事故ったのは玲奈だった 〜社長夫人はずっと離婚を考えていた〜【原作伏線回収・再構成】 作:山本山
「※山本山の妄想とAIの演算?ストーリーが珍しく噛み合って生まれた一編です」
「認めよう。今の僕は、君という『最大級のバグ』に完全に掌握された」
完璧主義者・智昭の計算を狂わせたのは、玲奈が放った「因果応報の論理」だった。
完敗を認めた男が仕掛ける、理屈攻めならぬ“熱い”逆襲劇。二人の愛の重力が、事象の地平線を書き換える!
1. 確率の収束点と指先の迷い
穏やかな祝日の午後、藤田邸のリビングには、スマートフォンの操作音が不規則に響いていた。
「カカカッ」と、連続して入力をやり直す音が続き、玲奈が小さく、けれど確かな苛立ちを込めてため息をつく。
「……玲奈。何が起きた? スミスの残党によるサイバー攻撃か、それとも端末の致命的なバグか」
書斎から戻った智昭が、眼鏡の位置を直しつつ問いかける。玲奈はジト目で画面を彼に向けた。
「違うわよ。ただの誤変換。人差し指から親指に変えても、打つたびに違う文字が出るの。私の指、呪われてるのかしら」
「フム……」
智昭は深刻な顔で画面を見つめる。
「玲奈、それは君の指のせいではない。君は今、**『確率の収束点』**に触れているんだ」
「確率の……何?」
「いいか。君が文字を打とうとした瞬間、宇宙には無数の世界線が分岐する。君の指先は、その分岐点における観測装置だ。君が画面に触れた瞬間、可能性の霧が晴れて一つの結果が確定する。つまり誤変換とは、君の意志が宇宙の意志と微細なズレを起こした時に発生する**『時空の歪み(エラー)』**そのものだ」
「……智昭。私はただ、LINEを打ちたいだけなんだけど」
「さらに深刻なのは、画面が君に反応しない現象だ。それは乾燥によって、君の身体が**『この物質世界との電気的接続(コネクト)』**を失いかけている証拠だ。君は今、デジタル次元にとっての『幽霊(ゴースト)』になりつつある。……許せないな。たかが液晶ごときが、僕の玲奈を認識しないとは」
智昭は有無を言わせぬ手つきで、保湿クリームの瓶を取り出した。
「僕がやる。これは単なる保湿ではない。君と世界を再接続するための、重要な**『再導電化儀式(リコネクション)』**だ。貸しなさい、その、宇宙に見放されかけた哀れな指先を」
智昭に一本ずつ丁寧にクリームを塗り込まれながら、玲奈は呆れつつも、その指先の熱に心地よさを感じていた。
2. 因果応報の斥力フィールド
その数分後。今度は書斎から「パサッ」という乾いた音がした。
智昭が完璧な放物線を描いて放ったはずの紙屑が、ゴミ箱の縁に当たり、無情にも床に転げ落ちたのだ。
通りかかった玲奈は、すかさず声をかけた。
「あら智昭。ずいぶん派手な『計算違い』ね?」
智昭は一瞬、石像のように固まった。「……玲奈。これは不測の事態だ。カオス理論におけるバタフライ・エフェクトが……」
「いいえ、それは違うわ」
玲奈は智昭の言葉を遮り、先ほどの彼の口調を完璧にコピーして指を立てた。
「今の現象を、あなたの好きな『宇宙の理屈』で解説してあげる」
「いい? その紙屑がゴミ箱を拒絶したんじゃないわ。『ゴミ箱という事象』が、あなたという存在を一時的にログアウトさせたのよ」
「僕を……ログアウト?」
「そう。あなたのプライドという名の『静電気』が強すぎて、ゴミ箱の周りに強力な**『論理的斥力(せきりょく)フィールド』を形成しちゃったのよ。ゴミ箱が『あなたの理屈はもうお腹いっぱい』って、物質的に拒否反応を示した……。これが、宇宙の導き出した『因果応報のプログラム』**よ」
智昭は絶句した。自分の詭弁が、さらに強力な「玲奈理論」となって跳ね返ってきたのだ。
「さらに言うなら」
玲奈は楽しげに付け加える。
「今のミスは、あなたの**『メモリ不足』**が原因よ。さっき私に構いすぎたせいで、スローインに必要な演算リソースが枯渇したの。つまり、私を愛でることにリソースを割きすぎた結果の、必然的なエラーよ。ね、完璧な論理でしょう?」
「……認めよう」
智昭は深い溜息をつき、眼鏡を外した。
「僕の演算機能は、君という『最大級のバグ』に完全に掌握されたようだ」
3. 強制同期(シンクロナイズ)の夜
「あら、素直でよろしい。じゃあ、ゴミ拾ってきて……って、ちょっと、智昭!?」
完敗を認めたはずの智昭が、音もなく玲奈との距離をゼロにした。
逃げる隙も与えず、彼は玲奈の腰を抱き寄せ、そのままデスクへと押し留める。
「玲奈。君が言った通り、僕のリソースが君一人のために稼働しているのなら、もはや隠す必要はないな」
智昭の低い声が、玲奈の耳元で甘く響く。
「君が世界から『ログアウト』しかけているなら、僕にはそれを食い止める義務がある。いいか、宇宙の理屈を教えよう。二つの個体が完全に同期すれば、一方のエラーはもう一方が肩代わりできる」
「……それ、ただ、くっつきたいだけでしょう?」
「不服か? 僕の脳内メモリを100%君に捧げている代償だ。これからは一秒たりとも、君の『存在』を不確定な状態にはしておかない。……ゴミを外した代わりのスローインだ。僕の腕の中に、君という正解を投げ込む」
「……例えが強引なんだから……」
智昭は満足げに微笑むと、抗う力を失った玲奈の額に、慈しむような、けれど独占欲の滲む熱い口づけを落とした。
「……さて。宇宙の理屈に基づいた『再起動』を始めようか。朝までかかるが、君に拒否権はない」
祝日の午後は、こうして甘い「再接続」の時間へと、静かに溶けていった。
明日も投稿あります♪