怪異の悪魔 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード 作:ヘビーなしっぽ
妖怪を聞いた事はあるだろうか。
否。
何も妖怪に限る必要はない。
アンデッド、幽霊、モンスター、精霊、SCP、UMA、怪物、化け物、呪霊、都市伝説、心霊スポット、人外…。
これらが現実世界に現れる事はあるだろうか?
そんな問いを投げかけたら、帰ってくるのは満場一致の、NOだろう。
そんな夢物語。あるはずがない。
だがしかし。
”無い“と決まりきっている物を広め、確かめたがるのが人間だ。
あらゆる頂上的な存在…。総じて怪異と呼ぼう。
人間は、知らなくても良い怪異のことをを知り、そして恐怖する。
その恐怖が募れば、何が生まれるか?
知れた事。
怪異の悪魔である。
数百年前から漂っていた、怪異に対する恐怖の感情。
やれコウモリ、やれ刀、やれチェンソー。
そんなモノに抱く恐怖は、糞にも劣るカスだ。
何十年。何百年。
抱かれ続けた恐怖の感情は、その悪魔を強くし続ける。
段々と。刻々と。続々と。
段々と。刻々と。続々と。
段々と。刻々と。続々と。
段々と。刻々と。続々と。
そうして生まれる怪異の悪魔は…。
想像を絶する強さを持つ。
とくと見よ。
これが怪異の悪魔である。
「これで十七万八千百十五…じゃったか?」
2mにも届く大太刀を片手で軽々と持ち上げながら、ぐちゃぐちゃに破壊された死体を見下ろしている女性がいた。
腰程に伸びた金髪と、紅色も煌びやかなドレスが特徴的だ。
「それにしても…“こおあん”とやらは使い物にならんのう。役立たずの集まりじゃな。全く、存在する意味などないだろうに…」
そんな愚痴を吐きながら、女性は刀を手ごと体内に突っ込み、刀を置き去りにして手を引き抜いた。
グチャグチャに破壊された死体…元は、ニンジンの悪魔だったモノを、ぐちゃっと踏みつけて歩いていく女性は、くあ…と口を開けて欠伸をした。
「む、しまった。もうすぐ朝か」
東の空が白み始めているのを見て、女性は体を霧に造り変えた。
その状態で、窓の何も無い廃墟の中まで移動する。
廃墟の中で、再び女性の姿が形成された。
「儂が動ける時間の方が少ないと言うのに…。つくづくこおあんは使えんな」
一度は止まった愚痴を、彼女は再開して、止めた。
「辞めじゃ辞めじゃ。こんな事言えどもどうせ変わらんからの」
呆れた様な口調でそう言い、部屋の端の方に出来ている簡易ベッドに寝転がった。
彼女は、気怠げにため息を吐きながら、ひび割れて今にも落ちてきそうな天井を見つめる。
「せめて今日の夜は…数多くの場所を回れるといいの」
そんな呟きを残して、彼女は眠りについた。
ぐう、と言う規則正しい寝息がすぐに聞こえてくる。
…彼女が寝ている間に紹介するのはなんなのだが、まあいいだろう。
彼女は悪魔にして同族殺し。全てから隔絶する存在。
鉄血にして、熱血にして、冷血の吸血鬼こと、怪異の悪魔。キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードだ。
この世界に悪魔として生まれ落ちた彼女は、今日も同族を殺す為に今を生きるのだった。