爆裂道中英雄記   作:ぽおくそてえ

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どうもです、ぽおくそてえです

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第十四話 六芒星

「この湖のほとりで一晩野営だ」

「疲れたな」

「まだ夕方だけど?」

「氷山方向にこれから向かうのは危険。だから朝方にアタックする」

「それに捜索する体力や、戦う魔力の調整も兼ねてるんですよね?」

「そうそう」

「じゃ、夕飯用に何か狩ってくるよ」

「あ、私も」

 

氷山の麓にある湖へは列車を降りて数時間経った夕方頃だった。夜になっては必要以上に体温と視界が奪われる為、今回は朝日が照らすのを待ってから動く。移動の疲れを考えてみて、このまま突っ込んでも体力的にも危険だというのもあるが。

 

「まだ吹雪の発生しづらい時期だが、雪山対策は入念にしておいた方が良かろう」

「防寒着持って来て正解だったわ」

「ジョージ曰くバルキリは風の精霊と呼ばれてて、風使いを中心に信仰を集めるという。普段はおとなしい生態だと聞くね」

「暴れているとしたら何か原因がありそうですね」

「常闇の因子じゃなきゃ良いが」

「何者かに棲家を荒らされて気が立ってる可能性もあるわね」

「調べん事には分からんな」

「猪を仕留めてきたよ。街でキノコと野菜も買ってあるから、牡丹鍋と洒落込むか」

「大きいのが取れたんだ〜。お姉ちゃん、狩るの上手かったよ」

「夕飯の支度だな。捌くのは任せてくれ、こういうのは慣れてる」

 

料理も準備が進み、鍋も用意が出来た。皆で美味しくつついていると話は常闇の因子についてになった。昔々魔王が現れた際に出始めた物らしいとしか知られていない。

 

「常闇の因子、古の魔王が使えたらしいな、フィリー」

「魔王カリア・ハルトラーだな」

「確かそんな名前だったか」

「直近では250年近く前に出現してたと聞くわね」

「武帝ジャックス陛下と英雄達のおかげで封印されたがね」

「しっかし、例の学者は何処で常闇の因子を手に入れたんだろうな」

「それが分かりゃ苦労しねえよ、ナンナ」

「探すの面倒だなあ」

「魔王の封印が解けかけて漏れている可能性も子孫が譲った可能性も充分有り得る。出来得る限りアニーより先の世代に禍根は残したくねえんだよな」

 

これから産まれてくるだろう世代には魔族と共存できるならしてほしいし、魔王に関連するものを知らずに過ごしてほしい。平穏な世界で己の夢を叶えられる世界であってほしいと思っている。話はその魔王の子孫と思しき存在に関してとなった。

 

「魔王の子孫とやら、この前出てたっていう小さな翼竜種と関係あんのかね」

「ああ、黒や紅の。どうだろうな」

「怪しい連中らしいわ。通常の翼竜種に散見される行動基準から乖離しているとか」

「そうなんだよ。怪しさ満点でね」

「そうとなれば、追跡せねばならんが」

「いつ何処に現れるか分からんのよ」

「情報収集を各地でする必要があるな」

「各地区ごとにあるギルド連盟の力を再び借りねばならんな」

「国中にある十数個のギルド連盟か」

「協力しながら当たらねば国全体に影響が出そうだな。とりあえず寝るぞ」

 

その日はとりあえず休息を取る事になり、晩飯を早めに終えて交代で2人は警戒の番につく事となった。そんな中、寝ているナンナの夢の中で不思議な声が聞こえてくる。

 

『聞こえますか?』

「ん?声が……これは、夢か?いや、やけに意識がはっきりしてるな」

『ナンナ。我が友の子孫、ナンナ』

「な、なんだこの声は」

『私は金狐神フォクセーヌ』

「うおっ、九尾の狐!?一体どこから……フォクセーヌって初めて聞くな」

『左様でございますか。驚かせて申し訳ありません』

「ん?いや待てよ、なんであんたがこんな空間に?」

『ここは貴女の精神世界。私は一族の者の精神に現れるのです』

「一族の精神世界?フィリーの所のフォルテとやらと一緒か?」

『おや、ご存じなのですね?』

「話程度だけど。あたしの本当の親の事知ってるのか?」

『では、私と貴女の本来の一族の繋がりを話しましょう』

 

ナンナは自分が義賊の頭の一人娘だと思っていたが、本当はサクラサカ公国の国王であり、ハルモニア王国合併後はその土地の領主の一族の末裔であるという。しかも魔王封印に関わった人物、アリシアはフォクセーヌの力を授かった最後の人物だ。その再来と考えられているのがナンナである。

 

「あたしが金狐神の恩恵を受けた一族の末裔?しかもあのサクラサカ公国の王に当たる存在の末裔だって?」

『ざっと簡単に説明すればそういう事になりますでしょうか』

「聞いた事が無いね、それは」

『本来の父母、そして義理の父君は貴女に負担を感じて欲しくない。そう思って伝えなかったのでしょう』

「……」

『貴女は伝説の戦乙女アリシア、その末裔なのは間違いない事実』

「あたしには少しだけ魔法が扱えるだけしか才能が無いけどねえ」

『この国では全人口の0.02%、10000人ほどしか魔法を扱えないと聞き及んでいます。使えるだけで類稀なる才能が開花している。違いますか?』

「そ、そりゃそうだけどさ」

 

自分の来歴については全く以って無知な状態だったから受け入れるのも理解するのも難しい。だが、これが夢幻だと断ずる証拠も持ち合わせていないから、とりあえず少しずつ受け入れていくしかない。そこで一つ気になる事がある。フィリーは火の魔法を開眼したなら、ナンナはどんな新しい力に目覚めるのだろうかと。

 

「じゃあなんだ、あたしもフィリーみたく何かしらの能力が開花するのか?」

『そうですね。土と岩の魔法の開眼、そして鋼鉄の強化といった所でしょうか?』

「へえ」

『ただ、使い熟すには貴女自身の努力も当然ながら必要ですよ』

「わ、分かってるって。でもまあ、フィリー達の助けになるなら悪くないかもね」

『貴女、もしやフォルテの力を継ぐ者に恋心でも?』

「ぶっ!な、な、何言ってんだ!?」

『図星なのですね。いえ、構いませんよ。自由の身の方を好きになる事に何の罪も有りませんからね』

「そ、そうだよな。うんうん」

『では、貴女に私の力を少しずつ引き出せる様に契りの紋章を渡します。そろそろ目覚めの時です』

 

時間がいつの間にか過ぎており、気付けば見張り番の交代の時間となっていたし、朝日が出るまで後1時間ほどとなっていた。目を覚ますとフィリーとマリータが心配そうにこちらを見つめていた。

 

「うむむ……」

「ナンナ、(うな)されてたが大丈夫か?」

「あ、ああ、なんとか」

「じゃ、マリータと交代してやってくれ。1時間休ませてやらねえと」

「了解」

「じゃ、少し寝させてもらうわね」

 

それから少し経つと日が顔を出し始め、全員起床の時間となった。日が出たな。昼行性のバルキリなら今のこの時間から動き出すだろうと踏んだからだ。

 

「よっしゃ、朝だ。雪山に行くぞ」

「早いな」

「眠いよお」

「日が出たばかりよね?」

「……やっと朝か。なんか少し眠いな(あれはやはり夢だったのか?)」

「悪いね。だが、相手はこれ以上待っちゃくれねえだろうぜ」

「まあ、そうですが」

 

全員で昨日食べた牡丹鍋の残りを食べ、目覚めの一杯のコーヒーを飲み干すと、戦闘に向けた準備を抜かりなく行う。すると、ヘンリーがナンナのとある変化に気づく。それは昨日まで無かった紋章が現れていたからだ。フィリーも夜明けまで灯りが限られていたからか、今になってようやっと気づいた。

 

「おい、ナンナ。その紋章は何だ?」

「俺のと少し違うが、珍しい紋章だな」

「何だろうね」

「ん?どこにあるんだ?」

「ほら、左腕のここよ」

「あ、ほんとだ」

「後で調べましょうか?」

「いや、その必要は無いさ。原因は分かってるんでね。フィリーと同じ様な契約の紋章さ」

「契約?」

「仕事終わりにでも話す」

「なあ、まさかお前も精神世界に何か住んでるのか?」

「まあね」

 

早朝から山を登り、中間地点まで辿り着いた。やはりというべきか、登っていくにつれて雪と風が徐々に強まってきているし、寒さも一層厳しくなっているのだ。戦闘の邪魔にならない様に最低限の服装だから寒さに強くなる栄養剤を飲んで対処している。それでも寒いものは寒いのだが。

 

「寒いな」

「すごい雪だね」

「耐寒用栄養剤を持ってきて良かったぜ」

「で、バルキリをどうやって探すのさ?」

「奴は吹雪の中心に住まうという。とにかく突っ込むしかない」

「そんな無茶な事を」

「俺もそう思うが、事実それしか方法がないんだよ」

「はあ、今回ばかりは仕方ないわね」

 

更に登山を続ける事30分、吹雪が急に強まってきた。こういう場所にバルキリは住み着くという。天敵は少ないものの、外敵に襲われない為の対策だとか。

 

「かなり強まってきたぞ。フィリー、もうすぐか?」

「もうそろそろだろ」

「皆、注意を怠るんじゃないよ」

「なんか、居る?」

「あの影は間違いなさそうだな」

「なんと、人の子とな」

「貴方がバルキリか?」

「左様、如何にも」

「ここで何があった?あんたに討伐依頼が出されてるぜ」

「説明をお願いしたい。事情があるなら協力したいんだ」

「人の子が?」

「貴方は人々の信仰を集める種族の一員。出来れば敵対したくありません」

「そうであるか。ふむ、では話そう」

 

どうも例の黒い小翼竜がここら辺でも現れているという。噂では聞いていたが、まさかここにも出現しているとは。

 

「むう、またしても黒の小翼竜か」

「知っておるのかね?」

「怪しい存在としか聞いてません。それ以上の事がまだ判明してなくて」

「彼奴らは伝記に出てくる魔王の眷属と良く似ているそうでね」

「伝記?俺達の方で調べたがそんな記述はなさそうだったぞ」

「人の子の伝記ではそうであろうな。我ら風鷲竜族は長命故、人の子以上に情報を知っている」

「そうか」

「貴殿らの知り合いの精神には風鷲竜王ジークリードが住まう可能性があると聞くが」

「誰だ?」

「さあ?」

「まあ、それはいずれ判明しよう。その精神に現れる者達はかつて人間達に魔導を与えた存在」

「フォルテか」

「(フォクセーヌもだったね)」

 

フィリー達ならきっと彼らの力を解放できるだろう。それで、本題に入るが、例の翼竜について、彼奴らはバルキリの領分で暴力を煽動している。何かしらの方法で魔族を操っていると思われる。常闇の因子が絡んでるのはそういう理由かとフィリーは推測する。それは何であるか知らないバルキリに説明しようとなった。最近魔族に感染していると思われる力で、罹患者を凶暴化させて力を開花させる。罹患者の特徴として目や鱗が赤く変化するという。しかも魔族同士で感染する可能性があるとも。

 

「なるほど、凶暴化している上に目や鱗、毛などに赤き変化が現れるとな」

「そちらの話を聞く限り、限りなくこの形態に近い存在が現れてる」

「だから、ここは俺達人間に任せちゃくれないかい?なあ、フィリー」

「おう。元々そのつもりで来てんでね」

「フィリー。ほう、貴殿が」

「こいつを知ってんのか?」

「あんたも有名になったもんだね」

「炎獣王フォルテの力を引き継ぎし存在と彼に守護された人間達から聞いている」

「そうか。一度会いに行かねばな」

 

力を引き出してみせたフィリーはいつかフォルテが力を授けたラーズ、彼が産まれた街に行かねばならないと決意した。そしてバルキリに敵の情報を聞き出す事となった。奴らはこの山の頂上に座していると思われる。

 

「そこにいけば居るであろう」

「テッペン取ったつもりなのかね」

「いきましょう」

強化(バフ)は任せてよ」

「ナンナ。お前がした契約が俺と似たようなもんなら、今から行けるな?」

「おう、任せとけ」

「何の話だ?」

「後で話そう」

「何で貴方は分かってるの?」

「この前と同じ感じだからな、紋章も契約も」

 

頂上を目指す一行を風と雪が吹き付ける。すると少しずつ前方に何者かが居る、その事実に気づき始める。

 

「あれだね」

「居やがったな」

「何だい、君達は」

「テメェこそ何のつもりだ?こんな山の上で何してる?」

「僕達は月に寄り添い輝く六芒星。僕はその一角、『地の星』のジャン。邪魔者は排除する」

「月?」

「星って……」

「なるほどな。月は魔王。その下に魔王配下が6人は居るって事かよ」

「そういう事」

「聖属性以外全員揃ってる。そういう事か?」

「鋭いね、人間にしては。でも、それ以上知ってはいけない領域ってのがあるんだ。ここで消えなよ」

「来るぞ、戦闘体制だ!」

 

地の星、即ち土属性の使い手だろう。早速攻め寄せてくる。まず発動したのは空中からの落石だ。一対複数だが、相手は空中に逃げられるから油断は出来ない。全ての岩石を避けたりいなしたりして進む。

 

「ほおら!」

「この雪山で水や氷じゃないのか」

「なら、あたしが。あたしに続け。土蛇乃牙!」

「なるほどな、土属性の解放か」

「おっと」

「逃すかよ、紅龍翔撃!」

「これはフォルテの……」

「鋭氷雨!」

「そこの雨雲に更に雷を。はあっ!」

「連携か、鬱陶しいなあ」

「大落石!」

「でぇい!崩れろ!」

「まずはこんなもんか」

「僕からも行かせてもらうよ。砂牙剣山!」

「うおっ!」

「きゃあ!」

 

雪に囲われてはいるが、地面は四方八方に存在してる以上攻め方は幾らでも存在するのだ。砂に泥に岩石に土と金属もある。だがこちらには手数という強みがある。

 

「岩鉄弾、喰らっちゃえよ君達」

「させないわよ。闇弓!」

「甲矢、乙矢!」

「手刀爆砕!」

「へえ、僕らと同じ6属性か」

「それだけじゃないよ。はあっ!」

「助かるぜ」

「撃ち漏らしが何発か当たりましたからね」

「回復?そうか、聖属性まで」

「回復だけじゃないの」

「やはり。僕の弾丸が貫通しないって事は、防御面の強化(バフ)と攻撃面の弱化(デバフ)を掛けてるんだね。じゃあ……」

「おっと、狙わせねえよ。そうしたい理由は痛い程分かるがね」

「掌で連続爆破か。全身で使うと聞くが」

「何処で聞いたよ」

「良いでしょ?そんな事」

「へっ」

 

次第に攻め手がうまく連携を取れる様になり、ナンナが後方から鉄拳を喰らわすことに成功した。いつもの硬化より更に一つ進んだ鋼と化した拳が直撃してジャンを叩き落とす事に成功する。

 

「硬化鋼拳!」

「うぐっ!(骨身に沁みる!)」

「螺旋烈火脚!」

「見えてるよ」

「土壁?」

「防御用の上手い使い方だ」

「マリータ、行くぞ。氷刀武刃」

「了解。闇水拳」

「砂爪刃!」

「邪魔だ」

退()きなさい」

「お、攻めるね。カトレア」

「はい」

「させないよ。双岩板挟」

 

地面を両側から挟み込む様に攻撃するが、フィリーの力は普段の何倍も上がっているのか、怪力が発生して挟みきる前に止めてみせたのだ。

 

「ぐぬぬっ……」

「何で怪力だ。僕の岩を押すなんて」

「隙ありです、雷光の雨弾(ライトニング・レイン)!」

「させないよ。土盂烝(ドーム)!」

「切り裂いてやる、鋼の大鎌(メタルサイズ)!」

「っと、抜け出せたぜ。にしてもすごい切れ味だ」

「僕の鉄壁が、斬れた?」

「あたしの力は昨日までのあたしのとは段違いなんだよ」

 

ドーム状に囲った鉄を鋼で切り裂いてみせた。これにはジャンも驚きを隠せない。まさか土魔法がここまで使いこなせる人間が居ようとは思わなかったのだろう。実際何度か一緒に戦って来たフィリー達でさえ驚きを隠せないのだから初対面のジャンが知る由も無いだろう、

 

「へえ、ワルツの機械魔獣を壊すだけあるね」

「そいつを知ってるんだな?」

「そうさ。あのお方の御子と組んでるからね」

「じゃ、知ってる事を洗いざらい吐かせるしかないな」

「出来るかな?人間風情が。星来隕石!」

「隕石か」

「皆寄って!」

「おう」

「少し砕くぞ。熱炎球砲!」

「周りを閉じるぞ、鋼囲!」

「俺も協力する。氷河三重壁!」

 

二重に囲われた防御壁と砕く炎によって何とか隕石攻撃を防ぎきった。なんとか大技を凌ぎきった6人はこのまま攻め続ける。まず先手を打ったのはヘンリーだ。天候の雪を有効活用する。

 

「このまま攻める。雹弾!」

「おっと、これ以上は危険だね。退散退散っと」

「逃すか!」

「狙うわ。毒弓・滅紫(けしむらさき)!」

「琥珀の雷枝!」

「よっと。じゃあ、またいずれ会おうよ。散砂!」

「けっ、逃げ足の速い野郎だ」

 

砂になって風に紛れて遠くまで逃げてみせた。逃したのはミスだったが、いずれまた会う事になるだろう。それに新しい情報が満載だ。魔王配下の六芒星の事、魔王の子供が今生きている事、ワルツとその子供が通じている事などだ。

 

「めんどくせえ事になってきたな」

「あたしらだけで対処できるかねえ」

「その為の地域連盟や互助組織だ。違うか?」

「そう、ですよね」

「貴方からマスターにお願いできるかしら?」

「任せろ。ヘンリー、父君を通じて王国や国軍に情報を伝えてくれ」

「お前の言う事なら聞いてくれると思う。頼まれたぜ」

「他の場所へは手分けして情報を伝達する。明日は休むぞ」

「おう」

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