事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】   作:山本山 

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22話 過去編

智昭は家に戻り執事からレストランの予約とプレゼントは手配済みであると報告を受けて、

2階の執務室で優里に電話かける。

「こんばんは、今時間大丈夫だろうか?」

「こんばんは、早速お電話ありがとうございます。大丈夫ですよ。」

「今日は本当に有り難う。感謝する。今週末、茜を救ってくれたお礼にホテルのレストランでの食事に招待したいのだが都合はどうだろうか?」

「勿論、大丈夫です。」

「では、日時メールさせてもらうよ。その日は迎えに行くから貴女の住所教えてくれるだろうか?」

「えぇ、わかりました。住所メールしますね楽しみにしてます。」

「じゃぁその日に」

電話を切ったあとしばらくして、優里から住所が送られてきた。そのまま賢志に転送メールし優里の周辺と生活状況を探るよう指示を出した。

 

コンコンとノックと共に茜の声がする

「パパ、おかえりなさい。」

ゆっくりと扉が開かれる

「あぁ、ただいま。沢山遊んだか?」

「遊んだよー」

「そうか、今週末、茜も一緒に茜を助けてくれた人と食事に行こう。」

「うん。わかった!パパご飯、食べよう。」

「うん。いこうか」

2人1階に降りて食卓に着く。お手伝いの田代さんが

「今日はすみませんでした。私がカバンを忘れたばかりに、忘れ物が無いか振り返ってみた時なにも無かったと思ってたんですが、、もう年ですかね。大変な事になる所でした。旦那様胃に優しい味付けにしておきました。温かいうちにお召し上がりください。」

「いや、俺も近くにいて大学内だと油断した、今日の事は俺の責任だ、田代さんも疲れただろ?今日はもう上がってくれ。お疲れさん。」

田代は頭を深々と下げて、後片付けは他のお手伝いさんに頼んでお言葉に甘えて上がる事にする。実際、帰ってからもずっと茜の相手をしてすっかり疲れてしまっていた。

 

食事のあと茜と智昭はリビングのソファで寛ぎながら茜のお気に入りの動物の動画を大画面で見ている。茜の頭を撫でつつ、智昭は考えを巡らせていた。

( 茜を巻き込む事も傷けるのも絶対に許されない。正雄が狙っているのは確実だ。正雄の対処はさほど難しくないが、問題はそれ以外が存在する事だ。A国大学か?それともスミスか?田代さんが言う事を合わせると荷物も仕組まれたんだろう。それともその他も居るのか?スパイダーの傾向を分析したら関与の有無が判断できるかもしれない。やはり結婚を伏せていたのは正解だな。今回茜が狙われたのも結局目的は俺だな。留学から戻ってすぐのハッキングもやはり、、証拠が、、いや、証拠は、要らないな、潰せばいい話だ。)

在学中智昭はスミスに違和感を感じながら過ごしてきた。彼の功績と言われるものの半分以上が元々研究生のものなのに、何故全て彼の功績になっているのか気にはなっていた。が、しかし、いずれ本国に戻る身で、博士課程が修了する前に既に学べるものは学び終えていたので、後は立ち上げた会社を安定させて帰国するのが最優先事項だった。大学の闇を下手につつけば藪蛇が出てくる。それこそ巻き込まれ損だと考え、スミスとの距離感には重々考慮しておけばよいと考えていたが、

「あぁそうか、そういう事か、まさか、まだ狙っていたとは。研究してた技術がステルスにつながるのを見抜かれてたって事だな、一応教授は教授なんだな(笑)」

茜はいつの間にかスヤスヤと寝息を立てている。歯磨きは済ませていたので、小さな茜を抱えてベッドに寝かせるために2階へ上がる。途中で茜のスマホが震えた。この時間帯の電話なら玲奈からだろう。変わりに出ようかと思ったが、きっと茜は嫌がるだろうからそのままにしておいた。茜をベッドに寝かせた後、自分のスマホから

「今日はもう寝た。遊び疲れたんだろう。おやすみ。」

玲奈からは

「わかりました。あなたもいい夢を、おやすみなさい。」

しばらく画面をそのままに見つめたまま画面が暗くなると、そこにはやるせない顔した智昭が映っている。彼女は愚痴ひとつこぼさない。あんなに夢見ていた世界を手放したのに。もちろん、身ごもっていたのもあるだろうし俺への愛情もあるだろう。しかし彼女が1番輝いていたのはAIの多様性と限りない可能性を語っていた時だ。そして、彼女にはそれを成し遂げる力を充分備えているのに…。

何故今この状況に甘んじているのだろうか?

智昭には玲奈の気持ちがわからなかった。

やりたい事があれば話してくれればいいのに、彼女はなぜか顔色を伺うばかりだ。何故なんだ?

 

智昭にはひとつの信念がある。彼は非常に恵まれた環境と類稀なる才能を持ち合わせているのは紛れもない事実だけど、恵まれただけじゃない。それに見合った努力も重ねてきた。それを可能にしてる根幹は、「天から与えられた能力は世に還元するもの」という確固たる信念を持っていたからだ。だから、同様に類稀な才能を持ってうまれた玲奈が全く違う分野の秘書についてる事に言いようのない腹立ちを覚えてもいた。

幼子がいるからなのも理解しているつもりだったが、矛盾があるのはわかっているが、いつまでたっても割り切れない気持ちが残る。

もうひとつの懸念が頭をもたげる。

今後は狙われないと言う事は無い。むしろ増えるかもしれない。だからと言って玲奈と茜を手放す事など彼には出来ない。

 






■ 過去編   新たなる登場人物 ■

【 組織「スパイダー」】
◆ 新田 篤(にった あつし)
組織の末端。幼い頃から悪童。

◆ スミス教授
A国大学・アルゴリズム研究室教授。

【 智昭極秘チーム 】
◆ 東野 賢志(ひがしの けんじ)
智昭の右腕。ホワイトハッカー/ブラックハッカー。

◆ 木村 洋介(きむら ようすけ)
映像解析のスペシャリスト。

◆ 大東 聡美(だいとう さとみ)
政府秘密契約エージェント。A国の人脈・分析担当。

◆ 徳田 愛理(とくだ あいり)
政府秘密契約ホワイトハッカー。

◆ 平山 康明(ひらやま やすあき)
政府秘密契約エージェント。本国の人脈・分析担当。
(伝手:上杉達也 / 姪:由美子)


◆ 大森 正雄・佳子・優里

優里ー玲奈の異母妹
正雄ー玲奈の実父
佳子ー正雄の後妻。優里の母
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