
だというのに、0コスト?
調子に乗った小娘を叩きのめし、我がものにしてやろう───そう考えていた男さえ、素っ頓狂な声を上げてしまう程、月夜の宣言は異常だった。
「我が最愛にして至上なる主より賜りし、伝説の力。遍く全てを呑み込み壊す、最強の力!今、黙示の名を持つ凶星が降臨する───【マガツボシ=
‐【マガツボシ=亜POカ離プSU】 パワー666‐
異空間の、はるか上空。果てしない暗闇の向こう側から、ナニカが落ちてくる。
それは、球体だった。無数の歯車で出来た、球状の機械だった。
無機質なモノアイが男に向けられる。冷たい視線に射抜かれた彼は、思わずカードを落とした。
「な、なんだ、そのモンスターは………!?」
「ボスから貰った切り札。───闇の伝説、って呼ばれるモンスターでね?ウチらはボスから
「幹部………?一体、何の」
「え、まだわかんない?」
男の言葉を遮って、呆れた様子で溜息を吐く。
しょうがないなぁ、と呟いて、彼女は改めて名乗った。
「
×───×
「私があの男の『妹』にされたのは、二年前の事でした」
なぜか助けを求められた俺達は、泣きじゃくる彼女を落ち着かせ、詳しい事情を聞き出す事にした。
今の彼女は最初の無表情はどこへやら、暗く沈んだ顔を見せたままコーヒーを飲んでいる。
「カードショップに向かう途中で、いきなり『あぁ、妹よ!君はワタシの妹だ!』って言われて。振り向いた時には、もうフィールド・ボムを構えられてて………」
「そのまま闇のファイトを挑まれて、敗北して妹にさせられた、と」
「はい………。こんな恥ずかしい恰好をさせられて、兄さんなんて呼ばせられて」
「酷い………」
沈痛な面持ちの彼女に、龍牙が同情の声を漏らす。
俺は別にゴスロリを恥ずかしい格好とは思わないが、それは個人の価値観だし一旦置いておくとして。
「二年間、ずっとアイツに連れまわされてたの?」
「はい。行方不明扱いになってて………捜索願が張り出されているのも、見ました。でも、こんなメイクと服装じゃ、誰も気づいてくれなくて」
「カードハンターってそんなのばっかだよねぇ」
男は殺して女は慰み者、が
『ウォイト!!』の頃でさえ
エロ同人でも、竿役は連中の仕事だったしな。
「あれ?でも今はカードハンターじゃないんだよね?確か、クルーエル・アビスとかなんとか」
「そーだよね。―――どこの誰が、クルーエル・アビスについて教えたの?」
暁が目を細めて問う。
その聞き方だと、まるでクルーエル・アビスを既に知っているかのように聞こえるが………もしかして、俺が知らないだけでそこそこ有名だったりするのだろうか?少なくとも、龍牙と魅上さんは知らないっぽいけど。
「名前は、わかりません。コートを着た、身長が2メートルくらいある大きな男の人だったのは覚えてます」
「大男………そっか、なるほど。教えてくれてありがとー」
気の抜けた返事をして、そのまま店を出ていく暁。ポケットからスマホを取り出していたし、きっと電話か何かだと思うが………カードハンターが出て、
俺は万が一桃倉が敗北した時、すぐにでも闇ファイトを挑んで殺―――倒せるように、
「月夜ちゃん、大丈夫かな」
「………あの男は、とても強いです。月夜、さん?も、随分と自信があるように見えましたけど………きっと、負けてしまう」
「そんな強いの?」
俺の質問に、彼女は深く頷く。
「―――あの人形デッキには、きっと誰も敵わない。それくらい、強さの次元が違うんです」
×───×
「そ、そんな、そんなバァカな!!確かにワタシはまだ、ワタシを勧誘してきた『大男』以外のメンバーと顔を合わせた事は無いが………だからと言って、そんな嘘が通用するとでも!?」
「なーんで嘘だと思うかな?………ま、信じる信じないはどーでも良いけど。アンタが
ギギギ、と【亜POカ離プSU】が蠢く。
気を抜けばすぐにでも意識を失ってしまいそうな程の重圧を放つソレに後退るも、対戦台の上を見た男は冷静さを取り戻し、カードを拾った。
なぜなら【亜POカ離プSU】が、レストしてバトルゾーンに出ていたから。
「再教育、とはまた大きく出たねぇ。―――そのモンスター、0コストの切り札という言葉には確かに驚かされたが、使うには相応の
「ソレはそっちの動き次第かなー。取り敢えず、これ以上やれることも無いしターンエンド」
「ふっ、ならば私のターン。ドロー!【純黒人形ベンダ】をチャージして2コスト!フィールド、【
意気揚々とプレイされたカードに、月夜が目を細める。
(ガーデン………純正人形か)
最初のチャージの時点で人形デッキであることはわかっていたが、これで細かいデッキタイプまで判明した。
男の使うデッキは、純正人形と呼ばれる人形デッキ。他のデッキの
キーカードは今まさに出された【人形たちの楽園】。人形を軸にしてデッキを組むなら必要不可欠なカードだ。
「このフィールドがある限り、ワタシの種族に【ドール】を持つモンスターはコストを1軽減して召喚できる。………ふっふっふっ、そしてさらにもう一つ!ワタシのターン終了時、手札のモンスターカード1枚を選んで裏返しても良い!」
「そうしたら、そのカードを【人形トークン】として扱う。だよね。………ま、人形関係ないデッキにも入る強カードだもんねー」
手札が1枚裏返しになり、月夜に公開される形になる。
【人形トークン】に変化したカードはこのように表現されるのだ。
そして、この『人形化』こそ、人形デッキの真髄。
【人形トークン】はコスト1、パワー1000、【決闘】*1を持つだけの弱いモンスターだが、他の人形系カードと組み合わせる事でその真価を発揮する。
「人形化したのは【殺戮人形スローター】、ね。―――ウチのターン、ドローして【簒奪するハイエナ】をチャージ。この時ウチの手札が相手の手札よりも多いから、【亜POカ離プSU】がアクティブになる」
「思ったより条件が緩かったか………。それでも、条件が緩いなら効果も大したものではないだろう?」
「………まー、今は?」
男の言葉に、視線が泳ぐ月夜。歯切れの悪い返事は、明らかに何かを隠している事を匂わせていたが………男はそれを追求すること無く、彼女の次の行動を待った。
聞いておいてそれだけかい、と思わないでもなかったが、一々説明するのが面倒だと思っていたのもまた事実。月夜は咳払い一つして、そのままターンを続けた。
「2コスト払って【簒奪人形オルス】を召喚。召喚時、このモンスターを破壊することで相手の手札を見ないで1枚選び、捨てさせる事が出来る。当然【オルス】を破壊」
‐【簒奪人形オルス】 パワー1000‐
豪華絢爛なドレスに身を包んだ人形の少女が、現れると同時に爆散する。その瞬間、男の手札から1枚が飛び出し、墓地へと滑り込んでいった。
【オルス】の能力のようなランダム性の高い効果を使った場合、対戦台が自動でカードを選び、吹っ飛ばすことがある。例えば今のように、ランダム効果をランダムのまま適用するのが難しい場合は、システムによる無作為選出が行われるのだ。
捨てられたカードは、【毒々人形ポイズ】。自分の【ドール】に【必殺】を付与する能力と、【ドール】が破壊される度に相手の手札を1枚捨てさせる能力を持つモンスターだ。
「【オルス】が破壊された事で、【亜POカ離プSU】の【
「除去耐性にアクティブ化持ちの0コストモンスター………なるほど、確かに驚異的なモンスターだねぇ」
【
相手の手札が自分の手札よりも少ない時にレストしていればアクティブ化する、という能力を持つ【亜POカ離プSU】は、途轍もない低コストで登場する無限アタッカーだ。月夜がもし1ターン目のチャージを敢えて見送り、手札が潤沢な状態で試合を進めて居れば、このターンで彼のライフは最大3も削られていた可能性もあった。
それをしなかったのはなぜだ?能力から察するに、彼女のデッキは速攻、無いしビートであることは明らかなのに。
男は疑問に思わないでもなかったが、敢えてソレを尋ねる事は無く、
「んじゃま、ビートデッキらしく
「ふむ………【反撃】は無しだね」
「あそ。なら【亜POカ離プSU】の【
‐男 ライフ5→4‐
これで、除去耐性が2回分。手札の枚数が同数な為アクティブにはならないが、圧としては十二分。月夜は手札を一瞬だけ確認して、表情を変えずにターンを返した。
「ワタシのターン、ドロー!―――ふむふむ、こぉれはこれは!残念だったねぇ自称幹部の小娘くん!君は、選択を誤ったようだ!!」
「………ふーん?」
「教えてあげよう、このデッキの真の恐ろしさを!―――闇ファイトの恐怖を!!」
意気揚々と【人形呪法アナタモワタシ】をチャージし、3コストを支払う。そして
「
悪の組織の癖に「真面目に働いてる人の店奪って、カードも根こそぎ回収する」を実行しようとしたことに怒るの??と思われる方が多いと思うので先に説明しておきます。
まずクルーエル・アビスは人殺しもテロ行為もその他犯罪行為も必要とあればしますが、基本しません。ボスが「そういうの普通にダメだよなー」の精神なので。他の悪の組織(カードハンターなどの原作に出てきた組織)との戦いや、彼等の行為に対する非難を見たり聞いたりしているクルーエル・アビスのメンバーたちにとって、そういう快楽、利益目的の悪事は禁止行為なのです。
だから男に対して、瑠璃も月夜も怒っていたわけですね。と言っても月夜は「ルールも守れねぇようなヤツが所属している事」、「ルールも碌に教えず勧誘したヤツが居た事」に怒っているのに対し、瑠璃は東京を管轄しているという立場上「部下が上司の前でとんでもないミスをした」みたいな状態なので怒っています。教育不足や管理不足を意図せず見られてしまったみたいな感じですね。
なお必要なら殺しも略奪もするのはボスがそういう人間だからです。
そんなんだから「世界滅亡させたいんだなぁ」とか勘違いされるんじゃないですかね?