爆裂道中英雄記   作:ぽおくそてえ

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第十話 連戦、熱戦、大激戦

「ふう、勝てたわい」

「力を温存してたのか?」

「これから4戦も残っておるからのう」

「そりゃそうか。じゃ、行ってくる」

 

ユウギリも口では疲れた風に語っていたが、周りで見ていた人間からすると圧勝の一言に尽きる。だが、本人は歳故に体力的に厳しいと愚痴っていた。さて、戻ってきたユウギリを見送り、フィリーは3回戦へと向かう。ここを越えれば後半戦となる。

 

『いよいよ3回戦突入だ!皆は盛り上がってるかね!』

「うおおっ!」

「ここからが盛り上がりポイントだぞー!」

『さあ、2回戦で突如覚醒した様に見えたこの男、果たしてどこまで登り詰めるか!フィリー!』

「やってやる」

『その対戦相手は……闘いにおいて常勝を目指すこいつ!レンリ!』

「ふむ。中々の好敵手と見た」

「よろしくお願いします、レンリです」

「フィリーだ。よろしく」

『3回戦第1試合、開戦!』

 

互いに尊敬の念を込めた礼を尽くして、勝負が始まりを告げる。開始を告げる(ゴング)が鳴ると、早速動いたのはレンリだ。魔法陣を四つ呼び出した。先程と同じ風系譜、空間魔法に属する召喚魔法だ。

 

「召喚」

「また召喚術か」

「四双刃」

「8つの刃を電気で浮かす魔法か」

「よくご存じですね」

「電磁浮遊は古典的な魔法だからな」

「では、躱せますか!」

「おっと」

 

八つの刃が一斉に襲いかかってくる。上下左右、前面に背後から次々にやってくる。まるで立体的に攻め立てる視野を持ち合わせているかの様だ。

 

「(ちっ、3次元的に攻めてきやがる。隙が少ねえな)」

「まとめて喰らいなさい、雷光線!」

『3本の刃の中心から雷のビームが出たぞ!』

「やりづれえ!爆風烈哮・龍吟!」

「弾いても無駄です。溶かす程の炎で無ければ」

「要は壊せば良いんだろ?」

「錬成鉄です、そう簡単ではありませんよ」

 

ようやく体が温まってきたのか、少しずつ飛ぶスピードが速くなってきており、掠る頻度も増え始めてきた。このままでは傷だらけになるだけだ。

 

「くそ、速い!さっきより速くなってねえか!?」

「裂傷が増えるだけですよ」

『あのフィリーが防戦一方だ!さあ、どうする!』

「師匠……」

「あれ、大丈夫か?」

「魔力の消耗を狙う作戦なのか?」

 

それもあるが、攻める隙を狙っているのだ。一気に8個も小型剣を浮かしていては集中力も体力も使う。だから少しずつ距離を詰めながら様子を伺っていたのだ。

 

「そこっ!」

「(一気に8本を縦一列に!それを待っていた!)しゃあ!」

『フィリー、踏み込んだあ!』

「右に避けてからの、砕空破!」

「がっ!」

「攻めってのはこうするもんだ!飛刃・爆爪斬!」

「くっ!刃よ、戻れ!」

「おっと、ここまでか」

『いきなり攻め込んだ!一瞬の隙を見逃さなかったぞ!』

 

このままじっくり攻めてては危険と判断した両者は決着を早期につけなければならないと決意した。8本ある刃を一点に集め、魔力を込める。

 

「(刃が収束してるな。今のうちに右から!)」

「電磁熱線砲!」

「突っ込んでやる!」

「手榴弾、用意して正解でした」

「うおっと!」

「そこです!」

「ほいっせっ」

「避けましたか。ならばこれでも。苦無も用意してます」

「ま、まさか」

「雷を纏う苦無です!」

「畜生、飛び道具が得意なのか!」

「これでどうですか!流電刃!」

「うぐっ!(切れ味が増してやがる。肩を掠めやがった!)」

 

武器は多めに用意してあらゆる手段で確実に仕留めにかかってきている。だが、フィリーのレベルの実力ならこれくらい軽々と避けられるのでは?ここまでの戦いぶりからレンリにはその様な疑問が浮かぶ。

 

「まあ、確かに短期決戦では即勝利も大事だろうぜ。だが相手の得意戦法を学ぶのも今回の様な闘いの醍醐味。だから、お前の実力を測らせてもらう」

「そうですか。では、参ります!」

「(そちらが苦無なら、こちらはボムだ。さてと、上手く行くかね)」

「ポケット袋から鉄の弾?まさか!」

「喰らえ、鉄心爆弾!」

「くあっ!」

 

鉄の刃を弾きつつレンリ本人の周辺を爆破する。ナンナから事前に貰っていた弾丸を有効活用する。だが、手持ちはそう多くは無いから手数では物足りないだろう。

 

「はあっ!」

「(3試合目でまだこの体力か……爆撃を数発当てただけじゃ削りきれねえか。魔力切れは期待しない方が良いな)」

「どうしましたか!先程の試合で見せたあの魔法は使わないのですか!」

「出来ても体力の消耗が激しいんだよ」

「それでも使われずに私が勝っても嬉しくないですね。隙を見つけてちょこちょこと攻めてくる輩に勝った所で、です」

「そうか、なら敢えてその挑発に乗ってやってみよう(炎獣王の紋章よ、力を貸せ!)」

 

慣れない頃はとにかく念じてみて初めて魔法は自らの意思で動かせる。挑発に乗っかる様な真似はしたくないが、仕方あるまい。力を解放した上で叩き潰すのが礼儀だ。まずは体を慣らす目的で紋章のある右腕で発動してみる。

 

「右腕だけですか」

「それでも充分。一瞬ではこれが限度の様だ」

「ならば……四双刃、飛べ!」

「灼熱放拳・焔!」

「溶けた!」

「3つ犠牲になりましたか」

『腕から火炎放射器の様に炎が噴き出たぞ!』

「これで残り5個か」

「(控えの刃はこの場に持って来てない。まさかここまでやられるとは。それにあの熱量は危険ですね)」

 

部分解放という術で以て放たれた右手の高熱火炎放射は錬成された鉄すら溶かしてみせた。3つ潰せば一気にやりやすくなる。焦りを見せるレンリは残りの5つで攻めてみせるが、その内の1つを掴まれて魔力を流し込まれる。

 

「1個ゲットだ。こいつに火の魔法を流し込めば……」

「また1つやられましたか」

「半分になりゃ回避しやすいから(さて、この焔もどれくらい保つかねえ)」

「ならば……四刃!」

「(2つ持って2つ浮かすか。近接に切り替える様だな)」

「行きます!」

「来い!全力で相手しよう!」

 

ここからは接近戦にもつれ込む。片方が斬りつけてはもう1人が防ぎ、そこから返しで炎を纏ったパンチを繰り出す。それを避けては刃から雷のビームを放つ。

 

「せいっ!」

「よっ、ほっ!」

「そこっ!」

「うおっ!やるねえ。だが、そんな近づくもんじゃねえぜ。紅龍翔撃!」

「がっ!」

『超接近してから炎を纏ったアッパーカットを繰り出したあ!』

「立てんだろ?続けようぜ」

「やってくれましたね。まだいけますよ」

 

まだまだ攻撃の応酬は続く。ここからはゼロ距離戦闘となる。炎に爆破の組み合わせと雷光のせめぎ合いだ。遠距離でも攻めていけるのに接近戦の様相を呈してきた。

 

「炎舞・掌底!」

「ぶふっ!くっ……蒼雷光線!」

「がっ!くそが」

「今の貴方の目、それはまるで獲物を前にした虎が如く。鋭く煌めき、燃える心を体現している」

「そういうお前もな(紋章から伸びる紅き線、顔や背中まで届いてる感じがするね。力が溢れる感じだ)」

「何を呆けているのですか!はあーっ!」

「その時を待っていた。掌底からの、爆砲・鉄山靠!」

「ばはっ!?」

 

全身爆破帯となっているフィリーは相手の腕をかちあげてから背中を使って爆破した。これぞ必殺の一撃、不思議な力に目覚めた今なら更に威力が上がっているのだ。倒れ込んだレンリは腕すら上げるのもままならない状況になって、武器も操れない。

 

「ま、参りました」

『レンリ降参!勝者、フィリー!』

「良い勝負であった」

「ありがとうございました」

「立てるか?」

「助かります」

「やれやれ、厄介な魔法だね。古典的って事は即ち多少進化しても昔から利便性や実用性があるから残るって訳だな」

「その様ですね。その紋章、どんな仕組みなんですか?」

「俺も良く分かってねえのよ。さっき発現したばかりで詳細も不明ときたもんだ」

「そう、なんですね」

「ま、追々わかるだろ。とりあえずお疲れさんだね」

 

西方の控え室に戻るとそこにはバースが次の試合に備えて動き出していた。

 

「お疲れさん。勝って帰るとはね」

「本当に疲れたよ。連発するもんじゃねえな」

「生傷が絶えねえよ、こういう大会は」

「良く効く軟膏を持って来て正解だった」

「なんだそりゃ?」

蝦蟇油(がまあぶら)だ。昔から傷薬として使われてるね」

「ああ、あれか」

「特に国の中南部で作られてる物の品質が良いんだ」

「湿地帯だからか、大蝦蟇が多く棲息しているもんな」

「さてと、そろそろ3回戦だろ?」

「そうだな」

「ここから厳しい闘いになるだろう」

「相手の実力もさる事ながら、俺達自身の体力が結構削れてるからな」

「全くだぜ」

「そもそもお前は誰に推薦されたんだ?」

「ブレンダ家のご息女だ。何故か気に入られてね」

「大公家だと!?この大会の大スポンサーじゃねえか!」

「そうみたいだな」

 

今回の大会に参加する経緯を説明する。彼女の前で戦う機会があった事、酒場で同席した事、結果として依頼を受けた事だ。

 

「なるほど、彼女の前で戦闘する機会があったと」

「そうなんだよ」

「縁ってのはつくづく不思議なもんだ。っと、俺もそろそろ試合だ。行ってくるぜ」

「頑張れよ。よし」

「おや、準備かね?」

「エンジンかかるまで時間がかかるこの魔法、インターバルがどれくらい必要なのか知りたいんだ。魔力が少し回復するまで使えねえだろうが」

「こればかりは実践を踏まねば分かるまいよ」

 

魔法は自らの経験と知識の両輪が重要だと述べる学者が一定数いるほど、この理論は定着している。なるほど然り、使い方を知識として学び、それを実践を通じて試すのは大事だろう。ユウギリとのんべんだらりと話しているとバースの試合が終わった様だ。

 

「お、バース、勝ったみたいだな」

「ではワシもそろそろ準備の時じゃな」

「どんどんインターバルが短くなっていくな」

「今までの経験からして、途中で休憩を挟むじゃろうが……はてさてどうなる事やら」

「休憩ねえ」

 

フィリーが控え室で休息を取っているとバースが戻ってきた。かなり疲弊しているのが顔に出ていた。魔力も結構消費しているのもあるのだろう。

 

「ういっす」

「俺はもうギリギリだ。おそらく次が限度だろうぜ」

「4回戦まで行けりゃ上等だ」

「貴族の考える事はよく分からん。確かに腕が立てば俺らは仕事にありつけるが、あいつらに何のメリットが?」

「己の伝手の広さなどが示せるって事じゃねえか?実際のところ、俺もよく分からんが」

「フィリーさん、4回戦の準備はお済みですか?」

「おう」

「ではこちらへ。10分程休憩を挟みます」

「頑張れよ」

「分かってる」

 

いよいよ大会も後半戦。これから先は己の魔力残量と好敵手との戦いだ。厳しい状況が続くと予想されるが、なんとかして決勝まで勝ち残る他ない。目の前でユウギリが4回戦進出を決めた中で西方の出入り口に辿り着いた。

 

『さあさあ!大会も半ばが過ぎ、後半戦に突入だ!4回戦まで勝ち上がった奴らに祝福の声援を!』

「おお!頑張れよー!」

「楽しい大会じゃねえか!」

「けっ、気楽なもんだな。俺達ゃ、必死こいて闘ってるってのによ」

「全くだわ。でも、勝たせてもらおうかしら」

『4回戦第1試合!フィリー対アーツ!』

「では、先手必勝。氷流!」

「ヘンリーと同じ魔法か。飛び越えてやる」

「水竜牙!」

「ぶっ飛ぶ!」

『回転しつつ爆破!水の竜の上を回転して直進していくー!』

「器用だね」

「余裕ぶっこいてる場合か?ちぇいさー!」

「おっと」

 

4回戦が幕を開けて少し、その瞬間は意図せずして訪れた。大きな雄叫びが会場に木霊する。まるでどこかから不気味な来訪者が来るかの様に。

 

『グオオッ!』

「っ!何この声」

「何か接近して来てんのか?」

「今の聞こえた?解説の悪ふざけって訳じゃ無さそうね」

「物騒な声だったからな」

「すみません!試合は中止です!」

「そりゃそうか。お前達、出番だ!」

「よっしゃ!」

「座ってばかりじゃ退屈だからね!」

 

やっとこさチーム全員を連れてきた理由が出来た。まずは傷と魔力の回復を行い、少しでも戦える様に準備する。控え室からはバースとユウギリが慌てて駆け出してくる。

 

「おい、フィリー!」

「何じゃ今のは」

「バース、ユウギリ!」

「ユウギリの親分、お久しぶりです」

「お元気そうで何よりです」

「ほうほう、同じチームで働いてる様じゃな。カトレアは弟子継続中かの?」

「ええ、まあ」

「魔導士の皆の衆。協力してくれないか?」

「拒否権は無いだろうね」

「で、どうすりゃ良い?」

「会場にいる客を逃してくれ。俺達で咆哮の主を惹きつける」

「分かった。行くぞ!」

「応!」

 

会場には市民と観客の非戦闘員が多数居るし、貴族どもが力を貸してくれる保証がない以上、手分けして彼らを逃して己らの力で以って追い返すべきだ。徐々に気配は近づいてくるばかり。

 

『ブルァア!』

「近づいて来たみたいだな」

「竜系か?はたまた獣種か?」

「来た!」

「ゴウ」

「翼のあるゴリラなのか?」

「腕に魔導腕輪を携えてるな」

「観察してる場合じゃない」

 

上空からやってきた翼持ちのゴリラはこちらの様子を伺いつつ戦おうとしている。拳を握り、倒しにかかってきている。

 

「俺が先手を打つ。砂漠双竜!」

「グギャア!」

「相殺しやがった」

「水砲!」

「ボホウ!」

「こっちもか」

「何だ今の」

「あの腕輪の力か?」

「自分の魔法じゃねえのか?」

 

まるで鸚鵡(おうむ)返しの様に反射してくる。どんな原理でやっているのか分からないと攻めようがない。警戒して距離を取ると、魔獣は痺れを切らして突っ込んでくる。

 

「ウガウ」

「突っ込んで来やがるぞ!」

「鋼砲弾!」

「ブリャァ!」

「ちっ、同じ魔法を!」

「グリュウ!」

「危ねえなあ」

 

砂に水、炎に闇、様々な属性を正面から攻めてる時は完璧に対応しているあたり、何か仕掛けがあるのだろうが、後ろから攻めた時は魔法を使わずに避けていたのが疑問に残る。

 

「グルルァ」

「さっきから魔法が相殺されるな」

「魔法は極力使うな。あいつの能力は反射やコピーの類だろう」

「コピー?」

「かなりレアな闇属性の魔法だ。あの腕輪の力の可能性がある」

「どうするよ?魔法が使えなきゃ攻め立てる手段が……」

「俺らには拳があるじゃねえか」

「おい、無茶する気かよ?あたしらの拳、限度があるぜ?」

「……なら手数で攻める。おそらく目に入る範囲が限度だろう。トドメは俺が刺す」

「了解」

「ナンナ、鋼の剣を」

「ほらよ」

「アニー、強化をかけてくれ」

「うん」

「カトレア、ナンナ、マリータ、ヘンリー、アニー。準備は良いな?行くぞ」

「おう」

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