事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】 作:山本山
自宅に戻った智昭は茜を起こし、田代さんにお風呂と寝る準備をお願いする。
「茜、お疲れさん、もう寝なさい。ママには今日の事、内緒だよ。ママに秘密作っちゃったけど、心配かけたくないしね、それに、ママを守る秘密だからね。約束だよ。」
「うん。。わかった。内緒ね。田代さん部屋いこう。」
「かしこまりました。旦那様もお疲れ様でした。」
「パパおやすみなさい」
「あぁ、おやすみ。」
1時間程でお手伝いの田代さんは茜を寝かしつけて階下に降りてきた。智昭がソファで一服しているのを見て声をかける。
「お嬢さんは、おやすみになられました。何かお飲み物でもお持ちしましょうか?」
「うん。白湯をください。あと明後日、俺だけ1度本国に戻ります。すぐ戻る予定ですので、茜の面倒頼みます。」
「承知しました。何か気をつけておく事ございますか?」
「そうだね、もし俺の留守時に大森優里が訪ねてきたら丁寧に対応お願いします。茜の恩人です。ただ田代さんは必ず同席してください。頼みますね。」
「承知しました。」
ー 翌々日 ー
智昭は朝1番の飛行機で本国のY市に向かった。
長いフライトを終えてY市に降り立つ。1度玲奈達と共に訪れたお墓にひとり向う。永遠の眠りについた魂に赦しを乞うため墓前に跪く。
「貴方が大切に育てた、お孫さんをこれから酷く傷つける事を俺はします。申し訳ありません。玲奈さんは聡い人ですから、これからの計画を話せばできるだけ1人で背負い込むと思われます。そして、それだけの能力をお持ちです。だけどそれだけでは諸刃の刃です。悪意のある人間は他にも存在します。逆に彼女を利用してくるでしょう。彼女をそんな渦中に巻き込みたくないのです。巻き込む訳にはいかないのです。その代り必ず貴方方の仇を取ります。必ず彼女を全てから守ります。ですから、どうか、俺の愚行をお赦し下さい。」
智昭は長い間跪き頭を垂れていた。静止画の様な姿を訝しげにみつめる人の視線も全く気にせず。暫くして智昭は静かに立ち上がり一礼してから、
服の埃も払わず振り返らず墓前を後にした。
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うだつの上がらない男が今日は珍しく朝から働きに出ていた。働くといっても友人が斡旋してくれたビル地下駐車場の管理人だ。監視映像を見てるだけの仕事。いや、他の人間は真っ当に仕事しているのだがこの男はただ見てるだけだ。トラブルがあろうがなかろうが知らん顔。だからこの男とペアになった日は不運としか言いようがない。噂でしかないがどこかの社長と知り合いだとか。ただこの男の良さは怒る事もなければ偉ぶる事もない所だ。ギャブルから抜け出せない何もない男。
「浅田さん…ちょっとは仕事してくださいよ」
「してるよ。見てるよ。」
「……。見てるだけじゃなくて…。」
「こんな何の変化もない止まったみたいな映像見てるだけでも仕事じゃないか、あ、そう言えば今朝墓の前で土下座してる人いたなぁ。何をそんなに、、うらやましいかぎりだね。俺みたいなスッカラカンな男がみても鬼気迫るものを感じたよ。」
「へぇー今どき珍しいですね。、、じゃなくて仕事してください。」
「だから、してるって…。」
「トラブルが無くても挙動不審な人に事前に警告するのも仕事なんっすよ」
「あんたも熱心な人だね〜」
「……巡回行ってきます。次は浅田さんの番っすよ…。」
「いってらっしゃい、何かあったらすぐ逃げろよ〜」
「巡回の意味しってます?、、行ってきます。」
「命は1個だぞ、変な奴みたら逃げろよ!」
同僚の背中に向かって声をかける。同僚は手を挙げて応えた。メールの着信音がなり確かめると息子からだ。( 来月帰る。)の短い文章だけがあった。