遊☆戯☆王 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会   作:瑠和

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第二話 スクールアイドル同好会

天王寺瑠和は優木せつ菜とのタッグデュエルに勝利した。その帰り道、瑠和は優木せつ菜に「スクールアイドル」にならないかと誘われた。

 

「俺男だぞ?」

 

「あ、すいません!主語が飛んでしまいました………あの、私がスクールアイドルをやっているんですが、リアルソリッドヴィジョンを応用して最高のステージを作っていただけないかと!」

 

「つまり………マネージャーになれってことか?」

 

「はい!」

 

いっぺんに色々起きたことで瑠和は少し驚きながらも、状況を整理し、理解した。最近リアルソリッドヴィジョンをうまく利用したライブ演出があるという話を聞いたことがある。それにはデュエリストをうまく活用することが大事だという話も。

 

「………他当たれ」

 

「で、ですが、去年、瑠和さんはエンタメデュエルで学校中を…」

 

「っ!!!」

 

せつ菜が伸ばしてきた手を、瑠和ははたいた。その衝撃で瑠和のデュエルディスクからエクストラデッキのカードが落ちた。

 

「!」

 

「二度とその話をするな!!!」

 

さっきまでとはまるで違う剣幕で怒鳴られたことでせつ菜は一瞬怖気づいてしまう。

 

「………帰る。今回は気が向いただけだ。二度と関わるな」

 

「瑠和さん……」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「天王寺瑠和。小学生の頃からデュエリストとしての腕が評価され、中学生の時にも数々の大会で優勝した経験をもつ。中学三年の時から人を楽しませるデュエル、所謂「エンタメデュエル」を主流として活躍する。特に六属性すべてを網羅し、6つのデッキを使いこなすタクティクスは相当なものである。高校に上がってからもエンタメデュエルを行うが、学校代表デュエルを境に光、炎、風、水、地のデッキは使わず闇デッキのみで勝利を目指すデュエルを使うようになる。その結果、カイザーやエンペラーなどの二つ名で呼ばれるようになる……」

 

ここは、虹ヶ咲学園の生徒会室。報告を行っていたのは生徒会副会長であり、報告を受けていたのは生徒会長である中川菜々だった。

 

「以上が天王寺瑠和という生徒の情報です。詳細はこちらにまとめてあります」

 

「ありがとうございます」

 

このように生徒会長である生徒の情報を欲しがることは少なくなかった。問題を起こした生徒や優秀な生徒の情報を集めたいときはよくこうしていたのだ。

 

「その生徒、何かしたんですか?」

 

「いえ、デュエルの腕を買って、学園祭などでの盛り上げ役に一手……と思いまして」

 

「そうですか。では、私はこれで」

 

「はい。ありがとうございました」

 

一人残った菜々は副会長が作った資料を見る。デュエルの腕は申し分ない。むしろ、副会長が説明してくれたようにカイザーやエンペラーなどという仰々しい名前がよく似合うほどの戦績だ。だが、だからこそ昨日の瑠和の言葉が蘇る。

 

(おまえ、人を愉しませるデュエルをしたことないだろ)

 

「去年の学園代表デュエル………確か映像が…」

 

菜々は学園の資料室から去年行われた学園代表選の映像を見る。

 

「これは………」

 

 

 

―放課後―

 

 

 

(スクールアイドルになりませんか!?)

 

あんなに無邪気な眼を向けられたのは、いつぶりだろう。いつも向けられるのは尊敬と畏怖の眼差し。最高のデュエルを行ったことによる尊敬、倒された相手から向けられる畏怖。ここ最近向けられる眼差しはそれしかなかった。

 

「あの!」

 

帰ろうとしていた時、背後から声をかけられた。振り返るとそこにはせつ菜がいた。

 

「………なんだよ」

 

「昨日はすいません。何かお気に触れたようで……」

 

「別に。なんか用か」

 

「あの、これ…」

 

せつ菜は瑠和が昨日落としたカードを差し出した。瑠和のエクストラデッキに入っていたクリアウィングシンクロドラゴンだ。

 

「ああ………悪いな。他に用がないなら、俺はここで…」

 

「あの!…………………もしお時間あれば、これから同好会を見に来てはいただけませんか?」

 

「だから俺はやる気はねぇって」

 

「お願いします!一度だけでも!!」

 

「………」

 

瑠和はせつ菜を見る。きっと、断らなければしばらくこれが続くんだろうなというのが見て取れるくらいの勢いだった。

 

「はぁ………一回だけだぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

一回だけ見に行って適当な理由をつけて帰ればいいだろうという気持ちで瑠和は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部室へと向かった。

 

 

 

―同好会部室―

 

 

 

「初めまして!天王寺瑠和さん!桜坂しずくです!!」

 

「おう……」

 

部室につき、せつ菜に紹介されるや否や一番手前に座っていた少女に両手を掴まれ、目の前で自己紹介された。

 

「あの!先輩のデュエルを見て、デッキを作ったんです!端的に言えば、先輩の大ファンなんです!」

 

「あ、ありがとう…」

 

「学校代表デュエル…目の前で見て感動しました…っ!もし、よろしければあとで一戦…」

 

「ちょっとしず子興奮しすぎ!あ、かすみんは中須かすみで~す♪」

 

「近江彼方だよ~」

 

「エマ・ヴェルデ、よろしくね」

 

「………俺まだ、やるって決めたわけじゃねぇけど」

 

「それは伝えてあります。ですが、皆さんうれしいんですよ。この学校のスターに出会えて」

 

「………天王寺瑠和だ」

 

瑠和は自己紹介を簡単にしてからスクールアイドル同好会の練習を見学した。

 

ランニング、声出し、ステップの練習。大体想像してた通りの練習内容だった、スクールアイドルだからと言って特に珍しい練習もなく、特別なこともしない。だが、瑠和はそんな練習をしている同好会を見て、何か違和感を感じていた。

 

「……何なんだろうな…」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「いかがでしたか!?」

 

「あ~まぁ、いいんじゃないか」

 

「やっぱり、うまくイメージつきませんよね…」

 

「じゃあ、アレは正解だったね」

 

エマと彼方は顔を見合わせて笑った。

 

「アレ?」

 

「瑠和先輩!ちょっといいですか~!」

 

そこに練習の片づけを終わらせるといってせつ菜と練習場に残っていたのかすみが現れた。

 

「?」

 

瑠和はかすみに連れられ、講堂までやって来る。講堂内は真っ暗でいったい何が起こるのかと思っているとステージにスポットライトが当てられた。スポットライトの先にはステージ衣装を纏った優木せつ菜がいた。

 

「アレは…」

 

「今日は基礎練習しかしませんでしたから………スクールアイドルのイメージだけでもと思いまして」

 

そう言ってせつ菜が目をつぶると同時に音楽が流れはじめた。

 

『走り出した思いは強くするよ……♪』

 

「………」

 

 

 

―ライブ後―

 

 

 

せつ菜の歌が終わり、せつ菜は息を切らしながらも瑠和を見る。

 

「私は、この歌を、大好きを伝えたい。そこにあなたの力を、加えてほしいんです…」

 

「…………せつ菜。俺と戦え」

 

「え?」

 

「いいから、俺と戦え」

 

わけのわからない対戦の申し出にせつ菜が動揺していると、そこにしずくが割り込んだ。

 

「あの!でしたら私と決闘していただけませんか!?」

 

「………まぁこの中の誰でもいいさ」

 

瑠和も許諾したため、せつ菜がステージから降り、瑠和としずくがステージに残る。憧れの相手との対戦ということでしずくの眼も輝いている。

 

「アクションフィールド、オン」

 

行動は時々アクションデュエルも使用されることがある。なのでアクションデュエルシステムが設置されている。瑠和の掛け声でアクションフィールドが展開された。

 

「さぁ、始めよう。先行はくれてやる」

 

「ありがとうございます!では、私のターン!私は手札からスケール2の魔界劇団ワイルドホープとスケール7のカーテンライザーでペンデュラムスケールをセッティング!そして、ワイルドホープの効果でカーテンライザーのスケールを9にすることでレベル3からレベル8のモンスターを同時に召喚可能!!ペンデュラム召喚!!魔界劇団メロー・マドンナ!魔界劇団ビッグスター!!」

 

しずくのフィールドに魔界劇団モンスターが二体攻撃表示で特殊召喚される。

 

ビッグスターATK2500

メローマドンナATK1800

 

「これが、先輩のエンタメデュエルを見て作った、私のデッキです!」

 

「魔界劇団……」

 

「しず子らしいカードだね」

 

桜坂しずくは瑠和の学園代表戦を見てとてつもなく感動したのだ。瑠和の見せたエンタメ、会場全体、そして対戦相手までも笑顔にするようなデュエルを。そして、そんな背中を見ながら自分も同じように演劇やスクールアイドルで感動させたいと思って組んだのがこのデッキだった。

 

「さらに私は手札断殺を発動!お互いに手札を二枚捨てて、二枚ドローします!」

 

「…」

 

メローマドンナATK1800→2000

 

二人は手札を二枚捨てて二枚ドローする。だが、それと同時にメローマドンナの攻撃力が2000に上がる。

 

「攻撃力が…」

 

「私が今捨てたのは魔界台本オープニングセレモニーと魔界台本魔界の宴咜女(エンタメ)の二枚。メローマドンナは墓地の魔界台本の数だけ攻撃力が上がるんです!私はこれでターンエンド!さぁ、瑠和さんのターンですよ!もう一度、あの感動を私に見せてください!」

 

「……感動………か。俺のターンドロー」

 

瑠和は静かにドローをした。そこにはエンタメ等感じられないほど静かなドローだ。

 

「俺は、墓地のオルフェゴールスケルツォンの効果発動」

 

「えぇ!墓地から?いったいいつ…」

 

「さきほどのしずくさんの手札断殺でしょう…偶然とはいえ、瑠和さんの盤面を整えることになってしまった…」

 

「このカードを除外し、墓地の宵星の騎士ギルスを特殊召喚。デッキからオルフェゴールディヴェルを墓地に。フィールドに他のモンスターが存在しない場合、お互いのフィールドにオルフェゴールトークンを特殊召喚する」

 

「私のフィールドにも……」

 

瑠和の発動したカードを見て、せつ菜はそのデッキの属性を察する。

 

(闇属性のデッキ………ここ最近瑠和さんがずっと使っている……)

 

学校代表戦の後、瑠和は闇属性のデッキしか使っていなかった。

 

「俺はギルスとトークン二体をリンクマーカーにセット。リンク召喚オルフェゴール・ガラテア」

 

オルフェゴールガラテアATK1800

 

「…」

 

オルフェゴールガラテアを召喚した後、少しの間瑠和の行動がないことにせつ菜は疑問に感じた。瑠和の方を見ると、瑠和はガラテアを見つめていた。慈しむような、悲しそうな、何とも言えない表情で。

 

「瑠和さん…?」

 

「俺は墓地のオルフェゴールディヴェルの効果発動。このカードを除外し、デッキからオルフェゴールカノーネを特殊召喚。ガラテアとカノーネをリンクマーカーに……」

 

瑠和はデュエルディスクにセットされたガラテアを墓地に送ろうとする。しかし、その手は少しの間止まる。せつ菜が瑠和の表情を見るととても苦しそうな表情をしながら、ガラテアを見つめ、決意を固めるようにガラテアを墓地に送る。

 

「リンクマーカーにセット!リンク召喚。オルフェゴールロンギルス」

 

オルフェゴールロンギルスATK2300

 

「俺は手札から、サイバーダークワールドを発動。効果によってサイバーダークキメラを手札に加え、サイバーダークワールドの効果でサイバーダークキメラを召喚。そして、サイバーダークキメラを素材にクロックワークナイトをリンク召喚。墓地に送られたサイバーダークキメラの効果でサイバーダークヴルムを墓地に。そしてクロックワークナイトの効果でサイバーダークワールドを墓地に送り、機械仕掛けの夜クロックワークナイトを手札に。墓地のサイバーダークヴルムの効果発動。デッキからサイバードラゴンを墓地に送り、墓地からサイバーダークヴルムを特殊召喚」

 

クロックワークナイトATK500

サイバーダークヴルムATK800

 

展開を続けてはいるものの、今のところ瑠和のフィールドに強力なモンスターを召喚する素振りも、観客を沸かせるようなエンタメもない。

 

(もし………瑠和さんが先日言ったように、エンタメを捨てているなら………これがカイザーやエンペラーと呼ばれる瑠和さんのデュエル……この先いったい何が……)

 

「この効果での蘇生はデュエル中1度のみ。そして蘇生と共に墓地からサイバーダークワールドを手札に戻す。そして、クロックワークナイトの効果発動。サイバーダークヴルムをリリースし、墓地からサイバーダークキメラを特殊召喚。サイバーダークキメラの効果。さっき手札に戻したサイバーダークワールドを墓地に送り、デッキからパワーボンドを手札に加える」

 

「パワーボンド!機械族融合のキーカード!」

 

「パワーボンド発動!。俺は手札のサイバーダークホーン、エッジ、キール、カノン、フィールドのキメラを融合素材にする!」

 

手札にそれほどのパーツが揃っていたことに驚く。

 

「闇を宿した機械竜よ、いまこそ新たなる牙と一つとなりて、真なる力で仇なす敵を殲滅せよ!融合召喚!!鎧獄竜サイバー・ダークネス・ドラゴン!!!!」

 

鎧獄竜サイバー・ダークネス・ドラゴンATK2000→4000

 

サイバーダークネスドラゴンの攻撃力はパワーボンドの効果で倍に上がる。途方もない攻撃力と迫力にしずくは少し怖気づく。

 

「でも、まだライフは残ります!」

 

「俺は手札から、機械仕掛けの夜・クロックワークナイトを発動」

 

ビッグスターATK2500→2000

メローマドンナATK2000→1500

 

サイバーダークネスドラゴンATK4000→4500

オルフェゴールロンギルスATK2300→2800

 

機械仕掛けの夜・クロックワークナイトの発動と共にしずくのフィールドのモンスターの攻撃力が下がり、瑠和のフィールドのモンスターの攻撃力が上がることにしずくが驚いた。

 

「私のフィールドのモンスターの攻撃力が!」

 

「クロックワークナイトは、フィールドのモンスターをすべて機械族にし、攻撃力を500、相手フィールドは下げ、自分フィールドは上がる。さらに俺はサイバーダークネスドラゴン効果で墓地に存在するオルフェゴールガラテアを装備」

 

サイバーダークネスドラゴンATK4500→6300

 

「攻撃力………6300……」

 

その迫力にしずくは完全におびえる。せつ菜も驚いていたが、ふと瑠和を見ると、ガラテアを装備したサイバーダークネスドラゴンを見て、なぜか笑顔を浮かべているのが分かった。

 

「……?」

 

「…………オルフェゴールロンギルスで魔界劇団ビッグスターを攻撃」

 

「ぐぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

しずくLIFE4000→3200

 

しずくは吹っ飛ばされ、アクションフィールド内の空中足場に倒れこむ。

 

「………お前のフィールドに伏せカードはない。攻撃に反応できるカードもないんだろう。次のサイバーダークネスドラゴンの攻撃で終わりだ」

 

「瑠和………さん…」

 

他人を笑顔にさせるエンタメデュエルをしていた人間とは思えないほど冷徹な声だった。しずくはさっきまでとは違う瑠和の表情に恐れを感じる。

 

「しずくさん!あきらめちゃダメです!アクションマジックを!」

 

「…っ!」

 

しずくはハッとして立ち上がり、足場から足場へジャンプしていく。瑠和も攻撃を行わずその様子を見ていた。そして、アクションマジックを見つけ、それに手を伸ばしながらジャンプする。しかし、あと少しのところで手が届かず、地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「しずくちゃん!!」

 

「しず子!!!」

 

目の前に地面が迫り、もう駄目だと眼を閉じたが身体に衝撃が走ることはない。

 

「………?」

 

しずくが恐る恐る眼を開けると、しずくはオルフェゴールロンギルスに抱えられていた。しずくが落ちたとわかった瞬間、瑠和がオルフェゴールロンギルスに支持を出してしずくをキャッチさせたのだ。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「サイバーダークネスドラゴンの攻撃。フルダークネスオーバーバースト!!」

 

しずくLIFE3800→0

 

サイバーダークネスドラゴンの攻撃でビッグスターが消し炭にされたが、ロンギルスの陰にいたしずくには衝撃は当たらず、ただ茫然とその様子を見ているしかできなかった。

 

「…これが、今の瑠和さんのデュエル……」

 

「アクションデュエル、アクションフィールドにはそれに合わせた経験が必要だ。基礎体力はもちろん、各フィールドに合わせた動きでフィールドを制する必要がある。お前たちにはその経験も、センスもない。こんな状況でライブの演出でアクションフィールドを使ってみろ。さっきみたいな事故が起こるだけだ」

 

「…」

 

「俺に言えるのはそれだけだ。じゃあな」

 

瑠和は去って行った。同好会に衝撃と恐怖、そしてかつてエンタメデュエルで輝いていた姿など見る影もなくしてしまった事実だけを残して。

 

 

 

続く

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