ネタ帳に書いてあったマキマの回を書きました。
なので、最強の大会はスキップします!!
「以上が、今回の襲撃での詳細です」
アキが今回の襲撃でのサムライソードとヘビ女含む、事件の主犯格の逮捕と、ゾンビの悪魔によってゾンビにされた人間の処理は全て魔人たちが片付けたという報告を済ます。
「了解です。今回の一件で全国のヤクザも大きく力を落とすと同時に、これをきっかけに銃の悪魔を見つけられるかもしれません。とはいえ、こちらも多くの人材を失いました。今後はますます気を引き締めていかねばなりませんね」
報告を受けたマキマは喜ぶでもなく、いつも通り冷静に今後の事を懸念していた。
「んなの、心配しなくても、俺とポチタがいれば大丈Vですよ!!」
「おい、デンジ!」
大人しくアキの報告を隣で静かに待っていたデンジが、突然前に飛び出してピースサインでアピールした。
マキマはそんなデンジをちらりと見やった。
「うん、流石はデンジ君とポチタ君だね。まさか、サムライソードに二人だけで勝っちゃうなんて。正直、私か岸辺さんが救援に入るものだとばかり思ってたもの」
「え~、俺とポチタの強さ信じてくれてなかったんですか?」
文句を言っていたデンジの頭をマキマが優しくヨシヨシと撫でると、不満そうだった表情が一気にだらしない顔へと変わる。
そんな様子に呆れたアキは、ぐずるデンジの首根っこをつかみ、そのままマキマに一礼して退室していった。
こうして一人部屋に残ったマキマは、机の上の報告書に再び目を通した。
今回の件でサムライソードとヘビ女の逮捕には成功したものの、ヘビ女である沢渡は、任務失敗時にヘビの悪魔に殺されるという保険のような契約を結んでいたのか、護送中にヘビの悪魔によって命を落としたことが確認された。
だが、そのような些末な事はどうでもよかった。
今回の一件でマキマが気にしているのはデンジが無事に生き残ってしまったという点だ。
「まさか、本当に生き残るだなんて、本当に驚いちゃった」
なまじ武器人間の強さを知るマキマからして見れば、ただの人間のデンジと弱体化して一般の悪魔以下程度の強さでしかないチェンソーマンでは歯が立たない相手だった筈だ。
だというのに、その予想を大きく裏切る形で、デンジとポチタはサムライソードから見事に勝利を掴み取った。
「それもこれも、デンジ君の言うアニキさんが原因かな?」
デンジとの会話にたびたび登場するアニキという人物。公安でもマキマの出来る限りの総力をもって捜索に挑むも足取りどころか、影すらも捉える事が出来ないでいる。
「恐らく、ここまで探しても見つからないということは、確実に私の目の事を知っている」
マキマの言う目とは、支配の悪魔の力で支配した小動物を通して得られる視界のことを指す。
そして、それを知って隠れているということは、私を恐れているのだろうか。
まあ、わからなくもない。他国では魔女と呼ばれ、恐れられている私から逃げ隠れするのは、情報に敏い者なら当然だ。
では、もう他国へ逃げたのか?いや、報告にない悪魔の死体の放置や、支配下の小動物を惨殺した犯人──それがアニキと呼ばれる人物であると、私はほぼ確信している。
だが、なぜ銃の悪魔の肉片をアニキなる人物は日本国内で探し回っているのか?銃の悪魔の肉片は日本だけでなく、世界中に散らばっている。手に入れるのならば、わざわざ危険な日本に留まり続ける必要はない。
考えられるとすれば、こちらの動向、あるいはチェンソーマンとデンジ君の動きをひっそりと監視している為?
「前者ならば、私に対抗するためだろうけど、後者なら、今集まっている人物像の情報から考えてお金儲けかな?」
あれは悪魔の力を強化するだけでなく、銃の悪魔を探し出す探知機にもなる。そのため価値は計り知れず、今のご時世、肉片を手に入れるためならいくらでも金を積む国や組織は少なくない。
だから、金儲けのために銃の悪魔の肉片を回収しようとする、公安以外のデビルハンターもちらほらいる。しかし、そういった悪魔は基本的に強力な力を有している為、命大事にな連中はまず手を出そうとはしない。
だけど、アニキなる人物はこちらが監視の目を送るよりも先に銃の悪魔の肉片を食べたであろう悪魔を殺して肉片を回収している。
だとすれば、その実力は公安のデビルハンターよりも上であると仮定することが出来る。
「私の能力を知っていて、銃の悪魔の肉片を食べた悪魔を瞬殺出来る実力者か……」
それだけの実力を持つデビルハンターならば、情報の一つぐらい出てもおかしくないというのに、その情報元は今のところデンジとポチタの二人だけだった。
しかし、ここでようやく有益な情報を手に入れることができた。
報告書の一番下にある紙、そこにはある一人の人物の似顔絵が書かれてあった。
「アニキさん。いえ、甚爾さん。例え物的痕跡を残さずとも、ただの人間に人の記憶を弄る術はありません」
それはマキマが支配したサムライソードに描かせた甚爾の似顔絵だった。
その似顔絵はデンジに描かせる。あるいは、似顔絵を描くことに特化した人を用意して描かせなかったのかと疑問に思うかもしれないが、デンジは義務教育すらまともに受けていないせいか、人の特徴を言語化して上手く伝える能力が欠けていた。
その結果、完成した似顔絵はどこか微妙な人物像となり、当のデンジも「アニキはこんなじゃない」と首を振っていた。
だが、サムライソードに描かせた似顔絵は上手く特徴を捉えており、デンジの証言を基に描かれた似顔絵とは、天と地ほどの差があった。
これで今後の捜索は捗るだろう。
「けれど、もし銃の悪魔の肉片を集める理由が前者で、私と事を構える気だったら?」
そもそも、サムライソードの証言によると、甚爾はヤクザの組長の事務所から金を盗んで逃げたらしい。そんな人間が、さらに金を求めて銃の悪魔の肉片を集めるだろうか?
であるならば、目的はやはりこちらに対抗する為に銃の悪魔の肉片を集めている?
デンジ君の話によると、甚爾は何体かの悪魔と無理やり契約しているらしい。もしそれが本当なら、今も身を隠しながら新たな悪魔と契約している可能性は十分にある。
「その上で、銃の悪魔の肉片を集めているとすれば、私に対抗することのできる悪魔と契約した?」
支配の悪魔の力はとにかく強力だ。日本の内閣総理大臣と契約した今の自分への攻撃は、日本国内の適当な事故や病死に置き換えられてしまう。まさにチート級の能力だが、それだけでなく、公安が捕獲した悪魔を支配して使役するなど、攻撃手段も豊富だ。正直、今の自分を倒せる存在なんて、根源的恐怖の悪魔クラスでもなければ無理だろう。
だが、世の中には相性というものが存在する。
「支配を倒せるような存在。革命・希望・踊る戦士といったところでしょうかね?」
どれも悪魔としての格は低い。なにせ、その存在を恐れるのは支配階級に属する一部の人間だけだからだ。
しかも、恐怖を力の源とする悪魔にとって、先に挙げたものは民衆から英雄視されており、それは悪魔にとって猛毒同然。たとえ支配階級に恐れられていても、大きく弱体化して力を削がれてしまう。
「けれど、その悪魔に銃の悪魔の肉片を食べさせたら?」
格上の悪魔の血や肉片を取り込めば、弱い悪魔でも大きく力を得られる。
そして、銃の悪魔の肉片を支配に対抗できる悪魔に食べさせて強化すれば、悪魔の格で劣っていても、相性の差によってこちらの力を大きく削ぐことができる。
「やはり、この甚爾という人は要注意ですね」
より一層の警戒度を上げて、今後の捜索に費やす時間を増やすことを決める。
そして、マキマは報告書から顔を上げ、自分の前に用意された冷めたコーヒーに口を付ける。
冷めてしまったコーヒーは美味しくないが、この程度のことに文句を言う程、度量が狭いわけではないので気にしないで飲むことにした。
「にしても、武器人間であるサムライソード。支配してみて分かったけれど、決して雑魚なんかじゃなかった。公安じゃ、人間に限定すれば、岸辺さん以外の人じゃ敵わない強さを持っていた」
マキマはコーヒーを飲み終えると、改めて今回のヤクザの襲撃による報告書に目を通す。
今回の事件、実は襲撃されるよりも前にマキマはヤクザの動きを掴んでいた。それなのに、今回の襲撃を黙認したのには理由があった。
マキマの目的はチェンソーマンを完全に屈服させることだが、最強の悪魔であるチェンソーマンには全く歯が立たないと理解している。
現在は弱体化しているものの、これまでの接触の中で何度か支配を試みたことがある。以前、デンジとチェンソーマンがヒルの悪魔と戦った際、報告書の作り方を教えている最中にデンジに支配の力を使い、自分の血をチェンソーマンに飲ませようとした。
結局、一瞬でも自分の血を口に含ませたチェンソーマンを支配しようとしたが、あっさり吐き出されて失敗した。その後もサムライソードとの戦いの後、デンジとアキが入院しているのを理由に「悪魔を病院に置いておけない」として一日だけ自宅に招いたが、どうやっても支配することはできなかった。このことから、チェンソーマンはすでに地獄にいた頃の力を少しずつ取り戻しているのではないかと考えた。
「けれど、チェンソーマンの姿や力はデンジ君と契約したばかりの頃のまま……」
ここから先は推理というより、むしろ考察や妄想に近い話になるが、デンジ君とチェンソーマンの契約には、意図的な齟齬があるような気がする。
「恐らく、チェンソーマンはデンジ君の助けろって契約を無理矢理に捻じ曲げている。デンジ君はその場しのぎでヤクザから命を助けろって意味合いで結んだのに対して、チェンソーマンは彼の人生を助けろって意味で結んでる」
ポチタはデンジを守るために高位の悪魔を避けている傾向がある。現に、チェンソーマンは私とデンジ君が接触しているのを嫌がっている。
けれど、ただの悪魔であるチェンソーマンじゃ彼の生活を守ることは出来ない。だからこそ、まだ友好的な態度を見せている私の元から無理矢理に引き剝がそうとはしていない。
だけど、それでは私の理想を──チェンソーマンを使ってより良い世界を作りたいという願いを叶えられない。
「人間の恐怖が消えない限り、転生し続ける悪魔たち。けれど、チェンソーマンの持つ食べた悪魔の名前の存在をこの世から消してしまう力。それさえあれば、私の願いは成就する。けれど、死・戦争・飢餓の悪魔が現れれば、チェンソーマンは絶対にデンジ君を守るために逃走を選んでしまう」
全盛期であればチェンソーマンならば勝てるであろう悪魔たちであるが、今のチェンソーマンは絶対に戦うことすらしないと断言出来てしまう。
だからこそ、今回のヤクザによる公安襲撃は渡りに船だった。
今のチェンソーマンは全盛期の頃の力はデンジとの契約によって発揮することができない。
「チェンソーマン本来の力を解放すれば、世界中の悪魔がチェンソーマンの存在に気が付き、彼の弱点に成り得るデンジ君を狙う。それはデンジ君の人生を救うという、彼が自ら捻じ曲げて結んだ契約に違反する。かといって、力を解放させなければ襲い掛かる敵の悪魔からデンジ君を守れない。本当に苦しい契約ですね」
あの日、デンジ君がアキ君と喧嘩して帰って来た日、チェンソーマンと結んだ契約内容を聞いた瞬間、先に語った現実の板挟みに思わず同情してしまうほど、マキマはチェンソーマンを哀れんだ。
けれど同時に、彼女の心にはこの状況への歓喜も湧き上がっていた。
「本当に、
あの日、あの契約の意味を瞬時に理解した自分がこの言葉をギリギリで口に出さず、最後の部分だけチェンソーマンとデンジ君に聞かせた自分を褒めてあげたい。
そう、あの契約の内容とチェンソーマンとデンジ君の間にある齟齬に気づいたからこそ、公安襲撃の件を利用できないかと考えた。
ヤクザ側には銃の悪魔と契約したデビルハンターが協力しており、ヤクザの若頭を武器人間にしたことも把握していた。その武器人間、サムライソードにデンジを殺させてチェンソーマンを覚醒させる。そして覚醒したチェンソーマンはサムライソードを狙うだろうから、その隙にデンジ君の遺体をこちらで回収し、死んだデンジを蘇らせることを対価に、契約という名の支配をチェンソーマンに持ちかけるつもりだった。
公安も武器の悪魔の心臓をいくつか持っており、それをデンジ君の心臓に移植して武器人間として復活させられると判断したからこそ静観を決め込み、万が一にもデンジ君たちが勝たないように、永遠の悪魔との戦いで活躍したパワーちゃんは、血抜きでデンジ君とのバディを一時的に解消させるため、適当な悪魔を配置して駆除依頼を任せるという徹底ぶりを見せた。
ところが予想外にも、ヤクザ側はチェンソーマンだけでなくデンジ君の身柄まで狙っていた。正確には、デンジ君が知っているだろう、アニキである甚爾の居場所だった。
このため、サムライソードは他の公安のデビルハンターとは違い、デンジ君を殺さず生け捕りにする方針で動いた。
結果、案の定デンジ君は心臓の病が悪化して倒れ、チェンソーマンも彼を守ろうとして本来の力を出せぬまま刺され、捕らえられてしまった。
この展開は予想していなかった為に、静観は取りやめて、付近で生き残っていたコベニちゃんに奪還を携帯を通じて命令し、今後のためにサムライソードとヘビ女を残して取り巻きのヤクザを皆殺しにした。
「あの時は焦りましたが、無事にチェンソーマンが敵の手に渡らずに済んでよかったです」
そうして、京都から東京にとんぼ返りした私は、サムライソードの目的がチェンソーマンの回収とデンジ君の生け捕りのため、デンジ君を生け捕り不可能だと思わせるために、死んだ荒井君の心臓移植と岸辺さんに二人の指導を任せた。
武器人間は他の悪魔とは比べものにならないほどの実力を持っている。心臓移植や岸辺さんからの指導を受けても、勝てる確率はせいぜい10%にも届かないだろうとの判断だった。
ところが予想に反して、デンジ君はポチタのまま、本来のチェンソーマンにならずに勝利を収めた。
「弱体化したチェンソーマンとデンジ君の実力を見誤ったというよりも、デンジ君とポチタ君が組んだ際の実力を見誤ったという方が正解かな?」
あの廃工場で初めて出会った時、彼が言った「俺とポチタが揃えば狩れない悪魔なんていないっす!」という言葉を思い出しながら、デンジの評価を上げる。
まさか銃を隠し持つという切り札を用意していたとは思わなかった。いや、それを真の切り札にまで仕上げたのは、きっと岸辺さんの指導あってのことだろう。
「岸辺さん、貴方は私の期待以上の働きをしてくれました。……いいえ、これでは正しくは期待以下の働きでしょうか?」
そう言いながら、マキマは岸辺への評価を上げる。
悪魔を殺せる力を持つ者を育てる育成能力は自らの理想を後押ししてくれる。彼自身も強力なデビルハンターである為、まだ消すには勿体ない人物である。
「それにしても、ヤクザ襲撃による私の計画が失敗しちゃったし、今後はどうしよう?」
今までで一番惜しかったのは、やっぱりパワーちゃんをバディにした直後だろう。ヒルの悪魔の時は、あと少しでいけそうだったのに、パワーちゃんが血を飲ませた後、偶然にも目を覚まさないポチタ君の尻尾を引っ張って起こすなんて。チェンソーマンの不死身トリガーを引いたのはパワーちゃんの強運か、それともデンジ君の悪運か?
だからこそ、血抜きを理由に今回の件から外すことにしたが、結局それも意味がなかった。
「ふぅ……世の中って、なかなか思い通りにはいかないものですね」
もしも、この一件が計画通りに進んでいればどうなっていたか、想像せずにはいられない。
かつての黒く逞しく、腸をマフラーにして、異形の悪魔となったチェンソーマンと契約し、支配する未来を──。
「病める時も、健やかな時も、富める時も、貧しき時も、永遠に
目を閉じれば、そこが戦場でもまるで結婚式場のように、私がチェンソーマンに結婚指輪ではなく支配の首輪をかける光景が広がる。
そうなれば、彼が私に対して口にする返事は「はい」か「ワン」だけとなる。そうなれば、この世からなくなった方が幸せになれるもの全てを喰らい尽くすよう命じ、最後には私自身もチェンソーマンに食べられ、彼の一部となって幕を閉じる、そんな幸せなハッピーエンドだ。
そんな乙女のような願いの裏には、支配の悪魔としての欲望が潜んでいる。
そしてその欲望を阻むのは、ヤクザに借金を抱えていた、何の力も持たないただの人間ひとり。
マキマは報告書に載ったデンジの顔写真を、ボールペンで真っ黒に塗り潰した。
「邪魔だな、デンジ君……」
そして、報告書を丸めてゴミ箱に放り込んだ。
ここが納得できない!マキマの狙いが違うという意見がありましたら、感想で教えてください。
二次創作ではマキマがいい奴になったりしますが、作者はマキマさんは藍染ぐらいの策士の悪役であってほしいという願望がありますので、この二次創作ではマキマさんは徹頭徹尾、悪役で通します。