事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】   作:山本山 

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第1話

玲奈が事故にあったと連絡を受けた礼二とその場にいた翔太は、顔面蒼白になりすぐさま病院に駆けつけた。

 

瑛二は遅れて情報が入り上司に掛け合い無理やり休みをとり血相をかえて駆けつけた。慌てて駆けつけたから、手ぶらのまま、礼二、翔太の横にならんだ。

 

その頃辰也も到着したばかりの出張先で玲奈の事故を知り、そのままトンボ返りで駆けつけた。

 

先に到着していた礼二、翔太、瑛二の3人は帰る様子も見せず、ただ玲奈が目覚めるのを待っている。

医者の説明では追突された際の脳震とうと擦り傷だけで大事は無いとの事だった。が、誰もが彼女が目覚めて声を聞くまで安心出来ずにいる。

 

青木おばあさんが入院手続きを終えて病室に戻ると大の男達が沈痛な面持ちで座っているのをみて、

 

( 玲奈がこんなにも大切にされているなんてね、去年とは随分違うもんだね。玲奈、心身共に癒えたら目覚めておやり。あまり待たせるとこの子達が倒れちゃうよ )と

 

胸の内で呟いていた。

礼二が気を利かせて温かいスープを注文しに病室を出た。と、同時に智昭と茜がやってきた。茜は玲奈に駆け寄り

 

「ママ、」と

 

声を掛け、祈る様に手を握った。

ママの綺麗な手の温もりを感じていた。

智昭は玲奈が眠る姿を見てずっと息苦しさを感じていた。

事故にあった事に驚いているのか目を覚まさないことに苛立っているのか、わからず、ただじっと見つめていた。

 

 

夜が明け人々が動き出す前の早朝に、晴見、義久とがやってきた。2人は約束はしていなかったのだが、玲奈の事故を知り少しの時間を見つけてお見舞いにきたのだった。

晴見と義久は顔を見合わせて互いに少し照れた風にも見えたが、病室の扉を開けた時は目を見開いた。

青木おばあさんは丁寧に挨拶をし病状を説明したあと困った顔で言った

 

「誰も帰らなくてね、ちょっとむさ苦しい... ですね」と

 

苦笑いした。

 

 

 

 

玲奈が目覚めたのは朝の忙しさが一段落した頃だった。

日頃の疲れもあり医者の見立てより眠っていたようだ。青木おばあさんと茜はスッキリと目覚めた玲奈を見て大きく安堵のため息をついた。

 

「ママ、大丈夫? 頭痛くない? 今日はお休みしなさいってお医者さんが言ってたよ。茜とおばあさんで看病するね」

 

玲奈は素直に頷いた。

 

「ママ、ママのお手々綺麗だね。1番好きな手だよ。」 と

 

茜はありったけの気持ちを込めて伝えた。

玲奈はそっと頬を撫でほほ笑んだ。

 

玲奈は病室を見渡すと見知った顔が心配そうに覗いているのに気がつき、慌てて言葉を発した

 

「ご心配お掛けしました。身体の方は大丈夫です。皆さんお忙しいでしょうから、、」と

 

言い終わらないうちに、

 

「玲奈!」と

 

それぞれが声を同時に掛けてきたものだから、玲奈は目をパチパチさせながらひとりひとりに挨拶をすまた。

 

礼二は

 

「玲奈、しばらくは無理するな、元気になってからで充分だ、君がいないとどうにもならないからね。」 と。

 

それを聞いていた翔太は慌てて

 

「玲奈さん、俺、やれる事増えたから安心してまだ未熟ではあるけどもう少ししたら、、待ってて」と

 

二人は言葉を交わして病室を後にした。

 

瑛二はゆっくりと近づいて

 

「事故と聞いてジッとなんてしてられなかったんだ、 よかった貴女の声を聞けて。やっと巡り合った人を失うのかと思ったら……また困らせてるみたいだね、ゴメン。だけど今は我慢できないな」と

 

たまらずそっと頭を撫でストレートな愛情を向けた。

 

辰也はそのやり取りをみて焦る気持ちをぐっと堪えていた

 

「玲奈、身体はどう? 何か出来る事あれば声かけてよ。俺はいつでも準備出来てるから。又お見舞にくるね。じゃぁ。」と

 

できるだけ軽く話して仕事に向かった。

 

智昭はその様子を眺めていた。息苦しさはまだ続いている。

玲奈が目覚め安堵していたはずなのに 彼らの玲奈への慕情がうっとしくてたまらなかった。

 

「玲奈、後のことは任せろ。お前はまだ俺の妻だ」と

 

言い残し藤田おばあさんのお見舞いに向かった。

 

 

皆が退室したあと、青木おばあさんと茜は玲奈のすぐ側で話をしていた。

 

「おばあさん、ママって人気ものなんだね。パパみたいにかっこいい人ばっかりだったね。全然知らなかったぁあの人達ママの事好きなのかな?」

 

青木おばあさんは首を傾げた。

 

「茜ちゃんパパはママの事話してなかった?」

 

茜は不思議に思ったが最近ママと会えない事を聞いているんだと思い

 

「パパがねママはお仕事が本当に忙しいんだって。パパより忙しからお家に帰ってこられないって。でも、ママはどこで寝てるの? ママはおばあさんの家にいるの? 茜のお家じゃどうして駄目なの?」

 

青木おばあさんは言葉に詰まった。

茜も先ほど智昭が 「お前はまだ俺の妻だ」と言った事にひっかかっていた。まだ妻ってなんだろう? ずっとママはパパの奥さんなのに。

 

目を閉じたまま茜とおばあさんの会話を聞いていた玲奈はゆっくり目を開けて茜を見つめた。

 

「茜ちゃん看病してくれてありがとう。少しお話しようか。」

「うん。でも無理しないでね。」

 

玲奈は風邪を引いた時小さな手でお世話をしてくれていた幼い頃の茜を思い出していた。胸に込み上げてくる想いを丁寧に仕舞いながら話した。

 

「茜ちゃん、パパとママはお別れするの。 パパはもう手続きをしているわ。」

 

青木おばあさんは茜を抱きながら一緒に耳を傾けていた。

 

「茜ちゃんが優里おばさんとパパと一緒に過ごしているの前から知ってるわ。A国に会いに行ったあの日覚えてるかしら? あの日はねママの誕生日だったの。3人でお食事したかったんだけど、パパと茜ちゃんは優里おばさんと過ごしたでしょ? ママとても悲しかったの。」

 

茜は固まったままでおばあさんの腕にしがみついていた。

 

「ママね、パパと茜ちゃんの事とても大切で愛していたんだけど、パパと茜ちゃんはママじゃなくてもいい事に気がついたの。 これからママはママの好きな事するって決めたわ。茜ちゃんのパパとママには変わりないけど、これからは今までの様に会う事は出来ないわ。」

 

話し終えた玲奈の瞳には後悔も未練も無くただ穏やかだった。

玲奈はそっと愛おしいものを包む様に茜の頬に触れてた。

玲奈の瞳からは全てを洗い流す様に涙が流れていた。

茜は胸が苦しくて仕方なかった。ただひと言

 

「そんなつもりじゃなかったの...」 と

 

玲奈は「うん。」とだけ返した。

 

「ママ、、又会いにきていい?」

 

「そうね、その時がきたらね」と

 

玲奈は答えた。青木おばあさんはそっと茜に寄り添い

 

「ママはまだゆっくりしなきゃいけないから、茜ちゃんは今は藤田おばあさんのお見舞いに行きましょうね」と

 

どこまでも優しく抱きしめて言い聞かせた。

玲奈には安心して休む様に目配せをしてから、病室を後にした。

 

玲奈は静まりかえる病室に身を委ねていた。

深く息を吐いたあとしばらく息を整えた。

スマホに目をやると、先生からメッセージが届いているのに気づいた。

 

「やすむように」

 

簡潔な文章に小さく笑った。






■ 登場人物相関図(第1話・入院時) ■

━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 中心の家族(夫婦別姓) 】

◆ 藤田 智昭(夫/藤田グループ社長)
  ↑
 (夫婦)
  ↓
◆ 青木 玲奈(妻/長墨ソフトAI技術者)
 ※専業主婦から現場復帰を果たしたが、現在事故により入院中。

◆ 茜(智昭と玲奈の愛娘)

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【 玲奈の職場と仕事仲間(長墨ソフト・軍関係) 】

◆ 湊 礼二(長墨ソフトCEO・玲奈の兄弟子)
◆ 秋山 翔太(玲奈の同僚)
◆ 真田教授(玲奈の師匠)
 └─→ 復帰した玲奈の類まれな才能を高く評価し、支える存在

◆ 瑛二(軍のパイロット)
 └─→ 玲奈が軍基地で技術作業をしている際に出会う

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【 玲奈のルーツと因縁(大森家・青木家)】

◆ 大森 優里(玲奈の異母妹)
 └─→ 玲奈の居場所に対し、激しい嫉妬を抱く
◆ 大森 正雄(玲奈の実父)
◆ 大森 佳子(正雄の現在の妻)
◆ 青木おばあさん(玲奈の祖母・青木家の過去を知る存在)

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【 智昭のしがらみ(藤田家・権力)】

◆ 藤田おばあ(藤田家の重鎮)
◆ 清司・辰也(智昭の気心の知れた幼馴染)
◆ 晴見・義久(政府の重役)






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