The Last Boss Master ~転生カードゲーマー、悪の組織のボスになる。~ 作:恋愛を知らぬ化け物
【生命の暴走】
コスト9 呪文
・この呪文を唱えるコストを、このターン墓地に置かれたカード1枚につき1少なくする。
・墓地にあるカードを全てエナジーゾーンに置く。
・エナジーゾーンのカードを全てアクティブにする。
「俺のターン………。なるほど」
まず状況を再確認。相手は【輪廻龍転】で【ビギニング】を出したが、その結果手札が0に。エナジー、ライフともに5で、墓地には【輪廻龍転】、【プロテクトドラゴン】、そして【竜の財宝】。
ま、墓地とかライフとかは一旦置いておくとして、手札が無いのはデカい。別にぬいカス以外にも、相手のターン中に好き放題するカードはあるのだ。その警戒をする必要がなくなったというだけで、大分気が楽になる。
「やれることをやるだけ、か。―――っし。まず【妖艶英雄マイ・コハーン】をチャージして、【
‐【
両手が鎌、下半身がバイクの機械人間が、俺の隣に現れる。ガスマスク越しにこちらを見てきた【D・パンク】は、手のひらの代わりに生えた鎌をグルグルと回転させ、そのまま龍牙の方へと突っ込んでいく。
「コイツは【速攻】持ちだ。当然、プレイヤーに攻撃を宣言──
「っ、来る!!」
身構える龍牙に、見せつけるようにカードを掲げ、対戦台に置く。
このデッキの切り札を。俺のお気に入りの一枚を。
「悪に染まりし正義の英雄、その王よ!今、その力、その破壊に喝采を!【
‐【卍死喝采リベリオン・ダークマイザー】 パワー98765‐
龍牙の眼前に迫った【D・パンク】の姿が、突如掻き消える。
代わりに現れたのは、手足と肩の部分にだけ漆黒の装甲を纏った、競泳水着のようなインナースーツを着た美女───【リベリオン・ダークマイザー】。
本来は黒々とした巨大ロボなのだが、俺のは特別バージョン。抽選販売のスペシャルイラストセットに収録されていたカードだ。
「【リベリオン・ダークマイザー】………!?ほ、ホントにAbyss選手なんだ、黒井君………」
「ってか、不味くない?離れない【ビギニング】がいたら、【ダークマイザー】が
桃倉の懸念は、正しい。というか、俺の狙いがまさにそれだ。
【リベリオン・ダークマイザー】の能力は、バトルに勝利した時アクティブにする、と、【ヒーローズ・スクランブル/D‐side】で場に出た時または攻撃する時、相手のモンスターを1体選んでバトルしても良い、だ。
そのため【ダークマイザー】よりもパワーが低く、場を離れない効果を持ったモンスターがいれば、無限攻撃が成立してしまう。素で【速攻】持ちだから、出たターンでも殴れるしな。
龍牙もそれはわかっているようで、苦しそうにライフゾーンに視線を落としている。
【反撃】に賭けるしかないのだろう。或いは相手ターン中に好き勝手できるカードが出てくることを祈るか。
いずれにせよ、運の勝負になったことに変わりはない。
………原作主人公相手に運ゲーってヤだな。
「【D・パンク】の攻撃時能力がまだ残っているが、相手モンスター1体を破壊し手札を捨てさせる効果は実質不発だ、無視で良い。───重要なのはやはり【ダークマイザー】の能力!コイツが【ヒーローズ・スクランブル/D‐side】で場に出たなら、相手モンスターを1体選んでバトルできる!対象はもちろん【ビギニング】だ!薙ぎ払え、【ダークマイザー】!!」
《命令を受諾。殲滅行動を開始します》
《ぐぅぅっ!!死なないけど結構痛いドラ………っ!》
身の丈の倍はあるブレードを振るい、【ビギニング】を斬り裂く。明らかにオーバーキルな一撃に、しかし効果で場を離れることがない【ビギニング】は、苦しそうにしつつも平気な顔をしていた。
そのまま斬撃の余波が龍牙を襲い、ライフゾーンからカードが3枚、吹っ飛ばされる。
「バトルに勝利した時、【ダークマイザー】はアクティブになる。そして───」
「【反撃】発動!【強襲竜レイダードラゴン】!このモンスターがバトルゾーンに出た時、相手のモンスターを2体まで選んで破壊する!!【ダークマイザー】を破壊!!」
‐龍牙カイナ ライフ5→2‐
‐【強襲竜レイダードラゴン】 パワー6000‐
顎が飛び出たドラゴンが飛来し、【ダークマイザー】に炎の弾丸を発射する。
だが、無駄だ。爆煙の中には、相変わらずのすまし顔で、【ダークマイザー】が立っている。
「っ、そうだ、【
「忘れていたみたいだな。―――そう、【ダークマイザー】のもう一つの能力、【
「そしてそれは、既定の枚数を満たした時に能力を与える他、モンスターへの除去耐性としても機能する………」
「その通り!【ダークマイザー】がバトルゾーンを離れる時、または俺がゲームに敗北する時、コイツの下にあるカードを1枚墓地に送ることでそれを回避できる!」
大体コイツを立てておけば、ターンを返しても何とかなる。本当は【ダークマイザー】を最高の状態で使うためのサポートカードがあるのだが、それは2枚採用だし山札もそんなに掘れていないしで手札に無い。ま、【ドラゴン】相手ならさっさと【ダークマイザー】本体を立てて圧をかけつつ、相手の猛攻に耐えられるように構える方が強いし、この動きで正解のはずだ。
「アクティブになった【ダークマイザー】で再びプレイヤーに攻撃!その時、今度は【レイダードラゴン】を選んでバトルする!」
‐龍牙カイナ ライフ2→0‐
【レイダードラゴン】を突き刺し、そのままカイナへとぶん投げる。ホログラムの竜が彼女と衝突することは無いが、代わりに彼女を守るように投影された2枚のカード─――ライフのホログラムが破壊される。
これでライフは0。【ダークマイザー】の下にはライフ2枚が手札に加えられたことと【レイダードラゴン】が墓地に行ったことで3つ新たにカードが入れられた為、5回分の除去耐性が与えられている。
生半可な【反撃】なら、この時点で俺の勝利が決まるが───どうやら、天はまだ彼女の味方をするらしい。
「―――【反撃】、発動!!呪文【休戦協定】!このターン、誰も攻撃もブロックも出来ない!」
「アクティブだろうと、そもそも攻撃させてもらえないんじゃ意味がない、か。ターンエンドだ」
結局、ターンは返さざるを得なくなったか。ま、【休戦協定】は原作でも入っていたカードだし、意識はしてたつもりだけど………ワンチャンに賭けるには、相手が悪かったか。
「凄いな龍牙ちゃん。あのAbyssの猛攻を耐えしのいだ」
「でもライフは0。手札も増えはしたけど、エナジー的にも場的にも、黒井君の【ダークマイザー】を退かすのも、無視して勝ちを狙いに行くのも難しい状況でしょ。所詮ざこはざこ。このまま無駄な抵抗をしてターンを返すだけ───」
「そんな事は無いんだなー、これが」
外野三人娘の内、桃倉が苦笑いを浮かべる。
そう。龍牙は追い詰められているようでいて、実は全くそんな事は無い。【ビギニング】が居る状態でターンを開始できた時点で、彼女に迫っていた
「私のターン、ドロー………を、する前に!【ビギニング】の能力を発動!!」
《おぉぉっ!!オイラの力、見せてやるドラァ!!》
【ビギニング】が気合を入れた瞬間、龍牙の手札と墓地にあるカードが全て山札に吸い込まれ、シャッフルされる。その後、カードが5枚、彼女の手札とライフゾーンに飛び出し、並べられた。
………そう。これが【始まりを告げる者ビギニング】の能力。主人公とは思えない遅延戦略の能力。
「アクティブフェイズ時、このモンスターがバトルゾーンに居れば、自分の手札、墓地、ライフゾーンのカードを全て山札に加えてシャッフルする。その後、ライフゾーンにカードを山札の上から5枚置き、カードを5枚引く」
「そう。それが私の相棒、【ビギニング】の能力!!始まりを繰り返す、終わりに抗うための能力!!」
「え、何それエグッ………」
「すごいよねー、カイナっちの切り札。―――いや黒井っち普通になんで知ってんの?そのカード、普通に未確認カードじゃね?」
桃倉が訝しむような眼を向けてくるが、知らん顔をしてやり過ごす。
思わず全文暗唱してしまったが、主人公の相棒という、主人公以外が握る余地のないカードだ。未確認カードでも全然おかしくないし、なんならそんな描写があったような気がしなくもない。
普通に鬱描写の記憶しか無くて忘れてたな。
「そしてドロー!【レイダードラゴン】をチャージして6コスト!怒れる竜よ、怒涛の竜よ!大いなる力を解き放て!【ドドド・ドラゴン】、召喚!!」
‐【ドドド・ドラゴン】 パワー12000‐
赤い竜が、壁を突き破って現れる。実際には何も壊していないのだが、ホログラムの演出でそのように見えている。
【ドドド・ドラゴン】。第二の切り札を務めるだけあって、強力なカードだ。
俺は中間進化の【弩努怒ドレッドドラゴン.D.O.】が暴走形態って設定もあって一番好きだけど、無印のコイツも負けず劣らずカッコ良いし、強い。
「【ドドド・ドラゴン】は【速攻】持ち!早速【ドドド・ドラゴン】でプレイヤーに攻撃―――するとき!【ドドド・ドラゴン】の能力を発動!このモンスターがアタックする時、自分の山札の上から1枚を表向きにする!それが【ドラゴン】ならバトルゾーンに出し、それ以外なら墓地に置く!今回捲れたのは【ダブルデュアル・ドラゴン】!バトルゾーンに出る!」
‐【ダブルデュアル・ドラゴン】 パワー8000‐
【ドドド】よりも一回り小さいドラゴンが登場し、咆哮する。その声に反応したかのように、ホロ対戦台の上に置かれた【ドドド】が、アクティブ状態に戻った。
「【ダブルデュアル・ドラゴン】の効果!このモンスターが出た時、自分のレストしているモンスターを1体選んでアクティブにする!そのモンスターが次に破壊するライフの数を1枚増やす!」
「【ドドド】はもともと2枚破壊できるモンスター。よって、【反撃】が無ければ───」
「そのままジャスキル*1………!!」
‐黒井ナラク ライフ5→3‐
【反撃】無し、相手ターン中に行動を挟めるカードも、無し。つまり、恐らく次に来るだろう【ドドド】の
敗北回避もあるし死ぬことはまずないと思うが、このまま圧をかけられ続ければジリ貧なのも事実。【ダークマイザー】が退かせられない事を割り切って、インファイトを仕掛けに来たという事か。
そして実際、それは正しい。
向こうはライフも手札も、【ビギニング】さえ残ればいくらでも回復できる。【輪廻龍転】みたいに桃倉がアドバイスして何らかのカードを入れさせたのだとしたら、確実に【ど根性ォォッ!!】とか【大いなる大盾アイギス】なんかが搭載されていると見て良い。
どちらも相手ターン中にモンスターが破壊されるのを防げる上、相手の攻撃を防ぐこともできるカードだ。【ビギニング】を活かすカードとして、勧めない理由が無いカードだからな。
【ドドド】の連ドラ*2戦略と噛み合わないから、という理由で入っていない可能性も勿論あるが、【休戦協定】が入っているのを見る限り連ドラ寄りの構築をしている可能性は低い。
要するに、結構ピンチだ。
「俺のライフゾーンからカードが2枚離れた事で、山札の上から2枚を【ダークマイザー】の下に入れる」
「【反撃】さえ来なければなんでも良いッ!!行けぇッ【ドドド・ドラゴン】!!ナラク君のライフを全て破壊!!」
‐黒井ナラク ライフ3→0‐
カードが吹っ飛び、俺の前に浮かぶ。が、相手の攻撃時処理を先に行う必要があるので、カードが謎の光で見えなくなっている。
これが【反撃】か否か。相手が何を出すか、そもそも出せるのか。ここに懸かってるな。
「そしてその時、山札の上から1枚を表向きにして───捲れたのは【財禍天竜ファブニール・エンピレオ】!!ドラゴンだからバトルゾーンに!!」
「【ファブニール・エンピレオ】!!?」
‐【財禍天竜ファブニール・エンピレオ】 パワー99999‐
その身を金銀財宝で包んだ巨竜が降臨する。
主人公が握るようなカードではないし、なんなら相当先の時代のカードだが、何故か山札の上からすっ飛んできた。
あーッ、不味い!不味すぎる!!
「【ファブニール】は、バトルゾーンに出た時の能力こそ使えないけど───このモンスターが居る限り、私のモンスターはバトルゾーンを離れないし、ナラク君のモンスターはターン終了時に全て破壊されるよ」
「そして俺のモンスターが破壊される度に山札の上1枚を見て、手札かエナジーか墓地かライフゾーンに加えられるし置けるんだろ、知ってるよ」
正規召喚すると相手のエナジーゾーンにあるモンスターを全て、能力を失わせた状態でレストして出させる効果もついてくる、なんとも強力なドラゴンだ。まぁ、エナジー破壊までしなくてもコイツ立ててるだけでリソース差で圧勝できるからみんな踏み倒しで出すんだけど。
ってかコイツ、シレッと【ダークマイザー】よりパワー高いのやめてくれない?
「………まぁ、勝ったから問題ないけどな」
「えっ?」
「まず【ダークマイザー】の能力で、下にカードを3枚入れる。そして【反撃】発動、【時を統べる者ダイン】!!コイツがバトルゾーンに出た時、ターンの残りをとばす!」
‐【時を統べる者ダイン】 パワー3000‐
ボロ布を纏った少年が地に降り立ち、手を突き出す。瞬間、相手モンスター全員が動きを止め、カードの輝きが消えた。
「そして俺のターン」
「えっ、ま、まだだよ!ターンが終わるにしても、先に【ファブニール】の能力が」
「発動しないんだな、これが。―――【ダイン】の能力は、強制的に次のターンに移行させる能力。よって、この後に起こるはずの能力も、効果も、全てが実行されない」
「そ、そんな………!?」
《カイナ、諦めちゃダメドラ!まだまだライフはあるし、オイラだってファブニールがいる限り離れない!きっと【反撃】だってあるはずだし、勝負はこれからドラ!!》
「【ビギニング】………!!そうだよねっ、まだ、負けてないもんね!!」
【ビギニング】からの励ましを受け、よろめいていた龍牙が元気を取り戻す。
しかし悪いな。もう【反撃】は来ない。強いて返す手段があるとすれば【命乞い】か【最期の言葉】くらいだろうが………龍牙のその構築に入る理由が無い。作成協力しただろう桃倉が、龍牙のセンスが、そうしたカードを採用するとは思えない。
万が一、を意識しても良いが、どうせこのデッキではそこまでケアするのは不可能。
ならば割り切って、無理矢理通す。押し通る!!
「【ダークマイザー】のターン開始時効果は、既に【超魂成】の上限値である10を達成している為発動しない。そのままチャージフェイズ。【ネオンライトサイン】をチャージ。そしてバトルフェイズ!【ダークマイザー】でプレイヤーに攻撃!
「ッ、まさか【ヒーローズ・スクランブル】!?」
「いいや、呪文だ!【
対戦台に置いたのは【ダークマイザー】の必殺
もちろんMasters Cupでも使ったカードなので、龍牙もその効果を思い出したのだろう。再び絶望の表情を見せてくる。
「コイツは自分の【卍死喝采リベリオン・ダークマイザー】が攻撃する時、手札からコストを支払わずに唱えられる呪文!相手のエナジーゾーンにあるモンスターを全てバトルゾーンに出させ、自分のモンスター1体に『破壊されない』と『相手のライフを破壊する時、代わりに墓地に置く』を付与する呪文だ!!付与対象は当然、【リベリオン・ダークマイザー】!!」
「ら、ライフが墓地に………!?」
《ッ、ダメドラ!カイナ、しっかりしないと、
《終極武装THE LAST BLASTER、起動―――完了》
龍牙の手札から、カードが落ちる。俺の勝利宣言の意味を理解したからか、今度は【ビギニング】の声も届かない。
カードを動かさないプレイヤーに代わって、対戦台が勝手にエナジーゾーンのドラゴン達を場に出す。
動きの鈍い彼らは、無防備な姿を【ダークマイザー】へと晒すのみだ。
「攻撃時能力で選ぶのは、もちろん【ビギニング】。さぁ───全てを終わらせろッ!!」
《命令を受諾。掃滅します》
―――俺の読み通り、彼女の手札にはライフを焼却しながら無限攻撃してくる【ダークマイザー】に対抗する手段が無かったらしく。
【ビギニング】の悲鳴をBGMに、原作主人公との最初の試合は幕を閉じたのだった。
テキストの説明とかがなんか変だったりするのは僕の実力不足ですので、どうか大目に見てやってください………。