ぽおくそてえです
今回も読んでいただければ幸いです
「グラン・フィレーンの駅前に来たかったんだよね〜」
「それでまず来たのが洋服屋か」
「あたしだって一応こういうのにも興味はあるんだぜ?」
「まあ、だろうな」
「ふっふ〜ん」
「楽しそうだな」
「そりゃそうさ」
「お前が楽しけりゃそれで良いか」
「人生楽しんだ者勝ちさ」
「なるほど
国の中で1番の街のグラン・フィレーンを巡りながらぶらりぶらりと買い物を楽しんでいく。ナンナは普段、この駅を乗り換えの為にしか使わないので降りた事があまり無い。折角降りて楽しむなら目一杯楽しむべきだ。まず入ったのは洋服屋だ。
「これ買おっかな」
「似合ってるぜ」
「お、おう」
「お前は色んな服が似合いそうだ」
「へ、へえ、そうかな?じゃ、じゃあもうちょいお洒落しよっかな。えっと、それは本音かな?」
「俺はお世辞を言わない方でさ。正直な感想を述べたまでだぜ」
「嘘じゃなさそうだね」
「仲間や家族には嘘はつきたくねえのよ」
「ふうん。ま、そういうとこも含めて信用されてんだろうな(そこが、あたしの好きな理由でもあるんだよね)」
服屋に寄った後はウィンドウ・ショッピングを数軒回った。その一軒が高級な宝石を扱う宝石屋だった。駅前通りの中でも特に高い物を扱っている場所だ。こういう店は人通りがあるから成り立っているのだろう。
「次はここだね」
「宝石屋。これも興味が?」
「人によるだろうけど、あたしは見るだけで満足さね」
「へえ」
「まあ、今までは売り捌く為に持ってた節があったから」
「暮らしが暮らしだったからな」
「真っ当に暮らす様になって見方が変わったのは確かだよ」
秋の気配を纏った風が吹く中、街をのんびり歩いていく。歩きながらサツマイモのお菓子を食べたり、紅葉の美しい公園を歩いたりしている。ここで話になったのはアニーの事である。チーム最年少の彼女の事は他の皆も気にしているのだ。
「アニーは家では元気にしてるかな?」
「まあな。すこし心配な部分もあるが。聞いてみたら学校には行ってみたいってさ」
「そりゃ良かった」
「明日学校の見学に行ってくるつもりでね」
「そうなのかい?」
「
「かもな」
「そこで一つ相談なんだが」
「どうした?」
「明日一緒についてきてくれ。父兄は俺だけじゃ務まらんだろうぜ」
「え?えっ、はっ?わ、私も父兄代表?」
「おう」
慌てふためくナンナだが、フィリーは至って真面目だ。頼れる仲間なら他にも居るだろうが、こういった事を一番頼みやすいと感じているのは彼女だ。
「そ、そりゃさあ、あたしもアニーと仲良いけどさあ」
「俺1人じゃ、あいつも寂しかろう。お前の事をカトレアやマリータ以上に実の姉の様に慕っているみたいなんだ。俺達は家族みてえなもんだろ?」
「(か、か、家族!?それって……いや、仲間って意味合い以外に他意は無いかな?)こほん、そうは言ってもあたしは元盗賊。そこらへんは気にするんじゃない?」
「それはねえと断言できる。この通り、よしなに」
「頭を上げてくれ。分かったから」
「そうか!来てくれるか!ありがとよ。借りを返すはずが更に恩義を受けちまったな」
「気にすんなって。その代わり、今日は一日付き合ってもらうよ?」
「当たり前だ」
仲間として、家族として接してくれているからこそナンナにアニーは心を許している。そんな彼女に許諾を得たなら、その借りを少しでも返す為に買い物に付き合うつもりだ。暫く街を巡っていると腹が減って来た。
「昼飯どうすんのさ?」
「ここだな」
「トラットリア・ベージュ?」
「昔から来てたが、最近アニーとも良く食いに来る店でね。安くて美味くて量もそれなりにある西部のナポレー地方に良く見られる大衆食堂さ」
「ナポレー。グリニエの近くで芸術と美食の街だったっけ?」
「そう。そして旧リーラ王国随一の街さ。ハルモニア王国最大の敵とされててね」
「そこまで云わしめた所が今はこの国の傘下、なのか」
「栄枯盛衰は世の習わしだ」
リーラ王国。かつて繁栄と栄華を極めた西の大国だった。サクラサカ公国と同規模と云われており、この国の一部となった今でも各地で文化が色濃く残っており、今は国の直轄地となるほど重視されている場所となっているのだ。そんな国の料理を味わった後はとある店に着く。ここが目的の店だ。
「次はここだな」
「ほほう、古物商か」
「歴史の遺物には敬意を表し、丁重に扱う。それが義賊として生き残るコツさ」
「そういうもんかね」
「そういう物は貴重かつ残るのにそれなりの理由があるんだ。魔法もそうだぜ。当時の技術のレベルを知り、それを踏まえて生きていくからね。温故知新って言葉があるだろ?」
「なるほどな。一理ありだ」
故事成語などに学び、新たなる道を探るのが人生を豊かにしてくれる。そして魔導も昔から連綿と続く道を学ぶ事で今の自分に合った力を探る事が可能だ。そんな歴史的に面白い様々な古物を見定めていると、突然武装した面々が入り込んできたのだ。そう、強盗である。
「ひゃっはー!」
「いえっひー!」
「金とか宝石とか置いてけー!」
「きゃあ!」
「強盗じゃあ!」
「ちっ、面倒な」
「(あの野郎ども、折角のフィリーとのデートを邪魔しやがって!それに歴史的に貴重な物に傷をつけたらどうするつもりだ!)」
「ナンナ、準備を進めるぞ」
「おう。魔力は良いのか?」
「少し戻った。あいつらくらいなら何とかなろう」
「おや、フィリーさんじゃないっすか」
「ユナか、丁度良かった。この金を渡すから盗人共の人数の探りを入れてくれ」
「了解っすよ」
ユナに探査を任せて暫く身を潜める事になった。数分後、影の闇に紛れて戻って来たユナから報告を受けて対処方法を探る事になった。
「調べてきたっす。これが近隣店舗含めた図式っすね」
「リーダー含めて3店舗に10人ってところか」
「金のありそうなこの店をメインに狙ったみたいだね」
「私はここで失礼します。後は表稼業の人間の仕事っすよ」
「ありがとな。今後もよろしく」
「くれぐれもご注意をば」
「あの子何者だい?」
「この前のピエロだよ。ギルドとも契約してる裏稼業の人間だ」
「彼女が、あの?」
「まあその事は今はどうだって良い。動くにはまだ早いな」
強盗集団の全員が一箇所に集まった段階を狙う。分散した状態で戦えば他の店舗の人質がどうなるか分かったものではない。暫くすると他の店舗に居た強盗達がこの店に集まってきた。人質も連れてきている。
「おう、集まったぜ」
「これで数ヶ月は暮らせそうだ」
「後は口止めか?」
「他の店に居た奴らも連れてきた」
「話が早くて助かるね」
「テメェらにはここで死んでもらうぜ」
「(ナンナ、今がチャンスだ)」
「(おう。暗器製造)」
相手は武装した集団だし、人質を狙ってくる可能性が充分ある。だからまずは武器をはたき落としたり、こちらに向けたりしてから接近戦に持ち込む。それがセオリーだろう。まずは手前の3人に暗器を投げつけて行動の自由を奪う。
「がっ!」
「ぐはっ!」
「な、なんだいきなり!」
「暗器!?」
「前にもこんな場面見た気がするが、まあ良い。俺らは隣町のギルドの者だ。テメェら全員退治する」
「くそ、まさかギルドの輩が混じってるなんざ!」
「おい、こいつ炸裂弾じゃねえか?」
「まさか!?」
「俺の渾名も広まったもんよ。ナンナ、いくぞ」
「おう」
それからというもの、人質に傷をつける事なく全員を倒して制圧、拘束する事に成功した。武器を持っていたものの、呆気ない幕切れとなった。
「運が無かったな、悪党ども」
「つ、強え」
「なんだこのパワー……」
「国軍には連絡させたよ」
「おう。テメェら牢獄行きだ。残念だったな」
「くそお」
それから数分後には10人全員を軍隊に引き渡し、連行してもらった。無事に帰れると分かった客達は涙を流しながら喜んでいて、店長も店員も被害が出ずに解決して一安心である。
「ああ、ありがとうございます!」
「あたしは折角の楽しみを潰されたくなかったんだ」
「っつー事らしい。俺は仕事以外でもこういう事はしょっちゅうでね。慣れたもんさ」
「せめてお礼を」
「俺は良い。ナンナ、お前はどうする?」
「じゃ、これ戴いても?」
「それくらいならお安いですよ。タダで持っていってください。でも、本当にそれで良かったので?」
「あたしはこういう骨董品が好きでね。これくらいが丁度いい」
お礼としての品をタダで貰い受け、店を後にした。店を出てから暫く後も頭を下げて送ってくれた。休みで遊びに来ても働いてしまっていていつも通りの日常を過ごしてしまっていた。
「休みの日も結局労働か。あんたも大変だね、こうやってトラブルに巻き込まれて」
「いつもの事だ。折角の休みだってのに申し訳ないね。協力、感謝する」
「ギルドの家族に協力するのは当たり前さ」
「そうか」
「そ、それにまだもうちょっと一緒に居てくれるんだろ?」
「まあ、構わんが」
「よっしゃ。男の二言は許さないからな」
「分かってるって」
それから数時間街を練り歩いたが、ウィンドウ・ショッピングが主で買う気配が全く無い。結構ナンナは楽しんでいたが、服以外ほぼ買わなかったみたいで、それ以外だと古物商店で貰った掛け軸くらいだった。
「良かったのか?」
「あたしは物だけじゃない。思い出も買ったのさ」
「お、今日はなかなかに真理を突くな」
「茶化すなって前に言わなかったか?」
「いやいや、真剣に感心しててね。1人で生活してちゃ気づかない事も多々ある。傭兵団時代は生きるのに必死でさ、こういうのを愉しむ余裕があまり無くて……」
「あ、ごめん」
「気にせんで良い。これから楽しめりゃ充分。とりあえず明日アニーの学校に行くぞ。その後にまた仕事に出かけるから準備はしといてくれよ」
「了解。楽しめたから充分だね」
「おそらく高難度になるから気を抜くなよ」
「当たり前だ。危険なのは承知の上さ」
「そうか。じゃあな」
そして翌日、約定通りナンナもフィリー達に同行してくれる事となった。ギルドの街にある近くの学校に面談の為にやってきた。アニーはまさかナンナが来てくれるとは思っておらず、少し嬉しそうだ。
「あれ?今日はお姉ちゃんも来てくれるの?」
「家族だから、だってさ」
「俺が頼んだんだ」
「えへへ、なんか嬉しいな」
「おう」
「本当の姉妹みたいだな、2人とも」
「だろ?」
「ここだ」
やってきた学校は一般的な公立校である。ここで勉学に励むと共に学友達との交流を図る目的で選んだ。面談の教室に入ると担当の先生が待ち侘びていた。あの炸裂弾と呼ばれるナイトのフィリーが父兄とあれば緊張しないのが難しい。
「お揃いの様ですね」
「ええ、まあ。で、学力テストの結果は?」
「その結果、一年生からスタートです。大丈夫です、この学年には様々な事情である程度の年齢から入るなんてよくあるので。事実今年度だけでも数名います」
「そうみたいですね」
「教室は隣になります」
「そうでしたか。行ってこい。お前以外にも何人か同じ転入生がいるみたいだからな」
「うん!」
「楽しんでね」
「後ろで見てるからさ」
そして半日過ごしてみて帰ってきたアニーの顔は満面の笑みを浮かべていた。皆優しく接してくれているのが良く分かる。こういう子に寛容な同級生で一安心だ。
「どうだったよ」
「楽しかった!」
「友達が沢山出来ると良いね」
「そこが心配なんだ〜」
「大丈夫だよ。あたしが保証する」
「うん」
「緊張するのは無理ねえが、こういうのも少しずつ慣れていくしかねえさ」
「じゃ、仕事は1週間後に。皆に伝えとくよ」
「了解」
なんだかんだで楽しみにしている部分が受け取れたので、友達が増えて楽しく学んで過ごして欲しいと願うばかりだ。それから数日後、仕事に出掛ける日がやってきた。魔力も傷もすっかり回復しているので全力が出せる状態になったのだ。
「全員居るな?」
「おう」
「俺も出掛けられるくらいには回復したから今日も任務に出発するぞ。俺らがいつも通りに実力を発揮すればクリアできる筈だ。だが、油断は禁物だぞ」
「分かってるって」
「じゃ、早速出発だ」
今日の依頼は魔獣2体の討伐だ。依頼の内容を額面通り受け取るなら決して難しい依頼ではない。だが、どんな依頼でも予想外の展開は起きてもおかしくないから、油断しないのだ。実際今日の魔獣は普段の魔物より一回り大きく、見える範囲で少し機械化されている。一体をまず仕留めて続くもう一体を追い詰める。
「追い込んだぞ!」
「追い討ちかけます!」
「気をつけろ。獣は追い詰められた時ほど危険だ」
「経験から来ているのかしら?」
「ああ。だよな、ナンナ?」
「話してたな、そんな事」
「へえ、ふうん」
かつての仲間の一件はナンナに話しており、その事を言っている。最後まで油断せず、完全に停止するまでやり切る。
「討伐完了」
「本来この地には居ない、いや、そもそも生物だったのかしら?」
「機械仕掛けの物に皮を被せた、あるいは無理やり機械を埋め込まれたか。少し機械の部分が見れたな」
「誰かが裏で糸を引いていると?」
「可能性はある。2体とも人工的な体をしてたんだ、自然に出来上がるとは考えづらい」
「報告しておこうぜ」
「だな」
これで今回の依頼は完了だ。人工的な魔獣なんて聞いた事がないので、マスターに情報共有してもらい、各ギルドに知っておいてもらおうという算段だ。仕事も終わった事だし早めに帰っていく。そんなフィリー達を見つめている人が居るとも知らずに。その男は秘書の女と丘の上から一部始終を見つめていたのだ。
「ほほう、ワシの1号・2号虎式魔獣を撃破する輩が居ようとは」
「ワルツ様、如何なさいますか?」
「最近は常闇の因子の研究が進んでおる。エンジン部分以外で使えぬか調べておこう」
「魔王の子孫と名乗る、あの魔族の力を?暴走するみたいですが」
「確かに自然の魔獣では暴走の危険があるみたいだが、ワシの人工生物にどんな作用があるか知りたいのでね。奴に少しだけ因子を分ける様に伝えよ、今までの研究を使えば多少増殖も可能だと」
「はっ」
「奴は魔王の復活を目論んどる様だが、それで我が研究が進むなら協力も惜しまぬともね(くくく、これからはワシの時代だ)」
不穏な空気が密かに流れ始めている。この空気が今後どうなるであろうか。さて、フィリー達はギルドへ戻ってくると早速ギルドマスターに状況説明を行い、各地のギルドに情報伝達する様に頼み込んだ。機械魔獣は研究所に回されて調査が為される事となっている。
「機械仕掛けの魔族かい」
「機械の動力部を研究に回させてる」
「ふうむ。常闇の因子ですら調査が大変だって時に……」
「余計な事してくれる輩が居たもんだ」
「全くさね」
「しかし、そんな技術、何処にあったんだ?」
「私が若い頃にワルツっていう魔導研究者がいたんだが、そいつが機械仕掛けの絡繰魔獣の研究をしていたと聞く。今頃どうしているかまでは知らんが」
「そんな人物が居たとは」
「異端児扱いされてたから、その後の行方なんてほぼ誰も興味を持ってなくてね」
ワルツ・バートレーは数十年前からその道の研究を行なっていたが、人工的に魔獣を作るのは生態系への影響が大きいとして受け入れられていない。その魔獣と常闇の因子、関係がフィリー達には不明なので重点的に調査するか、情報次第で対応が変わってくるだろう。
「因子についての詳しい情報はまだ集まってねえのか?」
「以前も情報があったと思うが各地でごく偶に因子感染者が見つかってるくらいだ。場所も時間も少しバラけているのさ。ただ、同時に発見されるのは基本的に近場でね」
「ふむ、そうらしいな。興味深い。まるで近場以外にはすぐに移動したり伝播できないかの様な」
「確かに、空を飛ぶ竜種や翼を持つ種族が少ないのは気になる点だね」
「もし何か企むなら一気に伝播する方が効率も良いと思うし、俺らも対処に苦慮する筈」
「だが、その一方で事例が増えて研究が進み、足がつきやすくなるデメリットもあるし、コントロールが難しいのかもね」
「調査を進めたいな。ワルツも探すべきだろうか?」
「難しいだろうね。ああいう手合いの奴ほど拠点を移動する。一ヶ所に腰を据えて研究するとは思えない」
「そうか。ううむ、難しいな」
「検討をつけて探すのはアリかもしれないよ」
「なら、明日から動いてみよう」
さてと、ギルドの大テーブルにメンバーを集めると大きな地図を広げて作戦会議を開く。何処かに拠点となる基地があってもおかしくない。最初に行くのは初めて魔獣と遭遇した場所の付近だ。そこの近くなら充分可能性があるだろう。
「まずはここに向かう。人目につかず、尚且つこの前機械魔獣の現れた地だ」
「いきなりだね」
「少しでも情報収集しておきたいからね」
「この前とは違う場所だな」
「研究所、あるいは倉庫の類がありそうだと踏んでな」
「何かしら痕跡が残っていると良いけど」
「そう上手く事が運ぶかしら?」
「分からん。が、物は試し。行ってみる価値はあるだろうぜ」
「行ってみようよ」
「おう。また明日、ギルドに集合だ」
「了解」
翌日、早速列車に乗って移動し、調査を開始する。一つでも情報を集めて今後の活動の基準を示す必要がある。
「さてと、調査に赴くか」
「今日は学校が半休だから、目一杯調査できるよ」
「ふふ、そうね」
「あまり無茶したら駄目だからね」
「うん!」
「仲良いなお前ら。見てて安心するぜ」
「家族だろ?当たり前さ」
「そうだったな。じゃ、出発だ」