The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
【天災少女ドリー】
コスト3 モンスター 種族:少女、救世教団 パワー3000
・このモンスターが出た時、自分の山札の上から3枚を見る。そのうちの1枚を手札に加え、1枚をエナジーゾーンに置き、残りの1枚を墓地に置く。
・【終焉1】
【
コスト7 モンスター 種族:聖騎士 パワー6000
・このモンスターが出た時、自分の墓地にあるカードを全てエナジーゾーンに置く。
・このモンスターは、エナジーゾーンにあるカード1枚につきパワーを+1000する。
・このモンスターが破壊するライフの枚数を、パワー6000につき1枚増やす
・このモンスターのパワーが10000を超えていれば、このモンスターは【守護】と【必殺】を持つ。
「私のターン。【命乞い】をチャージしてターンエンド」
「俺のターン。ドローして、【
「厄介なカードね」
‐【
狂気の名にそぐわない、清楚なお嬢様と言った見た目の少女が姿を現す。
パワーも低く、攻撃できないという能力を持つが、手札以外からのカード使用を禁止する効果は前世の環境においても長らく重宝された強力な
特に羽々斬の【騎士】は山札と墓地からの踏み倒しが多いからな。コイツの効果がかなり効くはずだ。
………本当なら、ターン開始と同時に【
このデッキはスタンダードでも使えるようにしてるから、
「ターンを貰うわ。―――ドロー。【武骨なる騎士イッキ】をチャージして2コスト支払い、呪文【補給物資】を詠唱するわ。効果で山札の上から1枚をエナジーゾーンへ。ターンエンドよ」
「俺のターン。ドロー………【ガールズ・クライマックス!!】をチャージ。2コストで【
「………さっきから、随分と陰湿なカードを使うのね」
「陰湿、ねぇ………」
‐【禁断少女レイチェル】 パワー1000‐
ウォイトは
相手の動きに合わせて妨害札を投げ込むとか、そういう要素は
その代わり、バトルゾーンにいる間中、相手の行動を阻害してくれる『メタカード』が多く存在する。
手札以外からのカード使用を禁止する【レイナ】だったり、コスト踏み倒しを妨害出来る【レイチェル】だったり。こうしたカードを
昔はグッドスタッフ*1を投げ合う、デッキテーマなんて存在しない殴り合いが主流だったし、個人的にはそっちも気に入っているのだが
この世界の人間は、現代ウォイトを楽しむ上で重要なメタカードという概念を嫌う。デッキ構築の際に、相手が使ってくることや、自分が使う事をまず考慮せず、自分が動くために必要なカードばかりを搭載する。
何故か?それはきっと、この世界がカードアニメの世界だからだ。
アニメにおける対戦シーンは、ドラマチックさとテンポ感が優先される。深夜枠での放送で、視聴者層も『少年時代にウォイトと出会い、今も楽しんでくれている大人のキミ』な『IGNITE』であってもそれは変わらない。
ドラマチックでハイテンポな試合を描く上で、遅延させる目的で置かれるメタカードというのは、存在自体が邪魔なのだ。
勿論、完全に登場しないというわけでは無い。現代ウォイトには相手のメタを除去しながらそのまま展開に繋げる事が出来るカードも存在するし、それを上手い事使って逆転するシーンを描く回もいくつか存在する。
だが除去と展開を両立するカードは数が限られている。結果、毎回メタカードを立てさせてしまっては、同じカードで同じように逆転すると言った、テンプレ展開しか描けなくなってしまう。マンネリ化してしまうのだ。
故に、そもそもカードアニメにおいてメタカードが登場する事は無い。あったとしてダメ押しのシーンか、さっき言った除去&展開を可能とするカードを魅せる時か。それくらいだ。
そのために、きっと『大いなる力』が働いているのだろう。デッキ構築の際に、メタカードの存在を思考から外させるような『力』が。
―――つって。メタカードが存在しない理由云々については、ただの戯言なんだけどね。
とはいえ、メタカードを採用しない人間が大半だというのは事実。そして、そんなマジョリティ達がメタカードに対して『陰湿』や『卑怯』と言った印象を抱くのも、また事実なのだ。
故に俺は、【
闇ファイト以外で何か重大なモノを賭けさせられている時の試合や、プライド的に負けられない試合があった時には躊躇なく使うが、基本はお飾りだ。そもそも世界に1枚だけのカードを入れちゃってるせいで、プレイ用に使う気になれないってのもあるけど。
「実際、普段なら使わないよ、こういうデッキは。【埋葬墓地ソ】とか【卍死スクランブル】みたいな、わかりやすいデッキの方が皆も好きだろうし。―――でも、この戦いは絶対に負けられないし。何より、
「それはどういう………」
「数ターンもすればわかるよ。―――ターン終了時、【レイチェル】の【終焉1】発動」
山札から1枚を墓地に置く。
置かれたのは、【
「聞いたことの無い能力ね」
「【終焉】は、ターン終了時に山札の上から指定された枚数墓地に置き、その後墓地にあるカードの中から【終焉】を持つモンスターをバトルゾーンに出す事が出来る能力。【レイチェル】の場合は【終焉1】だから、1枚墓地を肥してから蘇生だね」
「………【レイチェル】に持たせて良いような能力では無いわね」
「それは俺も思うよ。―――【
「【クロリス】の効果を教えてもらっても?」
「相手が自分のバトルゾーンのカードを選んで能力、効果を発動する時、【クロリス】を破壊する事で能力、効果の発動を取り消す事が出来る。そして、【クロリス】が破壊された時には全てのプレイヤーが山札の上から2枚を墓地に置く」
「………」
‐【
俺の説明に、ついには無言になる羽々斬。
ここまで出したカードが、全部相手の行動を阻害するカードなわけだし、当然と言えば当然だ。
【レイチェル】や【レイナ】だけの盤面なら、1体処理しながら手札から展開できる【俺が道を切り開く!!】があれば簡単に突破できたが、効果無効の【クロリス】がある事で最低2枚の指定処理札か、全体除去1枚を要求される事になった。
羽々斬のデッキに限らず、【騎士】デッキに全体除去が可能な札は滅多に入らないので、彼女には2枚目の処理札を用意する以外の道は無いと見て良い。
………って言っても、龍牙が【輪廻龍転】使ってきたりするくらいだし、俺の知らないカードが飛び出してくる可能性が無いわけでは無いからな。安心するにはまだ早い、か。
「私のターン。ドローして───【
「【補給物資】と【騎士の威光】を同時積みか」
アニメと構築が違う。ただ龍牙と違って、本当に意味の無い変更だ。
彼女のデッキは耐久寄りの構築をした【騎士】デッキに、フィニッシャーとして【フィーネ】を採用したモノのはず。展開の大半をコスト踏み倒しに依存している【騎士】デッキが、わざわざ大量のエナジーを確保しに行く理由が分からない。どうせ新しく入れるなら、ドローソースの方がよっぽど有益なハズ。
なのに【
「さらに残る2コストを使ってもう一度【騎士の威光】を詠唱するわ。置かれたのは【騎士鎧竜ガイバー】。その名の通り、【騎士】を持つモンスターよ」
「まさかの2枚目っすか………」
なぜここまでエナジー加速を搭載しているんだ、という疑問はさておき、これで羽々斬のエナジーは8。【騎士】の切り札級カードであれば、大体が
とはいえメタカードによる盤面制圧はそのままに、向こうの手札は残り1枚。追いつかれそうになっているわけでも、まして追い越されそうなわけでもない。未だ試合のテンポを握っているのは俺の方だ。こっちも手札は最高潮だしな。
それに加え、今の羽々斬は『エナジーを伸ばす』という方向に絆やら運命力やらが割かれているように見える。
落ちているカードが、どれも無料召喚を連鎖させる中で登場させたいような強力な【騎士】モンスターばかりなのが良い証拠だ。
………いや、それはつまりあの1枚が『コイツだけでも出したい』ってカードの可能性があるんじゃないか?
他のどれを失ってでも、この状況を返せるだけの、8コストか9コストで、彼女のデッキに搭載し得るカード。最後の一文だけで一気に答えが分からなくなるが、とにかく無警戒に、短絡的に動くべきではない事は確か。
なんせ、彼女はラスボスなのだ。主人公とも、ライバルキャラとも違う、『大いなる力』の加護を受けうる存在。ともすれば、俺すら知らないような、大逆転を可能とするカードが来る可能性だってある。
ここは変に甘えたりせず、最も強い動きで押し込みに行く形で行くべきだ。
「ターンエンドよ」
「俺のターン。ドローして、【招集指令!】をチャージ。3コストで【
‐【
カラフルな髪色の少女が颯爽と登場し、腕に抱えた輝くナニカを放り投げる。それは空中で3枚のカードに変わり、俺の前に浮遊した。
「登場時効果で、山札の上から3枚を見て1枚を手札に加え、1枚をエナジーゾーンに置き、1枚を墓地に置く。エナジーゾーンに【
「処理が間に合わなければ、無限に連鎖を続ける能力………登場時効果が使えないのも納得ね」
「デッキによっては完全に詰むからね、この状況」
まぁ、横展開すればするだけ強いのかって言われたら、それはそれで疑問符なんだけど。
山札の上から、1枚ずつ墓地に置く。【終焉】軸でデッキを組むと、大体このターンには一気に3枚落としたりできるカードが並ぶのだが、このデッキは【終焉】にあまり重きを置いていない。
現に、墓地に落ちた3枚は『このあと活きてくる【終焉】を持たない【少女】モンスター』であり、蘇生可能なのは【ドリー】の
「蘇生するのは【セシリア】。一応言っておくと、【セシリア】がいる限り全てのモンスターが出たターンに攻撃できなくなるし、相手が相手のエナジーゾーンにあるカードの枚数よりコストの大きいカードを使う時、代わりに山札の下に送る効果を持ってる。【終焉2】もね」
「………本当に陰湿なデッキね。そういうカードを搭載する人間はいるけれど、ここまでソレ一辺倒なのは初めて見るわ」
一辺倒、とは言うけど、現代ウォイトの中速、低速デッキとしてはこの量が適正値なんだよな。
それでこの反応なら、メタビートとか使ったらどんだけ嫌そうな顔するんだろ。別に試そうとは思わないけど。
―――ターンを返す。
かなり追い詰められているはずだが、羽々斬の表情に焦りや恐怖と言ったモノは無い。闇ファイトで、負ければ何を要求されるのかもわからない状態で、だ。
彼女はラスボスだが、同時に普通の女子高生でもある。達観しているわけでもなければ、悟っているわけでもない。終わりの力を手に入れる事が出来ただけの、普通の少女なのだ。
なのになぜ、彼女からは余裕すら感じる事が出来るのだろう。
「私のターン、ドロー。………ふふふっ、勝利を確信している、と言った表情ね。それに、私がなぜ諦めず、敗北の予感に怯えていないのか、という疑念も感じるわ」
「そんなに顔に出てた?………実際、その通りだよ。俺は羽々斬の事をそれなりに知ってるつもりだし、そのデッキについてもわかってる。だからこそ、この状況でも落ち着いたままの羽々斬に、何があるのか警戒してる」
「へぇ。けれど、デッキについて知っているという割には、【補給物資】に驚いていたわね」
「入ってると思ってなかったからな。だから警戒してるんだよ。俺が知らないカードが入ってる以上、万に一つも無いとは思うけど、この状況を返せる一手を握ってる可能性もあるから」
「流石はMasterランクね。その通りよ。私には、この状況を打開できるカードがある。―――あの男から渡されたもの、というのが癪に障るけれど。負けるよりは万倍マシね」
【破軍騎士グラディウス】―――彼女が【フィーネ】を手に入れる前の切り札がエナジーゾーンに置かれ、そして【グラディウス】を除いた全てのエナジーがレストする。
8コストのカード?と疑問符を浮かべた俺に、彼女は最後の手札を掲げ、
「この呪文は、相手のバトルゾーンにあるモンスターが自分のモンスターよりも多い時、その差の分だけコストを軽減して唱える事が出来る。貴方のバトルゾーンには、5体。こちらには0体。よって5軽減して8コスト!【絶望と希望の逆転】!!」
閃光が視界を塗りつぶす。
目を覚ました時には、俺のバトルゾーンにいた【少女】達は一人残らず消え、代わりに同じ数のモンスターが、相手のバトルゾーンに並んでいた。
「【絶望と希望の逆転】の効果。相手のバトルゾーンにあるモンスターを全て破壊する。その後、こうして破壊したモンスターと同じ数のモンスターを、自分の手札またはエナジーゾーンから出しても良い。―――破壊したのは5体。よって、私はエナジーゾーンから【ガヘリス】、【ジオ】、【ガイバー】、【イッキ】、そして【グラディウス】の5体をバトルゾーンに出すわ」
「………なるほどね」
なるほど、そう来たか。そりゃ、予想もできないわけだ。
―――
しかもこの性能、恐らく
龍牙が言ってた『もうすぐ発売のパック』に収録される予定のカードだったのではなかろうか。
勿論、俺がその存在を忘れていただけで、元々昔から存在していたカードという可能性も無いわけでは無いが………流石に
「それ、新カードだろ?まだパックが出るまで日があるはずだったけど、どうして持ってるんだ?」
「………さっき言った通りよ。私の協力者は、
苦虫を噛み潰したような顔を見せる羽々斬。
言われてみれば、アニメでも生徒会長が部下だったり羽々斬だったりにカードを渡してるシーンがあったような気がする。どんな設定だったか覚えていないが、フラゲ*2まで出来る立場だったのか。
「【ガヘリス】の効果。カードを2枚引き、手札が5枚以下ならもう1枚ドロー。次に【ジオ】の効果で、墓地にあるカードを全てエナジーゾーンに置く。【イッキ】と【ガイバー】は登場時効果を持たないから飛ばして、最後に【グラディウス】。【騎士】1体につき1ドローして、手札から【騎士】を1体バトルゾーンに出す。出すのは2体目の【ガイバー】」
‐【円卓の騎士ガヘリス】 パワー5000‐
‐【
‐【武骨なる騎士イッキ】 パワー12000‐
‐【騎士鎧竜ガイバー】 パワー25000‐
‐【騎士鎧竜ガイバー】 パワー25000‐
‐【破軍騎士グラディウス】 パワー13500‐
純粋なパワーカードの大群に、思わず苦笑する。
【イッキ】は攻撃時に相手のバトルゾーンにあるカードを2枚まで選んで相手の山札の下に送る効果を持ち、【ガイバー】は【守護】を持ち、レストした時にアクティブ化する効果と、バトルに勝った時ライフを1枚追加する能力を持つ。
しかも【グラディウス】はライフ焼却能力持ち。このまま一斉攻撃をするだけで、大抵の相手は何もできずに死ぬだろう。
だが、彼女はこれだけでは終わらなかった。
―――否。終わらせて、貰えなかった。
「ぐぅッ!?―――ふ、ふふふっ………使えって、そう言いたいのね?いいわ。このままターンを返すのも、癪だと思っていたもの!」
1枚のカードが輝き、黒い触手のようなモノが彼女の腕を這って、心臓へと手を伸ばす。
それに苦悶の表情を浮かべた彼女は、震えながらそのカードを掲げ、対戦台へと叩きつけた。
「この呪文を唱える時、自分のモンスターを6体選んで破壊しても良い。そうしたら、この呪文のコストを0にする………!!」
「もったいない事を」
「わかってるわ!でも、この終焉には抗えない!!呪文、【終幕合図シッコクサバト】!」
【騎士】達の足元に魔法陣が浮かび、深い闇が彼等を呑み込む。
立ち昇った闇はそのまま空中で一か所に集まり、繭と化す。
「【シッコクサバト】の効果!私は全てのゾーンを探索し、その中から【終わりを告げる者フィーネ】を1枚選び、コストを支払わずに召喚する!―――今、幕が下りる時。物語が終着点へとたどり着く、終末の時!終わりの巫女が
‐【終わりを告げる者フィーネ】 パワーX‐
繭の中から、光が漏れ出る。
終焉が、生まれる。
それは、異形だった。
無数の目を持つ、不定形の肉塊。血のような液体を全身から滲ませ、赤ん坊の泣き声を漏らしながらのたうち回る。
【終わりを告げる者フィーネ】。無垢なるその姿は、まさに幼体だった。
Tips:救世教団
・背景ストーリーの中でも、比較的現代日本に似た世界に存在する教団であり、【救世少女ジャンヌ】によって設立された邪教。【終焉】の到来が唯一の救いであると信じ、世界を終わらせる王が現れる日を待ち望んでいる。信者は全員が【少女】。彼女たちが儀式によって並行世界から呼び出したモンスター達も洗脳により信仰心を抱いているが、信者としてカウントされているわけでは無い。