みんなには幸せになってほしいなぁ   作:海老ふらい

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アークナイツはニワカなので間違っていたら優しく教えていただけると幸いです。


可愛い可愛い子猫ちゃん

睡眠とは、素晴らしいものだ。

 

「………起きて………」

 

疲れが取れてストレス解消にもなる。

 

「……起きて………」

 

集中力が上がって仕事が捗るし、事故や怪我のリスクを減らすこともできる。

 

「…起きて…」

 

そして何より、気持ちがいいんだ。ふかふかの毛布に包まれながらポカポカとした日差しを浴びる。最強だ。それに寝る子は育つ。だから、だから

 

「起きて」

 

「ぅ、もっと寝かせてくれ」

 

「だめ、だよ。起きないとケルシー先生を呼んでくるよ」

 

起こさないでほしい。あと、ケルシーを呼ぼうとするのだけはやめてくれ!

 

「わかった、起きるからケルシーだけはやめて」

 

ケルシーを呼ばれるのは困る。ケルシーの起こし方はひどい。何がひどいってあいつMon3trで起こそうとするからな。前に起こされた時は喰われそうになったからな。いや、Mon3trからすると戯れてるんだろうが喰われかけるのは勘弁願いたい。え?さっさと起きればいいだろって?だまれ!こちとら何ヶ月も机に齧り付いて仕事してたんだぞ!理性がなくなったドクターに回復剤をぶち込みながら、アーミヤが持ってる書類を捌いて、捌きまくって、やっとの思いでもぎ取った休日だぞ!

全く、俺は体を動かすことが性に合ってるってのに、ドクターもアーミヤもケルシーもみんなして仕事を押し付けてくるんだから。ちょっと運動するぐらいどうってことないのに。

それはそれとして、正直、このままずっと寝ていたいがそれをするとますます心配させることになるから、渋々体を起こす。そして、目を開けると何とそこには可愛らしい子猫がいた。

 

「おはよう、今日の担当は私だよ」

 

……………可愛い。ッハ!いかん、可愛すぎる微笑みで永遠の眠りにつくとこだった。

ボーとしてたら目の前の少女は心配そうに顔を覗き込んできた。

可愛い。いかん、まだ寝ぼけているらしい。頬を叩いて眠気を覚ます。そして、起こしに来てくれたお礼にそっと少女の頭に手を置く。そして、サラサラとした銀髪を崩さないように優しく撫でる。

 

「おはよう、ロスモンティス」

 

「えへへ、おはよう、お兄さん」

 

可愛いなぁ、まじで。このままずっと撫で回したい。

だけども、欲望を抑えて、撫でていた手をどかして、洗顔や歯磨きなど身なりを整える。

その間、ロスモンティスはじっと俺の事を眺めていた。

うーん。いつも思うがそんなに眺めても面白いことは何も無いと思うけどなぁ。

そして、身支度が整った丁度に、可愛らしいお腹の音が鳴った。

その音の主に視線を向けると、恥ずかしそうにお腹を抑えたロスモンティスがいた。…………可愛い。

 

「何も食べてこなかったのか?」

 

「うん。お兄さんと一緒に食べたかったから」

 

ンンンッ、可愛すぎる。

 

「そっか、待っててくれてありがとう。俺もお腹空いたから食堂に行こうか」

 

「いいの?」

 

いいに決まってる。これにNOを突きつける奴がいたら頭かち割って、頭ん中の穢れた思想を洗浄してロスモンティスは可愛いと刷り込んでやる。いや、ダメだな。ロスモンティスが怯えてしまう。普通に殺すか。

 

「いいとも、さぁ行こうか」

 

ロスモンティスと手を繋いで食堂へ行く。その道中、ロスモンティスは心配そうにしながらも華奢な手で俺の手を噛み締めるように握っていた。

勝手に外に出た事を心配してるんだろうが安心しな!あとで俺がケルシーに叱られるだけだ!

食堂に着いてもロスモンティスは手を離す事なく警戒しているように見える。できた料理を受け取り席についても何処となく落ち着かないようだ。

全く、そんな様子じゃせっかくのご飯が美味しく食べれないだろうに。

 

「ロスモンティス」

 

「っ、どうしたの?」

 

俺が頼んだ料理を少しスプーンで掬い、ロスモンティスに向ける。所謂、あーん、という奴だ。

 

「ほら、口を開けて」

 

「…え、でも」

 

「良いから良いから、ほらあーん」

 

そう言ってロスモンティスに食べさせる。

うんうん、美味しそうに食べてよかった。ご飯ってのは美味しく食べるもんだからな。

美味しそうに食べるロスモンティス見ながら、俺もご飯を食べ進める。

 

「お兄さん」

 

「ん?どうした?」

 

「あ、あーん」

 

「…」

 

何という事でしょう!ロスモンティスが照れたようにこちらにあーんしてくるではないか!可愛い。可愛すぎるぜ。可愛いは正義だな。いやロスモンティスが正義だな!この表情を写真に収めたいが残念ながら、俺はカメラを持っていない。クソッ!あとでクロージャに頼むしかないか。

 

「お兄さん?」

 

「ああ、すまん、ありがとう」

 

うん、上手い!ロスモンティスが食べさせてくれる事により美味しさがアップしている。一生ロスモンティスに食べさせてもらいたいくらいだ。キモイから口には出さんがな。

 

「美味しいよ。ありがとう、ロスモンティス」

 

「えへへ」

 

か゛わ゛い゛い゛

天使か?天使だな(確信)

 

 

 

ご飯も食べ終わり、自室へと戻ってきた。本当なら体を動かしたかったんだが、そうするとアーミヤが泣きそうな顔で止めてくるからな。そんな顔されたら引き下がるしかない。アーミヤは笑顔がよく似合うってのに。アーミヤは心配性だからな、ちょっとした怪我でも大慌てでケルシーを呼んでくるし。まぁ、そういうところも可愛いけど。

自室に戻ったのはいいが正直やることが無いんだよなぁ。運動は制限されてるし。仕事は今日は休みだから無いし。だから、甘えてくるロスモンティスを撫で回すのはしょうがないことだな!うん、しょうがない、しょうがない。

ロスモンティスも喉を鳴らして気持ちよさそうにしているし、撫で回し甲斐があるってもんだ。

 

「お兄さん」

 

「ん?」

 

「お兄さんは、居なくなったりしないよね?」

 

暫くの間、ロスモンティスを撫で回しているとロスモンティスは俺のお腹に顔を埋めながら、突然そんな事を口に出した。

うーん、何か不安にでもなるような事があったんだろうか。全く、AceやScoutは何をやってるんだか。

 

「そうだなぁ、ここにもやるべき事が残っているらしいからな。それが終わるまではここに居るよ」

 

「っ……」

 

こんな適当な返事ではお気に召さなかったらしい。だって、俺の腰に回されていた腕が強く締め付けられるんだもの。それでも、ちっちゃな子猫が精一杯抱きついてくるようにしか感じないけどな。可愛い。可愛いな。ロスモンティスは可愛い(真理)

 

反応が無くなったロスモンティスを撫で回しているとドアが勝手に開いた。中へと入ってきたのはケルシーだった。

 

「お、もうそんな時間か」

 

「あぁ」

 

ケルシーが来たという事は、どうやら定期検診の時間らしい。注射は苦手なんだけどなぁ。逃げようとしたらMon3trでぐるぐる巻きにされてしまうから逃げられんし。

 

「ロスモンティス。ありがとう、今日は助かったよ」

 

「……うん、またね。お兄さん」

 

名残惜しそうに離れていくロスモンティスを見送りケルシーと向き合う。

 

「さてさて」

 

「……許可無くロドス艦内を彷徨いたらしいな」

 

「げぇ、説教はやめてくれ。しょうがないだろ?お腹が減ったんだから」

 

「説教をするつもりはない。第一、そんな権利は私には、私達にはないからな。だが、君は君自身の立場をよく考えて行動してもらいたい。……君の身体は以前とは違う。そして、君の評判もだ」

 

「わかってるってば。次からはちゃんと連絡するからさ」

 

「……はぁ、まぁいい。君がこの様な状況になっている事には非常に心苦しく思うが……」

 

「すまん、迷惑をかける」

 

「……改善する気はない様だな。まぁ、いい。君には誰もが助けられた。君に迷惑をかけられる事に何ら問題はない。私は、いや、私達は君に感謝している」

 

「……そうか」

 

「あぁ、だから、君のやるべき事はこれからもたくさん残っているという事だ」

 

「……」

 

話変わってきたな。まずい、聞かれてたのか。いや、聞かれてまずいことでもないんだが、何でこうも過剰に反応してくるんだろうか。なんか、みんな過剰に心配してくるんだよな。何でだろうか。やるべき事が終わるまで死ぬつもりはないってのに。

 

 

あっ!まって!やめて!注射はいやだ!!やめてくれ!アッーーー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄さんの部屋から出て今日の思い出をタブレットの記録していく。

朝、お兄さんを起こしにいくのはちょっとした特別感があって好き。でも、少しだけ怖い。寝ているお兄さんはまるで死んでいるかの様に眠っているから。息だって殆どしてない。ケルシー先生に聞いてみたらお兄さんは体力を使わない様に寝ているだけだと言っていたけど、このまま起きてこないんじゃないかと不安になる。

 

お兄さんは体が弱い。いや、弱くなった。前と比べ物にならないくらい弱くなった。

それきっと、あの時と関係しているんだと思う。お兄さんは一時期ロドスにいない時があった。寂しくて、ケルシー先生やアーミヤにお兄さんの事を聞いたけど困った顔をして、はぐらかしていた。

そして、戻ってきた時には、色んな人に武器を向けられ警戒されながら、ケルシー先生に連れられてロドスに戻ってきた。その時のお兄さんはボロボロで血を流していた。

私は初めて見た、お兄さんが血を流すところを。

ロドスに来て間もない私が感情を抑えきれなくなった時、なんて事ないかの様に傷一つなく私を優しく抑え込んでくれた、あのお兄さんが。

久しぶりに会ったお兄さんは前と変わらず接してくれた。前と変わらず優しくて、温かい。何度、記憶を無くしても変わらず接してくれた優しいお兄さん。優しい笑みを向けてくれるお兄さん。頭を撫でてくれるお兄さん。

私はそんなお兄さんが好き。

 

 

お腹がなってお兄さんに聞かれたのは少し恥ずかしかったけど、お兄さんとご飯を食べたかったから、そう言うとお兄さんは優しく手をとって食堂へと連れてってくれた。

道中、お兄さんは気づいてないのか、それとも気づかないふりをしているのかわからないけど、お兄さんが外へと出るとお兄さんとすれ違う人皆はお兄さんに対して軽蔑の目を向け、私に対して心配そうに目を向ける。それが酷く悲しかった。

 

 

お兄さんは裏切り者だと蔑まれている。

アーミヤやブレイズとかはそんな事言わないけど、お兄さんの事知らない人は皆お兄さんに対して酷い事を言う。

前に、どうしてそんな事を言うのか聞いてみたら、皆口々に、お兄さんはロドスを裏切った。お兄さんに傷付けられた。お兄さんがロドスのオペレーターを殺したところを見た。お兄さんは感染者も非感染者も関係なくたくさんの人を虐殺してきた極悪人だと言う。

よくわからなかった。わかりたくなかった。お兄さんはいつも優しいのに。よく頭を撫でてくれる。よく褒めてくれるのに。

だから、お兄さんに聞いてみたら、お兄さんは悲しそうに何処か達成感のある顔で私に言ってきた。

 

「ん?裏切り者?……あぁ、そうだね。俺はロドスを裏切って、感染者も非感染者も関係なく皆を傷付けたからね。ロスモンティスにもそう言われても仕方がないね。……そんな事思ってないって?ハハッ、分かってるよ。ロスモンティスは優しいな」

「気にしてないのかって?まぁ、そう言われる様に仕向けたからな。全く、ドクターもアーミヤも俺みたいなのはほっとけばいいのに。ケルシーもだ。俺が今までやってきた事がパァになりかけてるってに。ロドスの評判にも関わるし。なぁ、ロスモンティスもそう思うだろ?」

「うぉ!急に抱きついてきてどうした?甘えたくなったのか?全くしょうがない子だなぁ。よーしよしよし。全く、ロスモンティスは可愛いなぁ」

「ぁあ!まって泣かないでくれ!ちょ、ちょっと!Ace!!Scout!!手を貸してくれ!!」

やっぱり、お兄さんは優しく温かい。私はそんなお兄さんが好き。きっと、この好きはアーミヤやAce達に向ける好きとは違うんだと思う。

 

私はお兄さんとずっと一緒にいたい。なのにお兄さんはここから居なくなろうとしている。お兄さんはさっきみたいにやるべき事があるって言う。

そしてお兄さんはよくドクターとケルシー先生に外出の許可を求めている。でもドクターもケルシー先生もアーミヤも一度だって許可を出さない。

だって、一度でも外へ出したらもう二度と戻ってこないって分かってるから。

お兄さんは強いから、誰かの為に笑って助けちゃう。

この大地の人々に幸せになってもらいたいからって。そう言って自分を顧みないで助けちゃうから。

でも、お兄さんはもう強くない。力の使いすぎって言ってたけど、ロドスに戻ってきた時お兄さんは死にかけていた。誰よりも強かったお兄さんはもう居ない。簡単に傷つくし、軽い運動でもすぐに息切れを起こすようになった。もしかするとふとした拍子に死んじゃうかもしれない。

でも、弱くなっても、お兄さんは誰かを助ける為に行動しちゃうから、みんな必死で此処に繋ぎ止めようとしている。

 

それでもきっとお兄さんは変わらずロドスから抜け出そうとする。それは嫌だ。お兄さんとずっと一緒にいたい。ずっとここにいて欲しい。

だから、

 

「やっぱり、ドクターに方法を聞きに行こう」

 

そう言って私はドクターがいる部屋へと歩いてゆく。お兄さんとずっと一緒に居られることを願って。

 

 

 

 

 

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