事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】 作:山本山
長墨ソフトの受付嬢をして早3年目の保田美紗子。いつもの様に朝の身支度をし、同じ朝食を食べて出勤する。今日は早番なので電車は空いている。よく晴れた日でなんだか気分上々。恋愛話が好きだけど今の所想い人もいない。けれど陽気な友達がいれば楽しく過ごせてしまうので、恋はまだ遠いのかもしれない。長墨ソフトに入社した動機は至って単純。社長がかっこよかったからだ。湊礼二さん。時代の寵児と言っても過言ではない存在。ダメ元で受けた入社試験に運良く通ったのだ。美紗子はもしかしたら、ワンチャンあるかも?!と期待したがやはり次元が違い過ぎておとぎ話みたいなものだと痛感し諦めた。
大きな声では言えないが今はもっぱら鑑賞対象だ。そして、去年の初秋に復帰した青木玲奈さん。復帰と何故知っているかというと、同期入社で経理・総務課の犬伏さんからの情報。青木さんは派手な装いもなければ薄化粧なのに発光してるのか?と疑うほどの美女だ。美紗子の鑑賞対象に追加された人。社長と旧知の仲らしく初めは恋人かと思ったがどうもビジネスパートナーらしい。噂でしかないが青木さんは結婚してお子さんもいらっしゃるとか?ただ見た事も話もしないので何とも言えないらしい。それから技術者の追加募集で入社した秋山翔太さん。ビジュアルがとんでも無い事になってる。ただ立ってるだけで人集りが起きてしまう。微笑みかけられた日には男女問わず倒れるんじゃないか?と心配してしまう程だ。こちらも美紗子の鑑賞対象に追加されている。社内の人気を独占している人達だ。そして、今日青木さんが事故から復帰するらしいとの事。今日早番で良かった。朝から受付で青木さんを拝めるチャンスなわけだ。
クリーンスタッフの方々はもう仕事を終えようとしていた。
「おはようございます。お疲れ様です」
笑顔で挨拶をする美紗子。
「おはようございます。今日もいい笑顔だね仕事頑張ってね」
スタッフさんからの返答を頂く。
「ありがとうございます」と返した。
朝の挨拶は基本だ。阿呆でも出来るのだから必ずしなさいと親から躾けられた。お陰様で何処に行っても挨拶だけは褒められる。
これで今日も1日OKと心で呟く。受付の机と周辺を軽く拭き掃除を済ませた。受付業務開始10分前、手鏡で笑顔のチェックと身だしなみのチェックをして同僚の真貴とスタンバイ。
今日の美紗子の仕事がはじまる。
始業時間と関係無く早く出社する人もちらほらいる。
「おはようございます」と
挨拶すれば おはよう と返してくれる人もいれば会釈してくれる人、手を挙げて挨拶してくれる人と様々で受付から観察してると割と皆さんの機嫌が見えてくるものだから不思議。
そうこうしてたら発光してる人が近づいてきた青木さんだ!青木さんの方から
「おはよう」と
挨拶してくれた。本調子では無さそうで心配になり思わず
「おはようございます。青木さん、もう大丈夫なんですか?ご無理なさらないでくださいね」と
声をかけてしまった。美紗子は余計な事だったかな?と一瞬心配したが、青木さんからは
「ご心配ありがとう」と
優しく微笑んで返答してくれた。美紗子は青木さんの女神の微笑みに立ち眩みしそうだった、つい同僚の真貴に
「ねぇ!見た!今の青木さん、本当女神かと思っちゃったわ。あの微笑みめちゃくちゃ綺麗だったぁー」
同僚の真貴も目撃していたので興奮して続けて話す。
「仕事も無茶苦茶出来てさ、あんなに目を引く美人よ。なのに私達にもいつも挨拶してくれるのよ。本当素敵だわ。私が男なら絶対口説くわ」
美紗子も仕事中だというのに話し込む
「フフ、わかる。生まれ変わったら青木さんみたいに生まれたいわね」
真貴と2人仕事を忘れ盛り上がってしまった。
すると、優雅に近づく男性が1人。
「君達の意見には完全に同意だけどね。私語には気をつけて。おはよう。」
異次元紳士の湊社長だった!2人は顔を見合わせて直ぐさま謝罪をし頭を垂れる。
「失礼しました」
頭をあげた時に見えたのは、青木さんの元へ小走りで駆け寄る湊社長の後ろ姿だった。美紗子と真貴は思わず
「社長ファイトです」と
囁き合っていた。朝の出社ラッシュが過ぎると受付も来訪者がない限り静かなものだ。今日の来客予定リストをみて珍しい事に午前の来客が無かった。美紗子が小声で真貴に話しかける。
「ねぇ、今朝の青木さんと湊社長最高だったよね!あの女神の微笑みに揺らがない人っているのかしら?そんな人いたら節穴よね。あの湊社長さえもメロメロなんじゃない?」
「だよね〜異次元紳士が普通の紳士に見えちゃうくらいだったもの。あの社長が可愛く見えるってありえる?」
「そうなのよ!!あのギャップにまたファン増えたんじゃないかな?社長の浮いた話全然聞かないからさやっぱり青木さんに想い寄せてそうじゃない?」
「どうなんだろう、この間お見合いがあったとか風の噂で聞いたけど、それっきり何にもないもんね。技術部の同僚がね、湊社長は青木さんの意見を1番重要視してるって言ってたわ。特別なのはたしかよね。」
そう会話していると、一瞬壁が揺れた様な気がした。美紗子が
「ん?地震??」
真貴も一瞬揺れた様な気がしたので受付に飾ってある花を見た。揺れていない。2人して??となっていたが気の所為なんだとおちつく。真貴が
「そういえば、感の鋭い先輩がたまにお喋りしているとザワっとする事があるって言ってたなー」
「えぇ、怖いじゃん、、」
「あ、でもそんなんじゃないんだって怖いとは無縁のなんていうか、はしゃいでる??って言ったかな」
「えっ?はしゃぐ?今の私達みたいなはしゃぐで合ってる?」
「そうそう(笑)面白いよね(笑)」
「一緒に、はしゃぎたいよね(笑)」
ザワッ
「?!」「?!」
「感じた?」「感じた!感じた!」
「何となくだけど私達と同じ感覚だったりしてね(笑)」
「恋バナ好きなのかな?フフフ」
「美紗子、お客様がご来社よお顔直して。」
「了解。」
午前の業務を終えて早い目のお昼に向かう。
食堂にはそこそこの人がいる。
今日は何だか混んでる。早番の時は割と空いていて好きな窓際に座れたのに今はお気に入りの席は埋まってる。女子率高いな?と何気に食堂を見回したら原因が判明した。秋山翔太さんが食事をしている!!こんな時間に見た事ないのに。美紗子は深く納得した。
「女子のネットワークの強さを目の当たりにした気分だわ。」1人呟く。
美紗子は空いてる席に腰を降ろし食事をはじめる。
ふと視線を前にむけると偶然にも翔太が机二つ挟んで真正面に座ってる。さっきまでいた男性社員が食事を終えて席を立った様だ。
(えーーちょっと待って恥ずかしい、私視界に入ってる、入ってるよね?いやいやそもそも見てないか(笑)はー、どっちでも関係ないか。んでも、何であんなにかっこいいのよ?まってまって髪型が、男子のハーフアップですって!!はぁ〜やり過ぎですよ翔太さん!!固まるって!えっ?もしや女子全員倒したいのかしら??ほらぁぁ〜斜め前の女性社員動き止まってんじゃん。わかるよー!私も止まったわよー!フライ食べてる場合じゃないわよねーー。ウンウン。わかりみがエグいですよ!はっ、右横の貴女もですか??ですよねーー。スプーン止まってますよ!!スープがこぼれちゃうわよ!ほら、正気を取り戻して!!、これ以上翔太さん見たら翔太さんもご飯食べづらいかもしれないわ、駄目よ美紗子、いや、こんなチャンス滅多にないのよ。翔太さん、ごめんなさい。最後に少しだけチラっとだけ、コレが最後よ。できるだけ自然にアジフライをひと口運びながら、うわ、ちょっとひと口大きかったわ、でも、コレが今日のラストチャンスこのままいくわ。)
いつもより大き目の口を開けてた美紗子。偶々翔太の目線と合う。翔太はクスっとしすぐに目線は外れた。そのまま席を外しオフィスに戻っていった。
(んなぁーーー!!!なんて日だぁーーー!!!翔太さんの視界に入ったよね??入ったよね?ちょっと笑ってなかった?いや笑われた??えぇい、どっちでもえーわ!!大口を笑われても構わない!!真貴に報告しなきゃ、、翔太さんのハーフアップからのクスッは心臓止まるって。斜め前の方ほら完全に固まってる。大丈夫。笑われたの私だから、貴女様は翔太さんのクスッと心に刻んで下さい、右横の貴女スープこぼれてるわ。そりゃ貴女翔太さんのクスッと貴重ですよ。私達同士ですわ。)
心は通じる様でそう思った時お二方と順に視線が合い頷きあった。美紗子は仲間をみつけた。
ドラクエかっ、、
美紗子は真貴の元へと急いで戻った。
窓際のカーテンがやけに揺れていた。
休憩時間はまだ残っている。受付専用の待機室で時間まで時間を潰す。休憩室を覗いた真貴をみつけて、美紗子は我慢出来ず話しかける
「真貴〜!食堂で誰見たと思う?」
「ん?まだ早い時間でしょう?誰だろ?」
「翔太さん!珍しくこの時間にいてたのよ。女子率高かったわー。真貴、残念だったね。私が先に休憩入ってごめんね。」
「いいよ(笑)むしろ先に行ってもらってよかったよ(笑)で、どうだったの?」
「ハーフアップです。たまらん。しかも、クスッと頂きました。」
ザワッ、、、
「?!」「?!」
「壁?何か壁がザワッとした?」と
美紗子が呟くと真貴も大きく頷く。
2人当時に「壁だね」
クスクスと笑って何だか幸せな気分になってきた。美紗子の休憩時間は終了。身なりを整えて午後の業務に就く。真貴はお昼休憩に向う。
遅番との交代は午後14時だ。美紗子は仕事モードに切り替えた。事務作業をこなしがら来訪者の対応と電話対応と午前と違って忙しく過ごした。
遅番の人と引き継ぎを終えたら退社。退社の前に真貴と食堂でコーヒーでも飲もうとなり2人食堂に向かい、美紗子は昼食の時にあった出来事を一通り真貴に話して満足して食堂を後にする。
すると、前方から横並びで左から、礼二・玲奈・翔太と歩いてるくる。邪魔にならないよう、美紗子と真貴は端に寄ってすれ違う。すれ違った後に思わず美紗子は
「?!ちょっっ美女がイケメンに挟まれてたわ」
「声大きいって!!」真貴が美紗子の口をふさぐ
。礼二には振り向いてシーのジェスチャーをされ、たしなめられた。
翔太は振り返ってウィンクで返された。
「!!!!」「!!!!」
美紗子と真貴は言葉を失ったまま更衣室に向かった。その後2人は散々先程のシーンの素晴らしさを語り尽くしていた。
礼二さんの大人の対応の中にも少しお茶目さをのぞかせる所とか、シーの後少し、はにかんだ表情がたまらない所や、翔太さんのあざとくもあるウィンクがあんなに似合いますか?全てわかってて振る舞っていても抗えない魅了だとかを語る。
語り合いながら2人は度々感じでいた。繰り返し壁がザワッとしていた事を。そして2人はいつしか「壁神さま」と話しかける程打ち解けていた。