事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】 作:山本山
パーティー当日
ホテル会場に佳子の姿は無く、その代り正雄がいた。パーティー主催者の挨拶は健康食品会社の役員が行っていた。一応購入者への感謝パーティーの様だ。康明は正雄の動向を注意深く観察するのと同時に由美子と行動を共にし来場している女性達の話しを聞いて情報を集める。話かける役割は由美子だ。
「こんにちは、私初めてパーティーに参加したんですが、皆さんはよく来られるんですか?」
「3回目よ。貴女見ない顔ね。どちらの出身かしら?」
「私はK市出身です。パーティー滅多に参加できないんです。皆さんは首都のご出身ですか?」
「あら、貴女も地方なのね。私も地方よ。ここにいらっしゃるご令嬢はほとんどが地方出身の方ね。」
「貴女様もダイエットサプリ服用されてますか?」
「いえ、飲んでませんよ。私は友人の付き添いなのよね。貴女は?」
「定期購入したところです。綺麗に痩せられるって聞いたので…。」
「…そう…。でも、あまり過信しないでね。あ、連れが戻ってきたわ。もう、行くわね。」
「はい。お話ありがとうございます。」
「ねぇ、おじさん、あの方のお友達大丈夫かしらお酒に酔ってらっしゃる?ご機嫌そうだけど…」
「…どうなんだろうね…。」
先程、話した女性と連れの女性が小競り合いをし始めた。小競り合いの後、先程の女性は会場を出ていってしまった。残された女性はそれでも上機嫌で過ごしている。そうこうしてるうちに、女性に男性が声を掛け共にパーティー会場から出て行こうとしていた。康明と由美子は彼等の後をつける事にする。由美子が酔って康明が支えながら歩く様にして男女の会話が聞こえる距離を保ち後をつける。女性は酔っているのか声が大きいまま話しつづけている。
「ねぇ、、サプリくれるって本当?」
男性はチラリと後ろを見て同じ様な状態の由美子を見て逆に警戒心を解いていた。
「あぁ本当だぜ。ただしタダではないよ。」
「私、もうお金用意できないわ」
「大丈夫。色んな方法があるさ。サプリ欲しいんだろ?仕事みたいなもさ。それとも辞めとくか?」
「仕事なの?身体売るとかじゃないのよね?」
「色んな仕事あるけど、やるかやらないかは任せるよ。強制では無いから、とりあえず話し聞いてみたらいいんじゃないか?」
「そうね、そうするわ」
男は又チラリと振り返り、後ろにいる康明に頷いてから部屋に入っていく。どうやら同じ仲間と勘違いされた様だ。扉が閉まり切る前に部屋の前にたどり着く。由美子にこのまま酔った芝居を続けてもらい、康明は聞き耳をたてる。程なくして女性の笑い声が先程より一段と高くなり1人陽気にはしゃいでいる。部屋の中には先程の男性とは違う男の声が聞こえる。部屋には男が2人居てる様だ。
「あれはだいぶ沼ってるみたいだな。」
「もう、頃合いだろ。今月の船でいいな。壊れてしまう前に売り払わないとな」
( 人身売買 )会話を聞いて康明の脳裏に浮かんだ言葉だ。康明は由美子の耳を塞いでおいてよかったと安堵した。早足でパーティー会場を抜け出し、由美子を家に送り届け、探偵ごっこは終わりだと告げた。
「今日はもう外に出ない様に、、由美子協力ありがとう。仕事を済ませたら今日中に戻ってくるから。誰も部屋にいれるな。いいな?。思ってる以上に危険な場面に遭遇してしまった。明日一旦実家に戻り安全が確保されてから大学を再開しよう。すぐ手配する。申し訳けない、、読みが甘かった…。」
「すっごい怪しい雰囲気だったのはわかったよ。うん。わかった。おじさん大学の事は気にしないで。こう見えて私かなり優秀だから然程、影響ないよ。真面目に過ごしててよかったわ。」
康明は拠点にしてるホテルへ向かう道中思考と考察が止まらなかった。
( 薬は入り口にすぎない。最終目的は人身売買だ。わざわざ富裕層の女性をターゲットにするのは、需要があるからだろう。身分制度が色濃い場所では女性の出身や身分も価値に反映されるはずだ。しかも異国の女性となれば……
流石に首都在住の上流階級の女性が居なくなればすぐに騒ぎになってしまう。が、地方出身の富裕層なら家が騒ぐ前に遠くへ連れて行ってしまえばわからない。先程の会話を考えると、薬欲しさに自ら足を踏み入れてしまうだろうな。世間体をチラつかせれば家の面子の為に己でアリバイも作り、口も噤むのではないだろうか?取り引き金額も貧困層の女性とは違うんだろうし、、パーティーが女性を物色する場だったとは。正雄がどこまで関与してるか分からないが、会場で何が行われてるか知らない訳じゃないだろう。国をまたいだ犯罪組織じゃぁないか?単独か?いや正雄にそこまでの能力も力も人脈も無いはずだ。どうするかはボスに委ねるしかないな。)
康明は、今日の出来事と自身の考察と合わせて証拠に足る録音や写真もそろえて智昭に報告した。翌日には由美子を実家に適当な理由をつけて送りとどけた。諸々の仕事を素早く終わらせ、その足でY市に向った。
報告を受けた智昭は、父親の政宗に事の顛末を゙話し、この案件は政府に渡した。政府が救出に向うか?政治のカードに使うか?を考えた時この国は後者であろう事が容易に想像でき智昭の眉間の皺がより深くなった。
陽がすっかり落ちた頃、康明はY市に降り立った。久方振りに会う馴染みの顔をみつけて幾分早足で近づいていく。
「達也!久しぶりだな。変わりなさそうで安心したよ。新田は息子は帰国した?」
「いや、まだだ。でも、近々帰国は間違いないと思ってる。オッサン(浅田)が頻繁にメール確認してるから(笑)」
「なるほどな。じゃぁ俺はオッサンの家見張るとするか、達也、誰か手空いてる?」
「オッサンの家を監視しできる場所に家確保してる。そこに松隈か吉岡どちらか待機してる。」
「俺の仕事の半分は達也達で成り立ってるよ。残りの報酬は弾むよ。今回のボスは気前いいからな(笑)」
「そうか、金払い綺麗なのは何よりだな!仕事はまぁ当たり前だろ?康明とは長年の付き合いだし。前金半分貰ってるし。勿論、追加経費は請求するが(笑)この生業は信頼失えば終わりだから。」
康明は流石相棒という言葉を飲み込んで
「あぁその通りだな。」と返答した。
達也はこの手の言葉や感覚を非常に嫌う。故にプライベートは全くわからない人物でもあるが康明は絶対の信頼を寄せている。
「達也は飯食った?俺、腹減ってるから付き合ってくれよ。」
「食ってない。勿論、お前の奢りな。」