事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】 作:山本山
今日智昭はスミスの講演会で門下生として壇上に立つ。本国の留学生も他国の留学生や生徒にも注目の的だ。14歳で留学し20歳になるまでには会社を立ち上げた稀代の事業家でありAIへの造詣も深い智昭のスピーチだ。勿論優里も目を輝かせていた。慣れた様子で壇上に立ち威風堂々とスピーチを始める。将来AIの展望と夢を語れば聞いている者でさえそんな未来がもうそこに来ているかの様に感じられる程説得力のあるものだった。彼はスピーチを終えてその場を後にした。
茜も一緒にきていた。、講演会ボランティアスタッフ、藤田家のお手伝いさんと一緒に舞台袖で智昭の活躍をみていた。内容など分からなくても自分の父親が人々を魅了している様子はとても誇らしかった。
「茜ちゃんお待たせ。外に出てみる?」
「うん」
幼子の茜を抱いてキャンパスで少し時間を潰していた。程なくして講演会終了し人々がパラパラと建物の外に出てきている。智昭はスミスの姿を見つけ挨拶を終えた。
そのまま大学を後にするつもりで歩き出した。
お手伝いさんが茜のカバンを舞台に忘れたとの事で取りに向かった。待ってる間に花壇の色々な色彩と蝶々に目が止まって茜が駆け寄っていった。智昭は近くに居て見守っていたが先程のスピーチを聞いた学生達に囲まれ始めていた。優里もその様子をみて智昭の側に行くつもりだが人が多いので少し人が引いてから声をかけるつもりでいた。時間潰しに花壇の方に目をやると幼子が遊んでいるのが目に入った。近くに保護者らしき人が見当たらないのが気になった。
「なんでこんな所に子供が?どこかの教授の娘?何かの縁かもしれないわ」と
呟いて子供に近づく
「何してるの?」
茜は優里に気付きジッと視線を向けたが蝶々に気を取られまた視線をはずす。優里はだから子供はっ…と思いながらさらに話しかけようとしていたら、茜の後ろから不穏な雰囲気を纏った男女がこちらに近づいて来ているのが見えた。あと数メートル程のところまで来ていた。瞬間、女の方がぐっと近づき茜の腕を一瞬掴んだ。流石の優里も驚き茜の腕をグイッと引き寄せた。女は抵抗する様子もなく、すぐに茜の腕を離し男と共に門に向かって走り去って行った。優里は唖然としていた。そして、酔っぱらいなのかアルコールの残り香が漂って来ていた。茜は何が起きたか分からずポカンとしている。
一応優里が茜に尋ねる
「怪我ない?」
茜は首を傾げてから横に振る。
すると背後から男性が勢いよく駆けてきて茜を抱きしめた。
「茜大丈夫か?!怪我はないか?」
非常に慌てた様子で矢継ぎ早に茜に質問している
あまりの勢いに逆に子供が泣き出していた。
優里は驚愕していた。
藤田智昭の娘?玲奈の娘?
智昭は直ぐ様どこかに電話をかけている。優里に気づいては居るが一刻も早く犯人を捕まえる手配をしている。
「茜が狙われた。A国大学正門前、今の時刻は14時それ以前の監視カメラ閲覧の要請をだしてくれ。急げ。白のバンだ」
素早く指示を出したあと茜をなだめて落ち着いた頃初めて優里と向き合った。
「君が居なかったら今頃僕の娘はどうなっていたか…ありがとう。貴女は茜の恩人だ」
智昭は深い感謝を述べた。
「少し質問しても構わないか?」
「構いません」
「茜を連れ去ろうとした人はどんな人でしたか?」
「敬語は結構ですよ。男女で女が茜ちゃんの腕をつかみました。手の甲には汚いクモのタトゥーがあってアルコールの匂いがプンプンしていました。声は聞いてません。ただ、すぐ手を離したので茜ちゃんには危害は無いかと思います。」
「ありがとう。少し失礼」
智昭は少し離れた場所に行き電話をしていた。
戻ってきてからは
「貴女のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「大森優里といいます」
優里はこの出来事が自分の未来を変えると確信し歓喜していた。