The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
【極限英雄バルカン】
コスト6 モンスター 種族:ネオヒューマン、マシン・ヒーロー パワー15000
・【絶体絶命カウンター・Z】(自分がゲームに負ける時、このモンスターを手札からコストを支払わずに召喚しても良い。そうしたら自分はゲームに負けない)
・【速攻】
・【決闘】
・このモンスターがバトルに勝利した時、アクティブにする。
・このモンスターが攻撃する時、相手の場にモンスターが無ければ、自分はゲームに勝利する。
校舎の一室とは思えない、絢爛豪華な内装。最高級の調度品が並べられたこの部屋は、永川ウォイト学園生徒会室。
学内ランキング上位五名によって構成される永川ウォイト学園生徒会のメンバーたちが、一堂に会する場である。
「今日は、皆が揃ったね」
生徒会長、
派手な髪色の多いウォイト学園において数少ない黒髪の彼は、他の生徒と比べて一見『地味』でありながら、しかし一度見れば忘れられないような、魔性の魅力を持っていた。
要するに、超がつく程の
そんな彼が微笑めば、大抵の女子はグラッと来る。実際、彼に黄色い悲鳴を上げる者は少なくない。
だが、この場にいる三人の女子は特に反応を示さない。むしろ、男子の方が恍惚とした表情を浮かべているくらいだ。
「はいっ!とても、とても素晴らしい事でございますね、天札様!」
「ふふっ、ありがとう
「そうですよね!生徒会室の備品は、どれも最高級の物が用意されていて………天札様がお使いになられる一室としての自覚が感じられます!」
空色の髪の少年───
彼は『とある事情』から歪に信仰心にも似た敬意を抱いているのだが………他のメンバーからは、それをいつも冷たい目で見られていた。
「羽々斬さんも、『洗礼』には興味ある感じ?」
「………見る価値くらいは、あると思っているわ。それだけ」
ビビッドピンクの少女が、男二人を無視して隣の少女に尋ねる。問いを投げかけられた側の少女は、普段であれば首肯か無視するのみに終始していたところを、何故か声を発した。
それには歪を無視した二人も意外だったのか、目を丸くする。
「いっが~い!羽々斬さんって他人のファイトに興味ないって思ってた~」
「そうですね。私達生徒会メンバーの公開試合すら一瞥もしない貴方から、そんな言葉を聞くことになるとは」
「………
「えー!?うっそ、羽々斬さんでもわかるくらいだった?」
手で口元を押さえるポーズをして、わざとらしく驚く。
ナラクの前では見せないような、明るく喧しく、何より演技臭い姿。それが、暁瑠璃の表の姿だった。
そんな彼女を鬱陶しげに睥睨したセツナは、話す事はもうないとばかりに顔を背ける。
しかし顔を背けた方には意味深な笑みを浮かべる歪がおり、思わず顔を顰めてしまった。
そんな時、生徒会室のドアが開く。もう全員揃っているはずでは、と歪を除く全員が視線を向けると、スーツ姿の長身の男性───永川神徳が入って来た。
「遅れてしまってすみませんね、天札君」
「いえいえ。
なんだ、天札が勝手に呼んだのか───と、すぐに興味をなくす三人。歪の独断専行は、セツナと瑠璃はこの半年で、奏は一年半で随分と慣れてしまった物だった。
それよりも、とモニターに顔を向ける。そこには身長二メートルを超える巨漢と、歪のような黒髪黒目の地味な───しかし彼と違ってイケメンという訳でも無い男が、一面真っ白の部屋で対峙している姿が映っていた。
「あれが、黒井ナラク」
「え?羽々斬さん、知ってるの?」
「………いいえ。名前を聞いただけよ」
「私達よりも、貴方の方が詳しいのでは?今朝、彼と一緒に登校していましたよね?」
「あー。見てた?」
眼鏡をかけた、紫紺の少女。機械を思わせる平坦な声音で瑠璃に質問を投げかけたのは、二年生の
彼女の問いかけに、瑠璃は軽く笑って答える。
「瑠璃にウォイトを教えてくれた人、だよ。一応友達、らしいけど。瑠璃的にはもっと深ーい関係が良いなー、って思ってるから………。惚れたり、しないでね?」
「会った事もない、画面の向こうの生徒と恋に落ちる事はまず無いと思いますが」
『エラー』
画面の向こうでは、今まさにファイトが始まろうとして───失敗していた。
彼らの会話を聞けば、ナラクがランクを秘匿していた事がわかる。
その事に、ランクを頑なに隠していた事を知っていた瑠璃と、何か知っているらしい歪、神徳以外は、一気に冷めた表情になる。
学園長に選ばれたとは言え、秘匿する程度のランクしかないプレイヤー。そう考えた為だ。
───だが。
『ランク・MASTER』
「………は?」
それは、誰の声だっただろうか。
システム音声が淡々と告げたランクは、彼らが予想したモノとは真逆の───頂点。
世界に一人だけが持つ称号を、名前も何も知らない転入生が、持っていた。
「ば、バカな!!あり得ない!あ、あんな無名のプレイヤーが、MASTERランクなどと!!」
「システムの不具合………でしょうか。それとも、まさか彼が
「………あなたは、知っていたの?」
あまりの衝撃に動揺を隠せないまま、セツナが瑠璃に尋ねた。
この中で唯一、彼と知り合いだという彼女の言葉なら───と彼方と奏も視線を向ける。
「んーん。瑠璃たちも知らなかった。っていうか、いっつもはぐらかされてた」
だが、動揺していたのは瑠璃も同じだった。
彼女は、否、彼女たちは、ナラクが強い事は知っていたが、その全てを知っていたわけではない。
なぜなら、ナラクは。
「ボ───黒井君の口癖でね?『強さをひけらかすと、運の女神様に見放される』って。だから、隠してたんだと思う」
己の実力や実績を誇示するような真似を避ける人間だったから。
×───×
ウォイトはアクティブフェイズ→ドローフェイズ→チャージフェイズ→メインフェイズ→バトルフェイズ→エンドフェイズの順にプレイする。
先行1ターン目にはドローが無いので、チャージフェイズからのスタートだ。
ちなみに、チャージフェイズは、手札から1枚をエナジーゾーンに置くフェイズだ。置くのは強制じゃないから、敢えて何もせずメインフェイズに入るというのもプレイングとして存在するぞ。
「ではターンスタート。【自傷死体ヘルメン】をチャージして───」
「ま、待てェ!!」
「………え、なんすか」
鬼神が、酷く驚いた表情で声を荒げる。動きを止めると、彼はこちらに近づき、胸倉を掴んできた。
あ、マナー違反!
「どういうことだ!!ら、ランク、MASTERだと!?」
「あぁ、はい。―――じゃあエンドフェイズ時に手札から」
「嘘ついてんじゃねぇぞテメェッ!!お前がっ………お前がMASTERランクなわけがねェッ!!!」
唾をまき散らしながら怒る鬼神。なんか生暖かい水滴がかかって非常に気分が悪い。
MASTERランクなわけが無い?まさか、俺はちゃんと優勝したぞ。
プレイヤー達の頂点を決める世界大会―――Masters Cupで。
Masters Cupは年齢制限なしの、超大規模大会。地区レベルの大会を十個ほど優勝し、さらに国レベルの大会で優勝する事で参加資格を得られる大会だ。
参加者はどれも超が付くほどの強者で、優勝はおろか、一勝するだけでも至難とされる。出場しただけで地域住民から英雄視されるレベルと言えば、その凄さもわかるだろう。
そこで、俺は優勝した。一度や二度でなく、三度も。
「プレイヤーネームが違ェだろ、お前は!最強の座についたのは、三年前からずっと同じ―――Abyssだろうが!!」
………ただ、名義が違った。
俺は大会参加用の名前を
なぜなら俺以外にも、明らかに本名ではないプレイヤーネームの選手が───例えば、†漆黒を纏いし者†さんとか、プロフェッサー・不倶戴天さんとか、そういう人が結構多かったから。
そういう人たちは顔をマスクとかで隠したり、派手なメイクをしたりして、エンターテインメント性の高いファイトを披露していたし、俺もそういうのをやってみたいと思った。せっかくアニメの世界なんだし、多少ハイテンションでも良い感じに盛り上げられるだろうと。
その結果生まれたのが、正体不明のプレイヤー『Abyss』だ。
「………Abyssって、日本語に直すとなんだと思います?」
「あ?そりゃ、深淵とか、奈落とか………」
「じゃあ、俺の名前は?」
「黒井、ナラク………。っ、そういうことか!?」
「はい。そういう事です。―――じゃ、エンドフェイズ時に手札から三枚【埋葬】してターンエンド」
墓地に三枚カードを裏向きのまま置いて、驚愕する鬼神にターンを回す。
今回俺が握っているのは、【埋葬墓地ソース】。【埋葬】という能力を持つカード達による、墓地利用デッキだ。
【埋葬】は手札、または墓地にあるカードを裏向きのまま墓地に置くことで、以降のターン、コスト1でそのカードを使えるようになるという、強力な能力である。
ターンを貰った鬼神は、しばらくの間呆然としていたものの、システムの声に促され行動を開始した。
「チッ、色々腑に落ちねぇが、嘘かホントかは
「【ぷらっしゅトイズ】!?」
可愛いウサギのぬいぐるみをモチーフにしたカードが、エナジーゾーンに置かれる。
鬼神の容姿的に、てっきり【オーガクロニクル】とか【卍死】とか、そういう系統のカードを使ってくると思ったが………人は見かけによらないとは、そういう事か。
【ぷらっしゅトイズ】は破壊された時に
あと、シンプルに絵柄が可愛い。
くそっ、これなら俺も【少女】デッキ握っとけば良かった………!!そしたらかわいい対決になったのに……!
切り札が『
「―――ターン貰います。ドロー。【時を統べる者ダイン】をチャージして、1コスト。墓地から【可憐死体フランシー】を召喚。効果で山札の上から三枚を見て、二枚まで手札に加えられますが───今回は1枚だけ。残りは墓地に置かれます」
‐【可憐死体フランシー】 パワー3000‐
ボロボロのドレスを着た肌色の悪い少女が、地面から這い出る。彼女は俺に恭しく頭を下げ、そのまま日傘を武器のように構えた。
「そしてもう1コスト払って、墓地から【墓守死体マモリ】を召喚。コイツがいる間、俺はフェイズを問わず墓地のカードを【埋葬】できるようになります。そのまま墓地の二枚を【埋葬】して、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー!【ぷらっしゅトイズ・ワニヤン】をチャージして2コスト!【ぷらっしゅトイズ・ハムハム】を召喚する!」
‐【ぷらっしゅトイズ・ハムハム】 パワー8000‐
というか、【ぷらっしゅトイズ】系統は大体中身が可愛くない。
「コイツはレストした状態で場に出る。そしてターンのはじめにアクティブにならねぇ。それだけ聞くと単なる置物だが、コイツにはもう二つ効果がある。―――まず一つ!」
自動操作されたカードが、鬼神の呼びかけに答えるようにして手札に入る。山札の一枚目を引いたのだ。
「【ハムハム】がレストしてバトルゾーンにあれば、自分のターンごとに1度、山札の上から1枚をドローできる。そしてもう一つ。俺のモンスターが破壊された時、コイツはアクティブになる。―――ま、もう一つの方は今は関係ないがな。ターンエンドだ」
「ドロー貰います、チャージは【マモリ】で、まず1コスト。【自傷死体ヘルメン】を召喚」
‐【自傷死体ヘルメン】 パワー2000‐
包帯まみれの少女の死体が、地面から出てくる。大きな目をギョロギョロ動かして、彼女は突然自分の腕にナイフを突き立てた。
「効果で俺はライフゾーンからカードを2枚まで、手札に加えられる。今回は2枚を選択します」
「バカが!自分で自分のライフを削って、勝ちでも譲ろうってか!?」
「このデッキの場合、というか今の墓地的に、その方が強いってだけですよ。―――もう1コスト払って、墓地から【暴虐死体アバレヌス】を召喚。効果で手札を全て捨てて、1枚多くなるように引きます」
‐黒井ナラク ライフ5→3‐
‐【暴虐死体アバレヌス】 パワー1000‐
骨とほんの少しの肉で構成されたドラゴンが地面から飛び出し、咆哮する。
それに反応して、俺の手札が勝手に墓地へ行き、山札上から手札に飛来する。
元の手札は、【ヘルメン】の効果もあって4枚。これで手札が5枚になったわけだ。
「―――墓地のカード三枚を【マモリ】効果で【埋葬】。そのまま今【埋葬】した【切断死体ナタギロ】を1コストで召喚。効果で山札の上から三枚を墓地に置いて、俺の墓地のカードの枚数以下のコストを持つ相手のモンスターを1体選んで破壊します。よって、【ハムハム】は破壊です」
‐【切断死体ナタギロ】 パワー1000‐
両手に鉈を握った死体が登場し、そのまま寝転がっている【ハムハム】へと肉薄し、刃を振り下ろす。
ぼふっ、と綿がまき散らされ、【ハムハム】は消えていった。
―――が、その綿は不自然に蠢いて、【ナタギロ】を捕らえる。【ナタギロ】だけではない、俺のバトルゾーンのモンスター全員が、綿まみれになってしまった。
「ま、持ってますよねー」
「当然ご存知ってか。その通りだ!自分の【ぷらっしゅトイズ】が破壊された時、それが自分のターンでなければコストを支払わず唱えても良い───呪文【もふもふバインド】!!次の相手のターンのはじめまで、相手のモンスターはアタックもブロックもできない!」
「なら、手札から三枚、墓地から二枚【埋葬】してターンエンドです」
ウォイトは、他のカードゲームに比べて『ターン制』の色が濃い。
相手の行動に適切なタイミングで妨害を投げ込む、というよりは『相手の盤面を崩壊させて自分の盤面をより強く組み直す』を交互に繰り返す、プロレスのようなゲームだ。
だが、やはり例外は存在する。相手のターン終了時に特定の行動に反応して無償召喚できるモンスターとか、相手の行動に応じて発動可能になる呪文とか、そういうのもそれなりにある。
そして【ぷらっしゅトイズ】は、そういう相手ターンに好き放題するデッキタイプの王様みたいなデッキだ。
相手の行動に反応して召喚されてみたり、唱えられてみたり………お前らだけ別ゲーやってんじゃねぇかとプレイヤーたちのヘイトを買っていたことをよく覚えている。俺もしょっちゅう切れてた。配信席に座ってコレと対面した時には、初手で発狂したのを覚えている。嫌すぎて。
「俺のターン、ドロー!【ハムハム】をチャージして───そろそろ終わりにしてやろうかァ!!コスト1支払い、【ぷらっしゅトイズ・ヘヴン】を展開するッ!」
「うっわ」
ウォイトにはモンスターと呪文の他に、特殊なカードが存在する。その一つがフィールドであり、コストを支払って設置することで、書かれている効果が常時発動するようになる代物だ。
基本的に、フィールドはそこまで強くない。だが、たまに本当に頭がおかしい性能をしたものも出てくる。
【ぷらっしゅトイズ・ヘヴン】は、まさに『頭がおかしい』の代表格だ。
その効果は『種族に【ぷらっしゅトイズ】を持つモンスターの召喚コストを1少なくし、種族に【ぷらっしゅトイズ】を持つモンスターがバトルゾーンに出るたびに1枚ドローしても良い』と、一見するとただの便利なサポートカードだが、【ぷらっしゅトイズ】という種族の特徴を理解していると見方が変わる。
─――そう。種族【ぷらっしゅトイズ】には、基本的に2コストのモンスターしかいないのである。
「これで俺は【ぷらっしゅトイズ】達を実質1コストで召喚できるし、手札も減らねぇ。1コストでの召喚は【埋葬】だけの専売特許じゃねぇってコトだ」
「確かに【ぷらっしゅトイズ】と【埋葬】は同列に語られることが多いですけども」
「んじゃあ行くぜ!まずは【ぷらっしゅトイズ・ポッポハート】を召喚!効果で山札の上から1枚をエナジーゾーンに置き、【ぷらっしゅトイズ・ヘヴン】の効果でドロー!さらにもう一体【ポッポハート】!」
‐【ぷらっしゅトイズ・ポッポハート】 パワー2000‐
ぬいぐるみの鳩が、空からやってくる。くるくると仲良さげに空中を飛び回っていた鳩の内一羽が、突然真っ二つに引き裂かれ、綿をまき散らす。
「次にコスト1支払って、呪文【痛み分けの結末】!自分のモンスターを1体破壊することで、相手は自身のモンスターを1体選んで破壊する!そしてこの時、【ポッポハート】の【反響】が発動!山札の上から1枚をエナジーゾーンに!」
「【暴虐死体アバレヌス】を破壊します」
ドラゴンの死体がバラバラに朽ち果て、土に還る。破壊される分には、【マモリ】も居るし【埋葬】して使いまわせるから全然良いのだが………。
「さらに【ぷらっしゅトイズ・カメゴン】を召喚!まずは【ぷらっしゅトイズ・ヘヴン】の効果でドローして、次にカメゴンの能力!コイツは【痛み分けの結末】と同じ能力だぜ。よって【ポッポハート】を破壊!エナジーが増えるぜェ!」
「【フランシー】を破壊」
‐【ぷらっしゅトイズ・カメゴン】 パワー2000‐
シルクハットをかぶったカメのぬいぐるみが、【ポッポハート】を銃で撃つ。そのまま銃口を【フランシー】に向け発砲し、一度に二体を破壊した。
ホント、【ぷらっしゅトイズ】に搭載されてるカードは
今出てきた連中でさえ、環境で使われてたカードよか出力おとなしいって、マジでどうなってるんだって話だ。俺が四番目くらいに嫌いなデッキなだけある。まぁ、持ってるし使ってたんだけど。
「あとは───いや、これでターンエンドだ」
ターンが返ってくる。バトルゾーンは減らされたし、なんか相手のエナジーが俺の二倍くらいあるし、
《ばーか。オレ様がいるだろ》
声が聞こえる。デッキの中から、男勝りな少女の声が。
そうだ。その通りだ。【ぷらっしゅトイズ】相手なら、お前さえいれば問題ない。
「ターン貰います。―――ドロー」
切り札は、今まさにやってきた。
なんかコストバランスが大崩壊していますが、【埋葬】と【ぷらっしゅトイズ】が特殊なだけで、今後のファイトはもうちょっと控えめになると思います。
初回のファイトなんだし………と派手にしすぎましたね。