プロジェクト・オラクル   作:刹那木ヤクモ

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取るに足らない虫の反乱

ネオ・クロノスの中央タワー、議長室の扉が開いた瞬間、冷たい空気がレイスとエコーを包んだ。議定府の議長ヴェルナは、白いローブに身を包み、まるで神の使徒のような佇まいで二人を見下ろしていた。彼女の背後には、無数のガーディアンが赤いセンサーアイを光らせ、機械的な威圧感を放っている。室内は無機質で、巨大なモニターがプロジェクト・オラクルのデータを映し出し、紅い光が壁を照らす。

 

「レイス、エコー。よくぞここまで来た」

 

とヴェルナが静かに言う。彼女の声は穏やかだが、底知れぬ冷酷さを帯びていた。

 

レイスはエネルギー拳銃を構え、冷たく答える。

 

「ヴェルナ様⋯⋯いや、ヴェルナ、オラクルを止めろ。人類の未来を奪う権利は誰にもない」

 

エコーがブレードを握り、続ける。

 

「お前の秩序は、奴隷の鎖だ。私たちはそれを断ち切る」

 

ヴェルナは微笑む。だが、その目はまるで死者のように感情を欠いていた。

 

「未来? 秩序こそが人類の未来だ。貴様らのような混沌の種は、排除されるべきだ」

 

レイスは呟く。

 

「善悪の天秤は、自由と未来のためにある! 」

 

その言葉に、エコーが小さく笑う。

 

「やっと、らしいこと言えるようになったな、レイス」

 

だが、会話はそこで終わる。ヴェルナが手を振ると、ガーディアンが一斉に動き出し、議長室は戦場と化した。ガーディアンのレーザー砲とミサイルが、室内を炎と衝撃で埋め尽くす。レイスは無理を承知で段階加速を発動し、回避を行いながらエネルギー拳銃が放つ。それらは、ガーディアンのセンサーアイを正確に撃ち抜いていく。だが、ガーディアンの数は多く、先の戦闘から休息を取れていないレイスの身体は、悲鳴も上げられなくなっていた。

 

ミラのドローンは一時後退し、ハッキングを行う。援護が一時途切れるが、それでもエコーはプラズマブレードを振るい、ガーディアンの装甲を切り裂く。彼女の動きは鋭く、まるで炎が踊るようだ。

 

「無理を言うぞ、レイス! 右側を抑えろ! 私が左を片付ける! 」

 

レイスは頷き、加速を最大限に引き上げる。ガーディアンのミサイルが彼の周囲で爆発するが、時間感覚が緩やかに流れる中、彼は軌跡を読み、回避する。拳銃を連射し、ガーディアンの動力コアを破壊。だが、新たなガーディアンが次々と現れる。

 

通信機からミラの声が響く。

 

『レイス、エコー! ガーディアンの制御信号をハッキング中! あと10秒、耐えて! 』

 

レイスは歯を食いしばり、エコーと背中合わせで戦う。二人の連携は完璧だった。エコーのブレードがガーディアンを切り裂き、レイスの拳銃がその隙を突く。だが、ヴェルナは静かにモニターを操作し、ガーディアンの動きをさらに強化する。

 

「無駄だ。オラクルの力は、貴様らの想像を超える」

 

その時、ミラのハッキングが成功。ガーディアンの半数が一瞬停止し、レイスとエコーはその隙を突いて残りを破壊。だが、ヴェルナは動じず、別のスイッチを押す。議長室の床が開き、巨大なガーディアンが現れた。従来のものより二倍の大きさで、全身が黒い装甲で覆われている。

 

「これがオラクルの守護者。そして、貴様らの終焉だ」

 

巨大ガーディアンの攻撃は、レイスとエコーを圧倒した。レーザー砲が壁を溶かし、ミサイルが床を砕く。レイスは加速を限界まで引き上げ、ガンカタで攻撃を回避するが、身体が悲鳴を上げる。血が口元に滲み、視界が揺れる。

 

エコーが叫ぶ。

 

「レイス、死ぬなよ! 一緒に、戦うんだろ!」

 

レイスは答える。

 

「ああ⋯⋯だが、こいつを倒さなきゃ未来はない」

 

二人は再び連携し、巨大ガーディアンの弱点を狙う。ミラのドローンがガーディアンのセンサーアイに電磁パルスを撃ち込み、一瞬の隙を作る。レイスは加速を使い、ガーディアンの背中に跳び乗り、拳銃を動力コアに撃ち込む。エコーが同時にブレードで装甲を切り裂き、ガーディアンは爆発と共に倒れる。

 

だが、その瞬間、ヴェルナが新たな装置を起動。議長室のモニターに、レイスの過去の映像が映し出される。裏切りの日。燃えるリベリオンの拠点。カインを撃つレイスの姿。そして、議定府の科学者たちが彼の脳にナノマシンを注入する場面。

 

「見ろ、レイス。貴様は私の創造物だ。オラクルの試作体001。貴様の全ては、議定府が与えたものだ」

 

レイスは映像に釘付けになる。カインの血に染まった手。叫び声。議定府の冷たい笑い。記憶の霧が晴れ、真実が彼を突き刺す。

 

揺らぐ。過去の罪状が、レイスに《資格》があるのかどうかを問うてくる。

 

「⋯⋯やはり、俺は──」

 

その時、エコーがレイスの肩を掴む。

 

「レイス、過去は変えられない。けど、未来は変えられる! 折れるな、立て! 」

 

──カインの目指した未来へ。その言葉が、レイスに再び火を灯した。

 

「未来? 貴様らが変える未来など、混沌にすぎん。オラクルは完全な秩序をもたらす。人類は私の下で、永遠の平和を得る」

 

レイスは拳を握りしめ、拳銃を構える。

 

 

「平和だと? 奴隷の鎖を、平和と呼ぶのか? 」

 

その時、議長室の扉が爆発し、クロウが現れた。彼の装甲はボロボロだが、目はまだ議定府への忠誠を宿している。

 

「レイス、エコー。貴様らをここで仕留める」

 

レイスはクロウを睨む。

 

「クロウ、お前もオラクルの犠牲者だ。なぜ分からない? 」

 

クロウは一瞬迷うが、すぐにライフルを構える。

 

「議定府は俺の全てだ。貴様の言葉は無意味だ」

 

戦闘が再開された。レイスとエコーはクロウとガーディアンの残骸を相手に戦う。レイスは加速を振り絞り、クロウの攻撃を回避。エコーのブレードがクロウの装甲をかすめるが、彼は異常な耐久力で立ち続ける。

 

「クロウ、目を覚ませ! お前も人間だ! 議定府の駒じゃない! 」

 

クロウの動きが一瞬止まり、静かに呟く。

 

「⋯⋯俺は、何を信じればいい?」

 

レイスは答える。

 

「自分を信じろ。俺も、そうやってここまで来た」

 

議定府ではなく、自分を。クロウは初めて、自分の存在に疑問を持った。なぜ従ってきたのか、何が秩序をもたらすのか。

 

そんなクロウの葛藤など気にせず、ヴェルナは謳う。

 

「愚かな。人間の意志など、オラクルに比べれば塵芥に過ぎん」

 

「なら──」

 

レイスはヴェルナに銃口を向ける。

 

「その塵が、貴様を倒す」

 

だが、ヴェルナはジョーカーを切る。彼女はオラクルのコアを直接操作し、レイスの脳内のナノマシンを活性化。突然、レイスの頭に激痛が走る。彼は膝をつき、過去の記憶がフラッシュバックする。カインの死。裏切り。議定府の声。

 

「レイス、抵抗は無意味だ。お前は私の傀儡だ。永遠に、永遠に」

 

エコーが叫ぶ。

 

「レイス、負けるな! お前は人間だ! 私たちの未来を信じろ! 」

 

エコーの声が、レイスの心に届く。彼は立ち上がり、ナノマシンの影響を振り切る。ヴェルナに向かって突進し、拳銃を撃つ。だが、ヴェルナはシールドを展開し、攻撃を防ぐ。

 

「無駄だ」

 

とヴェルナが笑う。

 

「オラクルのコアは私の命と繋がっている。コアを壊すなら、私を殺せ」

 

レイスとエコーは互いに視線を交わす。コアを壊すには、ヴェルナを倒さなければならない。だが、彼女の背後には新たなガーディアンが控え、クロウもまた立ち上がる。さすがに骨が折れるぞ、と思考しながら、レイスは戦術を組み立てる。だが──

 

「レイス、エコー。──俺も、共に戦わせてくれ」

 

クロウがライフルをヴェルナに向ける。

 

「⋯⋯クロウ」

 

「俺も、俺の感じた正義のために、戦いたい」

 

その瞬間、議長室は新たな戦いの舞台となった。レイス、エコー、クロウ。三人の力が一つになり、人類の未来を切り開く戦いが始まる。

 

「未来は、俺たちが作る」

 

とレイスが呟く。拳銃を握る手は、初めて揺らぎなく強かった。

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