プロジェクト・オラクル   作:刹那木ヤクモ

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鋼鉄の塔攻略作戦

地下鉄基地は、リベリオンの最後の牙城だった。薄暗い照明の下、リベリオンのメンバーたちが中央タワーへの潜入作戦を練っている。壁に投影された設計図には、議定府の要塞とも呼べるタワーの構造が映し出されている。無数の監視ドローン、防衛システム、そして執行官たちが待ち受ける鉄壁の堡塁だ。

 

レイスは設計図を睨みながら、エネルギー拳銃を点検する。肩の傷はまだ疼くが、彼の目は鋭い。エコーが隣に立ち、プラズマブレードを磨きながら言う。

 

「中央タワーは地獄だ。けど、オラクルのコアを壊せば、議定府の計画は終わる」

 

レイスは呟く。

 

「善悪の天秤は真実と未来で傾くべきだ」

 

エコーは笑みを浮かべる。

 

「お前、だいぶ変わったな。昔のレイスが戻ってきたみたいだ」

 

その時、新たな人物が会議室に入ってきた。リベリオンの技術者、ミラ。眼鏡をかけた若い女性で、肩に小型のドローンを乗せている。彼女はプロジェクト・オラクルのデータ解析を担当し、レイスが持ち帰った情報を解読した立役者だ。

 

「レイス、エコー、データに新たな情報が。オラクルのコアはタワーの最上階、議定府の議長室に直結してる。けど、そこにたどり着くには、《ガーディアン》と呼ばれる防衛システムを突破する必要がある」

 

「ガーディアン? 」

 

レイスが眉を上げる。

 

「議定府が開発した自律型戦闘マシンで、人間の執行官以上に速く、強い。オラクルの影響を受けない完全な機械です」

 

ガントが腕を組む。

 

「なら、突破するにはレイスの加速とエコーの戦闘力が鍵だ。他のメンバーは陽動を担当する」

 

レイスは黙って頷く。だが、心の奥ではまだ葛藤が渦巻いていた。議定府を倒すことは、自身の過去と向き合うことでもある。あの裏切りの日。洗脳の真実。そして、彼が失った仲間たちと。

 

◆◆◆◆

 

作戦は夜に実行されることになった。リベリオンは三つのチームに分かれ、中央タワーの外周で陽動を行い、レイスとエコーが内部に潜入する。ミラはドローンを使ってハッキングと支援を行い、ガントは陽動チームを率いる。

 

夜のネオ・クロノスは、監視ドローンの赤い光が無数に瞬く。レイスとエコーは下水道からタワーの地下通路に侵入。暗い通路を進む中、エコーが小声で言う。

 

「レイス、もしオラクルのコアを壊せたら、お前はどうする?」

 

レイスは一瞬足を止める。

 

「⋯⋯分からない。だが、議定府が俺を騙したなら、そいつらに代償を払わせる」

 

エコーは小さく笑う。

 

「それでいい。けど、レイス。未来は私たちで作るんだ。忘れるなよ」

 

通路の先に、最初の防衛ラインが現れた。監視ドローンと自動砲台だ。レイスは段階加速を発動し、流麗な動きで砲台の攻撃を回避。エネルギー拳銃が光を放ち、ドローンを次々と撃墜する。エコーはブレードを振るい、砲台の基部を切り裂く。二人の連携は、まるで一つの生き物のように滑らかだった。

 

だが、奥から新たな気配。ガーディアンの一つだ。巨大な四足の機械で、赤いセンサーアイが冷たく輝く。ミラの声が通信機から響く。

 

「それがガーディアン! 注意して、弱点は背中の動力コアです! 」

 

ガーディアンの攻撃に容赦はなかった。レーザー砲とミサイルが同時に放たれ、通路を炎と衝撃で埋め尽くす。レイスは加速を最大限に引き上げ、持ち味の機動力で攻撃を引き受ける。だが、ガーディアンの速度は人間の執行官を上回り、レイスのコートがレーザーで焦げる。

 

「やはり、速い! エコー! 注意は引く。お前が決めろ! 」

 

レイスが歯を食いしばりながら叫ぶと、それにエコーは頷き、ブレードを手に跳躍、機械の背に飛び乗る。プラズマブレードが動力コアに突き刺さると、ガーディアンは火花を散らし、動きを止めた。だが、その瞬間、別のガーディアンが現れ、エコーを弾き飛ばす。

 

「エコー! 」

 

レイスは加速を振り絞り、エコーを抱えて転がる。ガーディアンのレーザーが二人の頭上をかすめ、壁を溶かす。

 

「大丈夫か? 」

 

レイスが尋ねると、エコーは血を拭いながら笑う。

 

「お前、だいぶ仲間思いになったな」

 

「そんなこと、言ってる場合じゃないだろう」

 

レイスは立ち上がり、拳銃を構える。だが、身体は限界に近づいていた。段階加速の過剰使用で、筋肉が悲鳴を上げ、視界が揺れる。

 

ミラの声が再び響く。

 

「レイス、エコー、ガーディアンの制御信号をハッキングした! 30秒だけ動きを止められる。急いでコアを破壊しろ!」

 

レイスとエコーは同時に動いた。レイスは拳銃でガーディアンのセンサーアイを撃ち抜き、エコーがブレードで動力コアを切り裂く。ガーディアンは爆発、通路に金属の破片が散らばる。第一防衛ラインを、突破したのだ。

 

◆◆◆◆

 

タワーの内部に進むにつれ、防衛システムはさらに厳重になった。監視カメラ、レーザートラップ、そして執行官たちの待ち伏せ。レイスとエコーは息つく間もなく戦い続ける。だが、レイスの心には新たな感情が芽生えていた。エコーとの共闘を通じて、かつての仲間意識が蘇りつつある。

 

エレベーターにたどり着いた時、エコーが突然言う。

 

「⋯⋯あの日のことを、話したい」

 

レイスはエレベーターのボタンを押し、答える。

 

「⋯⋯今か?」

 

「今だ」

 

エコーは真剣な目で彼を見る。

 

「裏切りの日、お前が撃ったのは私の兄だった。名は、カイン。彼はお前を信じてた。けど、今なら分かる。やっぱりお前は操られてたんだ」

 

レイスの胸に鋭い痛みが走る。カイン。リベリオンのリーダーだった男。笑顔が印象的な、熱い理想を持った戦士。レイスの記憶には、彼の血に染まった姿しか残っていない。

 

「⋯⋯そうだろうな」

 

レイスは呟く。

 

「だが、なぜ議定府は俺を選んだ? 」

 

エコーは静かに言う。

 

「お前はリベリオンの希望だった。議定府はお前を壊すことで、俺たちを絶望させたかったんだ。だが、レイス、お前はまだここにいる。俺たちと一緒に、未来を切り開ける」

 

エレベーターが動き出す。レイスは拳を握りしめ、答える。

 

「カインのことは⋯⋯取り戻せない。だが、議定府を倒せば、未来は変わる。カインの信念のバトンを、俺たちが次の世代に託すことができる」

 

「⋯⋯それでいい。兄さんの分まで、戦おう」

 

◆◆◆◆

 

エレベーターが最上階にたどり着き、議定府の議長室が目前に迫る。だが、そこに一人の男が待ち受けていた。クロウだ。それは、ミラからの報告で知っていた。彼はリベリオンによる捕縛から逃れ、修復された装甲服をまとい、新たなプラズマライフルを手にしている。

 

「レイス、エコー。貴様らの反逆はここで終わる。⋯⋯議定府の秩序は、絶対だ」

 

レイスは拳銃を構え、冷たく答える。

 

「クロウ、お前もオラクルの犠牲者だ。目を覚ませ」

 

クロウは笑わず、ライフルを撃つ。レイスは段階加速で回避し、エコーと共に反撃。だが、クロウの動きは以前よりも速く、まるでオラクルの強化を受けているようだった。

 

戦いは熾烈。だが、レイスの拳銃とエコーのブレードがクロウを追い詰める。彼の装甲は異常な耐久力を持つが、その対策も講じてある。レイス達の目的は時間稼ぎ。

 

 

レイスは段階加速を使い、クロウのライフルを弾き飛ばす。だが、その瞬間、身体が崩れ落ちる。今までの戦いが、彼の予想を超える負荷を与えていたのだ。

 

「レイス! 」

 

エコーが叫び、彼を支える。好機と見たクロウがナイフを抜き、二人に迫る。

 

その時、ミラのドローンが突入、電磁パルスを放つ。レイスとエコーが切り開いた突破口からの増援だ。クロウの装甲が一瞬停止し、エコーがブレードで彼の腕を切り裂く。クロウは膝をつき、呻く。

 

「なぜだ⋯⋯なぜ、議定府を裏切る?」

 

クロウが呟く。

 

レイスは立ち上がり、答える。

 

「議定府は人類の未来を奪う。俺はそれを止める。クロウ、お前も人間だ。戦え」

 

クロウは沈黙し、目を閉じる。だが、その時、議長室の扉が開き、冷たい声が響いた。

 

「無駄な抵抗だ、レイス」

 

議定府の議長、そしてオラクルの創造者、ヴェルナ。彼女の背後には、無数のガーディアンが控えている。

 

レイスとエコーは互いに頷き、武器を構える。

 

「未来は、俺たちが切り開く」

 

戦いは、新たな段階へ突入した。

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