「フルダークネスバースト!」
スクールアイドル同好会に行ったあとの瑠和はより一層デュエルに打ち込んでいた。同好会に行ったときに感じた感情か、せつ菜から向けられた好意か、どちらかわからないが、とにかくそれを振り切るために。
「はぁ…はぁ…」
「お疲れ。さすがエンペラー殿。いまだに無敗記録は保持してんの?」
同じデュエル科に所属する瑠和の友人が声をかけてきた。
「……ああ」
「大丈夫か?少し体調悪そうだけど」
「少し頭痛がする……。保健室に行ってくる」
「ああ……」
―保健室―
保健室に来た瑠和は保険教員からベッドで休む許可をもらい、ベッドに入る。同好会に行った翌日からずっと、がむしゃらに決闘をしていたせいか少し疲れが溜まっていたようで、瑠和はすぐに眠りについた。
「…………」
瑠和は夢を見た。
家族で過ごす夢。楽しかった時間の夢。しかし、その夢はだんだん暗黒に包まれていく。世界が暗闇に包まれていき、最後は自分までも取り込んでしまう。
暗黒の世界で彷徨っていた瑠和の前に、瑠和の妹がうずくまっているのが見えた。
『璃奈!!』
『お兄ちゃん………』
顔を上げた妹の眼には恨み、憎しみがこもっていた。
『!!』
『どうして私を置いていったの?』
「うぁぁぁぁ!!!!」
「おう!だ、大丈夫…?」
瑠和は目を覚ます。そして眼を覚ました先にいたのは近江彼方だった。瑠和は目の前にいた近江彼方を見て、いま見ていたものが夢なのだということを理解する。だが、それと同時になぜこんなところにいるのかと疑問に思った。
「…………あんたは」
「保健室に休みに来たんだけどねぇ~来たらギャラクリボーちゃんが心配そうな声で君のまわりを飛び回ってたからさぁ~」
「クリクリ~」
彼方の横にギャラクリボーが下りてきた。
「ああ……ありがとうございます。ギャラクリボーもありがとうな」
手が温かい。頭にも何か触られていたような感触が残っている。きっと、近くで彼方が見ていてくれたのだろうと瑠和は思った。
「なんか、手間かけたみたいで。すいません」
「ううん、うなされてたけど、大丈夫?」
「…………大丈夫です。少し、昔の夢見てただけで………ああ、そういえば、スクールアイドルはどうですか?」
「う~ん………」
「どうかしたんですか?」
どうにも話しにくそうな空気を出してきた。だが、瑠和も知りたい気持ちはある。少し距離を近づけて見た。
「実はねぇ~」
瑠和は、彼方から同好会で大きな衝突があったことを聞いた。
発端は、瑠和が去ってからが多かったという話だ。瑠和が指摘したアクションフィールドへの対応力から始まり、ラブライブへ目標を決めたあたりからせつ菜の指導が厳しくなり、かわいらしさを求めるかすみと衝突を起こし、一時的に休止になってしまったそうだ。
「…………そんな」
「あ、大丈夫だよぉ、瑠和君は悪くないよ。瑠和君が言ってたことは正しいと思うし、きっと瑠和君がいなくても今回のことは起きてた。そんなときに彼方ちゃんたちお姉ちゃんがしっかりしなきゃいけなかったんだ」
(………だとしても、きっかけを作ったのは俺だ)
「そう………でしたか」
―放課後―
放課後になり、瑠和が下校しようとしたとき、校門付近に誰かがいるのが見えた。
「あれは…」
「結構、遅くなっちゃったな………」
そこにいたのは桜坂しずく。瑠和は同好会のことについて話が聞けないかと思ったがどうにも、先日の決闘が引っかかってしまう。
ワンターンキルで決めてしまった上にしずくの望むエンタメすら見せられなかった。どうにも気まずいのだ。
「……エマさんとかならよかったんだけどな」
「あっ」
その時拭いた風が、しずくのリボンを飛ばした。しずくがあわてて手を伸ばすが、リボンは風に巻き上げられ、高く飛んでいってしまう。
刹那、瑠和は考えずに動いていた。手すりに足をかけ、身体を上に持ち上げる勢いでジャンプし、校門に手をかけ、看板の出っ張りを足場にして身体を持ち上げ、さっきまで手をかけていた場所を蹴って高く飛んだ。
そして、飛んでしまったしずくのリボンをキャッチし、勢いを殺すために地面を転がりながら着地した。
日頃アクションデュエルで鍛えている跳躍力や、瞬発力が役にたったのだ。
「瑠和さん…」
しずくの目の前で転がり終えた瑠和は、はっとする。とっさに身体が動き、会話のきっかけを作ってしまったからだ。
「あっ…………はいこれ、気を付けろよ」
「……あの。先輩」
そのまま去ろうとしたのだが、やはり声をかけられてしまう。
「………なんだ」
「あの………少し、話ししたくて」
「同好会の件なら聞いた」
「…………それでも、不安な気持ちを打ち明けたい相手が欲しいって理由じゃダメですか?」
「他当たれ」
「先輩が!………いいんです」
断ることは簡単だ。だが、負い目がある。こうなってしまったのは自分のせいなのではないかと。
「………」
―カフェ―
「なるほどね…」
カフェに移動し、しずくから今回のことについての詳細を聞いた。どうやら瑠和がすべての原因というわけではなく、以前からせつ菜とかすみのすれ違いは多かったようだ。
「………あの…………私、先輩と一緒に………部活……したいです」
しずくは何やらもじもじしながら瑠和に訴えかけた。唐突な話に瑠和は目を丸くする。
「なんで」
「………」
瑠和が返すもしずくは顔を下げたまま動かなくなってしまった。まぁ以前同好会に行ったときに瑠和のエンタメで感動していたというはなしをしていたし、それが理由かと瑠和はそれで納得することにした。
瑠和は少し考える。
責任は、自分にもある。
それに、瑠和は以前同好会に行ったとき、せつ菜のライブを見て胸に何かを感じていたのだ。
(あの胸の感情の正体を、知りたい)
「…………絶対とは言わない」
「え?」
瑠和の言葉にしずくは瞳を輝かせて顔を上げる。
「俺も同好会のためにできることがないか、探してみるよ」
「………本当ですか!?」
「ああ。優木せつ菜と中須かすみのクラス、わかるか」
「かすみさんならわかりますけど………せつ菜先輩は………普通科ということしか」
「わかった。俺から声をかけてみる」
「どうするつもりですか?」
「俺にできるのは………」
瑠和はデッキケースを取り出す。
「これだけさ」
◆◆◆◆◆
―翌日 普通科―
「ここが普通科か………なんだかんだ初めて来るな」
昼休みの時間を利用し瑠和は普通科に向かい、せつ菜を探していた。しかし、さすがにマンモス校なだけあって、人数は多い。瑠和がきょろきょろとあたりを見回しながら歩いていると、曲がり角で誰かにぶつかってしまった。
「おっと」
「あっ、ごめんなさい!」
ぶつかった相手はツインテールで毛先が緑の少女。瑠和は倒れかかったその少女を支える。
「大丈夫か」
「すいません。私、ぼーっと………天王寺瑠和!?」
「………おう」
「え?」
「天王寺瑠和?」
「カイザー?」
少女が瑠和の名前を叫んでしまったため、あたりに人だかりができてしまった。瑠和は一応この学校ではナンバーワンとまではいかないがかなりの有名人だ。
「ちっ、めんどくせぇ!ちょっと付き合え!」
「ええ!?」
瑠和は少女の手を掴んでその場から離れた。その様子を、遠くから見ていた女生徒がいた。
「………侑ちゃん?」
瑠和は少女と共に人気のない場所まで走ってきていた。
「ここまでくりゃ大丈夫か………まったく、君のおかげで大騒ぎだ」
「あ、あの……いったい何なんですか?」
「………君、普通科だろ。優木せつ菜ってやつ」
「せつ菜ちゃん!?せつ菜ちゃんのこと知ってるの!?」
さっきまで普通の学生に見えていた少女はいきなり瑠和に食いかかってきた。
「いや、だからそのせつ菜がどこにいるかを聞きたかったんだけど」
「そっか……ごめん。実は、私もせつ菜ちゃん探してて…」
「え?」
そこで瑠和は、目の前にいる学生が高咲侑という名前で、先日せつ菜がやった単独ライブを見てファンになったという。
だが、瑠和はせつ菜を知った経緯に驚く。
「ライブをやった!?いつ!」
「え、たしかこの間の土曜の午前授業のとき…」
「っ!!」
その日は、本来であればせつ菜以外の新メンバーの御披露目ライブをするはずの会場で、御披露目ライブをするはずの日付だ。
「あいつ…っ!それで!せつ菜をしらないか!」
「……ごめんなさい。そこまでは…」
「普通科のはずなんだ!見かけたこととか!」
「…ごめんなさい」
「…」
瑠和は一つ大きな深呼吸をしてから少し頭を冷やす。
(落ち着け。とにかく放課後スクールアイドル同好会を訪ねてみるしかない………。ライブをやったなら、せつ菜だけでもいる可能性が高い)
「急に悪かったな」
「あ、うん」
瑠和は侑に頭を下げて、とりあえずデュエル科に戻ることにした。そのまま普通科を探してもよかったのだが、また騒ぎになると面倒なので放課後まで待つことにした。
―放課後―
放課後になると瑠和はすぐに部室棟まで向かった。同好会部室に向かう道中、瑠和は前方に見覚えのある人物がいることに気付く。
「あれは……」
前方にいたのは昼にあった高咲侑だ。隣に女生徒はいるが知らない子だ。
「…………おい」
「あ、瑠和さん!」
「一応同い年だ。さん付けはよしてくれ」
軽い会話をしたところで侑の隣にいた少女が二人の意間に割り込むようにして瑠和の前にきた。
「歩夢?」
「あの、ちょっと来てください!」
「え」
瑠和は手を掴まれ、ずるずると引きずられていく。昼間の侑とは真逆の構図だ。
「え、歩夢どうしたの」
「侑ちゃんはそこにいて!すぐ戻るから!」
「えー……」
引きずられていった瑠和は校舎裏に連れてこられた。
「で、何」
「あの、あなた、侑ちゃんのなんなんですか?」
「…………なにって、昼間に知り合っただけだけど」
「本当ですか!じゃあ昼間にどこに………」
「俺はただ人を探してただけで………それでたまたまあいつに聞いただけだ。あいつが変に騒ぎ立てるから、人目につかないところまで行っただけで……」
「………」
一応、一通りの流れは説明したものの、どうにも信じてもらえていないという感じの眼で瑠和を睨んでいる。
「わかりました」
歩夢はそう言って、瑠和の前から少し距離を取る。瑠和はわかってくれたかと思い安堵のため息をつく。しかし、それもつかの間だった。
歩夢はデュエルパッドを取り出してそれを腕に装着する。
「わ、私とデュエルしてください!」
「え」
「デュエルして、私が勝ったら、侑ちゃんのことはあきらめてください!」
(なんもわかってねぇ~……)
だが、話は瑠和の得意な方向に行ってくれた。この歩夢という少女も瑠和の得意分野であるのは承知の上で挑んできたのだろうと瑠和は思った。
「…………わかったよ。そっちの方が手っ取り早そうだ」
瑠和はデュエルパッドを取り出し、中にあるデッキを取り出した。相手の実力はわからないし、今回は無理に勝つ必要もないデュエルだ。闇以外のデッキを選ぶ。
「さて………行くぞ!」
「「デュエル!!」」
瑠和LIFE4000
歩夢LIFE4000
「私の先行!私はレプティレスゴルゴーンを攻撃表示で召喚!!」
レプティレスゴルゴーンATK1400
「ターンエンド!」
「え」
随分肩透かしを食らった気分だった。意気揚々と挑んできた割には大したことはしてこなかった。何かの作戦か、手札事故か、とりあえず様子を見ながら戦うことにした。
「俺のターン、ドロー。俺は手札からバイスシャークを召喚」
バイスシャークATK1800
「バトル!レプティレスゴルゴーンに攻撃!」
「うっ!」
歩夢LIFE4000→3600
「だけどこの瞬間!レプティレスゴルゴーンの効果発動!レプティレスゴルゴーンと戦闘を行ったモンスターはは攻撃力が0になり、表示形式を変更できない!」
バイスシャークATK1800→0
「……俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」
「私のターン!よし来た!私はレプティレスサーヴァントを召喚!」
レプティレスサーヴァントATK100
「このカードがフィールドに存在する限り!お互いに召喚ができなくなる!」
「なるほど……?」
「私はレプティレスサーヴァントで攻撃力が0になったバイスシャークに攻撃!」
「…」
瑠和は身動きを取らずに素直にダメージを受ける。
瑠和LIFE4000→3900
「ターンエンド!」
「俺のターン…………なるほどな。レプティレスサーヴァントで召喚を封じ、体制を整えるわけか」
「これで侑ちゃんにいつも勝ててるんだから!!」
「なかなかやるようだ………だが召喚を封じるだけじゃ、まだまだだ!」
瑠和は態度を急変させて歩夢に叫んだ。追い込んでいたと思っていた歩夢も驚く。
「え!?」
「リバースカードオープン!スプラッシュリボーン!墓地のモンスターが水属性のみの場合!ランダムに一体!蘇生する!!」
「ランダム!?」
「ああ、ギャンブルカードだが、相手はこのカードの発動にチェーンできない。さらに、特殊召喚したモンスターの攻撃力は、倍になる!俺の墓地のモンスターは一体!よって!墓地からバイスシャークを特殊召喚!」
バイスシャークATK3600
「さらに、手札のクリスタルシャークの効果を発動!バイスシャークの攻撃力を半分にして手札から特殊召喚!さらに!フィールドが水属性のみの時、手札のアビスシャーク特殊召喚、そして、デッキからドレイクシャークを手札に加える!ドレイクシャークがドロー以外で手札に加わったとき、特殊召喚できる!!」
バイスシャークATK3600→1800
クリスタルシャークATK1100
アビスシャークATK1200
ドレイクシャークATK1400
「そんな……四体も……」
「悪いが俺もデュエル科でエースをやらせてもらってる。そうそうこんな手段だけで止められるなんて思わないことだ。バトル!すべてのモンスターで攻撃!」
リバースカードもない歩夢は、シャーク四体による猛攻を受け、吹っ飛ばされる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
歩夢LIFE3600→0
瑠和は倒れた歩夢に手を差しのべる。
「ふぅ…。なにを勘違いしてるか知らないけど、俺は別に高咲を狙ってるわけでもあいつが俺を好きなわけでもねぇよ。せつ菜に会いたいだけなんだ」
「……」
―部室棟―
誤解を解けたんだか解けてないんだかわからないが、とにかく多少は和解できたので歩夢と侑のもとに戻り、そのまま同好会部室に向かった。
歩夢と侑は同好会の場所がわからず困っていたようだったが、瑠和は当然知っている。そこまで案内してやる。
「ここだ」
「なるほどね………じゃあ、開けr」
「なにをしているんですか」
「え!?」
背後から声がした。瑠和は一瞬せつ菜の声がしたと思い、慌てて振り返る。しかし、そこにいたのは眼鏡をかけ、三つ編みを肩にかける少女だった。
(なんだ…?)
「普通科二年の上原歩夢さん、高咲侑さん。それからデュエル科のエンペラーこと瑠和さん」
「…誰だあんた」
「会ったことあったっけ」
学校の有名人である瑠和はともかく、見覚えのない人物に学科、学年、名前を言い当てられ、侑たちは驚く。
「生徒会長たるもの、全校生徒の顔と名前を覚えるのは当然です」
「「生徒会長!?」」
(そういや、確かに見たことがあるな……でもなんでこんなところに)
「私たち、優木せつ菜ちゃんに会いに来たんです!」
「スクールアイドルのことなら、彼女は会わないと思いますよ」
「え?」
「それに、スクールアイドル同好会はただいまを持って廃部となりました」
生徒会長はスクールアイドル同好会のプレートを取り外し、そのまま去っていこうとした。侑も歩夢もそれを見ているだけだったが、その前に瑠和が立ちはだかる。
「ちょっと待てよ。生徒会長だかなんだか知らないが、横暴すぎないか」
「横暴?」
瑠和のやや強気な言葉に、生徒会長は眉一つ動かさずに返した。どうやら瑠和の言ったことをまるで感じていないように。それが余計に瑠和の気持を逆撫でする。
「誰の許可で廃部にしてるんだって聞いているんだ」
「ああ、先ほど優木せつ菜さんは私に廃部届けを提出しました。これがそれです」
生徒会長は懐から廃部届を取り出し、瑠和に見せる。そこには確かにせつ菜によって作られた廃部届があった。
「なっ……」
「以上です。なにか他に疑問点がなければこれで…」
生徒会長は廃部届を見せ、固まってる瑠和を見てそのまま去ろうと瑠和の隣を歩いていく。瑠和は廃部届を握りしめ、振り返った。
「言ったよな…全校生徒の顔と名前、学科もわかるって」
「ええ」
「なら教えろ。優木せつ菜のクラスを」
「………先ほども言いましたよね。スクールアイドルのことなら彼女は会わないと」
「こんな紙切れ1枚で誰が納得してたまるか!俺はあいつにスクールアイドルの協力をしろって言われてる!いや、俺はともかく、他の部員は納得しない!ちゃんと説明するべきだ!」
「……なにか、問題がありますか?」
瑠和の激昂に反して生徒会長は冷静に、いや、もはや冷静を超えて冷徹に言い放った。
「あ?」
「確かにスクールアイドル同好会は廃部になりました。しかし、同じ同好会をまた作ってはいけない、というルールはありません。やりたいのであれば、5人集めて同好会の申請をすればよいと思いますよ。私も、勝手に彼女のことを教えるのは憚られますし」
「俺はせつ菜の落とし前の話をしてんだ」
「これが彼女の落とし前ということでしょう」
「それじゃ納得できないって言ってんだ。いいからせつ菜のクラス教えろ」
「あなたの意見なんてしりません」
「…」
「…」
いまにも殴り合いでも起きるんじゃないかという一触即発の空気の中、二人の間に侑が入り込む。
「ちょ、ちょっと瑠和さん!落ち着いて!すいません生徒会長」
「ちょ!まだ話しはおわってねぇ!」
「いいから!歩夢!手伝って!」
「う、うん!」
瑠和は歩夢と侑の二人に引っ張られ、部活等から引きずり出された。
「……はぁ」
生徒会長はそのまま部室棟を去ろうとした。その横をとある2人の生徒が通り抜けていく。
「あれは…情報科の天王寺璃奈さんと宮下愛さん…?」
二人はスクールアイドル同好会の部室前で止まり、プレートがなくなっていることに少し困惑している様子だった。生徒会長は、あの二人もスクールアイドルに会いたかったのだろうか、そんなことを思いながら申し訳なさそうに部室棟を後にした。
「ここだったはずなのに…」
一方こちらは、同好会部室前にたどり着いた宮下愛と天王寺璃奈。きのうまであったはずのスクールアイドル同好会がなくなっていることに言葉を失っていた。
「……なくなっちゃったなら、仕方ない」
璃奈はそう言って部室棟を離れようとした。
「…ごめんね!りなりー!愛さんがりなりーのお兄ちゃんスクールアイドル同好会にいたなんて根も葉もない噂で期待させちゃって…」
「…大丈夫。愛さんは悪くない。でも…」
璃奈は天を仰ぐ。
(もしもお兄ちゃんがスクールアイドル好きになったなら……それを通じて、また一緒に暮らせると思ったのに…)
ー中庭ー
「は、離せよいい加減!」
なんだかんだ引きずられ続け、瑠和は中庭まで連れてこられる。そこまで来たところで瑠和は無理やり二人の腕を弾く。
「…………悪かった。熱くなり過ぎた」
「あの………どうしてあんなに…」
「…………君たちには関係ない………。俺帰るわ。じゃあな」
瑠和はそのまま去って行った。気を落として帰っていく瑠和の背中を見ていた侑は、何かかが瑠和のカバンから出てきたのを見た。
「…………?」
何か、ぼやけた毛玉のようなものが出てきたのが見え、眼をこすってみるとそれは消えていた。
「侑ちゃんどうしたの?」
「………ううん。気のせいみたい」
そのまま歩夢と侑も帰路に着き、瑠和は再び一人になった。
優木せつ菜という手掛かりは失ったが、まだもう一つあてはあるし、やらなければならないこともある。
(確かにスクールアイドル同好会は廃部になりました。しかし、同じ同好会をまた作ってはいけない、というルールはありません。やりたいのであれば、5人集めて同好会の申請をすればよいと思いますよ)
瑠和は先ほど生徒会長に言われた言葉を思い出す。確かに、あの生徒会長の言う通りだ。だが、それでは納得できないのはなぜだろうと少し考える。
しずくに頼まれたから?せつ菜に頼まれていたから?いや、どれも違う。
(この気持ちは、多分)
―翌日―
「さて、かすみちゃんは…………とりあえず放課後声をかけてみるか」
「瑠和先輩!」
朝、投稿していると校門前でしずくに声をかけられた。
「しずくちゃん」
「どうでした……?」
「………せつ菜は少し難しそうだ。これからかすみちゃんに話を聞いてみるよ」
「あの!………私に何かできることは…」
「いいよ。演劇部と兼部してるんだろ。しずくちゃんはそっち頑張りな」
瑠和は微笑みながらしずくの頭に手を置く。しずくは少し頬を赤く染めながらもその手を受け入れる。
「は、はい………」
(とはいったものの、かすみちゃんをどれだけ説得できるか………少なくとも、しずくちゃんほど大人で、聞き分けがいい感じじゃないよなぁ。悪い子じゃないんだろうけど。でもだからこそせつ菜とぶつかったわけだし…)
そんなことを考えながら歩いていると、たまたま昨日の生徒会長が曲がり角から出てきた。考え事で前が見えてなかった瑠和は激突し、お互いにしりもちをつく。
「おっと!」
「わっ!」
ぶつかった衝撃で生徒会長のDパッドが地面に落ち、中からカードがばらまかれた。
「大丈………生徒会長…」
「天王寺瑠和さん……」
「…………お前も、デュエルモンスターズやってたのか」
「あっ!み、見ないでください!」
生徒会長は慌ててカードをかき集め、その場を足早に去って行ってしまった。いったい何だったんだと瑠和がため息交じりに立ち上がろうとすると、足元にカードが落ちているのが見えた。
「生徒会長のやつか?さっき拾い忘れて………」
カードを拾った瑠和は眼を疑った。
「こいつは……っ!」
続く