爆裂道中英雄記   作:ぽおくそてえ

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第十七話 星、散る

『ほらほらぁ!』

「がはっ!」

「マリータ!」

「ぶっ……げほっ。私は良い!正面を見て!」

「よそ見するな、ナンナ」

「わ、分かってる」

「あいつは若干ながら凶暴になっている。よっ、せい!」

「何かしらの力のコントロールの途中って事か?おっとっと」

『しゃらくさい!とっとと消えちゃいなよ!』

「あれはおそらく常闇の因子のせいよ。気をつけて」

「あいつらも体内に持ち合わせてるってか。うぇい」

『ちょこまかと動いてからに!』

「当たり前だ、死にたかねえんでな」

 

マリータに大きなダメージを与えたジャンだったが、残りの2人にはまだダウンできるほどのダメージは与えられていない。ジャンの体内にあるとされる常闇の因子は、おそらく魔王かその子からもたらされた物だろう。他の魔族に比べてコントロール出来ているものの、それでも若干凶暴化しているし、目から赤い蒸気を発している。

 

「ナンナ!属性の息吹を使うぞ!」

「おう!」

『まさか……』

「今のお前はデケェ的だぜ。爆風烈哮・龍吟!」

「砂金弾咆・金狐!」

『ぬおおっ!?』

 

爆風の息吹と砂や細かい金属の混じったブレスが高威力でジャンに襲いかかる。だが、いくら威力が上がっていても倒すまでは至らないだろうと推測される。一発当てた所で確実にはやっちゃいないだろうし、この程度で簡単にくたばるのなら苦労しないだろう。後ろではマリータが先程の負傷で足元がおぼつかず、結構ふらついている。

 

「うっ……傷が痛むわね」

「無理すんな。少し下がってろ」

「そうさせてもらうわ」

「君達、なかなかに強力な魔法使いの様だね」

「普通の姿に戻りやがったな?」

「僕の場合、あれを維持すると最悪自我を失うっていうリスクがあるからね」

「ま、どっちであろうともテメェらは世界の異分子だ。消滅させてもらうぜ。ナンナ、仕掛けっぞ。マリータは無理すんなよ」

「後方射撃くらいなら任せて」

 

その頃エルレーンと相対していたジョージ達は結構苦戦していた。力の奥義の解放者はジョージのみで、アニーの補助があるとはいえども倒しづらいのは確かだ。魔力の消費が激しい鎧は特にジョージにとってきつい状況にしている。

 

『ジャンめ、情けない。あの程度で解除するとは』

「くそ、思ったより強いな」

「まだこの力を解放しきれてねえ気がする。一発逆転を狙って属性解放もするか?」

「それは危険です」

「でもそれくらいしかねえぞ」

「解放すりゃしばらく魔力はすっからかんだ。その方法は勧められねえぜ」

「私がもっと強化魔法をかけるよ」

『お主、聖属性の使い手か。ならばまずはお主からじゃ!』

友人(ダチ)の義妹に手を出させるかよ。風刃・十字切!」

『ぶっ!?(さっきより更に素早く、かつ高威力を!)』

 

鎧も既に纏っていたし、相手への強化魔法(バフ)も自分への弱化魔法(デバフ)も既に受けている。それだけなら既知の領域の筈。何故だ、何故先程より効いているのか。それは鎧が先程より定着して高威力を出せる様になったのだと、まだこの段階では気づけてない。だが、仮令(たとい)いかなる理由であろうと叩き潰す事には変わりはない。ならばまずは突っ込んでみる事だ。

 

『貴様らぁ……』

「突っ込んで来やがるか。ならば、練った空弾を打ち出すぜ。嵐砲拳!」

『ばがっ……』

「(ちっ。まだ慣れてねえからか、風と強化(バフ)を纏ってるからなのか、反動で少し痺れやがるぜ)」

「続くか。鋭氷雨!」

「私もいきます、雷光の雨弾(ライトニング・レイン)!」

『弾いてくれる、風雲棍!』

「くそ、器用な真似しやがる」

「あれ?ジョージさんは?」

 

先程までそばに居たジョージの姿が無い。まるで風に流れた様に消え去っている。まさか空間を歪ませて移動しているとは思わないだろうが、これは風魔導士と光魔導士の一部に与えられた特権魔法の一つだ。風魔導士は空間に溶け込み、光魔導士は光を屈折させて消えるが、カトレアはまだこの戦術が取れないので発想に出てこなかったのだろう。皆でジョージの行方を探していると、突然その時は訪れた。

 

『何処に消えおった、風の小僧め』

「ここだ」

『なっ、下!?』

「空に溶け込む、これも風使いの技術。空衝風来拳!」

『ごあっ!?』

「なるほど、その手がありましたか。雷光蛇腹剣!」

『この程度の拘束で捕らえたと思うで無いわ!』

「ええ、剣だけでは拘束としては少し弱い。でも……」

『ん?……くっ、痺れが』

「蛇腹が身体に食い込み、麻痺させる。それがこの剣の使い道。今のうちに!」

「おう。風分身!」

「3人か」

『分身……まさか!』

「想像通りだろうぜ、四重奏を奏でるんだ。いくぜ、台風嵐撃(エアロショット)!」

 

本体含めて4方向から同時に横方向へ発射された竜巻によって大ダメージを与える算段だ。事実、この技によってエルレーンは魔族変身の姿から人型の姿へと戻ってしまっていたのだ。

 

「ゲホッ、ゴホッ」

「解除できたか」

「流石はジョージ」

「すごい風だったよ、お兄ちゃん」

「だが、たかが3人しか呼び出せなんだ」

「魔力切れか?」

「いや、まだ行けそうだ。移動しやすくなる魔法をかけるぞ。風転身」

「軽い……」

「これも風の基礎だ。さあ、続けようぜ」

 

エルレーンに上手く対処していたジョージ達。その一方でジャンと戦い続けていたフィリー達はまだ苦戦をしていた。1人脱落した分の穴を埋めようと戦っているから、自然と自分に向かってくる攻撃が増えたのも1つの要因だろう。

 

「鋼の剛拳を喰らっちゃいなよ」

「なら、鋼鉄の盾だ」

「そんな物で防げると?侮られてる気分だよ。ダララァ!」

「くっ、このまま連撃を受けては……」

「俺を忘れんなよ。灼熱連弾!」

「うおう!」

「助かった」

「その為の連携だろ?」

「2人とも大丈夫?」

「なんとか」

「なんか調子悪そうだぞ、ナンナ」

「魔力が結構減ってきててキツイね。よくこの鎧を纏い続けられてるな、フィリー」

「こればかりは普段の修行のお陰だな。で、あいつも先程より断然威力も感覚も落ちてるから、そろそろ()めるか」

 

ジョージ達も上手く力を合わせられている様だし、そろそろ倒して合流すべきじゃないかという考えに至る。まずは目の前の敵に対処するしかない。ふらついているマリータの事を考え、ナンナと力を合わせて倒しにいく。

 

「ナンナ、力合わせっぺ」

「ああ」

「俺に合わせな。はあっ……!」

「魔力を溜めるか。どっしゃあ!」

「ごふっ!?」

「うわ!エルレーン、何やってんだ!」

「フィリー!こっちの敵もそっちにぶつけたぞ!」

「しゃあ、良いぞお前ら!魔法発動までの時間稼ぎ、頼むぜい!」

「ヘンリー、行くぜい」

「あいあい」

「皆のスピード、威力、範囲。強化完了だよ。マリータお姉ちゃん、回復するね」

「ありがとう」

 

ヘンリー達が粘って隙を作ってくれている間にナンナとフィリーは合作の魔法を練り上げていく。これが力を合わせた時に出来上がる奥義である。魔力の消費量と維持する精神力を片方の、あるいは両方の発動者に重くのしかかってくるのだ。今回はフィリーがその重責を担っている。しかも2つの球体を両手に持っているから尚更だ。

 

「融合魔法か」

「球体なのね」

「熱砂球とでも名付けようか。チャンスはそれぞれに対して一回のみだ」

「フィリー、片方そっち行ったぞ!」

「(熱感知モード発動。核は……そこか)」

「死にな!」

「そこ!」

「ばはっ!」

「ジャン!」

「何故、狙い撃ちが……」

「熱を読み取った結果だ。そうすりゃ自然と見えたんでね」

「嫌だ、死にたくは……うああっ!」

「テメェの行き先は地獄だ。観念せい」

 

左手で放った魔法は核となる部分を見事に撃ち抜き、ジャンを消滅せしめた。かなりの威力なのか、跡形もなくなってしまっていた。

 

「ジャンめ、油断しおってからに」

「残すはテメェのみだ」

「喰らえば崩落も免れ得ぬか」

「おいフィリー、さっきのそれは何だ?」

「融合魔法。属性の幅を持たせる為の力だ。組む相手にそれなりの魔力と実力がねえと難しいんだ。無論、俺自身の実力もな」

「へえ、それってつまり自信あるってんだろ?言うじゃねえか」

「だが、維持するだけで精一杯だべ。魔力も消耗する一方だし」

「私の魔力を分けるね」

「俺の言えたセリフじゃねえが、無茶すんなよ」

 

残るはエルレーンのみ。即処理して片付けたいが、皆魔力をかなり消費している。最後まで立っていられるか不安がよぎるが、ここで勝たねば人類は大きな損失を受ける事になるだろう。人を守る為にギルドや傭兵などの経歴を踏んできたのだ。

 

「ナンナ、ジョージ。俺らも魔法を合わせるんだ」

「ああ」

「木の魔法か」

「そういうこった。拘束する」

「雷の荊も添えますよ」

「ほほう?ならばこれはどうじゃ?」

「ちっ、自分の周りに竜巻か」

「見辛いし届きにくいと来たもんだ」

「風の矢じゃ!」

「危ねえ!」

 

先程の攻撃を喰らってはすぐお陀仏だと感じ取ったから、身の回りを覆う、攻防一体の竜巻魔法を繰り出した。ここはどうすべきか悩みどころだが、フィリーの魔力を考えると時間は無い。多少無理をするしかないか、そういう考えに至る。

 

「どうする?」

「敵ながら見事な攻防一体の魔法だ」

「お前の魔法で解除できないか?」

「威力弱めるなら私も参加できるよ」

「そうしてもらえると相殺できるな」

「どうした人間共!その程度ではなかろう?」

「俺が仕掛ける。フィリー、魔力を回復しておけ」

「おう」

「マリータ、怪我は大丈夫か?」

「後方支援なら大丈夫そうね」

「頼んだぞ」

 

こうなったら残った魔力を全てぶつけるくらいの勢いで立ち向かっていくしかない。まず動いたのはジョージとヘンリーの貴族の子弟コンビだ。

 

「嵐場竜巻!」

「氷流波!」

「妾の竜巻で受け止めようぞ」

「みんな、頑張って!私も頑張るから!」

「おっしゃ!一番若いのが気張ってるんだ、俺らもやってやろうぜ!」

「掌の魔力を維持しながら、もう片方で……緋炎砲!」

「熱で竜巻の威力を奪うってのね?なら、鬼火弾多奏撃(ソウル・ガトリング)!」

 

風は火に強く、火の熱は風さえ揺るがす。互いが互いの弱点を打つ事が出来るのを知っているから、皆の魔法で少しずつ削っていく。そして遂に完全に竜巻を消し去る事に成功したのだ。

 

「くう、多勢に無勢じゃなぁ」

「やっとこさ相殺できたぜ」

「さあ、フィリー!もうひと踏ん張りだぞ!」

「あいつにもどこかに核となる箇所があるはずだ。そこをこの右手の弾で狙うぞ」

「核?もしやさっきのも……」

「弱点はどんな敵にも存在するって訳。ジャンとやらの核、つまり急所を狙ったんだ」

「そういう事か」

「さ、あいつはどこにあっかな?ジャンは正中線、ヘソの近くだったが。ナンナ、カトレア、拘束を頼む。木は使えんかったから、金属に麻痺の蔦を絡ませろ」

「了解です」

「魔法の発動速度を上げるよ」

「行きますよ」

「任せな」

「まずは足元を崩す。左足に氷池!」

「ぬっ?」

「そこにあたしの魔法だな。右足に泥土沼!」

「上手い連携だな」

 

まず足の自由を奪い、ついでに空へと逃げられない様に仕向ける。さて、お次はナンナの錬成鉄で出来た鎖だ。複数の拘束技で自由に動かせない様にする。だが、肝心の核がどこにあるか分からなければ消滅は狙えまい。

 

「俺がダメージ稼ぎがてら情報収集してくる」

「ジョージ、頼む」

「ぐぬぬ、厄介じゃな」

「バランスの取れねえ状態で上手く防げるかな?どらどらぁ!」

「ええい、力が入りづらいわ!ぼらぁ!」

「(ん?右首に光っている物が見てとれるな)フィリー」

「どうした?」

「実はな……」

「へえ、あんな所に……」

 

エルレーンの首の右側に核と思われる物があると告げる。そこを狙えばすぐにでも倒せる。だから更なる拘束で以って行動を制限する。まずは2人の拘束技から入ってみせる。

 

「金鎖!」

「雷蔦!」

「クソゥ……」

「そこだ!はあっ!」

「ま、まさか妾まで!?ぐあっ、まさかぁ!」

「テメェらの殺してきた存在達に地獄で詫びるんだな」

「貴様ら、いずれあのお方に消されるが良い。くあっ!」

「何か情報を残して?」

「まずかったな、この行動は予見できた筈だ」

「今は帰るぞ、魔力切れだ。おそらく俺らの戦闘スタイルなどを伝えたんだろう。ジャンを一度逃した時点で時既に遅し、だな」

「だよなあ」

「とりあえずヤマタイまで帰ろうか」

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