事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】   作:山本山 

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34話 過去編

一方、康明が本国に戻った頃

A国では、賢志が正雄の足取りを掴んだ。

空港からタクシーに乗り込む正雄の姿。誘拐未遂の5日前の事だ。正雄が空港から直接向かった先は、優里の住むマンションでは無く全く関係ない住宅街だった。賢志は聡美がいる部屋へ向う。

コンコン。

 

「どーぞー。」

 

「聡美、確認なんだけど、正雄はA国に知り合いいた?」

 

「ん?、、新田と娘以外に親しくしてる人間いないと思うけど、、、何かつかめたのね?」

 

「誘拐未遂の5日前に空港から直接住宅街へ向う姿見つけた。」

 

「ほんと!?見せて」

 

「ほら、ここ。」

 

「間違いない正雄ね、この住宅街、調べるわ。」

 

聡美は電話をかけ、まず実際に人を送り込む。どんな住宅街なのか人の目で探る。数時間後に寄せられた情報によると、中流層のファミリー世帯と独身者も住む、比較的穏やかな住宅街であり、白人も黒人も居住しておりアジア系も2割程住んでいる。聡美は賢志に話を持ちかける

 

「ねぇ、賢志ちょっと夫婦になってくれない?」

 

「?何するんだ?」

 

「この周辺を実際に見てみたいの。物件探してる新婚夫婦の設定で、ここの住民に直接聞いてみたくて。お願いできないかしら?」

 

「へぇー、面白そうだな。オッケー行ってみよう。」

 

2人は早速現場に向かい、正雄が降りた付近から散策を開始する。平日の昼間だからか、人も多くは見かけない。ただ、所謂、輩と言われる人間も今のところ見当たらない。平和な住宅街という言葉がピッタリだ。

 

「これと言った特徴の無い場所で、人種の偏りが強いわけじゃない。こうやって私達が歩いてても違和感や、よそ者目線を向けられる事も無い感じね。溶け込むのに然程時間はかからなさそうだわ。夜はまた違ってくるかしら?」

 

「確かに、俺達に向ける目線に警戒心があまり感じられないな。夜は夜に来ないと分からないけど。」

 

「ごもっともね(笑)、、あら、?あそこで、日向ぼっこしてるおじぃさんが居てるわね、話かけてみましょう。話し合わせてね。」

 

「新婚設定だったね。オッケー」

 

賢志はハーフ特有の、東洋人には余り見られ無いほりの深さと、高く真っ直ぐな綺麗な鼻筋という造形美でニッコリ笑う。不思議な事に笑うと途端に少年っぽさが現れる。その姿を見て聡美から独り言とも愚痴とも言い難い言葉が次から次へと発せられる。

 

「やだ、、男前ってほんっと時々腹立つ位に、目線奪うわよね?!。確かに眼福なのよ。だけどね、調査向きじゃないのよね…。目立ったら駄目なのよ。相手に印象残したら駄目なのよ…。迂闊だったわ。ちょっと眼鏡かけて前髪分厚くおろして、爽やかさ消してくれないと…」

 

「言い方…ひどくないか?容姿を褒められる事はあってもダメだしされるなんて…パワハラ?ん?セクハラか?」

 

「何つまんない事言ってんの?立場的に貴方の方が上じゃないかしら?年齢は私の方が上だけど(笑)変な女に引っかからないでね?老婆心が働いちゃったわ…。」

 

「俺は恋愛に興味無い子がタイプだから引っかからないよ。」

 

この上なく残念な顔した聡美。

 

「…引っかかると抜け出せないタイプね。女性もハンターよ?弓を引くだけがハンターじゃないわ、罠にかかるまでジッと待つハンターもいると思うわ〜(笑)まぁね、その人物が善良か悪どいかの違いだけど、、、。さぁ、いきましょう」

 

「……俺もそれなりに恋愛してきたつーの。」

 

「フッ…ならよかったわ。」

 

「なんか、、腹立つな……。」

 

2人は小声でやりとりしながら、おじいさんに近づき話かける。

 

「あの、、すみません、、こちらにお住まいの方ですか?」

 

「なんじゃ?そうだが、なんの用かね?、、、おや?新婚さんかい?」

 

「えぇ、先月に、、。仕事の関係でこの国にやってきたのですが、長期になりそうなのでここに居を構えてもいいんじゃないかな?と2人で話してて、不動産の方に尋ねると、こちらの住宅街勧められたんです。で、どんなところなのかしら?って、ねっ」

 

「うん。そうだね。初めて一緒に暮らす場所だからね。安全な場所でないと」と

 

賢志は聡美の肩をぐいと引き寄せて微笑んで見せた。が、聡美には歯を食いしばってる様に見えてしまい思わず、笑ってしまった。

 

「ほほん。確かに貴方達の様な方がここ10年程で増えましたなぁ。初めはトラブルも多かったんじゃが、不動産屋が変わったんかのぉ、、いざこざは落ち着きましたなぁ。出入りが激しい訳でも無いし、問題を起こす人間も居ない訳じゃ無いんじゃが、平和だと言えますなぁ。」

 

「おじい様はここがお好きですか?」

 

「あぁ、そうだね。好きだね。どんなところでも愛着は湧くもんだろうけどね。今の所気に入っているよ。」

 

「ありがとうございます。もう少しこの辺を散策させてもらいますね。ご親切にお話ありがとうございます。今日もお爺さまにとって幸せな日であります様に。では。」

 

2人、腕を組みながら、軽く会釈をしてお爺さんの元を離れた。

 

聡美が

「スミスみたいな堅物そうな白人が居ても、新田の様な東洋人が居ても違和感無いわね。」

 

「そうだな。この周辺で空家探してみるか、見張りの人員は聡美に任せられるか?」

 

「ええ。大丈夫よ。任せて。」

 

暫く散策してみたが、他に得られる情報は無かった。これ以上長居して誰かの印象に残るのは避けたいので、引き上げる事にした。

 

賢志は空家を探し出し、聡美は見張りの人員を配置した。一軒家タイプになり老年夫婦とまではいかないが、子育てが終了した位の夫婦に見える人員を配置した。これなら子供達と称して複数の人が家を訪ねても怪しまれないだろう。と、聡美は考えた。自分もここに足を運びたい気持ちも強かった。

 

 

 

新田を見かけるまでには結構な時間がかかった。正雄がタクシーを降りた後の足取りは、住宅街のカメラで掴めてはいるものの、正雄が向かった先の家が新田宅であろう事は予測でしかない。やはり確かな証拠が欲しかった。半月を超える頃、新田の姿を捉えた。手の甲に精巧な蜘蛛のタトゥーが入った東洋人が目深に帽子を被り、正雄が訪ねた家に入るのを確認した。

念のため数日観察し滞在しているのは間違いない。

 

後日、聡美は新田宅周辺を散策しながら智昭に報告していた。その最中にスミスの姿を捉えた。

 

「ボス、、」

 

「なんだ?報告に間違いがあったか?」

 

「いえ、追加報告です。スミスが、、たった今、私の視界に入ってきました。このままヒデオ通話に切り替えます。」

 

聡美は自分にカメラが向いてる様な仕草で適当な会話を続け、スミスの後をつけていく。智昭はその様子をじっと眺める。

 

「ママ、そんな心配しないで、ほらこの通り元気でしょう?もう、私も立派な大人よ?ちゃんと自立して稼いでるわ、もう結婚は懲り懲りなのよ?お願いだから無理矢理、お見合いさせないで。」

 

話しながらだんだん声を大きくする。

スミスも無意識に声のする方向に顔を向ける。

聡美の通話中のスマホにスミスの顔がしっかり映り込む。

 

「ねぇ、ママ、わかった?」

 

画面越しに智昭は頷く。

 

「ええ、そうよ、本当に大丈夫なのよママ。寂しくなんてないわよ。身体も鍛えてるし友人も沢山いてるわ。えぇ本当に大丈夫だから。ママ心配ありがとう。じゃぁ、またね、連絡するから、安心してね。ママ愛してるわ」

 

聡美はビデオ通話を終わらせる仕草をしメールを打つ仕草のままスミスをカメラに捉え、家に入っていくまでを撮り終えた。

確実にスミスと新田は繋がっている。

 

聡美は住宅街の拠点に戻り、もう一度智昭に電話する。

 

「ボス、今後どうしますか?このまま監視つづけますか?」

 

「引き続き監視頼む。新田が本国に帰国する様だ、その日も確定したい。」

 

「了解。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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