The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
コスト8 モンスター 種族:マシンヒーロー、アウトサイダー、卍死 パワー13000
・【ヒーローズ・スクランブル/D‐Side・5】
・このモンスターの【ヒーローズ・スクランブル/D‐Side】を墓地から使っても良い。
・このモンスターが【ヒーローズ・スクランブル/D‐Side】によってバトルゾーンに出た時、自分の手札または墓地からコスト6以下の【卍死】モンスターをバトルゾーンに出しても良い。このターン、自分の【卍死】は全て【速攻】を持つ。
【万死を手繰るモノ
コスト9 モンスター 種族:ネオ・ヒューマン、アウトサイダー
・自分のバトルフェイズ中、このターン中に種族に【ドール】を持つモンスターが4体以上破壊されているなら、6コスト支払ってこのモンスターを召喚しても良い。
・【決闘】
・全てのプレイヤーは、自身の手札を全て表向きにし、モンスター以外のカードを全て捨てる。その後、全てのプレイヤーは手札のモンスターカードを【人形トークン】にする。
・このモンスターが攻撃する時、自分は手札から種族に【ドール】を持つモンスターをコストを支払わず、好きな数召喚しても良い。そうしたら、相手は同じ数、種族に【ドール】を持つモンスターをバトルゾーンに出す。
・このモンスターがいるなら、自分の種族に【ドール】を持つモンスターは「【共鳴】:このモンスターが攻撃するとき、または自分の【共鳴】を持つモンスターが攻撃するとき、相手のライフを1枚選び破壊する」を持ち、攻撃の後アクティブ化する。
・自分の【共鳴】が発動する時、代わりに他の【共鳴】を選んでも良い。
WAR・FIGHT・BATTLEは「次世代のハイパワーカードバトル」を自称するほどカードの出力が高く、インフレの激しいカードゲームである。
その証拠に、他のカードゲームなら制限、ないし禁止されるだろう強カードでさえ、ウォイトなら4枚採用可能なんてこともザラ。
例えばたった2コストで相手の手札を2枚も捨てさせられる【デス・グリップ】は非制限カードだし、たった5コストで「コスト5以下のモンスターを踏み倒す」か「山札の上から1枚をエナジーゾーンに置く」か「相手のモンスターを1体エナジーゾーンに送る」の内から同じ物を含め2回まで選べる上、エナジーゾーンから唱えることもできる【ヘブンズの檻】も非制限カード。
コストとパフォーマンスが明らかに噛み合っていない強カード達が、なんのお咎めもなしに使えるのがウォイトなのだ。
しかしそんなウォイトにも、禁止・制限カードというものは存在する。
大概の強カードが許されるウォイトでも、許されなかったカードは存在する。
「それを制限カードとか禁止カードとか呼ぶわけだけど。禁止カードの方はカッコつけて特別な呼び方するんだ。『禁呪』はその中でも、呪文を指す言葉。モンスターは『禁忌』って呼ばれて、フィールドは『禁域』って呼ばれる」
「へー、初耳ー」
「流石はボス。詳しいのぉ」
「いや、触りしか話してないから」
中学三年生の秋。カードショップの対戦台スペースを占拠し、五人で集まっていた時の記憶。
誰よりも尊敬し、何よりも愛する
月夜は、ナラクの横顔を眺めながら聞いた話を、ふと思い出していた。
「でも、『禁忌』とか『禁呪』に指定されてるカードって、たまに誰も使ってないような………なんなら、指定されるまで未確認だったカードもあるじゃないっすか。それなのに、なんで強すぎるとか判断できるんですか?」
「カードの効果を読めば強すぎとか弱すぎとかわかるでしょ。ほんと、葛原は頭ん中スッカスカのザコなんだから───っ、そうですよね?ボス」
「んー………ソレが、
思わず素の態度で葛原を小馬鹿にした瑠璃が、咄嗟に取り繕いつつ同意を求めるも、ナラクの返答は歯切れが悪かった。
それは瑠璃が態度を取り繕っているからでは無く、前世と今とを比べた時の差異について、真面目に考えているが故であった。
こっち?と首をかしげる四人を「なんでもない」と軽くあしらいつつ、ナラクは『今の世界』における制限、禁止カードについての話を続ける。
「なんでも、『お告げ』があるらしいんだ。『このカードは1枚しか使っちゃいけない』、『このカードをデッキに入れさせてはいけない』………って。それに従って決定されてるらしいぞ」
「え、そんなオカルトなん?制限とか禁止とかって」
「そうおかしな話でもあるまいよ。何せ、カードを通じて超常の世界、モンスターワールドと繋がっているのがこの世界。運命がカードを導く、というのはもはや常識として定着し、昨今のカード研究においてはソレを前提として調査、研究を進めるのが基本にすらなっておるくらいじゃ。一昔前ならオカルトと一笑に付されていただろう神託も、超常が常識として扱われておる現代なら、立派な判断基準と言えるじゃろう」
「………ごめん、よくわかんない」
「靴投げて天気予報する遊びとかあるだろ?その結果を馬鹿真面目に朝のニュースで報道するのが今の時代、って話」
「へー。………いやいや、それでもウォイトだよ?どこの何の神様か知らないけど、鵜呑みにして使えないカードとか決めちゃうのは不味いんじゃ………」
実際、彼女の懸念は正しい。
あるカードが高騰した際には大規模な戦争が発生したし、あるカードの価値が下がった時には国が一つ崩壊した。
ソレが誇張でもなんでもなく、歴史的事実として存在しているのが彼等の生きる世界なのだ。
『多くの命に関わる事象を、そんな曖昧なものに頼るだなんて』。
そう考えるのが当たり前なのだ。
「
「………あ、賄賂とか、そういう問題が出てくるってこと!?」
「無い話ではないじゃろうなぁ。制限も禁止も、カードの価値や『環境』の変化に大きくかかわる。それを金を払うだけで自由にできるなら、払わん手は無いじゃろう」
「それに、未確認カードな。誰にも知られていない、誰も効果を知らないようなカードでも、強すぎる余りに人を苦しめてしまう前に止める事が出来る」
まぁ、神託に従う事によって被害が出ない限りはこのまま続けると思うぞ。
そう締めくくったナラクに、4人は感心した様子で拍手をする。
こんな話をするだけで褒められるのもどうなんだろう、と思いつつも、照れくさそうに頬を掻くナラク。
そんな彼に、月夜はもう一つ疑問を投げかけた。
「でも、なんで急に禁止カードの話はじめたん?デッキに入れちゃいけないとか、1枚しか入れちゃいけないとかは確かに大事だけど、そんな改まって話すようなことでもないと思うんだけど」
「そりゃ、アレだよ。
ピリッ、と、弛緩していた空気が張り詰める。
彼の口からサラリと出てきた『闇ファイト』という言葉に、クルーエル・アビス幹部としての顔を引き出された為だ。
「………闇ファイトと、制限、禁止カードが、どう関係するんです?」
葛原が、表情を引き締めて尋ねる。
ナラクは「なんでそんな深刻そうなの………?」と首を傾げながらも、特に口には出さずに答えた。
―――そして、その答えこそ、
「闇ファイトが、『
×―――×
「【NexT dReaM】の効果!自分の山札の上から2枚を表向きにし、その後手札または山札の表向きのカードから2枚まで、コスト3以下のモンスターを選んでバトルゾーンに出す!」
山札から2枚のカードが飛び出す。
表向きになったのは、【純黒人形ベンダ】と【鋼鉄人形メルタ】。どちらも種族【ドール】のモンスターだ。
男は一瞬だけ思案顔を見せたかと思うと、手札から1枚、そして宙に浮いたままの【純黒人形ベンダ】を対戦台に置いた。
「ワタシが出すのは山札の【純黒人形ベンダ】と手札の【藍色の傀儡使い】!どちらも3コストのモンスターだ!!」
‐【純黒人形ベンダ】 パワー2000‐
‐【藍色の傀儡使い】 パワー5000‐
真っ黒な、シルエットだけの人形と、藍色のドレスに身を包んだ少女が登場する。
合計6コストもの踏み倒しに、流石の月夜も表情が歪む。
「3コストで山札上まで見て踏み倒すの、ふつーに反則でしょ」
「当ッ、然!!【NexT dReaM】は禁呪!!この空間でなければ、対戦台にカードを置いた瞬間
高笑いする男に、彼女はあくまで冷ややかな視線を向ける。
(禁呪、か。なんだかんだ、使われるの初めてかも)
かつてナラクに教えられた、闇ファイト最大の特徴。
それは命や尊厳を失うリスクでも、異空間で行われるというフィクション性でもなく、
時に、ナラクの前世において、ウォイトには2つのレギュレーションが存在した。
1つは『
ウォイトと言えば、のルールでもあり、アニメ、漫画などのメディアミックス作品でもこのルールに従って試合が展開されている。
勿論、彼らが今いる世界の基本ルールもコレだ。
もう1つが『
アニメではこのレギュレーションを子供たちの間に浸透させるために、途中から「実は闇ファイトは『無制限』ルールで行われていたんです~」という設定に変更されており、ナラクが「闇ファイトは『アンリミ』」と言っていたのも、そうした設定を覚えていた為である。
(「『通常』と『無制限』を戦わせた場合、まず『通常』は勝てない。速度、出力、再現性………およそカードゲームの勝敗を決定する要素において、この2つの間には絶対的な差がある」………だっけ。確かに、あーいうカードが使い放題のデッキ相手じゃ勝ち目ないよねー)
「ま、普通のデッキは、だけど」
「うん?いきなり何を言うのかと思えば………禁呪の圧倒的な力に正気を失ってしまったのかな?だぁが止まらない!なぜならここらがショウタイムなのだからね!!」
意味深な発言に、しかし男は止まらない。
「まずは【ベンダ】の能力を発動!このモンスターがバトルゾーンに出た時、相手は手札を1枚選んで捨てても良い!そうしなければ、自分はカードを1枚引く!」
「手札捨てないから、引いて良いよー」
「そうかい?ならば1枚ドロー」
山上は既に【NexT dReaM】の効果で判明している。これが手札に抱えられているだけで不利になるカードや、このまま後続となり得るカードであれば彼女も悩んだだろうが、生憎【メルタ】はそういったカードではない。
男もそれは重々承知しているようで、特に大きなリアクションをすることも無くカードを引いた。
「次に【
「【共鳴】………攻撃する時、自分のモンスターの【共鳴】を好きな数使っても良い、だっけ。連鎖させるのが強みなのに、殴れるのが1体だけってのはどーなの?」
「心配ご無用。これから増やしていくのだよ。それよりも、自分の心配をすべきだとワタシは思うね」
‐【人形トークン】 パワー7000‐
球体関節の、飾り気のないのっぺらぼうの人形が空から降ってきて、ガシャッと音を立てて崩れ落ちる。
まるで力のこもっていないその人形に【藍色の傀儡使い】が手を伸ばした瞬間、目でギリギリ見える程度の糸が【人形トークン】に張り付き、命が吹き込まれたかのように立ち上がった。
「ではバトルフェイズ!【人形トークン】で【亜POカ離プSU】に攻撃!その時、【人形トークン】の【共鳴】発動!カードを1枚引く!」
「バトルには負けるけど、【魂成】で耐えるよ」
空っぽの人形が、【傀儡使い】に手繰られて動き出す。途轍もないプレッシャーを放つ【亜POカ離プSU】に、心も意思も持たない人形は、恐れることなく突撃し───拳を、叩きつける。
意外にも【亜POカ離プSU】の体は脆く、人形の手で呆気なく潰され、砕ける。
しかし、そこは闇の伝説。壊れたかに思われた次の瞬間には再生し、静かに【人形トークン】を睥睨した。
「ターン終了時、手札のモンスターカード1枚を【人形トークン】に変化させて、ターンエンド」
【メルタ】が裏返り、ターンが返る。
「ドロー。―――ふぅん」
手札に加わったカードを見て、愉快そうに口角を上げる。が、それも一瞬のことで、すぐに真顔に戻り、感情の一切を隠す。
勝利を確信した事も、決定した結末も、対戦相手に悟らせないように。
「さっきの禁呪が、アンタの自信の源?」
「うん?あぁ。それだけ、とは言わないがね。だが禁呪が使えると知り、多くの禁呪を組み込んでいるワタシのデッキは他の追随を許さない!!出力差!同じコスト帯でも、ワタシとワタシ以外には圧倒的な出力差が存在するッ!!も、ち、ろ、ん~。ワタシの圧倒的なプレイングが勝利をより確実なものとしているのは言うまでもないが………そもそもデッキ構築の時点で敗北している君には関係のない事だ。さぁ、続けたまえよ。どれだけ時間を稼ごうと、君はもう敗北し、ワタシのモノとなる以外にないのだからねぇッ!」
「はいはい。―――禁呪が使えるのをどこでどー知ったのかも気になるし、そろそろ片づけるよ」
エナジーをチャージし、カードを掲げる。
それは、彼女の手元に舞い降りた切り札。
特殊なホイル加工が施されたそのカードは、闇の中でもなお煌めく。
「召喚宣言。このモンスターを召喚する時、コストを支払う代わりに
「あ、相手のリソースで無料召喚だとッ!?バカな!いくらデメリットがあるからと言って、そんなモンスター許されるわけが───」
「
明らかに異常な召喚宣言に、声を荒げる男。
その反応は決して間違ってはいない。
インフレにインフレを重ね、開き直ってハイパワーカードバトルを自称し始めたウォイトでさえ、エナジーコストというシステムに真っ向から喧嘩を売るようなカードを、許すはずが無かったのだ。
「
‐【四代目の大怪盗リュ・パーン】 パワー10101‐
月光を背負い、夜の闇を纏った淑女が、音も無く降り立つ。
使用する事を禁止され、この世界においては名前すらも知られていなかった未確認の
月夜の本来の相棒が、予告状も出さずに現れた。
この話で禁呪とかの説明と月夜VS男の決着とクルーエル・アビスとのあれこれなんかをまとめようとしていましたが、純粋に文字数が増えすぎてしまったので泣く泣くこれで終わりにしました。大変ながらくお待たせしました。
ちょっとカクヨムコンに向けて新作を書いているので、こちらの更新はまた遅くなりそうですが、気長にお待ちください。