デンジとサムライソードの戦闘は熾烈を極めているように見えて、その実はサムライソードの加減一つで成り立っていた。
「おい、まだ終わらないのか!?」
「ちょっと待て、こいつが意外としぶといんでな!」
サムライソードの攻撃は大振りのものが多く、隙が大きい。恐らくは、慣れていない変身と、長い得物を片腕で扱うことになる弊害によるものだろう。
さっきのような瞬間移動じみた居合攻撃でなければ、まともに攻撃を与えることは出来ない。
しかし、その攻撃は威力も強く、半端に手加減も出来ない為に、デンジを生け捕りにしたいサムライソードは、デンジに致命傷を与えないように加減して戦っている。
その手加減が仇となってデンジを殺せていないのが現状だった。
「くっそがぁ!!」
一方で、デンジもまたこの戦いの決着を急いでいた。大振りなサムライソードの攻撃を避けてポチタを振るうが、パワーもスピードも悪魔となったサムライソードの方が遥かに上だ。
隙を突いていない状態では、ポチタのチェンソーはサムライソードの手の刀に全て防がれる。サムライソードの刀はチェンソーの刃が当たっても傷一つ付かずに、デンジとポチタを圧倒していた。
「てめぇらの攻撃なんざ、あの見えねえ攻撃さえなけりゃ効かねえんだよぉ!!」
フィジカルと刀の強度でポチタの攻撃を防ぎながら反撃できるのだから、勝敗は目に見えていた。
しかし、それでもサムライソードはデンジを徹底的に殺すことなく、生け捕りにして組に連れ帰ろうとしているようだ。
敵の殺意が低いうちに早く決着をつけたいデンジは、何度もサムライソードに攻撃を仕掛けるが、すべて防がれてしまう。その攻防で、デンジのチェンソーとサムライソードの刀がぶつかるたびに火花が散り、金属音が周囲に響いていた。
押し勝てないデンジとポチタ。生け捕り目的で殺せないサムライソード。足止めの沢渡と睨み合うアキと姫野。
決定打といえるものがなく、状況が動かない状況に全員が焦りを覚え始めていた。
しかし、この均衡状態も長くは続かなかった。
「うぐっ、おぶぇ!?」
それは突然の出来事だった。サムライソードとの何度目かの鍔迫り合いで押し負け、吹き飛ばされたデンジは、膝をつき血を吐いていた。
あまりにも急なデンジの異変に、サムライソードの攻撃の手が止まる。
「……沢渡、お前何かしたのか?」
「いや?お前じゃないのか?」
突然血を吐くデンジを目の当たりにして、原因が分からず戸惑う2人。
しかし、デンジが血を吐いた理由を知るアキと姫野は、驚きから焦りの表情へと変わる。直接血を吐くのを見るのは初めてだが、デンジが心臓病を抱えていることを2人も知っていた。その心臓病の発作が始まったのなら……最悪の事態を予感し、アキが動きを見せる。
「援護よろしくお願いします」
「ちょっ、アキ君!?」
刀ならぬ釘を鞘から乱暴に抜き、デンジに向かって走り出すアキ。
姫野の制止の声を無視して進むアキは、サムライソードが反応して攻撃しようとする前にその釘を撃ち込まんとする。
「ヘビ、尻尾」
「っっ!!?」
「っ、──アキ君!!!!」
勿論、それを沢渡が黙って見過ごす筈もなく、虚空から現れた巨大なヘビの悪魔の尻尾がアキを吹き飛ばす。
その光景に姫野はアキの名を叫ぶが、その言葉は地面を転がる彼には届かず宙に消えた。
「そのまま待機してろ」
沢渡は召喚したヘビに待機命令を出し、残った姫野の様子を監視する。
ただ、その姫野はアキが悪魔に吹き飛ばされたことに呆然としており、まったく動く気配がなかった。
沢渡が呼び出したヘビの姿を確認して、もう邪魔は入らないと判断したサムライソードはゆっくりと膝をついて血を吐くデンジに近づいていく。
「ガルルルルッッッ!!!」
「ほお、悪魔の癖に、ご主人様を守ろうと健気な態度じゃねえか。だがよぉ、俺ぁじいちゃんと同じで犬は臭くて嫌いなんだわ」
デンジに近づくサムライソードに対して、ポチタが威嚇しながらデンジの前に立ちはだかる。
とはいえ、サムライソードは全く焦る様子を見せない。銃の悪魔が欲しがる悪魔といえども、見た目はチェンソーを除けば、子犬のような小さな存在だ。
実際、先ほどまで戦ったものの、頭のチェンソーを除けば危険性は大したことはない。そのチェンソーも自分の両腕の刀で十分に対応可能だ。
これで恐れる方がおかしいだろう。
「まあ、逃げずにいるのはこっちとしても好都合だな。俺らの最優先はお前なんだからよ」
サムライソードは一歩一歩、デンジとポチタに向かって歩み寄る。
そして、その距離が五歩ほどまで縮まった時──。
「ガアアアッッッ!!!!」
「ふん──!!」
これ以上デンジに近寄らせまいと飛びかかったポチタの胴体に、サムライソードは右腕の刀を振り上げて突き刺した。
「──ガフッ!!?」
「おえっ……ぽ……チタ……!?」
サムライソードの手の刀によって串刺しにされてポチタの口から血が吐き出される。
その光景にデンジは呆然とし、サムライソードは勝利を確信したように笑みを浮かべた。
「ん~?ああ、思い出したぜ。そういや、お前の母親は心臓病で亡くなったんだってな。その様子じゃ、お前も心臓に何かしらの病気を抱えているんじゃねえのか?じいちゃんが言ってぜ、お前の親父は母親が死んでから荒れたんだよな?」
右腕の刀で串刺しになったポチタをプラプラ揺らしながら、サムライソードはデンジに囁く。
デンジの母親が心臓病で亡くなり、そのことで父親も精神的に壊れてしまったという過去を調べ上げた事実を、まるで楽しむかのように語りかける。
大方、ヤクザの爺から聞き出したか、組に保管されていた借金の資料から知ったのだろう。
「哀れなもんだよな。父親からは借金、母親からは病を残されて、頼りになるのはこの弱っちい悪魔と、今も行方知れずの甚爾だけだろ?」
「ぐぐっ……!!」
痛む心臓を押さえながら、デンジは歯を食いしばってサムライソードを睨む。
死に掛けそうな癖に、まだそんな目が出来るのかと感心しながらも、生意気だと怒りの感情が湧き上がる。
「そういや、さっき食ったラーメン。あれは不味かったな。味の良し悪しの分からねえバカ舌のお前にとっちゃ美味かったかもしれねえが、幼少期から恵まれた俺の舌じゃ、あれはとても食えたもんじゃねえ」
「はぁ……?」
何を言いたいのか、まったく意味が分からない。ポチタを串刺しにしながら何をふざけたことを言ってやがるんだ?
そんな風に混乱するデンジは、サムライソードの次の言葉で奴の狙いが分かった。
「そして、そいつは舌だけの話じゃねえ。幼少期から家族に恵まれた俺だったら、こんな悪魔やあのろくでなし野郎と組むなんてバカな選択はしなかっただろうよ」
サムライソードは悪魔のように笑いながら、デンジの過去を嘲笑う。
「あ゛あぁん……!!」
「ろくでもねえ親の元に生まれたお前じゃ、この程度の奴らと一緒にいて幸せだったかもしれねえが、そりゃお前の人生がクソだからだ。人生がクソだと幸福度がもっと下がる」
怒りが込み上げてきた。何も知らねえ癖に、独りぼっちになりそうだった自分を救ってくれたポチタとアニキを馬鹿にするこいつが許せなかった。
血を吐いて痛む心臓よりも、沸騰して爆発しそうな頭に意識がいく。
「なあ、デンジよ。もういい加減に、楽になったらどうだ?」
「うる……せぇ……」
「ろくでもない親に、救いようのねえクズと厄介事を持ち運んでくる悪魔。お前の人生はクソで最悪で、俺はとても見てられねえよ」
「喋る……な……」
「おめえが甚爾の居場所を吐くんなら、今までのことは目を瞑ってやる。つっても、まあ、この先の人生でお前が幸せになることなんてねえだろうし、いっその事、今ここで死ぬ方がお前にとっての幸福かもしれねえがな」
ポチタを刺した状態で、サムライソードはデンジの心臓がある位置を左腕の刀の先で軽く小突く。
その行動にデンジは恐怖よりも、激しい怒りが爆発した。その怒りは痛みで鈍った体を動かすほどに。
「ふらけんひゃねえ!」
目の前に立つサムライソードのブーツに嚙みついた。恐らくは「ふざけんじゃねえ!」と言ったのだろう。
本来ならば、絶対安静レベルの傷を受けた状態で、戦い続けた挙句、心臓病まで発症してしまったのだ。立ち上がれないのは当然なのに、それでもなお、デンジはサムライソードに立ち向かっていた。
「ポヒタをふぁなしやがれ!!」
サムライソードのブーツに嚙みついたまま、ポチタを離せと訴えるデンジ。
だが、そんなデンジの抵抗はサムライソードにとって何の意味も持たないものだった。
「飼い犬の悪魔が悪魔なら、主人も主人だな。泣かせてくれるじゃねえか、──よぉっ!!!!」
「ぐべぇっっ!!?」
泣くような仕草で目元に手を当てていたサムライソードは、デンジの腹部に向かって蹴りを放つ。決して離すまいと噛みついていたデンジだったが、その衝撃で前歯が折れ、転がるように地面を滑った。
腹への一撃で内臓も傷つき、立ち上がれないデンジの元にサムライソードがゆっくりと歩み寄る。
「俺のコートに加えて、ブーツも汚しやがってよぉ!!てめぇみてえなカスじゃ弁償出来ねえ代物なんだぞ!!!」
服を汚された事に対して、デンジに向かって怒りを爆発させる。
地面に横たわるデンジの体を踏み付け、怒りの感情のままにデンジを痛めつける。
「ったく、余計な手間を──」
「ポチタを……返……せ……」
十分に痛めつけたかと判断したサムライソードがデンジを踏む足を止めると、全身のあちこちに出来た傷口から血を流したデンジがノロノロと起き上がって、右腕の刀に突き刺さったポチタに手を伸ばす。
「……まだ立てんのかよ。呆れた根性してるぜ、おい!」
「うっ──!」
ゾンビのように緩慢な動きで近寄ってくるデンジの肩を蹴りつけて、再び地面に寝ころばす。
それでも尚、ポチタに手を伸ばそうとするデンジにサムライソードは呆れた様子だった。
「そういや、俺らの事を散々雑魚扱いしてくれたよな。ええ、おいっ!!今の状況見て、もういっぺん同じこと言ってみろや!!ヤクザ舐めてんじゃねえぞ、クソガキがぁぁぁ!!!」
「────」
倒れたデンジを容赦なく踏みつけるサムライソード。
デンジの体は血まみれで、元は白かったシャツも真っ赤に染まっている。
意識を失っているのか、デンジは悲鳴も上げず、まるで死体のように地面に横たわり、サムライソードの踏みつけをただ受け続けている。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、これ以上は死んじまうか……。おい、沢渡!下にいる奴ら応援に寄越せ!!」
「……こちら沢渡、練馬西大ビル3階に来い。戦闘は終了した」
ピクリともしないデンジを足蹴に、指示を飛ばすサムライソード。
生きているのかと確認すると、かすかだが呼吸しているのが分かった。
「遅くなりました……」
「こいつが例の……」
下っ端と思われる男が二人やって来て、サムライソードの前に並び立つ。
「ああ、慎重に運べ。少しやり過ぎちまったからな。甚爾の居場所を吐いてもらうまで、生きていてもらわなくちゃ困るからな」
サムライソードは右腕の刀に突き刺さったポチタをニット帽を被った男に渡して、もう一人の残った方にデンジを運ぶように指示を出す。
そうして、戦闘は終わったと判断したサムライソードは変身を解除して、元のモミアゲの生えた男の姿に戻った。
「ぐっ……!無駄に粘りやがって。だがまあいい、こいつ以外の他のデビルハンターも今頃は銃で撃ち殺されてるだろう。残ってるのは……」
未だ茫然としている姫野に視線を向ける。
見えない攻撃をしていたのはあの女だろうが、沢渡に任せれば十分かと判断して、自分はデンジを運ぶ車に移動しようとした。
「待ちやがれ……」
その時、今まさにこの場から離れようとしていたサムライソードの背後から声が聞こえた。
振り返ると、ヘビの悪魔に尻尾で吹き飛ばされたアキが、頭から血を流しながら立ち上がっていた。
「まったく、デビルハンターってやつは、どいつもこいつもゴキブリみたいにしぶてえんだな!?」
いくら立ち上がろうとも、ヘビの悪魔の攻撃を喰らって満身創痍の状態だ。おまけにこっちには銃を持った手下も援軍として駆け付けている。
いざとなれば、沢渡のヘビの悪魔もいるだろうと慢心しているモミアゲ男に、アキが焦点の定まっていない目で吠える。
「てめえらのお陰で思い出したよ。俺が公安に入って銃野郎をぶっ殺そうって思った理由をよぉ──」
アキは血の滴る頭を押さえながら、モミアゲ男を睨みつける。
「撃て」
「「はい!」」
モミアゲ男の指示に従って、手下の二人はポチタとデンジを置いて銃を構えて発砲する。
「っ──!」
「速っ!?」
銃が放たれる瞬間、アキはそれよりも早く動き、銃弾は虚しく空を切る。
「まずは一人……」
そして、アキはニット帽を被った男の懐に素早く飛び込み、銃を構える腕を下からフルスイングで釘を振り抜いてへし折る。
「ベキッ」という音と共に男の腕は折れ、痛みに悲鳴を上げる間もなく、アキの回し蹴りが鳩尾に炸裂。男は一撃で沈黙した。
「野郎──!?」
「そうだ。俺はムカつく奴が嫌いだったんだ。だから、俺は俺から家族を奪ったムカつく銃野郎を殺す為に、公安に入ってデビルハンターをしている」
ヤクザの一人を鎮圧すると、再び自分語りを始める。
「ちっ、ちくしょ~!!」
「馬鹿!?闇雲に撃つな!!」
仲間の一人がやられて焦ったのか、もう一人の手下が発砲するも、アキは冷静に倒した男を盾代わりにして銃弾を防ぐ。まだ生きていた盾にされた男は、仲間の銃弾を喰らって短い悲鳴を上げ、そのまま血を吹いて絶命した。
その光景に、撃った男はガタガタと震え、隙を晒す。アキは盾にした男を放り捨て、その男にも飛び掛かり、顔面を力いっぱい殴りつけた。殴られた男は鼻の骨が折れる感触とともに意識を失い、地面に倒れ込んだ。
「だから、俺から仲間を奪おうとしているお前らが嫌いだ。それも悪魔ときたなら、殺しても問題はないな……」
「っ……!!この野郎……!?沢渡ぃぃぃ!!!」
もう変身する体力も血も残っていないモミアゲ男は、沢渡に助けを求め、叫ぶ。
そんな情けない相方の姿にため息を吐いて、沢渡はヘビの悪魔に指示を出した。
「ヘビ、丸飲み」
待機状態だったヘビは、その指示を聞いてアキを丸飲みにせんと襲い掛かる。
「アキ君!!」
ヘビの悪魔が動いたことで、ようやく動き出した姫野がゴーストの右手を使って、飲み込まれそうになったアキを救い出した。
「っ、すみません姫野先──」
「馬鹿!?無茶しちゃって!!私のお墓見てくれるって約束、破る気だったの!!?」
アキを抱きしめて、泣きながら怒鳴る姫野。そんな姫野の態度に、アキはバツが悪そうに頭をかいた。
しかしそれも一瞬、今は戦闘中だ。姫野を引き剝がして、アキは釘を構え、ヘビの悪魔に向き直る。
「すいません、姫野先輩。あいつらがデンジとポチタを連れて逃げる前に倒すにはこれしかありません」
「っ!それで謝るならこっちの方だよ、アキ君。もう契約は済ませちゃったから」
釘を構えて呪いの悪魔の力を使おうとしたアキに、姫野は申し訳なさそうに言った。
なにを?と言おうとしたところで、先程まで自身を抱きしめていた姫野の左腕がまるで最初から無かったかのように消えていた。
「私の左腕を食べさせたかわりに、ゴーストの左手を使えるようにしたの。あの女とヘビの悪魔は私がなんとかするから、アキ君はデンジ君とポチタ君を助けに行ってあげて」
「そんな無茶です!あの巨体を相手に、ゴーストの腕だけじゃ──」
「いいから!!少しは先輩を頼れ、馬鹿!!!」
アキが無茶な事をしようとする姫野を止めようとすると、それを遮って怒鳴り付ける。
そんな風に怒鳴る姫野の姿には、一切の迷いがなく、瞳には揺るぎない決意が宿っていた。
その瞳を見たアキは、もう何を言っても無駄だと悟ったのか、歯を食いしばりながら走り出した。
「逃がすな、ヘビ」
「あら、お姉さんの事は無視する気?」
救助に走るアキを邪魔するヘビに、姫野の操るゴーストの両手がヘビの胴体を掴んで握り潰しにかかる。
その痛みでヘビが鳴き声のような悲鳴を上げると、沢渡もアキではなく姫野の方に意識を向ける。
「ちっ、大人しくしてりゃいいのに」
「生憎、私もアキ君には生きていて欲しいからね。そのためだったら、このくらいの無茶はするよ」
原作ではあっけなく決着がついた両者の戦いの火蓋が切られた。
その戦いを遠く離れたビルの窓から眺めていた男は、戦場の光景を見て「やっぱりな」と真顔で呟いた。
多少鍛えたとはいえ、せいぜい悪魔に殺されない程度の技術や立ち回りを教えたくらいだ。
チェンソーマンでもないデンジがサムライソードを倒せるはずがないと半ば確信していたが、まさかこんな形で幕を閉じるとは思いもしなかった。
「口から血を吐いたのはあの胸の傷が原因じゃねえだろう。原作でなにかあったか?……駄目だ、時間が経ち過ぎて細かい内容がロクに思い出せねえわ」
デンジの不調の原因が原作にあったかと記憶を漁るも、作中で活躍した悪魔の名前や姿、名場面とかの部分しか記憶になく、細かい描写を思い出せずに頭を搔く。
「まっ、今のところ、原作と違うのは、ポチタが生存してデンジがチェンソーマンになっていないことが1つ。姫野が撃たれておらず、存在全てを贄に捧げていないのが2つ。早パイが未だ戦闘続行出来ているの3つくらいか」
ここで問題となってくるのは、マキマの介入が原作通りか、それともあの戦場のように原作と違うバタフライエフェクトを起こすのかが問題だった。
窓から外の様子を見ると、少し異常ともいえる数のカラスが空を旋回していた。これはつまり、マキマが遠隔で戦場を覗いているということだろう。
もしあのカラスの存在さえなければ、多少の手助けをこっそりとしてやってもよかったのだが……。
「下手な真似は出来ねえよな。はぁ~、もっと頭のいいキャラに生まれてたなら、こんな行き当たりばったりじゃなくて、裏で暗躍出来てんだろうな」
例えば、藍染とか羂索とかロズワールみたいなキャラに転生できてたなら。いやいや、不貞腐れずに生きていくって決めてただろうに、ネガティブ思考に行こうとするな。
「さて、原作通りに進むならこのまま静観でいいが、もし違う展開になるならどう介入すべきか?」
マキマに正体バレ覚悟で突っ込むか。今のサムライソードなら俺でも正面から圧倒できるはずだ。
正直、苦戦するほどの強さではなかった。唯一厄介なのは居合斬りだが、その予備動作が致命的だ。あれなら、俺でも十分にカウンターを決められるだろう。
「もし贅沢をいうなら、デンジが立ち上がって逃げ延びてくれるか、早パイに期待だな……」
未だに眼下で繰り広げられている戦いを目にしながら、デンジとアキに期待を込める。
正直、甚爾をどう動かすか、未だに迷ってるんですよね。
クァンシさんとは絶対に戦わせます。