「のう、デンジよ。その雑魚悪魔はマキマのなんなんじゃ?」
「雑魚悪魔じゃねえ、ポチタだ」
「ワウッ!」
バディになってから初めて行うパトロール中、パワーはポチタを雑魚悪魔と罵りながらも、気になっていたことを聞いてきた。
当然、家族同然のポチタを雑魚悪魔呼ばわりするパワーの質問に答える義理はデンジにはないし、雑魚悪魔呼ばわりされたポチタも怒って吠える。
「パワー、お前またポチタをイジメたらマキマさんにチクるからな」
「ぬっ、ワ……ワシは別にポチタをイジメてなんかおらんが!?」
デンジにマキマに報告すると脅されたパワーは、慌ててポチタをイジメていないと必死に主張するが、さっき雑魚悪魔と呼んでいたくせにどの口が言ってるんだと文句を言いたかった。しかし、パトロール初日から問題を起こすのも嫌だったので、デンジはそれ以上何も言わなかった。
「それで、そのポチタという悪魔はマキマにとってなんなんじゃ?」
「俺も詳しくは知らねえよ。なんか昔ポチタと会ったことあるみたいな事言ってたけどよ。それだけだぜ」
「フン、その程度か……。マキマの弱点になれるようだったら、ワシがポチタを人質にとってやろうと思ったんじゃがのう」
「おい、そんなことしたら、マキマさんよりも先に俺がお前を殺すぜ」
「あぁ?ウヌはバカか?人間なんぞがワシに敵うわけあるまい!!」
「だったらよ、試してみるか?俺は相手が女でも、すっげぇ~ムカつく奴はぶん殴れるんだぜ!」
そう言ってパワーとデンジが一発触発の空気の中、突然、パワーが鼻を鳴らしたかと思えば、何かの匂いを嗅ぎつけた。
「血の匂いじゃ!!」
「あっ、おいおい!テメェ!どこ行く気だ!?戻って俺と喧嘩しろ!!」
急に走り出したパワーを後から追いかけるも、パワーは民間のデビルハンターが手を付けた悪魔を横取りする形で殺してしまう。
そのせいで、呼び出されたマキマに連帯責任でデンジも怒られることになってしまう。
「はぁ~、なあポチタ。俺アイツのこと嫌いだわ」
「ワウ……」
「だってよ、さっきもマキマさんに噓ついて俺に責任なすりつけようとしてきたんだぜ。いくら胸のある女でもあんな嫌な奴とは協力なんざできねえよ……」
そう愚痴をこぼしつつ、デンジはポチタを抱きしめる。
そのままポチタを抱えたまま問題のパワーに目を向けると、彼女は野良猫を抱いていた。
「ワシが仲良くできるのは猫だけじゃ。人間は悪魔の本能で嫌いじゃし、悪魔もワシからニャーコを奪っていった!」
「ニャーコ?」
「ワウッ?」
急に知らない名前が出てきて、デンジとポチタが首を傾げる。
「ワシが飼っていた猫じゃ。お前の飼ってる犬みたいな悪魔よりも可愛くてモフモフしておる」
「んだと!ポチタだって可愛いし、モフモフしてんだろうが!俺は猫なんかより犬派だね!」
またしても一触即発の雰囲気になるデンジとパワー。
しかし、つい先ほどマキマに呼び出されて注意されたばかりの状況では、本気で殴り合うわけにもいかず、二人は黙ったまま振り上げた拳を静かに下ろす。
「……のう、ウヌよ。もしニャーコを取り戻してくれたならワシがウヌの願いを何でも1つ叶えてやろう」
「はぁ?お前に何が出来んだよ。言っとくけど、俺は今のこの生活に十分満足してるぜ。普通の家に、普通の食事、風呂にだって毎日入れる。こうして悪魔を狩った金でジュースだって飲めるんだからよ」
「……やはり人間とはわかりあえぬの」
デンジの答えを聞いたパワーは、分かっていたことだとばかりに猫を撫でながら呟いた。
「……だったら、この体でどうじゃ?ワシは女じゃ。しかもただの女ではない。すっごくかわいい女じゃ!」
「俺も色んな奴にあって来たけどよ、真顔で自分のことそこまで過大評価できる奴はお前が初めてだよ」
あまりにも高すぎる自尊心にデンジも思わず引いてしまう。
けれど、確かにパワーの面はいいし、胸だって服の上からでもわかるくらい大きい。
だったら──、
「……だけどよ、悪魔なんかが猫をよお!攫っちまうなんてよぉ!!んなの許せねえよなあ!?」
「おお!!」
「デビルハンターとして許しちゃおけねえ!!そん悪魔は俺とポチタでぶっ殺してやるぜ!!」
女の体を交渉材料にされたデンジは、それまでの態度を一変させ、ニャーコを攫った悪魔を絶対にぶっ殺すと宣言する。
そうして、パワーの外出許可を得たデンジとポチタは、パワーの案内でニャーコを攫ったとされる悪魔の住処へ向かうことになる。
「あそこじゃ、あそこにニャーコを攫った悪魔がおるんじゃ!」
「おお、でもいいのか?テメーが姿を見せたら猫を人質にされんじゃねえのか?こんな近くまでついてきたらダメだろ?」
「おお?そういう設定じゃったか?」
「設定~?」
「言い間違いじゃ」
「「…………」」
一瞬の沈黙、次の瞬間に血の武器を出したパワーの腕をデンジが掴む。
「へっ、んなことだろうと思ったぜ!」
「は、離せ、人間!!」
「アニキが俺は女に関しては普段よりももっとバカになるから、女の噓には敏感になれって口酸っぱく言ってたからな。お前があの家にここまで近付いていった時点で疑ってたんだよ、バァ~カ!」
もっとも、ナマコの悪魔の一件がなければ、素直に騙されて今の不意打ちを受けていたかもしれないが。
「ぐぬぬぬ~~!!」
「大人しくしやがれ、この野郎!!」
抵抗して暴れるパワーを足払いで転ばせ、そのままうつ伏せにして後ろ手に拘束し、倒れたパワーが逃げられないように乗りかかる。
「へっへっへ、どうよ!人間の俺なんかでも、お前程度を倒すなんざわけねえぜ!!」
「ぐぬぬぬ!離せ人間!!ワシは悪くない!全部ニャーコを攫った悪魔が馬鹿な人間を連れてこいと言ったんじゃ!」
「はい、また噓ぉ~!それで何度も騙されるかよ!でも、俺は怒ったりなんかしてねえぜ。なんせこの状況、俺は襲われたのを返り討ちにした正当防衛ってやつだからよ。これでいくら胸触っても俺は無罪放免ってわけよぉ!!」
「なっ!?これだから人間は嫌いじゃ!!ワシを離せ、この!」
暴れるパワーをデンジは拘束したまま片手で腕を押さえた状態にして空いた片手でパワーの胸に手を伸ばそうとしたその時だった。
パワーが連れ込もうとした家の一部が吹き飛んだ。
「随分と私を待たせた挙句、人間なんぞに返り討ちにあうとは、失望したぞ血の悪魔よ……」
「マジで悪魔はいんのかよぉ……」
壊れた家の隙間から覗き見えたコウモリの悪魔と思わしき存在が、パワーに声をかける。
どうやらあのコウモリの悪魔はニャーコを攫った悪魔らしい。
「ほれ、ワシの言った通りじゃっただろう。さっさとワシを離さんか!!」
「……ちぇ、せっかく胸揉めるチャンスだと思ったのによ」
悪魔が現れた状況で、さすがにパワーを拘束したままではいられないと判断したデンジは、渋々パワーの拘束を解き、距離を取った。解放されたパワーはコウモリの悪魔に向かって叫び声をあげた。
「約束通り、人間を連れて来た。おヌシも約束通りにニャーコを返してもらうぞ!!」
「そいつは無理だな。私は人間を連れてこいと言ったが、お前はそれに失敗した。これには罰を与えなければならない」
コウモリの悪魔がそう言うと、パワーに見せつけるように籠に閉じ込められた猫を頭上に掲げる。
「ニャーコ!おヌシ、ニャーコに何をするつもりじゃ!!」
「このまま私の傷を癒すために丸吞みにしてやってもいいが、もしそこの人間が大人しく私の餌になるのなら、この猫を返してやってもいい」
「はぁ~?お前馬鹿じゃねぇのか。俺を騙して悪魔の餌にしようとした女の猫を助ける為になんでお前に食われなきゃなんねえんだよ」
「そうか、ならば交渉決裂だな」
心底馬鹿にした表情でコウモリの悪魔の提案を蹴るデンジに、コウモリの悪魔は不機嫌そうに顔を歪め、大きく口を開けて籠ごと猫を丸呑みした。
「ニャーコ……」
猫を食われて呆然と立ち尽くすパワーを横目に、デンジはコウモリの悪魔に問い掛ける。
「……んで、お前は悪い悪魔でいいんだよな?」
「私が悪い悪魔だと?傲慢な質問だな、人間!私はそんなお前たち人間を全て食べるという崇高な目標を持つ。そんな私に対して悪い悪魔などとよくもほざいたものだ!!」
「そうかよ。人間食っちまうような悪魔なら悪い悪魔決定だな。決めたぜ!お前をぶっ殺して腹の中の猫を救う。んでもって、マキマさんに褒めてもらうんだ!!いくぞ、ポチタぁぁぁ!!!」
「ガウッ!!!」
ポチタを抱えてスターターロープを引っ張ってエンジンを吹かしてチェンソーを回転させる。
すると、コウモリの悪魔も隠れ潜んでいた家から抜け出して、そのままデンジにかぶりつこうと突進してくる。
「へっ、やっぱしお前頭悪いだろ。こっちはチェンソー持ってんだぜ!!」
何も考えずにポチタごとデンジを丸吞みしようと大口を開いて走ってくるコウモリの悪魔の顔面目掛けて、タイミング良くポチタを振り下ろす。
「おらぁ!!!」
「ギャアァァァ!!!!」
回転するチェンソーの刃に顔を抉られて大量出血するコウモリの悪魔はたまらず悲鳴を上げ、後ろに数歩後退りする。
「コウモリの癖に飛ばねえと思ったら、お前腕ケガしてんのかよ。こいつはラッキーだぜ!こうやって楽勝でお前を狩れんだからなぁ!!」
「ぐううぅぅぅ──!!おのれ、人間めぇ!!!」
抉られた顔の傷を押さえながら、コウモリの悪魔は怒りに声を震わす。
「おい、パワー!お前もいつまでそこでボーっとしてんだよ。あの猫助けたいんじゃねえのか?」
「ニャーコをか……?」
デンジに声を掛けられて、放心していたパワーは目の前でデンジに傷つけられているコウモリの悪魔を見て沸々と怒りを燃え上がらせる。
「そうじゃのう。コヤツは約束を破ってニャーコを吞み込んだ。じゃったら、腸を搔っ捌いてニャーコを救い出す!!」
「へへ、その意気その意気!!」
血の悪魔の力でコウモリの悪魔の腸を搔っ捌けるほどの大鎌を作り出すパワーに、デンジは嬉しそうに笑った。
「そんじゃ行くぜ!パワー!!」
「おうおう!この大悪魔であるパワーの力を見せつけてやるわ!!」
二人は同時にコウモリの悪魔へと駆け出す。
「ぬううう!おのれぇぇぇ!!」
コウモリの悪魔は傷ついた顔から手を放し、大口を開いて食らいつくような油断を消し去り、向かってくる二人に向けて巨大な拳を振り下ろす。
「避けろ、パワー!」
「うおりゃ!!」
だが、そんな大振りの拳が当たるはずもなく、コウモリの悪魔のパンチは地面を砕いただけで終わった。
その隙を突いて、デンジの振るポチタのチェンソーがコウモリの悪魔の胸を抉り、パワーの大鎌がコウモリの悪魔の突き出した腕に振り下ろされた。
「ガアアアァァァッッッ!!!?」
「このまま大人しく腹ぁ搔っ捌かれやがれぇえぇぇ!!!」
「ニャーコを返せ!このクソ悪魔がぁぁぁ!!!」
自身の体を切り刻まれる激痛に苦悶の表情を浮かべるコウモリの悪魔を、デンジがチェンソーで更に深く抉る。
パワーも負けじと大鎌を持つ手に力を込めて、コウモリの悪魔の腕を斬り落とさんとする。
「は、離れろぉぉぉ!!!」
コウモリの悪魔は半狂乱で体に纏わりつくデンジとパワーを払い落とさんと暴れ回る。
そんな滅茶苦茶な動きでも、コウモリの悪魔の巨体でされれば十分な脅威であり、デンジとパワーは吹っ飛ばされるよりも前に自分からコウモリの悪魔から飛び退いた。
「うおっ!こいつデカイだけあってタフだぜ!」
「ぬう!おい、デンジ!早くニャーコを助けんか!!コウモリの悪魔の胃の中で消化されたらどうする!?」
「うっせぇな!さっきまでボーっとしてた奴の言うことかよ!?」
「はぁ?ワシはボーっとなぞしておらんが!?ウヌの見間違えじゃ、おうおう!」
コウモリの悪魔を無視して、そんな言い合いの喧嘩をする二人に向けて、コウモリの悪魔は次の攻撃手段に出た。
世間一般的に、コウモリといえば血を吸うことや超音波を発することが思い浮かぶだろう。そのコウモリの恐怖から生まれた悪魔の攻撃手段である血を吸うことは最初にデンジに防がれたが、もう一つの超音波攻撃のための十分な距離と隙を確保していた。
「ポパパパパポ!!」
「あぁ?なんかヤベェ!?」
「ん?なんじゃ?」
口元を変形させて何かしらの予備動作に移ったコウモリの悪魔を見て、デンジは即座に回避行動を取ったが、パワーは吞気にコウモリの悪魔の動作を観察しようと目を細めていた。
「波ア!!」
「
次の瞬間、コウモリの悪魔の口から放たれた超音波と衝撃波の攻撃によって、パワーの鼓膜が破れると同時に大きく街の方まで吹き飛ばされていった。
「あっ、おい、パワー!!!」
「今のを避けたか。だが、まあいい。血の悪魔は今ので死んだだろう。残るは人間のお前と人間なんぞに協力する悪魔だけだ」
「へっ、パワーを倒した程度でもう勝った気でいやがんのかよ。いいぜ、かかってきやがれ。パワーの墓の前にお前が食った猫を連れてってやるからよ!!!」
勢いよく懐に飛び込もうとするデンジに対し、コウモリの悪魔は今度こそ避けられないよう、正面ではなく横から掴むように腕を振った。
デンジはあくまで普通の人間であり、甚爾のような超人的な身体能力は持ち合わせていないため、悪魔の圧倒的な力で押されればひとたまりもない。
しかし、それはあくまでデンジ単体の場合の話だ。常日頃から言っているように、デンジとポチタが組めば狩れない悪魔など存在しない。
「さっきも言ったけどよ。腕ケガしたお前を狩るなんざ楽っ勝ぉなんだよぉぉぉ!!!」
「アが!?」
先の攻撃でパワーが大鎌を振り下ろした箇所に正確にポチタのチェンソーを当てると、脆くなったコウモリの悪魔の腕が宙を舞った。
同時に、チェンソーで斬り裂かれた傷口から大量に血を流す悪魔を見て、デンジはニヤリと笑った。
「そういや、魔人って元々は悪魔なんだろ?だったら、テメェの血をパワーに飲ませれば復活だな。そしたら猫を助けたのに合わせてエッチなこと頼み放題だぜ!!」
「く、狂っている……」
命をかけた悪魔との戦いで、エロいことをするのを理由に高笑いしながら戦うデンジの姿に、コウモリの悪魔は恐怖を感じた。
「あぁ?ビビった?ビビっちまったのか!?だったら、テメェの負けだよ。戦いってのはよぉ、ビビった奴から死んでいくんだぜぇ!!!」
「ひぃっ!?ち……近づくなぁぁぁ!!!」
「悪魔退治終了ぉぉぉ!!!」
両腕を失って逃げ出そうとするコウモリの悪魔をデンジは容赦なくポチタのチェンソーでその腸を搔っ捌いた。
腹から大量の血と臓物を噴き出して地面に倒れ伏す悪魔を見て、デンジはようやく終わったと大きく息を吐いた。
「よ~し、ポチタ。パワーの猫が生きてるか確認すんぞ」
「ワンッ!」
血で服が汚れるのも躊躇わず、デンジはこの後に復活させるパワーにどんな願い事をするか考えながらニャーコを探す。
「ワン!ワン!」
「おっ、見つけたかポチタ!」
吠えるポチタの元に行くと、籠の中で無事に生きているニャーコの姿を確認出来た。
「よっしゃ!これであとはパワーを復活させるだけだな。にしても、こいつの血をどうやって持って行こう?血を入れる容器もねえし、このデカイ死体をパワーの元まで運ぶのは無理そうだしな」
「ワン!ワン!」
どうしたものかと頭を捻っていると、ポチタが前足を上げてあるものを指差す。
「あ~、なるほど、その手があったか!」
夢を見ていた。ワシが魔人になり、ニャーコと出会った頃の夢を。
あの頃、ガリガリに瘦せたニャーコを餌として丸々太らせようと育てていたが、いつの間にかニャーコはワシにとってかけがえのない存在になっておった。
そんな時、コウモリの悪魔がワシの前に現れ、ニャーコを攫っていった。ワシはたかが猫一匹を助けるために人間を探し、公安に捕まった。
そして出会ったのがデンジとポチタじゃ。今まで見たどの人間よりも馬鹿そうで、どの悪魔よりも弱そうなこいつらなら、コウモリの悪魔との取引に相応しいと思った。
『おいっ、テメェ!ポチタに何しやがんだ!?』
『ワン!ワン!』
『はぁ~、なあポチタ。俺アイツのこと嫌いだわ』
『ワウ……』
羨ましかった。ワシはニャーコと引き剝がされたというのに、アヤツらは一緒にいて信頼し合っておったのじゃ。
ワシはニャーコと引き離されてから、ずっと一人じゃったというのに……。
だから迷うことなくコウモリの悪魔の元に連れていったというのに、デンジは小賢しくもワシの狙いを見抜いておったのじゃ。
そのせいでコウモリの悪魔はワシとの約束を破り、ニャーコはあの悪魔に食べられてしまった。
酷い気分じゃった。もう二度とニャーコを撫でられんと思うと、今まで感じたことのない喪失感がワシを襲ったのじゃ。
もう死んでもいいと、ニャーコの後を追って死にたいとすら思った。
『おい、パワー!お前もいつまでそこでボーっとしてんだよ。あの猫助けたいんじゃねえのか?』
そんなワシの気持ちを知ってか知らずか、デンジの奴はワシに怒鳴りつけてきた。
一体誰のせいでと思うと同時に、ワシの胸にあった喪失感が怒りへと変わっていった。
『そうじゃのう。コヤツは約束を破ってニャーコを吞み込んだ。じゃったら、腸を搔っ捌いてニャーコを救い出す!!
『へへ、その意気その意気!!』
そうして、デンジとポチタと一緒にコウモリの悪魔を殺そうとして、それから……?
あれ、そういえばワシはどうなったんじゃ?ニャーコを救い出そうとコウモリの悪魔の腹を裂こうとして……それから?
「にゃ~~」
「おっ、起きたかよ、パワー」
ニャーコの鳴き声で目を覚ましたワシの視界にデンジの顔が映り込んだ。
朦朧とする意識のなかで、ワシはデンジに訊ねた。
「ウヌは……?ワシはどうなったんじゃ?」
「お前、コウモリの悪魔にやられて吹っ飛ばされて、ほぼ死んでたんだぜ」
「死んでた?噓を言うな、ならなぜワシが生きておる?」
「ん!」
デンジが指差す方を見ると、首を斬り落とされて頭だけになったコウモリの悪魔の頭蓋骨があった。
「へへへ、アニキが教えてくれたんだ。昔の偉い武将の中に織田信長ってヤベェ奴がいて、そいつはヒトの頭蓋骨で酒を飲んだってな。だから俺もコウモリの悪魔の頭の中身を全部抜き取って、その中にアイツの血を入れて持って来たんだ。んで、あとはお前にコウモリの悪魔の血を飲ませて復活させたってわけよぉ」
「おヌシ、悪魔よりも悪魔じゃのう」
「なんとでも言いやがれ、それよりも約束……忘れた訳じゃねえだろうな?」
「約束?はて、何のことじゃったかな?」
「はぁ!?ふっざけんなよ、俺がどんな思いでコウモリ野郎と戦ったか!?」
「冗談じゃ、冗談じゃ、ちゃんと後でウヌの願いを聞いてやる」
そう言うと、デンジの奴は少しフリーズした後、喜びが爆発したかのように大はしゃぎし始めた。
「よっしゃあアアアア!!女の胸揉み放題だアアア!!!」
まるで子供のようにはしゃぐデンジの姿を見ていると、ポチタという悪魔が突然体当たりしてデンジを吹き飛ばした。
「ワァンッ!!」
「ポチ……タ……?」
ズボォン!!という音が響き、デンジを突き飛ばしたポチタの胴体に大きな穴が空いていた。
「あらやだ、雑魚悪魔のせいで狙いがズレちゃったわ」
気色悪い黒髪のカツラを被ったような垂れ乳の悪魔がそこにいた。
今回は長くなってしまうので、甚爾君の話は次回にカットします