事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】 作:山本山
玲奈の留学は短期間ではあるが専門分野の勉強も打ち込む事ができた。見識を広げるにはよい機会だった。他にも短期バイトに行ってみたら智昭が顔を出してくれたり男子学生がちょっかいかけてくれば何処からともなく智昭が現れて庇ってくれたりした。一緒に食事をしたりと頬が緩む瞬間がたくさんあった。1度とっても美味しかったスイーツがあり誰に聞かせる訳でもなく独り言で呟く程度に「おいしい」と言ったのを智昭は聞いていて、「近くに寄ったから」と言って買ってきてくれた事もあった。
智昭は会社も立ち上げ更に学業もと忙しくしている中で彼の貴重な時間を自分と共に過ごしてくれた事が玲奈には何よりも嬉しくて、智昭の存在はどんどんと大きくなっていった。
留学も残り僅かとなりいよいよ修了パーティが開かれる時期になった。智昭も博士課程修了生として、玲奈も招待生徒としてパーティに参加し、玲奈は数日後に帰国してT大学の卒業に参加予定をしている。智昭の大学院博士課程修了パーティには本国からは彼の友人達もお祝いに駆けつける予定だ。
ーーーー
その頃優里は来期入学のため入学1ヶ月前A国に両親と共に到着していた。色々な手続きを済ませ2週間後に開かれる修了パーティーになんとか参加するつもりだった。13歳で大学を卒業したあの藤田智昭が今期修了するのだから、何とか顔を繋げたいと優里と両親は考えていた。これまで藤田家と面識は無かった。が、正雄は青木のおばあさんが藤田家のおばあさんとかなり懇意にしているのは知っていた。前妻の静香の事もあるので藤田家には迂闊に近寄れない。優里が智昭と同じ大学に留学が決まった時はやっと巡ってきたチャンスだと確信していた。ある筋に声を掛け何とか2名分の招待チケットを手に入れた。
「優里、招待チケットが手に入ったよ。お父さんと一緒に行こう。」
「お母さんの分は取らなかったの?」
「あぁ2枚しか無理だった」
「優里、私は構わないのよ楽しんでらっしゃい。綺麗に着飾ってね。貴女なら皆の注目の的になるわね」
「ええ。侮られない様に万全の用意で行くわ」
「そうね。頑張ってね、本番は入学してからよ。忘れないでね」
ーーーー
大学院修了日当日午前は大学構内で式典は行われ、それぞれの旅立ちに歓喜で溢れかえり、これから始まる人生を互いに鼓舞し合ってお開きとなった。
玲奈のドレスはシンプルだが可憐でとても品のある物を友達の凛音が用意してくれた。アパレル関係に強く彼女のセレクトは玲奈の良さを充分引き出していた。色はトップの薄いピンクからスカートの裾に向かって濃くなるグラデーションになっており、膝丈スカートでスカートの部分は柔らかな素材で何重にも重ねられ程よくボリュームがある。彼女が歩く度柔らかな素材のスカートがヒラヒラとなびいて、花びらをまとってる様だ。袖は7分丈で首元はポートレートネックになっており長い首から鎖骨までが非常に美しい。アクセサリーは真珠で揃えてある。ショートのレースグローブをはめれば映画に出てくるヒロインの様に美しい。髪はゆるくふわりとまとめられいて、僅かに残る幼さを女性らしく仕上げている。
パーティーは日が傾き始める頃から始まった。パーティの規模は大きくホールとホール前の庭で開かれる休憩室も設けられており様々な人達が参加していた。智昭の幼馴染、清司と辰也も来ていた。玲奈は大学で昼食を共にするくらいには仲良くなった女子と一緒に居た。
「今日の玲奈とっても素敵ね、まるでヘップバーンみたいよ」
「!そんな褒めすぎよ、ありがとう。エイミーも素敵ね。とってもセクシーよ」
年上なので玲奈にはより色っぽく見えていた。自分の幼さは場違いじゃないかと心配になったが凛音が勧めてくれたドレスは玲奈もとても気に入っていた。智昭に挨拶に行くためエイミーとは一旦離れた。
「博士課程修了おめでとうございます。」
「ありがとう」
「辰也と清司さんご無沙汰してます。青木玲奈です」
2人同時に
「ああ~!青木さん、、ご無沙汰してます。本国では何度かお会いしてましたね。すっかり美しいお嬢さんになられておどろきました。」
「いえ、そんなありがとうございます。」
「青木さんはこちらに?」
「いえ、今短期留学中でこのパーティの2日後帰国してT大学卒業を控えてます。」
「学部はどちらで?」
「AI関連です。」
「もしや、湊さんと同じ学部でしょうか?」
「はい。礼二さんは先輩にあたります。一緒に研究させてもらっています」
智昭は 礼二 と言う単語に反応していた。
「今や時代の寵児の湊礼二さんと一緒とは幸運ですね」
「ありがとうございます。礼二さんにはいつも助けられています。」
智昭は玲奈から聞く 礼二 と言う言葉が耳障りで仕方ない。
智昭は今日の玲奈の姿を見た瞬間、完全に見惚れていた。玲奈を隠したくなる気持ちを辛うじて抑えていたのに。ましてや辰也や清司などに会わせたく無かったが、阻止できなかった。
しかも何度も玲奈の口から礼二と聞くとは気分が悪い。いつものポーカーフェイスで誰にも気づかれてはいないが指先がイライラしていた。
智昭と辰也や清司、玲奈の様子を伺っている人物がいた。正雄と優里だ。離れた場所からずっと智昭がひとりになるチャンスを伺っている。数刻の後やっとチャンスが巡ってきた。智昭が席を離れた。彼がお手洗いから出てきたところ、正雄は後ろから追い越し様に肩先を少し当てる。ふらついて、ヨタヨタと正雄はコケる。智昭が手を差し伸べると
「ありがとうございます。よそ見をしてしまっていて、申し訳ない、、少し酒に酔ってしまいまして、、いや少しではないですな(笑)みっともない所をお見せしました、今日はめでたい日ですな。娘がいてるんですがね、、親バカはわかってるんですがね〜嬉しくてね(笑)、、あぁすみません初めての方にペラペラと、、、あなたも本日修了日を迎えられた方ですか?」
「はい。」
「そうですか!これはこれは、おめでとうございます、是非とも祝杯だけでもさせてください。」
と、智昭の返事も聞かずおぼつかない足取りで5〜6メートル先に居てるウェイターの元へと正雄は向かった。ウェイターの前で智昭に
「ワインか?」
「シャンパンか?」と
グラスをそれぞれ持ち上げ尋ねた。
「シャンパンで」と
彼は返答した。それを聞いてからウェイターからもう一度お酒を受けとった。おぼつかない足取りで智昭の元に戻りお酒を差し出す
「えーとワインでしたかな?」
智昭は
「はい。頂きます。」と
智昭は一連の行動をみていたが念の為指定していない方のワインを受けとった目の前の男性と軽く乾杯をして、皆がいてる場所に戻った。
智昭には見えていなかった。
智昭にお酒を選ぶよう手のひらでグラスすを覆うように持ち上げ示していた。その時に正雄は予め手に隠しもったオブラートの様な形状の媚薬を2つのグラスにそれぞれ仕込んでいた。
媚薬はすぐ溶けるが、酔っ払いを演じながらゆっくり歩き溶け切ったのを確認してから、わざと間違えて、ワインを智昭に渡した。
正雄は世話焼きの良き父を装い乾杯する事に成功した。解毒剤は予め飲んでいた。
優里はその様子を伺っていたが、正雄から呼ぶまで来るなと言われていたので離れた場所で待っていた。正雄は優里の元へ戻り今はまだ近づかないでおこうと話したが、付かず離れずの目立たないところで智昭の様子を伺っていた。優里は正雄が何を目的にしているか分からなかった。挨拶だけならすぐ済むのに。待ってる間に優里の元へ数名の男性が声をかけてきたので退屈しのぎにはなっていた。
智昭は仲間の元に戻り他愛のない会話を楽しんでいた。スミスとも程よい距離感で過し教授陣が退席したころ智昭に異変が起こり始めた。異変に誰よりも早く気付いたのは玲奈だった。