The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
【
コスト8 モンスター 種族:アポカリプス・ドラゴン パワー15000
・【速攻】
・このモンスターは相手のライフを3つ破壊する。
・このモンスターがバトルゾーンに出た時、または攻撃する時、山札の上から3枚を表向きにする。その中から種族に【ドラゴン】を持つモンスターを1体、コストを支払わずに召喚しても良い。残りを墓地に置く
・このモンスターの攻撃の終わりに、墓地にあるカードを3枚、山札の下に送っても良い。そうした場合、このモンスターをアクティブにし、パワーを+3000する。
・このモンスターが破壊される時、代わりに自分の他のモンスターを破壊しても良い。
「………で、龍牙のそれはどういう表情なの?」
なんやかんやありつつ、放課後。
試合を終え、2人の元に戻った時には、昼休みも終わり際で。特に話もできないまま午後の授業に突入し、眠気と闘いながらなんとか乗り越えた俺達は、教室の隅で改めて集まっていた。
なんとも言えない凄まじい表情の龍牙に首を傾げると、彼女に代わって桃倉が答える。
「多分、黒井っちがMASTERランクだったこととか、昼休みの試合とか、色々感極まってるんじゃない?───ってかそう!Abyssって黒井っちだったの!?」
「まぁ、一応」
「一応って何!?」
机に身を乗り出し、問い詰めてくる桃倉。
まぁ、俺がMASTERランクな事とかは、みんなにも話してなかったしな。なんで話してくれなかったんだー!とか思われてても仕方ないかもしれない。
「あ、あの!プレイヤーカードって、見せてもらえたりする!?」
「ん?あー、どうぞ?」
「ありがとうわぁぁぁ!!ホントにAbyssって書いてある!!凄い!!」
プレイヤーカードには身分証としても使える、国が発行し、本名でしか登録できないものと、大会参加の為に別途作る事になるプレイヤーカードの二種類が存在する。
なんでわざわざ分ける必要があるんだ、とか、結局呼び方同じなのかよとか、色々思うところはあるが、まぁ異世界感があってワクワクするので良しとする。
今求められてるのはこっちだろうな、と大会参加用のプレイヤーカードを渡すと、龍牙は飛び跳ねて喜んでくれた。
大変気分が良いが、こうも見せつけていると酷い事になりそうで怖かったりする。
思い出すのは、前世の一幕。店舗大会で優勝した事を自慢し、「この構築、我ながら天才だわ~」とか言いながら身内で使用したデッキが、あり得ない手札事故で10連敗を披露し、慰められる事になった時の事。
ほんと、屈辱以外の何物でも無かったな………。アイツら、ああいう時だけ「うん、強そうなのはわかったから違うデッキ使いな」とか親身になった
「でも、いつも大会で使ってるデッキと違ったよね?」
「【埋葬墓地ソ】は
鬼神こそ俺を認めてくれたものの、一部連中、特に男子は俺がまだ許せないらしい。流石に初日から美女二人と登校してきたのは不味かったようだ。女子も女子で「女の敵………」という認識が抜けないらしく、目が合ったら凄まじい勢いで逸らしてくる。
MASTERランクって、もっと人気者の称号だと思ってたんだけどな。成り行きで明かしちゃったわけだし、これからみんなに囲まれてワーキャー言われながら過ごす事になっちゃうかー!とか思ってたんだけどな。
「あっ、いたー!」
教室のドアが開き、聞き馴染んだ声が聞こえる。
見れば、今朝一緒に登校した美女の1人こと、暁が
「黒井君、月夜ちゃん、一緒にかーえろっ」
「………瑠璃っち、結局そのキャラで行くことにしたんだ」
「はいソコうっさい。───っていうか、その人だれ?月夜ちゃんの友達?」
「そだよー。この子、龍牙カイナ。前に話した、同じクラスの友達ねー」
「は、初めまして!」
カチコチになりつつも、暁へ頭を下げる龍牙。頬が赤くなっているのは、恐らく桃倉に友達だと言ってもらった事が嬉しかったからだろう。
「ふーん。私、暁瑠璃。よろしくー。───じゃ、かーえろっ!」
「あー、その前にさ」
かなり適当な態度で名乗り返すや否や、暁は俺の手を取り、立ち上がらせる。それに待ったをかけて、俺は龍牙の方を向いた。
「良かったら、俺とファイトしない?」
「えっ!!?い、良いの!?」
ガタンッ!椅子が倒れ、机が前に滑る。勢いよく立ち上がった彼女は、暁が握っていない方の手を掴んで、キラキラした目を向けてきた。
喜んでくれて嬉しいが、正直こちらのセリフだったりする。
そう。昼休みの時は鬼神に割って入られて実現しなかったが、元々俺と彼女は戦う───かもしれなかったのである。
原作主人公とファイト出来るなんて貴重な機会、逃したくないに決まってる。
「うん。ファイト・フィールドが借りれないにしても、対戦台くらい、いくらでもあるでしょ?どっかでやろうよ。昼休みの時、誘おうとしてくれたでしょ?」
「うん、うんっ!やるやるっ、ファイトするっ!!」
「………え、何この女。なんでボ───黒井君にここまで目つけられてんの?」
「さぁ?名前も会う前から知ってたっぽいし、なーんかありそうだけど………」
背後でボソボソ話し合う声が聞こえるが、一旦無視だ。
ファイト………龍牙カイナと、ファイトか………!!
やっぱり一番闘いたい原作キャラと言えば紅ヒイロ先生だが、『IGNITE』主人公の龍牙も勿論熱く楽しいファイトが期待できる良い相手だ。これは、流石にテンションが上がる。
「じゃあ早速、どこか空いてる場所を───」
「はーいストップ」
「………なんだよ?」
グイ、と首根っこを掴まれ、後ろに引かれる。
視線を向けると、悪戯っぽく微笑む桃倉の姿。
「どうせ戦うんなら、良い店知ってるし、そこでやんなよ。───ねー?カイナっちも良いっしょ?」
「良い店………あー!うん!そうしよっか!」
何やら友人同士通じ合っているようだが、俺と暁はよく分からずに首を傾げるしかできなかった。
…………店?いやいや、まさかね。
×―――×
2人の言う店は、学園の敷地を出て、大体徒歩十分前後で着く場所にあった。
それは、一見するとオシャレな喫茶店だが、ガラス越しに見える店内には大きなファイトステージが用意されている他、カードがところ狭しと詰められたショーケースがあるなど、どちらかといえばカードショップと呼ぶ方が相応しい店───カード喫茶だった。
「カード喫茶、魅上………」
「そ。ここのカフェオレ、美味しいんだ〜」
「………ここ、結構通ってるの?」
「んーん。先週末だっけ?カイナっちが見つけて、一人で入るのが怖いーって言うから一緒に来たっきり」
「つ、月夜ちゃん!恥ずかしいこと言わないでよ〜!」
じゃれ合う2人を眺めてから、再度店に目を向ける。
カード喫茶魅上。この外装も、その名前も、全て知っている。
だってこの店は、龍牙カイナが
原作では、オシャレな店の雰囲気に圧され、入るべきか否かで右往左往しているところを常連客の少女『
「おっじゃましまーす!」
「2度目の来店でそのノリ!?やっぱり
何故か愕然としている暁を置いて店に入る。
中はアニメや漫画で見た通りの、シックなデザインの喫茶店。少し視線を動かすと普通のカードショップみたいになっているのが玉に瑕だが、それもまぁこの世界らしさだ。
「いらっしゃい。───初めましての人がいるね?ようこそ、カード喫茶魅上へ。空いている席ならどこでも良いけれど………今は他のお客さんもいないし、暇してたんだ。良ければカウンター席に座ってよ」
「もっちー!」
「………私は月夜ちゃんが怖いよボス………」
「うーん………アイツなりに頑張ってるってだけだぞ?」
お団子ヘアに丸眼鏡のお姉さんが、自分のすぐ前の席を手で示す。桃倉が軽い調子でそこに座るのを見て、暁はぷるぷると震え始めた。
でも、桃倉も元はああじゃなかったというか………まぁ、暁も桃倉も似たようなもんだと、俺は思っている。
あとボスはやめろ。
葛原に言われたら色々洒落にならないし、お前らに言われても白い目で見られるんだよ!
「ふーん………。女子3人連れた男の子、か。四角関係とは凄いね。それとも、その年頃にしてハーレムの王か」
「どっちも違います。───俺は黒井ナラクです。最近こっちに引っ越してきたばっかの、田舎者です」
「わ、私は暁瑠璃。黒井君と幼馴染でー、えーっと………よ、よろしく〜!」
「うむ。2人ともよろしく。私はこの喫茶店のマスター、
自己紹介を終えるや否や、カードを取り出しシャッフルを始める魅上さん。
そう言えば、彼女は大人のお姉さんぶってるけど、本質的には龍牙と同レベルのウォイトジャンキーなんだっけか。
ウチに来たんだからファイトくらい付き合ってくれるだろ?ってことだろう。
俺としても、戦う分には全然良い。良いのだが………それよりも今は、龍牙と戦いたい。
「すみません、戦うのは良いんですけど、先に龍牙とやる約束してるんで、その後で良いですか?」
「龍牙ちゃんと?構わないけれど………そうだな、せっかくだしファイトステージでも使うと良い。」
「良いんですか!?」
「あぁ。今日は他に客もいないしね!はーっはーっはっ!」
笑っているが、俺は彼女の目尻が光っている事を見逃さなかった。
客いない=稼げないだもんな。涙も出るよ。
許可をもらったということで、龍牙とファイトステージに登壇する。
ファイトステージは小規模の大会やカードショップなんかに置かれている特殊な対戦台で、ファイト・フィールドと違って全体がホログラムになるわけではないが、実寸大のモンスターが投影される特徴がある。
もちろん、ホロ対戦台も出てくる。
「全力で行くからね!行くよ、【ビギニング】!」
《ドラドラァッ!今のオイラは、いつになく
ワインのコルクを抜いたかのような音と共に、龍牙の真横に小さなドラゴンが実体化する。
龍牙の相棒、ビギニング───今はまだ、【始まりを告げる者ビギニング】か?なんにせよ、実体化するカードを見るのは
「あぁ、当然こっちも全力だ」
シャッフルし、カットを済ませる。既に投影されているホロ対戦台の上に山札を置いて、ライフを展開、手札を揃える。
壁際に設置されたスキャナーにスマホを読ませ、試合を開始する。
『承認。プレイヤーネーム・龍牙カイナ。ランク・B』
『承認。プレイヤーネーム・黒井ナラク。ランク・MASTER』
「へっ!?」
『プレイヤーが揃いました。山札、ライフゾーンに規定枚数のカードを確認。試合を開始します』
『JUDGE SYSTEM起動。先行プレイヤーを選出します』
『ファーストプレイヤー・龍牙カイナ。ターンを開始してください』
先行は、龍牙か。
「私のタ───」
「ちょっ、えぇー!?ま、MASTER!?ウソでしょ!?黒井君って、Abyss選手なの!?あの、絶対王者の!?えぇええ!?」
「もう!少し静かにしてて、魅上さん!───私のターン!【スピアランスドラゴン】をチャージしてターンエンド!」
これでもかとばかりに声を張り上げる魅上さんに、流石の龍牙も耐えかねたのか文句を言う。
それでしっかり口を閉じれるあたり大人なんだろうが、代わりに俺に向けられる視線がやかましくなった。
………ま、見られながらやるのも別に慣れてるし、俺は良いんだけどさ。
「俺のターン。ドロー。【時を統べる者ダイン】をチャージしてターンエンド」
「私のターン!ドローして、【ダガーナイフドラゴン】をチャージ!そのまま2コスト払って、呪文【竜の財宝】!山札の上から2枚を表向きにして、種族にドラゴンを持つカードならレストしてエナジーゾーンに!」
「見えたのは【モーニングスタードラゴン】と2枚目の【スピアランスドラゴン】………2ブースト成功か」
2ターン目にしてエナジーが4も溜まってしまったか。龍牙のデッキ構築が原作通りなら、大体四割くらいの確率で失敗か1枚だけしか加速できないかのどちらかになるはずなんだけど………まぁ、作中でも【竜の財宝】失敗したシーン無かったし、そんなもんか。
ターンを貰い、カードを引く。こちらもこちらでやることはあるが、次の相手の動きを考えると少し悩みどころだ。
山札の上1枚をエナジーゾーンに置き、それが種族に【マシン・ヒーロー】を持つカードだった場合追加で1ドローすることのできる呪文【ネオンライトサイン】か。
或いは相手のコスト踏み倒しを制限するメタカード、【
流石にドラゴンの5コスト目を無警戒でいて良いとは思えないが、このままの
ま、
「【デス・グリップ】をチャージして、2コスト、【ネオンライトサイン】。効果で山札の上から1枚をエナジーゾーンに置き───【
「もしかして、そのデッキ」
「気づいた?───去年使ったヤツだよ、大会でね」
やっぱり、と目を輝かせ、ターンを開始する龍牙。
顎に指を当てて思考すること10秒。動きが決まったのか、手札に触れる。
「【トマホークアックスドラゴン】をチャージして、5コスト!【守衛竜プロテクトドラゴン】、召喚!」
‐【守衛竜プロテクトドラゴン】パワー7000‐
丸みの多い巨大な竜が、龍牙と俺の間を隔てるように出現する。
【プロテクトドラゴン】………能力はシンプルに【守護】のみ。一応バトルに勝つとアクティブになるという効果を持つが、それだけだ。
まさしく初期デッキ、だな。まぁ、知ってたんだけど。
「そしてエンドフェイズ時に宣言!!これは私のバトルゾーンに種族に【ドラゴン】を持つコスト5以上のモンスターがいれば、それを破壊することでコストを支払わずに使うことができる呪文!」
「え?」
「【輪廻龍転】!効果で、自分の手札から【ドラゴン】を1体バトルゾーンに!」
【輪廻龍転】?あの、デカすぎて処理が難しいドラゴンとか、強力なロック効果を持ったドラゴンとか、シンプルにCIP効果が強すぎるドラゴンなんかを最速で置くためのカード?なんで入ってんの??
「始まりの名を持つ竜よ、今ここに、永久に終わらぬ物語を始めよう!!【始まりを告げる者ビギニング】!!」
《ドラドラドラァッ!オイラの出番ドラ!!》
‐【始まりを告げる者ビギニング】 パワー10000‐
龍牙の隣で浮遊していた【ビギニング】が、デフォルメ状態から本来の姿に変化する。ゴーグルとマントが似合う、カラフルな竜。人型のソイツは、拳をむんっ、と構え、気合を入れた。
「【ビギニング】はバトルゾーンに出た時、次の自分のターンのはじめまでバトルゾーンを離れない効果を得るよ。―――これで私はターンエンド!」
ターンが帰ってくる。
………まぁ、【輪廻龍転】は桃倉が教えたんだか渡したんだかしたんだろうという事で、一旦良しとして。
攻めるよりも前に、【ビギニング】に着地されたか。
これ、面倒くさい事になったな。
説明とか要素回収とかはもう少しだけお待ちください。