事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】   作:山本山 

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第3話

智昭は茜に声を掛けた

 

「茜、今日はママの所で看病するんじゃなかったのか?」

 

そう言葉を掛けた途端、止まっていた涙がハラハラと茜の頬をこぼれ落ちた

 

「パパ、、」

 

「うん、どうした?」

 

茜は消えそうな声で聞いた

 

「ママとお別れするの?」

 

智昭は眉間に皺を寄せながら

 

「……ママに聞いたのか?」

 

「ママは、ママは、」

 

茜は嗚咽で言葉が続かない程泣いている。

 

智昭は何も言わず頭を撫で背中を撫で茜の言葉を待っている。藤田おばあさんは茜の痛みを感じながら優しくみつめている。茜はひとしきり泣いたあとやっと言葉にする事ができた。

 

「ママはね、ママは、パパと茜がとっても大切で愛してたんだけど、、」

 

涙がまたこぼれ落ちる

 

「パパと茜がママじゃなくて、優里おばさんがいいんだから、ママはお別れしてママの好きな事するって」

 

ここまで伝えるとまた茜は声をあげて泣き出した。

茜は玲奈の言った事をちゃんと理解していた。

智昭にもちゃんと伝えないと駄目な事も理解していたので自分の言葉で智昭に伝えた

 

「茜はママはずっと味方でずっと茜が1番のままだから、どんなに怒ってもわがまま言っても意地悪してもいいと思ってた。いつだってママは抱きしめて大好きだよって言ってくれたから。だけどね、ママが悲しい事はしちゃいけなかったんだ。だってねママも悲しいと泣いちゃうんだよ。ママが悲しんでたら茜も苦しくて悲しくなるんだもん。」

 

茜は智昭に抱きつき父親の温もりをめいいっぱい感じていたかった。

 

「パパ」

 

「うん?」

 

「パパはママより優里おばさんがいいの?」

 

藤田おばあさんの身体がビクリと動いた。

智昭はその様子を目の隅で捉えていた。智昭はおばあさんに微笑みながら茜に答えた。

 

「パパの1番もずっとママだよ」

 

「そっかぁ茜と一緒だね」

 

どれほどの時間が過ぎたか分からなかったがいつの間にか茜は智昭の腕の中で寝息をたてていた。

 

「茜ちゃん眠ったかい?」

 

藤田おばあさんが声を掛けた

 

「あぁ、泣きつかれたんだろう」

 

智昭はもう一度しっかり茜を抱きしめた。

藤田おばあさんは、たまらず問いかけた。

 

「智昭、玲奈とちゃんと話し合いなさい。お前の行動がどれほどあの娘を傷つけてきたか、わかってるのかい?大森が玲奈と玲奈の母にしてきた事を知らないわけじゃないだろ?どうして大森の娘を側におくんだい?」

 

「おばあさん、優里は茜の恩人なんだ。A国で茜が誘拐されそうになった時たまたま居合わせた優里が助けてくれたんだ。あの時、優里がいなければ茜はどうなっていたかわからない。だから、できるだけ優里の願いを叶えて恩返ししてるんだよ。」

 

「なんで、今までそんな大事な事黙ってたんだい?、ほんとに、この孫は何を考えてるのかさっぱりだよ。」

 

おばあさんはお茶を飲んで幾分か落ち着きを取り戻そうとしていた。

 

「ふぅーそうかい、、困ったね、よりによって大森の娘だなんて、なんの因果だい。結婚なんてよしておくれよ。あんたがどうしてもって言うなら私が、死んでからにしておくれ。」

 

智昭はふと笑いながら答えた

 

「おばあさん、孫の話は聞いてなかったのか?」

 

「どういう意味だい、、まったく」

 

「俺の1番はずっと玲奈だよ。」

 

「何を今更言ってるんだい??離婚手続きも済んでいるんだろ?周りから賢いなんておだてられて馬鹿になったんじゃないのかい?」

 

「おばあさん、おばあさんは玲奈には優しいのに孫の俺の事はどうだっていいのか?」

 

「ふん。玲奈ほど健気な娘いるもんか。あんたには勿体ないよ」

 

「あぁ、だけど玲奈は俺の妻だし、俺が夫だ。」

 

「ほんと…この孫は何を言ってるのか、どうするつもりだい?玲奈をこれ以上苦しめるんじゃないよ」

 

「おばあさん少し落ち着いて身体に障る。」

 

「お前が1番毒だよ!」

 

勢いよく怒鳴るおばあさんをなだめながら

 

「わかってる。もう少しなんだ。」

 

この言葉のあと、それ以上智昭はこの話をしなかった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

その頃、優里と大森遠山一族は落ち着かない日々を過ごしていた。

 

玲奈が追突事故に合い離婚手続きが益々遠のくのでは無いかと気が気でない。

大森テック部門も相変わらず手立てがなく無駄に時間だけが過ぎている状態だった。

智昭のプロジェクトでなんとか凌いでいるが、それがいつまでも持つかわからない。

 

夕食を食べながら正雄は優里に探りを入れてる。

 

「優里最近はどうなんだい?」

 

「変わりないわよ?」

 

「そうか、その、、」

 

「連絡もちゃんともらってるし状況も把握しているから、心配しないで。智昭はちゃんと気にかけてくれているわ。」

 

しかし玲奈が、入院したあの日、智昭と電話がつながらなかった事が優里に不安を与えてるのは確かだった。

ただ正雄にそれを伝えることはしなかった。

 

「そうか、、仕事はどうだ?」

 

「…うん。みんな頑張ってくれてる。」

 

「目処は立ちそうか?」

 

正雄のこの質問には意図があった。

正雄のテック部門にもなんとか組み込みたいからだ。

 

「…まだ、もう少しかかるわ。お父さんの方はどう?」

 

優里は父親の意図してる事は嫌な程理解している。

昔から優里が重ねてきた努力や功績を当たり前の様に利用する姿をみてきたから。

 

 

 

 

優里は幼い頃を思い出していた。

 

8歳までは母と祖父母と暮らしていた。母はいつも私をかわいがってくれたし寄りそってくれた。

美しい優しい母ではあったが、なにかを失敗をすると言い様のない冷たさもあった。

 

幼い頃はそんな母が怖くて、失敗しない様に、失敗した時は沢山の言い訳を考えていた。大森家に入った時は異母姉の玲奈と比べられいつか愛想を尽かされるんじゃないかと不安を抱えていた。

 

幸い彼女の努力は実を結び、母と父の合格ラインをクリアしたようだ。それでも、ふとした時に昔を思い出して優里の心に陰りが出来ていた。

 

 

 

優里がA国で助けた子供は玲奈の子供だった。

当時の優里はやっと神様がご褒美をくれ、また、こんなチャンスは二度とこないかもしれないと感じていた。

 

 

 

優里は食事をしながら正雄の話を聞き流し、お茶を一口飲む。

 

(智昭は私をみてくれている。もう少し、もう少しだわ)

 

 

ーーーー

 

玲奈は夕方に目を覚ました。

 

茜に離婚の話をしてから疲れてそのまま眠ってしまい、やっと目が覚めた。

 

テーブルに視線を落とすと2つの花束と果物盛りが3つと、

 

「おかゆ?」

 

玲奈は首を傾げた。

たしかに玲奈の好きな野菜と鶏肉のお粥だった。

 

青木おばあさんに聞いたら智昭からのお見舞いだという。

 

(…ただのお見舞いでしかない。これ以上深く考える事も心寄せる事もないわ)

 

「おばあさん、、」

 

と、玲奈は言いかけてやめた。

茜の事を聞こうと思ったがやめた。

離婚が成立すれば優里と結婚するだろう。

気に掛けるより距離をとる事の方が大切だと感じた。

 

 

事故後の検査結果はむち打ち以外は異常なし。

一応経過観察と言う事で今日を入れてあと2日入院する事になった。

 

玲奈は、明朝、散歩がてら藤田おばあさんのお見舞いに行く事にした。智昭との関係は終わるが幼い頃から可愛がってくれたおばあさんには人並み以上の想いがある。

ちゃんとお別れを言いたい。

 

 

 

翌朝、穏やかな朝を迎えた。

順調に回復して心なしか気持ちも晴れやかっだった。

玲奈は藤田おばあさんの元を訪ねた。

 

「おばあさん、ご心配お掛けしました。特に問題なければ明日退院します。」

 

「玲奈、大変な事だったね。貴女が無事で何よりだわ。」

 

「うん。ありがとう。おはあさんは身体辛くないですか?」

 

「調子はいいよ。退屈だから散歩でもどうだい?」

2人で病院の中庭を散歩する事にした。

 

2人穏やかな空の下でとてもゆっくり歩きながら会話を続けた。

 

「玲奈、茜に離婚のこと話したんだね。」

 

「えぇ。いつまでも話さない訳にはいきませんから。智昭は茜に話してなかったんですね。」

 

「ふぅー、その様だね。何を考えてるのか、自分の孫なのにさっぱりだよ。」

 

玲奈は少しだけ微笑んでた。

 

「辛い思いばかりさせて悪かったね。どんな事があってもおばあさんは玲奈の味方だからね。幸せにおなりよ。」

 

「おばあさん、心配しないで、私はもうやりたい事をするわ。おばあさん私を大切にしてくれてありがとう。」

 

多くを語らないがこれが別れの挨拶だと言う事は藤田おばあさんにも伝わっていた。

 

ーーーー

 

智昭は茜を送ってから病院に向かった。

 

おばあさんと玲奈が話してる姿をみつけ2人の元へと歩く。

 

「おばあさん、調子はよいみたいだね」

 

そして玲奈にも

 

「随分回復したな、気分はどうだ?よかったら2人で話さないか?」

 

玲奈は声もなく頷いた。

 

智昭はおばあさんを病室に送り、再び玲奈のいる庭に戻ってきた。

 

智昭は玲奈と共に歩きはじめた。

最初に口を開いたのは智昭だった。

 

「玲奈、、茜は今日ちゃんと学校へ行ったよ」

 

「そう」

 

一呼吸置いてから玲奈は続けて話す。

 

「智昭、なぜ茜ちゃんに離婚の説明していなかったの?私はあなたから離婚を話してと、お願いしたはずよ?そんなお願いも聞けないくらいに私達の結婚はどうでもいい事だったの?」

 

玲奈の視線は智昭に固定されている。

 

「貴方は優里と私の関係も知っていながら、優里を選んだ。…こんな侮辱を受ける程の罪を私は犯したのかしら?あなたが信じようが信じまいが、薬を盛ったのは私ではないわ。私の母を壊した女の娘を選ぶなんて……どれほどに私が憎かったの?茜を何故優里に近づけたの?あの娘は私の娘でもあるのよ?貴方と優里と茜、3人の姿を見せて、私が、苦しむ姿を見たかったのかしら?そうだとしたら大成功よ。貴方ほど私を苦しめた人間はいないわ!」

 

「優里は茜の恩人なんだ、だから、、」

 

智昭がつまりながら答える

 

「だから?……だから、優里にママになって欲しいと茜が言ったというの?」

 

智昭は目を見開きながら、即座に返答する

 

「そんな事は、」

 

言い終わる前に智昭の左頬に激しい衝撃が走った

 

「貴方が私を蔑ろにし続け、茜を優里に近づけたのよ!貴方が私から茜を奪ったのよ!茜から母を奪ったのよ!」

 

玲奈は怒りで震えいる。なにもかもこの男のせいだ、と、全身で叫んでいるようだった。

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