プロジェクト・オラクル   作:刹那木ヤクモ

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決別

ネオ・クロノスのスラム東区は、灰色の空の下でざわめいていた。オラクルのナノマシン・ネットワークが停止したことで、市民たちは洗脳から解放されつつあった。だが、自由の代償は混乱だった。街角では暴動が起き、議定府の監視ドローンが破壊され、市民たちが武器を手に立ち上がる。リベリオンの基地では、レイス、エコー、クロウが新たな作戦を練っていた。議定府の残党、ゼクスが潜む旧研究施設に潜入し、バックアップコアを破壊する。それが、ネオ・クロノスの未来を決める戦いだ。

 

レイスはエネルギー拳銃を点検しながら、基地の窓から街を見つめる。市民たちの叫び声が遠く聞こえる。

 

「自由は⋯⋯こんな混沌を生むのか」

 

「それでも、自由だ。レイス、私たちが導けば、未来は変わる」

 

エコーに次いでクロウが口を開く。

 

「議定府の秩序は、俺たちを奴隷にした。だが、この混沌は希望だ。俺も、それを信じたい」

 

ドローンを調整しながら、ミラも言う。

 

「バックアップコアは不安定。起動前に破壊できれば、ネオ・クロノスは救われる。ゼクスはヴェルナ以上の狡猾さを持ってる。油断も、慢心もしちゃいけない⋯⋯けど、これが終われば、議定府は潰える。気をつけてね」

 

休息を終え、整備も済み、万全とはいかないがそれでも十分回復したレイスは、言葉を返す。

 

「ああ、俺たちが奴を止める。未来のために」

 

◆◆◆◆

 

夜のスラム東区は、霧と煤で視界が悪い。レイス、エコー、クロウはガントたちと共に、旧研究施設の外周に潜入。ミラのドローンが監視カメラ、自動砲台、そしてガーディアンを一時的に無力化する。

 

『防衛設備はガントたちに任せて突撃して! 』

 

レイスは頷き、エコーとクロウを率いて通路に突入。だが、地下への階段を降りる途中で、新たな敵が現れた。ゼクスの直属の執行官たちだ。彼らはヴェルナのガーディアン以上に強化された装甲をまとい、エネルギーソードを手にしている。

 

「⋯⋯多くは語らん。ここで、死ね」

 

「⋯⋯俺たちは死ねない。まだ見ぬ明日のために、夜明けを開いてみせる」

 

執行官たちのエネルギーソードが通路を切り裂く。段階加速でソードを回避し、お返しとばかりにエネルギー弾を放つが、執行官の装甲は厚く、かすめるだけでは倒せない。何度か回避と攻撃を繰り返し、精密に同じ場所に直撃を当てていく。そうして、1人を撃破。

 

エコーもブレードで執行官の一人を切り裂き、クロウのライフルが別の敵を仕留める。着実に数は減らしているが、一人一人が手強い。通路戦ということもありレイスたちの動きが次第に制限される。レイスの肩の傷が再び開き、血が滲む。

 

「無茶はするなよ! 生きて、明日を! 」

 

「俺たちの罪過を清算するときまで、生きろ! 」

 

すべては、終わったあとに。ならばその時まで生きねばならない、そう自らに言い聞かせ、レイスは奮い立つ。

 

『隙を作るよ! 』

 

ミラのドローンが電磁パルスを放ち、残る執行官の装甲を一瞬無力化。全員で隙を突き、執行官たちは次々と倒れるが、背後から新たな気配。ゼクスだ。

 

ゼクスは黒い装甲服に身を包み、両手にエネルギーソードを握っている。ヴェルナとは異なる、獣のような威圧感を放つ男だ。

 

「試作体001。貴様がオラクルを壊したことで、俺の計画が加速した。感謝する」

 

「⋯⋯だが、バックアップコアを壊せば、お前の計画も終わる」

 

「コアは既に起動準備中だ。ネオ・クロノスは再び議定府の手に落ちる。そして、貴様らも」

 

3対1、数の優位があったとしても、ゼクスは強力だった。彼のエネルギーソードは、レイスを上回る速度で振り下ろされる。レイスは段階加速を限界まで引き上げ、ソードを回避。

 

エコーがブレードでゼクスを攻撃するが、彼は軽々と回避。クロウのライフルもゼクスの装甲をかすめるだけだ。ゼクスが嘲笑う。

 

「貴様らには、俺を止める力はない。オラクルは復活する」

 

その時、レイスの脳内にフラッシュバックが走る。時間が経ったことにより、ヴェルナが与えた活性化が、彼女も知らない記憶を呼び起こしたのだ。過去、カインがレイスに語った言葉。

 

──レイス、俺たちは自由のために戦う。どんなに辛くても、希望を捨てるな

 

レイスは目を閉じ、深呼吸する。

 

「カイン⋯⋯俺は、希望を捨てない」

 

彼は加速を振り絞り、ゼクスに突進。拳銃とナイフを同時に使い、ガンカタの動きでゼクスのソードを弾き飛ばす。エコーがその隙にブレードでゼクスの装甲を切り裂き、クロウのライフルが彼の肩を撃ち抜く。

 

ゼクスは膝をつき、呻く。

 

「⋯⋯バカな、こんな事が⋯⋯」

 

レイス、エコー、クロウはゼクスを拘束した後、バックアップコアのある研究室へ突入。そこには、紅い光を放つ小型のコアが浮かんでいた。ミラの声が響く。

 

『コアの起動は80%、あと数分で完全起動する! 破壊を!』

 

レイスは拳銃を構え、コアにエネルギー弾を撃ち込む。エコーのブレードがコアの外殻を切り裂き、クロウのライフルが内部の回路を破壊。コアの光が揺れ、研究室が振動する。

 

「終わりだ、ゼクス。俺たちの過去は、もう終わったんだ」

 

クロウがそう告げるが、ゼクスは血を吐きながら笑う。

 

「⋯⋯貴様らが勝っても、ネオ・クロノスは混沌に落ちる。自由など、幻想だ」

 

レイスは立ち上がり、答える。

 

「幻想でも、俺たちが選んだ未来だ。議定府の秩序は、もう要らない」

 

コアが最後の光を放ち、完全に停止。研究室は静寂に包まれる。ゼクスは力尽き、倒れる。レイス、エコー、クロウは互いに視線を交わし、頷く。

 

『コア破壊を確認! ネオ・クロノスは解放された! 市民たちが動き出してる!』

 

地上では、市民たちがリベリオンの旗の下に集まり、自由の炎が、ネオ・クロノスの灰色の空を照らし始めていた。

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