ネオ・クロノスの中央タワー、議長室は戦火に包まれていた。床はガーディアンの残骸で埋まり、壁のモニターはプロジェクト・オラクルのデータをちらつかせながら火花を散らす。議定府の議長ヴェルナは、シールドに守られながら冷たく微笑む。彼女の背後には、新たなガーディアンが無機質な赤い目を光らせ、レイス、エコー、クロウを睨みつけている。
レイスはエネルギー拳銃を握り、ヴェルナを睨む。脳内のナノマシンはまだ疼く。だがもう、彼の意志は揺らがない。
「ヴェルナ、お前の秩序は終わる。オラクルも、議定府も、俺たちが壊す」
エコーがプラズマブレードを構え、続ける。
「人類の未来は、私たちが取り戻す。お前の傀儡にはもう誰も従わない」
クロウは無言でプラズマライフルを構える。彼の目は、議定府への忠誠と人間性との間で揺れていたが、今は決意に満ちている。
「レイス、エコー⋯⋯議定府に操られた、それが免罪符にはならない。だが、罪を犯すのも、もう終わりだ」
ヴェルナの微笑が消える。
「愚かな試作体ども。オラクルは私の命と繋がっている。私を殺さずして、コアを壊すことはできない。そして、貴様らにその力はない。我が大義のために、ここで果てよ」
レイスは、言葉を紡ぐ。
「大義、理想。そんなものは善悪の天秤には何の影響もない。俺の天秤はすでに、傾いている。未来は、俺たちが作る! 」
その言葉に、エコーが笑う。
「その調子だ、レイス。行こうか! 」
戦闘が再開された。ガーディアンの群れが一斉に動き出し、レーザー砲とミサイルが議長室を埋め尽くす。
レイスは回避と攻撃が一体となった、極限状態の動きで応戦する。レイスの身体はとっくに限界を迎えている。だが、限界をも超越する意志の力が、彼を突き動かしていた。
エコーはブレードを振るい、ガーディアンの装甲を切り裂く。彼女の動きはまだ鋭く、疲れを微塵も感じさせない。クロウはライフルで遠距離からガーディアンを狙い、レイスとエコーの動きを援護する。三人の連携は、議定府の機械的な秩序に対する人間の意志そのものだった。
通信機からミラの声が響く。
「レイス、ヴェルナのシールドはオラクルのコアからエネルギーを供給されてる! コアを直接攻撃しないと、シールドは破れない!」
レイスはヴェルナの背後、議長室の奥にそびえる巨大な装置、オラクルのコアを見つめる。深紅の光を放ち、ナノマシンのネットワークを制御する心臓部だ。
「エコー、クロウ、コアを狙え! ヴェルナは、俺が引きつける! 」
「了解した! クロウ、援護を頼む! 」
クロウは無言でライフルを構え、ガーディアンの群れを牽制。レイスは加速を最大限に引き上げ、ヴェルナに突進。彼女のシールドがエネルギー弾を弾くが、レイスはそれでも彼女の注意を引きつける。
ヴェルナは冷静に装置を操作し、新たなガーディアンを呼び出す。
「無駄だ、レイス。貴様の加速も、オラクルの産物だ。私の創造物が私に逆らうなど笑止千万」
レイスは歯を食いしばり、答える。
「この力は、貴様のものじゃない! 人類の未来のためのものだ! 」
「そうか、残念だ」
ヴェルナはオラクルのコアを通じてレイスのナノマシンを再び活性化。激痛が彼の頭を襲い、動きが一瞬止まる。過去の記憶がフラッシュバックする。だが、それがレイスに迷いを生むことは、ない。
「俺は、もう折れない! ヴェルナ⋯⋯貴様の秩序は、大義は、俺が壊す! 」
レイスは加速を振り絞り、ヴェルナのシールドに拳銃を連射。シールドにひびが入るが、完全に破るには至らない。エコーとクロウはコアに近づき、攻撃を始めるが、ガーディアンの猛攻に阻まれる。
その時、ミラの声が響く。
「分析完了! みんな、コアのエネルギー供給ラインを切断すれば、シールドが弱まる! ラインはコアの基部、赤いケーブル! 」
レイスはヴェルナを引きつけながら、エコーとクロウに指示を出す。
「ケーブルを切れ! 俺が時間を稼ぐ!」
エコーはブレードを手にコアに突進。させまいとガーディアンが彼女を狙うが、クロウのライフルが正確にガーディアンを撃ち抜く。エコーがケーブルにブレードを振り下ろし、火花が散る。コアの光が一瞬弱まり、ヴェルナのシールドが揺れる。
戦局を変える一手、全員で作ったまたとない好機である。
「貴様ら⋯⋯! 」
ヴェルナの声に初めて怒りが滲む。彼女は新たな装置を起動し、議長室全体に電磁パルスを放つ。レイスの拳銃が一瞬機能を停止し、エコーのブレードも光を失う。
「今だ! 」
ヴェルナが叫び、ガーディアンが一斉に襲いかかる。レイスはナイフを抜き迎え撃とうとするが、クロウがレイスの前に立ち、ライフルでガーディアンを牽制。
「レイス、俺が抑える! コアを!」
クロウの言葉に、レイスは一瞬驚く。かつての忠実な執行官が、自らの手で議定府の秩序を破壊しようとした瞬間だった。
「クロウ⋯⋯分かった」
エコーとレイスはコアに突進。エコーのブレードが再びケーブルを切り、レイスのナイフが別のラインを断ち切る。コアの光がさらに弱まり、ヴェルナのシールドが消滅。
「チィッ! 」
ヴェルナが叫ぶ。彼女は自ら武器を手に、レイスに襲いかかる。だが、レイスは加速を振り絞り、ヴェルナの攻撃を回避。拳銃を再起動させ、彼女の肩を撃ち抜く。
ヴェルナは膝をつき、血を流しながら笑う。
「貴様ら⋯⋯コアを壊しても、オラクルは止まらない。私の死は、貴様らの終焉を意味する」
レイスは銃口をヴェルナに向ける。
「なら、貴様の死から始める」
だが、エコーがレイスの腕を掴む。
「待て、レイス。同期している彼女を殺せば、コアが暴走するかもしれない。ミラ、解析は進んでるか? 」
ミラの声が通信機から響く。
「みんなのおかげでコアの障壁が薄くなったからね。制御コードをハッキング中! あと数分、時間を稼いで! 」
レイスはヴェルナを睨み、銃を下ろす。
「動くなよ」
ヴェルナは笑いを続ける。
「愚かな⋯⋯オラクルは私の命を超える。貴様らの未来など、存在しない! 」
「レイス、エコー、ガーディアンが再起動した! 」
新たなガーディアンの群れが議長室に突入。レイス、エコー、クロウは再び背中合わせで戦う。ミラのハッキングが終わるまで、彼らは時間を稼がねばならない。
「私たちは未来を切り開く。どんな犠牲を払ってもな」
レイスは頷く。「ああ。カインの分まで、戦う」
クロウも静かに言う。「俺も…自分の未来を取り戻す」
三人は武器を構え、ガーディアンに立ち向かう。議長室は光と衝撃で揺れ、ネオ・クロノスの未来をかけた戦いが続く。レイスの心には、確かな決意が宿っていた。人類の未来を、エコーと共に切り開くという決意が。