事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】   作:山本山 

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35話 過去編

仕事を終えて戻る自宅。住み始めた頃は自分と懸け離れた雰囲気の居住区に、アレルギーみたいな拒絶感があった。が、今では、なんのためらいもなく玄関扉を開けている。黒いソファーにドカッと座り、フッと自笑する。タバコに火をつけ、自身もこの居住区のぬるさに影響されていると実感していた。

 

「実行犯に逃走用の車を手配…ハッ昔なら金だけ渡して適当に放り出していたのに…。なにやってんだ俺……足ついたらどーすんだ…。」

 

タバコを深く吸う新田。

 

「しかし、大森のおやじ、えらくご機嫌だったな。何が「よくやった」だ。何様だ…。チッ、、気取ったところで、ゴロツキと考える事は同じじゃねーか。実の娘使って恩人に仕立て上げか(笑)ご立派なこった…これからあいつに集る魂胆だな。物乞いと変わらん奴らだな。

それにしても、よくあんな子供騙しみたいな計画で成功すると思ったな?オレが予めスミスへの手回しと、カメラもいじってなきゃ秒で捕まってたな…。まっ、だから都合がいいんだが。馬鹿は扱いやすい。そういえば、あの汚いタトゥーは何だったんだ?? しかし、、スミスの執着も相当なものだな…。賢いのか馬鹿なのか分からん…が、結局スミスの狙いがハマってる訳だしな、ん?あいつも娘利用してんのか…?」

 

首を数回横に振り、タバコの火を消してから彼はスマホを取り出し電話をかける。

 

「今回の人数は? ……そうか、わかった。女の引き渡しは予定通り約1ヶ月頃になるだろう。それといつもの通り薬は船便だ。俺も船便が着く頃そちらに向う。薬の仕訳しとけ。ヘマするなよ。お前等の命なんて簡単に消されるぞ…。上は俺みたいに優しくねーからな。女もよく見張っとけよ。あと女を玩具にするやつ出てきたら容赦するな。どいつもイカれた奴だから気をつけろよ。それから正雄に売買の事は感づかれるな。」

 

電話を切った後、又タバコに火をつける。

 

「いっときの快楽で全て失う、薬は怖いねー。暇な金持ちってのは碌な事せんな。」

 

新田はスミス宛にメールを打つ。頼んだ本国チケットの日付を変更を依頼する。

船便より先にY市に向うつもりだったが、運ぶ女の数が少ない事を知り本国に持ち込む薬の量を増やす事にした。人身売買より随分単価は下がるが、利益確保の為今回の薬の取り引き量そのものを増やす方向で話しを進めるつもりだ。

薬と人身売買の元締め、スパイダーに連絡を入れる。

 

(今回の海外案件はいつもより少ない様です。その分コークの取り引き量を増やす方向で考えています。後日もらいにいきます。)

 

返信メールが届くかわりにすぐ電話がなる。

 

「わかった。海外案件はいつもの様に船上で商談予定だ。コークの出荷量は了解した。他は予定通りだ。」

 

一方的に話して、電話は切れる。

 

新田は天井を仰ぎ見ながら、この生活に面倒臭さを感じていた。このぬるい居住区の影響なのか単純に嫌気がさしてるのか解らないが、深いため息がでる。だからといって(はい。さよなら)が出来ぬ世界。実質死ぬ位しか自由にはならない。金も充分稼いだ。女もギャンブルも酒もスリルもとっくに飽きている。そもそも、もう群れる事さえ煩わしい。

 

「はぁーー、めんどくせぇなぁっ!!」

 

自分の手の甲に刻まれた見事な蜘蛛のタトゥーをみつめ、再び深いため息をついた。

 

再度スマホを手に取り電話する。

 

「取り引き量を増やす予定だが顧客の様子はどうだ?」

 

「今までは供給量、調整してきたから、供給が増えるなら顧客は喜んで飛びつきますよ。問題無くさばけます。」

 

「わかった。サプリの方はどんな感じだ?」

 

「サプリの方は鈍化し始めてます。チラホラ怪しんでる噂が出ています。今は数件ですけど。あと、大森は案件には全然気づいてません。パーティーでもサプリ提供場だけだと思ってます。」

 

「そうか、大森のサプリは次で取り引き終わりにするか…?大森は金づる捕まえたから気が抜けて面倒起こしそうだしな。」

 

「金づる?ですか?」

 

「あぁ、藤田智昭っていう金づる。お偉いスミスさんも執着してる奴だ。有名なんだろ?」

 

「?!有名というと、、あの藤田智昭ですか?!ほんとですか、それ?、あの大物を大森が捕まえた?信じられませんよ。」

 

「そんなに大物なのか?藤田智昭って奴は」

 

「こちらでは経済界のトップです。俺でも知ってますよ。彼の動向がいつもトレンドに上がりますし。稀に見る傑人って噂ですけど!そんな人物なのに、大森に?信じられないですよ!」

 

「ほぉ……だから、あの喜び様なんだな。なるほど。しょーもない計画で娘を恩人に仕立て上げてたぞ。ま、俺が手を貸したから成功したんだがな。クソオヤジの知り合いに俺という人間がいたからの成功だな。その藤田は、政界に顔は利くのか?」

 

「そりゃぁ利きますよ!政界と経済界なんてズブズブが普通ですし、たしか、父親も政府関連の仕事のはずですよ。詳しくはわかりませんが、あの上流界隈は政府関連に携わってる人間の方が多いはずですよ。だから首都上流階級の人間はターゲットから外したんじゃないですか。あ、、そちらが長いから藤田を知らなくて当然ですね。藤田は首都の上流階級ですよ。こちらの社交界では知らない人は居ないですね。」

 

「そうか…わかった。サプリは次が最後だ。お前もそのつもりで会社から抜ける準備しておけ。あと証拠はバレても正雄につながる様にしとけよ。」

 

「…どうやって?証拠を正雄に残したらいいんですか?あと、案件はどうしますか?」

 

「サプリの売上を正雄の個人口座に振り込め。」

 

「えっ!!こちらの取り分のサプリ売上どうやって取るんですか?!」

 

「後で会社に全店舗エステ機器総入れ替え提案してエステ機器を水増し請求しろ。経理の人間1人金で抱き込めよ。中途半端な額提示するなよ?ギャンブルにハマってる人間が居たら好都合だ1人位いるだろう?」

 

「探ってみます。あ、そういえば随分ホストにハマってる経理の人間なら知ってます。ダメですか?」

 

「やるじゃねぇか、そいつ抱き込め。前金渡してから後は成功報酬で渡せ。」

 

「前金はどれくらいで……?」

 

「おまっそれくらい考えろよ…。前金はホストにかけてる金額2〜3ヶ月分が妥当だろう。初めは1店舗の水増し請求させろ。成功したら自ずと向こうから乗ってくる。そこからは時間かけるなよ。一気にやれ。水増し金額はだいたいサプリ売上分だ。抱き込んだ経理の人間には総額1億提示しろ」

 

「1億?!個人に…」

 

「お前な…捕まっても手にする金が1億なら喜んで務所いくだろ?それに長い事ホストにハマってるなら依存だ。この金額には抗えねーよ。お前、薬にハマっていく人間見てるだろ? 同じだ。」

 

「なるほど!さすがです!お任せ下さい!安心してください!同時進行で佳子社長にエステ機器総入れ替え提案し、経理の人間1人抱き込み水増し請求で進めろですね!」

 

「…頼むぞ、ヘマすんなよ?…案件も引き上げるが、、、、いや、この件は又連絡する」

 

「?サプリは次が最後で案件は未定でいいんですか?」

 

「あぁ。」

 

「わかりました。」

 

新田は電話を切った後、暫くの間考え込んでいた。このうんざりする世界から抜け出すチャンスかもしれないと。スミスと大森が共に私情でターゲットにしている藤田智昭。

藤田智昭という人物は相当な権力と財力をもち尚且つ政府とも繋がる。新田はまず藤田智昭という人物を゙調べる事にした。

 

新田篤が生業としていた裏稼業の元締め組織スパイダーは実のところA国内でもなかなか取り締まれない程にデカい裏組織だ。新田自身もスパイダーの全貌なんて理解していない。が、

彼の勘が抜けだせるチャンスだと漠然と感じている。

 

(焦るな、慎重に綿密に行動しなきゃならんな)

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