仮面ライダーウイニング/仮面ライダーラセン Cross Dimension 作:赫牛
極彩色の光が煌めく空間。どこまでも続く様に見える通路。
単に『通路』、または『タイムゲート』、或いは『ディメンションホール』。人々はこの空間を様々な名で呼ぶ。それは観測した人々の数……いや、接続する次元の数だけ、つまり無数に存在する。
その実態はあらゆる次元と次元、時間と時間を繋ぐ通路。無数の可能性で分岐した世界がこれによって接続し、時に有り得ない交わりを引き起こす。人々はこれに偶発的に、或いは意図的に接続し、時間と次元を行き来している。
その通路を駆ける影が、二つ。
片や、全身に水晶の様に透き通った突起を纏った異形の者。
片や、バイクに乗る、緑の装甲に身を包んだ戦士。
異形の者は通路の壁を蹴る様にして縦横無尽に、緑の戦士はエンジンを震わせながら真っ直ぐに異形を捉え、それぞれ通路を進んでいく。
「っ……しつこい奴だ!」
「それが仕事だからな!」
異形の者が水晶の針を放ち、緑の戦士は巧みなハンドルさばきでそれを躱す。すかさず戦士は銃で異形を狙い撃つ。音速を越える圧縮された空気の塊を、異形は鈍重そうな見た目とは裏腹な機動力で躱す。無数に分岐する光の通路の中で、苛烈な逃走劇が繰り広げられる。
戦士が異形を追い始めてから、もうどれ程経っただろうか。用意されてあるナビゲーションを使わなければ、もう自分の世界に一人で帰れるかも怪しい。
或いは、と戦士は思考する。或いはかつて自分の中にあったあの力なら、事は既に終わっていたのではなかろうか。
「見えた!」
異形の叫びで戦士は我に返り、恐れていた事態が差し迫っている事を察する。異形の者が『外』に出ようとしているのだ。
「させるかっ!」
戦士はスロットルを回し、加速する。近づいた所で座席に立ちバイクを土台にして跳躍、異形の者に組み付く。
戦士の拳が異形を撃つ。岩をも容易に砕くその一撃を受けた異形は、しかし怯む事無く反撃する。それをいなし追撃する戦士だったが、その拳は異形に受け止められてしまう。
戦士は気付いた。先程までよりも異形の者の力が増している。この者にとって『都合の良い』世界が、すぐそこまで来てしまっていると。
ならばこそ、早く撃破しなければならない。
戦士が腰に着けた装備の引き金を三度引く。
『Winning……Impact!!』
異形を蹴って距離を取った戦士の背で翼が展開し、凄まじい推進力を産みだす。戦士は右脚を突き出し、異形に狙いを定める。
「はああああっ!」
「ふんっ!」
気合と共に放たれたキックを、異形は腕を交差して受け止める。力と力がせめぎ合い、接触点で弾けたエネルギーが光となり……そして爆発する。
「うっ……!」
弾き飛ばされた戦士は壁に激突する。肺の空気が全て抜けてしまう程の衝撃が走り、体勢を立て直した頃には、既に異形の姿は無かった。
「倒した……訳ではないか……」
戦士は通路の先、そこから漏れだす光を見た。『出口』は目前だったのだ。
おそらくあの先が奴が目指した世界だと、戦士は直感する。
止められなかった。ならば自分のやるべき事は、一つ。
バイクを立たせ、跨ってエンジンをふかした戦士は光の中に跳び込む。自分の信じた使命を果たすために。自分の責任を果たすために。
次元の追跡者。緑の装甲を身に纏い、金の二本の角を冠し、赤い瞳を輝かせる戦士。
その名を、仮面ライダーウイニング。
本来出会う事の無い戦士達の物語が、今始まる。