フィジギフゴリラのデビルハンター   作:リーグロード

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アンケート結果により、デンジとポチタの居候先は早川家に決まりました。


男のタイマン

 

 マキマに案内されて辿り着いたのは公安本部だった。チェンソーが頭についているポチタに周囲の人間は怪訝そうな視線を向けるが、先頭を歩くのがマキマであるため、無意識に安全だと認識してそのまま通り過ぎていく。

 

「ここが公安の本部だよ。デンジ君とポチタ君には、これからここでデビルハンターとして働いてもらいます」

「へぇ~、こんな綺麗な場所で悪魔を狩るのか。つってもよ、やることはいつも通り悪魔をぶっ殺すだけだしな。頑張ろうぜ、ポチタ」

「ワンッ!」

 

 デンジとポチタは物怖じすることなく、張り切った様子でマキマの後ろについて行った。

 そうして辿り着いたのはマキマが常在する執務室で、マキマから制服を支給される。

 

「デンジ君にポチタ君。ウチは基本的に制服なのでこれに着替えてもらいます」

 

 そうして手渡されたのは、デンジがこれまで着たことのない新品の清潔な服と犬猫に着せるような小っちゃなネクタイだった。

 

「服の着方は分かるけどもよぉ、ネクタイなんざどう着けりゃいいんだ?」

「ワフッ?」

 

 仕方なく服に袖を通し、ネクタイは首に巻くだけにしてマキマの元へ戻る。そうして、マフラーのようにネクタイを着けたデンジとポチタがマキマの前に現れた。

 

「うん、服の方はちゃんと着れたみたいだけど、ネクタイの方はダメだね。ちょっと待ってね、アキ君」

 

 デンジの隣に並んで待機していた早川アキにマキマが声をかけた後、ポチタの首に巻かれたネクタイを首を締めないよう気をつけながら結び直す。

 そして、それを見たデンジが羨ましがって騒ぎ出したため、ネクタイを締めた公安verのポチタを撮って待ち受け画面に設定してから、その後デンジのネクタイも締める。

 

「あの、マキマさん。こいつらは一体?」

「この子たちはデンジ君とポチタ君。これから早川君と一緒に仕事をするデビルハンターだよ」

「こっちのチンピラはまだ分かります。でもこの犬みたいなの、こいつは悪魔ですよ?」

「なんだァ?テメェ……。ポチタに文句あんのかよ?」

「ワウッ!」

 

 早川アキの疑問にマキマが答えると、アキは悪魔と一緒に仕事をすることに対して否定的な態度を示す。

 デンジはポチタをバカにされたと感じてキレており、その隣でポチタも威嚇ように低い唸り声を上げるが、早川アキは全く怯まず、逆にデンジとポチタに冷ややかな視線を向ける。

 そんな一発触発の空気をマキマが手を叩いて霧散させる。

 

「みんな、喧嘩しないで仲良くしましょう。今日からみんなは一緒に働く仲間なんだから」

「「……はい」」

 

 マキマに注意された二人は大人しく矛を収めて、マキマの言葉に従う。

 

「それじゃ、デンジ君にポチタ君。君たちにはこれから早川アキ君と一緒にパトロールの任を命じます。アキ君も、先輩として二人に指導してあげてね」

「え……?マキマさんじゃなくてこいつと?」

「ワウッ……」

 

 アキと共に仕事をしろと命じられたデンジとポチタは不満そうな声を出すが、直後にマキマからこれからアニキである甚爾を見つけて勧誘する準備をすると言うと、渋々ながらその命令を了承した。

 

「こんな人通りの多いとこに悪魔って出んのかよ。あいつらいっつも人気のないとこに隠れてるのによ~」

「…………」

 

 やる気のない態度でデンジはアキの後ろをついて歩いている。グダグダと文句を言い続けるデンジの戯言をアキは無視していたが、デンジはそんなアキを「つまらねえ野郎だ」と思い始める。そして足元を歩くポチタに構い出したところ、無反応だったアキが急に「ちょっとこっちに来い」と言い、人通りの少ない路地裏に誘導する。

 

「なあ、こんなとこに連れて来てどうすんだよ?ここに悪魔でも出んのか?」

「……なあ、お前なんで公安のデビルハンターになった?」

「はあ?」

「答えろ。なんで公安のデビルハンターにお前はなったかって聞いてんだ」

 

 タバコに火をつけて真剣な表情で問いかけるアキに、デンジは質問の意図が分からず戸惑いながらも、答えられない質問ではないと判断し、素直に答えた。

 

「そりゃ金よ。今まで悪魔殺してヤクザの連中に売ってたけど、そいつらが死んじまって稼げなくなっちまったからな。そこをマキマさんに拾われたんだ。後ついでに言えばマキマさんと付き合いたいからな。悪魔ぶっ殺してれば、マキマさんも俺んこと好きになってくれるかもしんねえじゃん」

「そうか──」

 

 親指と人差し指で円を作り、にやけるデンジのバカ面にアキは拳を叩きこもうと右腕を振り上げた。

 だが、決まるはずだったその拳は、咄嗟に出したデンジの左手で防がれてしまった。

 

「あっぶねえ。いきなり何しやがる!!」

「……多少は動けるようだが、そんなんでデビルハンターは続かねえぞ。今のは俺の優しさだよ。今日までお前みたいな金やマキマさん目当てで公安に入った奴らを見てきたが、そいつらは一人の例外なく死んでいったよ。今公安に残ってる連中は何かしらの信念がある奴だけだ。そこの悪魔とつるんだ程度で自分は強いって勘違いした奴の寿命は短いぞ」

 

 そう警告するアキだったが、デンジはそれを笑って流した。

 

「へっ、んだよ先輩。随分と優しいじゃねえか。他人が死ぬのは見てられませぇ~ん。だから辞めろってか?バァ~カ!俺とポチタが組めば倒せねえ悪魔なんざいねぇんだよ!!」

「馬鹿が……。悪魔なんざ信用してると足元掬われるぞ。それになにより、俺は悪魔は嫌いだ。どんな悪魔だろうと全部苦しんで死ねばいいと思ってるよ」

 

 デンジの足元で「グルルルルッッッ……!!!」と唸りながら威嚇するポチタを憎むような目で睨むアキに、にやけ面を止めたデンジが冷めた顔つきでアキを睨む。

 

「あっそ、そういや先輩よぉ。随分といい服貰ってんだな」

「あぁ?急になに「かぁ~、っぺ!」──っテメェなにしッッッ!!?」

「喧嘩の基本は不意打ちだぜ、先輩よぉ!!!」

 

 アキのスーツに唾を吐きかけたデンジは、急なことに動揺と激高する隙だらけなアキの頬に、先程の仕返しとばかりに拳を叩き込んだ。

 殴られた拍子に口の中を切ったのか、口元から垂れる血を拭ったアキが立ち上がると、今度はこっちの番だとばかりにタックルをかます。

 

「ぐへぇっ!」

「喧嘩しか能のないチンピラが!今まで公安で鍛えてきた俺に勝てると思ってんのか!?」

 

 タックルで体勢を崩したデンジに、アキが鮮やかなジャブとフックを叩き込む。正直、これまで喧嘩してきたヤクザとは比べ物にならない強さを見せるアキに油断していたデンジは、クリーンヒットを受けて地面に倒れ込んだ。

 

「ウウゥゥ~~~!!」

「手えだすなよ、ポチタ。これは俺と先輩の喧嘩だ」

 

 ふらつきながら立ち上がるデンジは加勢しようとするポチタを制止する。

 

「いいのか、俺は別にそこの犬っぽい悪魔もついでにぶん殴りたいから構わないが?」

「へっ、さっき俺にぶん殴られた先輩が言うじゃねえか。それにアニキは言ってたぜ、自分の筋を通す男の喧嘩はタイマンが一番だってな!」

 

 互いに防御を捨てた殴り合いの喧嘩はどちらもダウンするまで続いた。

 貰った制服をシワと血塗れにした両者は、仲良く路地裏の道に倒れながら息も絶え絶えに口喧嘩を続ける。

 

「はぁっ、はぁっ、チンピラの癖になんでそんな強いんだよ……」

「へっ、へっ、へっ、そりゃ、ガキの頃からアニキに鍛えて貰ったからな。金玉狙わなかったとはいえ、先輩も俺と引き分けるなんてやるじゃねえか」

「金っ……!テメェ、そんなとこ狙おうとしてやがったのか!?」

「んだよぉ、結局狙ってねえからいいだろ別に……。アニキが言ってたかんな。金的は確かに強いが、相手を屈伏させんなら顔面をぶん殴れってな……」

「ロクなアニキじゃねえな……」

「へっ、勝手に言ってろ。俺にとってアニキは最高のアニキだぜ……」

 

 そういうデンジの顔はどこまでも晴れやかで、本気でそのアニキとやらを尊敬しているのが伝わって来た。

 ようやく体力も回復して体を起き上がらすと、パトロールの時間はとっくに過ぎており、報告の為に公安本部に戻ることにした。

 

「ん?随分と二人ともボロボロだね。悪魔が出たって報告は届いてないけど?」

「先輩が殴り掛かってきたので、俺は正当防衛でやり返しただけです!」

「なっ、あれは俺の優しさだって言ったろ!それにお前、最初の一撃は普通に止めやがったろうが。それで言うなら、唾吐いて最初に殴ったのはお前だろ!!」

 

 マキマの前だからこそ殴り合いにまで発展していないが、再び喧嘩を始める二人にマキマは表情を変えることなく「どうやら仲良く出来そうだね」と言うと、二人は声を出してその言葉を否定する。

 

「さて、それじゃ君たちの報告も聞けたことだし、今度はこっちから報告だね」

「報告?なんかあるんすか、マキマさん」

「うん、報告は二つ。ひとつはアキ君の所属する部隊にデンジ君とポチタ君を入れることになったの」

「なっ、このチンピラに悪魔をですか!?ウチには面倒くさい奴らがただでさえ多いんですよ?これ以上は俺も面倒見切れませんよ!」

 

 

 任務を組まされて初日で自分から問題行動を起こしたとはいえ、喧嘩したばかりの相手に加えて、本来ならば討伐対象である悪魔も入ると聞かされれば嫌がるのも当然のこと。

 そんなアキの反論を予想していたかのように、マキマは表情一つ変えることなく、アキの反論を封殺する。

 

「でも前に言ったよね。部隊を作った時に言ったよね。他じゃ見ないような実験的な体制で動かしてみるって」

「……こいつら何者なんですか?さっきこいつと喧嘩した時も悪魔の力なんか使わずにかなり動けてました。弱い悪魔だから契約の代償も弱いものだと思ってましたけど、それにしても……」

「普通の人と変わらないって思ってる?ねえ、デンジ君。もしよかったらなんだけどさ、君がポチタ君と契約した内容を言える範囲でいいから教えてくれない?」

「そんくらいなら、別にいいっすよ」

 

 デンジはマキマからの質問に素直に答え、自分がポチタをどんな悪魔の心臓で契約したかを説明し始める。

 

「え~っと、ガキの頃だからあんまっかし詳しい内容は覚えてないすっけど、俺のオヤジが借金作ったまま死んで、ヤクザのジジイに殺されそうになった時にケガしたポチタに会って、そんで俺の血を飲ませてキズ治してやるから、俺を助けろって内容だった筈……」

「…………っ」

「そっか、それがデンジ君とポチタ君が結んだ契約なんだ。……とっても素敵な契約だね」

「へへ、あざっす」

「ワンッ!」

 

 思った以上にヘビーな内容にアキが絶句するなか、マキマとデンジは先程までと変わらないテンションで会話を続ける。

 

「じゃあ、もう一つの報告をしようか。デンジ君が言ってたアニキさんの勧誘の件なんだけど」

「あっ、そうだ、アニキ!やっぱしアニキも公安に入るって言ってました!?」

「それなんだけど、デンジ君が言ってたアニキさんが住んでいるっていう場所に迎えに行ったけど留守みたいでね。一応、帰ってきたらこっちに報告が入ってくるようになってるんだけど、未だに報告はないの」

「……そうっすか」

「ワフッ……」

 

 期待していた内容じゃないことにガッカリ感を隠すことのないデンジとポチタ。

 そんな二人にマキマが次の命令を下す。

 

「それじゃ、今日のお仕事はおしまい。それで、これからのデンジ君とポチタ君の住む場所だけど、デンジ君はアキ君の家に、ポチタ君は私の家に住むってことでどうかな?」

「ワウッ!!?」

「え~、なんでポチタだけマキマさんの家で、俺はこいつの家なんすか!?」

「そうですよ、マキマさん!?百歩譲ってこいつが俺の家で預かるのはまだしも、そのポチタって犬っぽいのは悪魔なんですよ!危険過ぎます!!」

「う~ん、ダメかな?」

「「「ダメです!(ワワンッ!!)」」」

 

 全員の反対意見により、最終的にデンジとポチタの住む家は早川家に決まった。

 マキマがポチタと一緒に住むと言い出したことで冷静さを失ったアキは、しばらくしてから、厄介なチンピラと嫌いな悪魔との共同生活を余儀なくされたことに気づき、帰り道で頭を抱えるのだった。

 

 


 

 

 

「ギィッ……ガァッ……」

「絞め殺せ、縄」

 

 全身をボコボコにされたミイラの悪魔の首に、虚空から現れた綱引き用のような頑丈な縄が巻き付けられ、宙に吊るされて首を絞められて殺された。

 ミイラの悪魔の死亡を確認すると、縄は元から無かったかのように霧のように消えて、宙に浮かされていたミイラの悪魔が地面に落ちる。

 

「さて、お目当ての物はあるのかね。こい、鎌」

「旦那、俺は鎌であって、死体を解剖するメスじゃねえんですぜ」

「知るか、どっちも同じ刃物だろうが。文句あんなら草刈りならぬ土刈りに使用すんぞ」

 

 初めて会った日のことを思い出したのだろう。固い地面に向かって延々と刃を叩き付けられ、ボロボロになるまで続いたトラウマが蘇り、鎌の悪魔はすぐにへりくだり、大人しくミイラの悪魔の死体を搔っ捌いた。

 腸を裂いて胃の中身を確認すると、目的の物が見つかった。

 

「おっ、見っけ!」

 

 甚爾が手に入れたのは弾丸のような悪魔の肉片だった。それを見た鎌の悪魔が騒ぎ出す。

 

「なぁ、なぁ、旦那!今度こそ、その銃の悪魔の肉片は俺に食わせてくれよ。そしたらもっと強くなって旦那の力になるからよ!」

「バァ~カ、お前の活躍なんざ9割は俺の実力によるもんだろうが。こいつはいつも通りあいつに食わせる」

「え~、またあいつにですかい。この前も銃の悪魔の肉片はあいつに食わせてたじゃないですかい」

「当たり前だろ。俺の身体能力頼みの戦法が通じない時は、切り札のあいつ頼みなんだから、強くしといて損はねえ」

 

 その説明に納得したのか、鎌の悪魔は大人しくなる。そうして、甚爾は手に入れた悪魔の肉片をポケットにしまい込んで帰路に就く。

 

「デンジの奴は今頃は公安でデビルハンターしてんだろうな」

「会いに行かねえんですかい、旦那?」

「冗談言うな。あそこには支配の悪魔のマキマがいるんだぞ。俺は自由が好きなんだよ。なんせ俺は甚爾君なんだからな」

「はぁ……?」

 

 鎌の悪魔には、何故自分の名前が自由を好む理由なのか理解できなかったが、下手に藪をつついて蛇を出すこともないと思い、それ以上は触れなかった。

 

 禪院甚爾の肉体は特別だ。原作の呪術廻戦でも、渋谷事変での降霊術による肉体情報のみの降霊でも元の人格が発現するという異変が起きた。

 その特性ゆえか、甚爾となった自らの肉体が禪院家を彷彿とさせる支配を嫌悪している。故に、甚爾はマキマに近寄りたくなく、同時にマキマの実力と厄介さを原作漫画を読んで知っているため、戦うという選択肢はなく、逃走生活に徹することを決めていた。

 

「さてと、そろそろ厄介者が来そうだし、退散するとしますかね」

 

 ミイラの悪魔の死体を放置して、甚爾がその場から去ってすぐのこと、大量のカラスが道端に放り捨てられているミイラの悪魔の死体に群がる光景があった。

 




正直、この小説は前半主人公のデンジとポチタ。後半ちょっとだけ出番のあるオリ主で構成していこうと思ってます。
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