事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】   作:山本山 

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29話 過去編

智昭から連絡をもらってずっと浮かれ気味だった優里。両親は基本、本国に居てるのでテレビ電話での会話になる。

 

「今日、藤田さんから電話があったわ。今週末、お礼にホテルでのお食事に誘ってくれたの!」

 

「まぁ、本当なのね!よくやったわ、優里。後は藤田さんがどんな女性に魅力を感じるかよく観察するのよ。」

 

佳子は思わず大きな声が出てしまっていた。

娘が今掴もうとしている男はこれまでの男とは格が違う。本国の社交界で藤田智昭の名を知らぬ者は居ない。そして、憎い静香の娘玲奈の夫でもある。佳子が大森夫人になってから、事業という事業が低迷し続けている。それを揶揄する人間は多い。ましてや、略奪婚でありお互いの娘が同い年である事に加えて玲奈の優秀さは群を抜いていたものだから、佳子の社交界での評判が上がる事は決して無かった。遠山おばあさんと青木おばあさんの因縁も含めY市での大森家は名士と言われる立場だったとしても評判は最低なものだった。そんな状況から抜け出せる日がくるかもしれない。巷の噂では藤田智昭と玲奈の関係は良好では無いと聞く。優里が見初められれば今ままで見下してきた連中を跪かせる事だって出来る。ひいては遠山を馬鹿にしてきた連中に、如何に遠山の方が優れていたかを証明出来るだろうと佳子は考えていた。

電話の向こうで優里が話している

 

「ねぇ、お母さん聞いてるの?どんな服装がいいかしら?」

 

「ごめんなさい。そうね、もしかしたら藤田さんの娘さんもくるかもしれないから派手すぎず清楚な感じがいいと思うわ。貴女の個性が際立つのがいいけど、、センスよくね。」

 

「わかってるわ。じゃぁ又連絡するね。」

 

優里は佳子の電話を切ったあとA国で知り合った秋山さんにアドバイスをもらおうと連絡をしてみた。が、忙しい様で繋がらなかった。上流階級出身の彼女なら何が適切かわかるはず。優里自身、何不自由なく育ったが地方の貴族階級と首都の上流階級との格差は大きかった。又、彼女は大森家の評判を知らない訳では無い。父と母の経緯も知っている。藤田智昭は今まで出会った人とは比べものにならない存在で、全てを凌駕していると言っていい。そして、異母姉の夫。幼い頃から比較され、何度、惨めな思いをさせられたか…必ず奪ってみせる。と、優里は決意を新たにした。

暫くして、スマホが鳴った。

 

「お久しぶり、出られなくてごめんね、聞いたわよ!女の子助けたんだって?詳しい事はわからないんだけどお手柄だったわね!で、どうしたの?」

 

「お久しぶりね、忙しいのにごめんね。助けたという程の事はしてないんだけど、偶々、居合わせたのよ。それでね、今度、藤田さん藤田智昭さんがお礼と言って食事に誘って頂いたの。どんな服装がいいのかな?と思って相談したかったの。」

 

「えっ?藤田智昭ってあの藤田智昭?助けたのは藤田さんの親戚の子?だったの?

?」

 

「いいえ、藤田さんの娘さんよ。」

 

「彼、ご結婚されてたの?!全然知らなかったわ……。えーーっと……服装ね、そうね、やだ緊張してるのね?!珍しいわね。いつも堂々としてるのに。場所によるけどホテルのディナーならフォーマルなワンピースでいいわよ。わかってると思うけどミニは駄目よ。緊張してたらうっかりしちゃうものね。そうそう、今度、弟の翔太、紹介させてね。じゃぁ楽しんできてね」

 

まさか、優里からあの藤田智昭の名前が出てくるとは思わなかった。秋山は、これ幸いと秋山家の後継者である弟の翔太と藤田智昭と顔をつなぐチャンスだと感じとった。優里の男選びはステータスと直結してる事など百も承知。弟と比べた時、残念ながら藤田の方が格上だ。その状況が揃っていなければ優里に弟を紹介する訳がない。容姿にも優れ上流階級、常に選ぶ側の翔太だが、男女の仲は何が起こるかわからない。今の状況は例え翔太が彼女に惹かれたとしても相手にしないだろう。ならば藤田との縁をつなぐ方が優先される。秋山はそう考えていた。

 

「えぇ、わかったわ。アドバイスありがとう。じゃぁ又ね。」

 

優里は電話を切ったあとに軽く拳を握っている。

彼女が今になって翔太を紹介すると言ってきた。薄々感じでいた違和感は気のせいでは無かった、彼女は優里自身を軽く扱っている。

 

「くだらない。いいわ、貴女の弟も手に入れてやるわ」

 

優里は拳を改めて強く握りしめた。

 

 

 

ー 週末 ー

 

 

優里のマンション下に智昭の車が止まる。

彼が電話する。

 

「今、マンションの下に着きました。」

 

「わかりました。お迎えありがとうございます」

 

「いえ、当然の事ですから。」

 

優里は姿身に映る自身をくまなくチェックする。

玲奈の夫だ、清楚な美しい女性には慣れてる男性。違う魅力で勝負しなければいけない。玲奈に無い華やかさを、、

 

「玲奈とは違う魅力で…」

 

鏡に映る自分に言い聞かせてから、優里は智昭の元へと向う。智昭が既に車の外で待機している姿を見て心が踊りだす。

 

「お待たせしました。」

 

「今日はお時間頂きありがとう」

 

智昭が挨拶した後、優里の声を聞いて車窓からひょこっと顔を出したのは茜。

 

「こんばんは!優里おばさん!」

 

「、、こんばんは。」

 

「さぁ、食事に向かいましょう、どうぞ。」

 

智昭は後部座席のドアを開けて優里を招き続いて智昭が乗り込む。運転手に合図し出発した。

 

 

 

 

「苦手な食べ物とかアレルギーはありますか?なければこちらでオーダーするが構わないだろうか?」

 

「えぇ、大丈夫です。」

 

その、返事を聞いて智昭はコース料理をオーダーした。最高級シャンパンを飲みながら、先日のお礼の言葉と共に謝礼品を渡す。茜も今朝描いたお花の絵を渡す。

 

「優里おばさん、助けてくれて、ありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

茜の優里おばさん呼びにどうも慣れない。

 

「恩人の貴女を調べる様な事をして申し訳ない、優里さんは、玲奈の異母妹になるんだね。」

 

「…はい。父からその様に聞いています。そう、茜ちゃんからみたら叔母さんね」と言って

 

茜の方を見直す優里。

 

「はい。優里叔母さん。助けてくれてありがとう!」

 

元気よく返答する茜。にこやかに頷く優里。

 

これまでの様子を智昭はじっくりと観察していた。優里からは決して邪な言葉は出てこなかったが、表情と仕草は雄弁に語る。

茜が姿を現した時に現した不快感。茜が最初に発した「おばさん」に対しての嫌悪感。そして今父親の話に触れた時の動揺。同年代の学生なら隠し通せただろうが、百戦錬磨の智昭には通用しない。智昭は穏やか笑みを浮かべながら、お手並み拝見だ、と、心の内で呟いた。

 

 

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