落ち葉が大量に落ちる秋の季節に、犬の散歩ならぬ悪魔の散歩をしている俺とデンジ。
「ワン!」
「おえっ、まじぃ〜」
ポチタは舞う落ち葉にはしゃいでいるし、デンジはドングリを拾ってかじっている。
転生した当初は悪魔がいるダークファンタジー的なこの世界に転生したことを不運に思っていたが、今ではこの世界なりの平和を満喫している。
「平和だな。お前もそう思うだろう?」
「へい、旦那!」
公園のベンチに腰掛けて俺が話しかけたのは、鎌への恐怖から生まれた鎌の悪魔。
俺が契約している悪魔のうちの一匹だ。契約内容は俺の血を月に一度摂取させること。
悪魔の契約にしては軽いものだが、コイツは出会った瞬間に俺の首を刎ね飛ばそうとしてくるほどに凶暴だった。
そんなコイツが今はへりくだって俺と契約しているのは、単純に俺が強すぎるからだ。
格闘技の基本である打、投、極を転生してすぐに習得し、ガキの体でも大人や悪魔に負けないよう、前世で読んだ漫画やYouTube動画の知識を活用して徹底的に鍛えた結果、かなり高位の悪魔でない限り負けることのない強さを手に入れた。
鎌の悪魔は決して弱い存在ではない。刃物の武器は人々に恐怖を抱かせやすく、殺傷力も十分だ。特に鎌なんかの一部の武器はヤンデレ系の女性キャラやホラー作品の敵キャラが使うイメージがあるため、他の武器以上に恐怖の対象となりやすい。
実際にこの悪魔と遭遇した時、カマキリの化け物のような姿をしており、鎌を振ることで真空波による飛び斬撃を披露してきた。普通のデビルハンターなら動く間もなく首と胴体を切り離されていただろう。
だが、相手が悪かったとしか言いようがない。フィジカルチートの甚爾君の五感と身体能力の前では、真空波による飛ぶ斬撃ぐらいなら俺の首と胴体を泣き別れさせる前に回避するのは余裕だ。そこから距離を詰め、本体の鎌部分をサブミッションの極みでカマキリっぽい体と力技で引き千切り、そのまま千切れた鎌の部分を掴んで、地面に何度も刃の部分を叩きつけてボロボロにした後、俺の血を飲ませて回復させ、またボロボロにする。拷問の永久機関が完成したな!と笑いながらいたぶっていれば、さっき俺が説明した条件で契約すると泣きついてきた。
「あの頃は俺も若かったってことで」
「悪魔に若いもクソもあるかよ。さて、おーいデンジ!そろそろ行くぞ!!」
昔話はここまでにして、俺はベンチから立ち上がり、デンジを呼ぶ。
もうすぐ予約の時間が迫ってきている。何の予約かって?それは──、
「牛タンとカルビ5人前、お待たせしました」
「うひょ~!!」
高級というには値段が高くなく、だが食べ放題よりは質のいい焼肉店だ。
テーブルに置かれた肉にデンジが目を輝かせながら涎を垂らす。俺も久しぶりの焼肉に興奮しているのでデンジを注意することなく、網に肉を乗せて焼いていく。
「うめぇ!うめぇ!!」
「黙って食え。……うめぇ」
白米に乗せて食べる焼肉は本当に美味い。それが転生後に初めての焼肉なら、なおさら格別だ。白米と焼肉を交互に口に運ぶこの幸せ。ビールが合うのは分かるが、今の俺は未成年だから飲めないのが残念だ。まあ、代わりにコーラでも飲んでおくか。
デンジは焼肉に夢中だし、ポチタは札束ビンタで無理やり店に連れてきて、焼いた肉をデンジが口に放り込んでいる。
「けどよぉ、アニキ。こんなうめぇ肉頼んで大丈夫なのか?」
「この間の悪魔を売っ払った金が手に入ったからな。こんくらいの支払いはヘッチャラだ」
懐から札束を見せると、デンジは安心した顔になって店員を呼ぶベルを連打して肉を追加で頼む。
俺もついでに白米とロースとホルモンを頼んで腹が膨れるまで食いまくった。
「あ~、幸せ~。うめぇ肉食って帰りにガムも貰って。これであとは女でもいれば最高なんだけどな」
「お前が女?寝言は寝てから言え。女ってのは金持ってて強い男が好きなんだ。あとは口の上手さだな。だから、お前が女だなんてまだ早いんだよガキンチョ」
「んだとぉ!俺は悪魔を狩れるぐらい強いし、その悪魔を売って儲けてんだ!まあ、口の上手さは自信ないけどよぉ……」
「ワン!ワン!!」
俺の言葉にデンジがムッとした顔をする。馬鹿にされたと怒っているのか、ポチタもワンワンと吠えてデンジを庇っている。
そんなムキになるうちはまだまだ子供だとからかって、「女なんて早い」と言うと、またムキになった二人がギャーギャーと騒ぎ始める。その騒がしい2人の声をBGMに、俺はまだ平和なこの時間に浸りながら家路についた。