少しずつではありますが、お付き合いいただければです
ちょっと予定変更してここから毎日最終話まで更新です
「やはり魔獣と六芒星か」
「マスターの想定通りだったな。ワルツの居場所を聞き出そうにも幹部たる六芒星ですら知らないらしい」
「そうかい。こういう時の勘は当たらないに越した事はないんだけどねえ」
「で、だ。奴らに共通しているのは核さえ撃ち抜けば動きは止まるってぇみたいでね」
「心臓や脳に当たる部分か」
「それが出来れば苦労しないさ、フィリー」
「つってもねえ」
これ以上喧々諤々と議論しても仕方ない。今の彼らは六芒星や機械魔獣に関して知識があまりにも少ない。今は無知で、『馬鹿の考え休むに似たり』なのだ。そんな議論している時間があるなら少しでも情報収集に向かうべきだろう。そこにやってきたのは仕事がてら各地のギルドなどを巡っていたリュートだ。何かしらの情報を掴み、それを伝えにきたのだろう。
「フィリー、マスター、ちょいとよろしいか?」
「どうしたんだい、リュート?」
「こんなもんを見つけた。この前の調査で得た情報を付け加えてね」
「これは……」
「地図?」
「魔王の魂に7つの封印がされてるってのは知ってるか?」
「なんとなくだが、知ってるつもりだ。幾つかの地点には実際に出向いてるし」
「その場所と思しき場所だ。そういえばヘンリーはどうした?」
「ああ、実家に帰ってる。親父さんの領地が荒らされてたんでね」
ヤクスらとの戦闘後すぐに実家へ帰る様に勧めて、今は様子を窺いに行っている。心配になる気持ちは分かるから、暫く休んでも仕方ない。するとそのヘンリーがギルドに顔を出した。しかし、かなり憔悴しきっていてたかが二、三日休んだだけなのに少しやつれている様にも見える。
「フィリー……ああ、リュートさんも居たのか」
「ど、どうしたヘンリー!」
「親父が、親父が大怪我して……長兄もだ。今は次兄が家の対応をしてるんだ」
「なんだと?」
「それ本当かい?」
「ああ。しばらく回復にかかるだろうって」
「ヘンリー、当分の間は仕事を休みな」
「それどころじゃねえだろ?」
「そうさせてもらうよ……」
あの状況では戦闘になっても出遅れる危険がある。ならば休ませるのが一番だろう。流石にチームにも隠すべきではないだろうと判断し、伝える。
「ヘンリー、どうしたの?」
「3日くらい前の戦闘の前に、親父さん達が巻き込まれたらしくてな。戦闘になって大怪我をしたらしい」
「なんだと?」
「ショックだろうぜ。まさかこんな事になろうとは思わなんだろう」
「何か仕出かさなきゃ良いけど」
「俺がリーダーとして様子を見ておこう」
「お願いして良いかい?」
ふらりふらりとふらつきながら駅まで来ているヘンリーを追って来たフィリーは、流石に様子が変だと声をかけてみた。顔色があまりにも悪いのもあったからだ。
「おう、ヘンリー」
「フィリーか。どうしたよ?」
「親父さん達の見舞いに行くんだろ?」
「そのつもりだ」
「俺も同席させてくれよ」
「何でだ?」
「お前を仲間にした事とか正式に、ちゃんと挨拶しておかねばと、そう思ってな」
「……それならこっちだ」
貴族とはいえ身分が違いすぎるから、偶に貴族の集まりで顔を合わせる程度なのである。普段は会う理由が無いから集まり以外ではあまり会話はしないと思っている。だが、今はチームのメンバーの家族という新しい接点が出来たからこの前軽くしたが、しっかりと報告せねばと思っていたのだ。通されたのは屋敷の奥の部屋だ。そこにはアレックスがベッドで横になっていたが、やって来たのを聞いて体を起こした。
「親父」
「ヘンリーか。お、フィリー君も来てくれたのか」
「この前ぶりです。思ったよりお元気そうで良かったですよ」
「当分職務に専念出来んがね」
「兄貴は?」
「あいつも元気そうだ。心配ない」
「そうか……」
それを聞いても顔の曇りは晴れない。救えなかった事に責任を感じているのだろう。それを見て父親のアレックスは溜め息をついた。項垂れている息子を見て、左の拳を静かに、だが力強く握りしめている。次の出方次第で行動を変えるつもりだ。
「親父、俺は……」
「息子よ」
「な、何だよ」
「お前が、戦うべき男が落ち込んで如何する!喝を入れたるわ、この大馬鹿者!」
「ぶふぇ!?」
「え、ええっ!?グーパン!?」
「お前に心配される程
「だからって思いっきり殴らなくてもよ!」
「だまらっしゃい!……我が身を盾にして防いだ事で民に傷をつけられる事が無かったんだ。それを誇りに思う」
「親父……」
「お前も民や仲間の為に戦え。落ち込むのは全てを終わらせてからで大いに結構」
「そうか」
「今は俺のチームで一緒に働いてます」
「おお、そうだったね」
「魔導士として、チームメイトとして、友として。俺らは最後まで支え合っていくつもりです」
「迷惑かけるが、よしなに頼むよ」
「助けられているのは俺も同じです。魔導士は相身互いですから」
「そうであったな」
殴られた頬を冷やしに行っているヘンリーを他所にアレックスはフィリーに耳打ちする。新しい情報なのだが、こればかりはリーダーのフィリーにまずは伝え、その後誰に情報を伝えるかは彼に任せるべきではないかと判断しての行動だ。
「フィリー君、ちょっと良いかね?」
「何でしょう?」
「私の領地の封印が解かれた形跡が見受けられた」
「何と!?じゃあもしかしたら」
「他の場所が狙われててもおかしくない」
「では早速出向いてきます」
「頼む」
「お任せを。失礼します」
「また来るよ、親父」
「仲間を頼りながら生きていくんだ。良いね?」
「ああ」
殴られて気合いが入ったのか、帰る頃にはヘンリーも少しばかり元気が出ていた。傷ついてでも領民を守れたという言葉が効いたのだろう。ギルドに帰ったら皆が心配して駆け寄ってきた。
「戻ったぞ」
「ヘンリー、貴方大丈夫かしら?」
「問題ない。親父に喝を入れられたんだ」
「かなり勢いがあったぜ、あの一撃は」
「あの親父さんか。やりかねんな」
「お兄ちゃん、辛かったらいつでも話してね?」
「ありがとな。皆には心配をかけた。だがこの通り復活した」
皆に無事である事を伝え、今後の活動に集中して取り組める環境は整った。さて、今度はどう動くべきだろうか。グリートリヒ家領内の封印が解除されたとなれば次に行くべきは封印の施されているだろう場所だ。そうとなればリュートの持って来た情報を頼りに動くのだが、候補は複数箇所ある。
「どうします?仕事ですか?それとも探索に出向きます?」
「探索だな。今まで行った封印箇所にもう一度立ち寄らねばならん」
「親父も言ってたな」
「まずはヤマタイからで良いかい?」
「ああ。一ヶ所ずつ
「ヘンリーのお父様が狙われたなら何処でも仕掛けてきてそうね」
「よし、出立するぞ。戦闘準備は出来てるな?」
まず訪れたのはナンナの故郷であり、強固な封印のされていたヤマタイだ。だが、行った場所がこの前までの美しい光景を讃えた街とは思えない程荒れ果てていた。誰かと戦争でもしたのかと思う程、建物もボロボロになっており、木々も傷つけられていた。あちこちに怪我人が居て、治療を受けていた。この光景を生み出した相手は予想がつく。おそらくは六芒星かワルツの機械魔獣だろう。
「な、なんだこりゃ」
「街が、やられてる……」
「ああ、誰かと思えばナンナさん達でしたか」
「この状況、何事ですかい」
「突然魔物に荒らされて……封印の要の神社や封印自体がやられてしまいまして。抵抗した仲間数人が大怪我しまして」
「やられたか」
「グリニエの方面に急ごう。あそこも狙われてるかもしれん」
グリニエ方面には遠戚のウィルが守る街がある。そこも狙われている可能性が高く、もしやられていたら厄介極まりない。一気に複数箇所を攻め立てる可能性は捨てきれないからだ。数時間かけて急いでやって来たが、ここはまだ無事の様だ。
「エイルさん!」
「おや、フィリーさん」
「良かった、ここは無事の様だ」
「駆けつけてくれたのか。話はグリートリヒ家から聞いている。ここはまだ狙われてないんだ」
「他の所は?」
「ヤマタイ以外はまだの様だ。だが、おそらく次は狙うならフレディ家じゃないかと推測されている」
「ジョージの家か、急ごう。ウィルさん、気をつけて」
「ああ。守りは固めて注意しておこう」
得られた情報から、既に封印が解かれている。そうとなれば向かうべき場所も見えてくる。まず向かうのは次狙うと考えられているジョージの実家、フレディ公爵家だ。
「明日以降に向かおう」
「そうだな。今から行くと未明になりそうだ」
「家には俺の方から連絡を入れておく」
「頼むぜ」
「今日のところは解散だ」
今から向かったら時間的に迷惑をかける可能性がある為、ここで一度解散して早朝に出発する事となった。フィリーもアニーと家に戻り、明日に備える次第となった。
「じゃ、おやすみだアニー」
「うん」
その日の深夜、アニーは何故か
「うーん、うーん……」
『おやおや、魘されておるのう』
「うーん。え?あなたは誰?ここはどこ?」
『私か?私は聖馬公と呼ばれておったヴァルキリーと申す者。ここは貴女の精神世界じゃ。貴女の先祖の精神にも現れたのじゃよ』
「私のご先祖さま?」
『うむ、左様じゃ。詳しく聞きたいかの?』
「うん。私、何も知らないの」
『そうかそうか。貴女の本当の種族についても触れようぞ』
アニーは本来、エルフ族と人間の混血なのだ。エルフは聖属性と光属性を最も得意とする種族であり、人口としてはかなり少ない種族だ。アニーは自分がエルフの血を引いている事に驚きを禁じ得ない。かなり特殊な種族であり、この世界の中で魔法文化の開花に尽力した一族。彼女はその中で人間の男子と出会った少女との間に生まれた子の血を継いでいるらしい。
『貴女のいた村はエルフを信奉している一族が作った村なのじゃ』
「そうなんだ。でも、なんであなたは私の前に?」
『貴女を守るフォルテの力の使い手、その者を支える力を与えたいと思っておるからじゃ。貴女は彼に助けられた時点でいずれ開花する運命にあったからのう』
「あの、でもでも、私は攻撃魔法とか出来ないよ?」
『左様であろうな。本来聖魔法は攻撃するのが得意じゃない、補助に特化したと言ってもいい属性でな。出来ても少しばかりの光魔法のみ』
後は強いて言えば魔導士なら誰でも出来る、魔力をそのままぶつける無属性の魔弾くらいであろう。逆に言えば、彼女はチームの強化と敵の弱化を担い、勝利へと導く扇の要と言える重要なポジションである。皆が前を向いて恐れず進めるのは彼女あってこそだ。アニーの先祖で先代解放者もその様な立ち回りだったと言う。
『貴女の先祖は選ばれた戦士のマオ・フェイリン、七英傑の1人じゃ』
「選ばれた戦士マオの末裔かあ……」
『そうじゃ。白蓮の鎧を纏って仲間達を支えた女傑である』
「私ってそんなすごい人の子孫なの?」
『信じられんのも無理はない。じゃが、嘘はついておらんぞ』
「ねえ、私もお兄ちゃん達の役に立てるかなあ?」
『当たり前じゃ。誰かの為に力を使う事、その心こそが重要じゃ。私の力を授けるから、皆を裏から支える存在となれよ』
「うん!」
『良き返事じゃ。では授けよう、はあっ!』
夢が覚めると、外の明かりがカーテン越しに差し込んでいた。気づいたら朝になっていた。少し寝不足な感じがするが、不思議と目が冴えて来た。服の隙間から見える
「むにゃ……ふあっ」
「ん、起きたか?」
「おはよ、お兄ちゃん」
「おはよう。今日は早いね」
「なんか変な夢を見てたから」
「そうか。とりあえず着替えてきなさい、朝飯食ったら歯磨きするぞ」
「はーい」
「……フォルテ、あれをどう見る?」
『おそらくお主の様に七英傑と同じ力が身についたのじゃろう』
「やはりか」
着替え終わって朝のルーティンを済ませるとアニーが質問して来た。朝起きた時に見えた物を見せるかの様に、指差している。
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「紋章ってやつ?それがこんな所に……」
「左脇腹か。もしかしてさっき言ってた夢に出てきたのかい?」
「聖馬公ヴァルキリーだって」
「これまでの事を考えるに、アニーのご先祖様に関係してるのか」
「話を全部信じるなら、多分」
アニーが夢の中で見ていたり聞いたりしている事、分かっている事を洗いざらい話していく。エルフの混血である事、聖馬公ヴァルキリーの力を借りている事、七英傑の末裔である事だ。大事な義妹の力の解放にはフィリーもポーカーフェイスを崩し、少しばかり驚いている。エルフは隠れ里に住まう事が多く、伝説とばかり思っていたので、実在しているとは思わなかった。
「そっか。エルフの混血か」
「驚かないの?」
「これでも充分驚いてんのさ。いやしかし、まさかエルフが実在しているとはねえ」
「私も初めて知ったよ」
「ま、話は皆で聞くとしよう。よし、出発するか」
「はーい」
ギルドの近くで待ち合わせ、皆にアニーの事情を説明する。すると皆、驚いた表情を見せた。エルフの血を継ぐ者が身近に居たのかと感じている部分が大半だが。
「へえ、エルフの血が流れてるのか」
「らしいぜ」
「じゃあ私と同じ混血なのね?」
「あの隠れ里はエルフを神聖な存在として敬っているらしいぜ、2人とも」
「あそこが?だから狙われたのかね」
「あの子がどんな存在であれ、私達の可愛い妹分なのは変わりありませんけどね」
「そうだな」
「これでチーム5人目の能力開眼者か」
「よし、今日はジョージの家に伺うぞ。失礼のない態度で頼むぞ」
「分かってますよ」
朝早くに出発してフレディ家に辿り着いた頃には昼前になっていた。ジョージが土産物を執事に渡し、早速話を聞く為に父親の部屋へと案内してもらう。ここに来るのもあまり無いらしく、ジョージにとっても数ヶ月ぶりの帰郷となった。
「親父」
「失礼します」
「おや、ジョージ。帰ってくるとは珍しいね。それに友を連れてくるなぞ余計に珍しい」
「失敬な。俺にだって友の1人や2人居るわい。ま、あまり帰ってこねえのは確かにそうだが」
「であろう?お前の事はギルドマスターから様子は伺っていた。貴方がフィリー君だったね?」
「お初にお目にかかります、俺はナイトのフィリー・ゲイルと申します。以後、お見知り置きを」
「ジョージの父ショウだ。愚息が世話になっているようで」
「いえ、むしろ助けられてばかりですよ」
「そうかそうか。で、ジョージよ。何故帰って来たのだ?」
「そりゃ理由は一つだ。魔王の封印に関してだよ」
もしここに封印があるのなら、六芒星やワルツが見逃す筈もない。確実に狙ってくるだろう。だから知っている事があるなら答えて欲しいのだ。すると、ショウは確かにこの領地にも封印は施されている。魔王復活を目論む輩が居るのだとしたら、ここが狙われてもおかしくないと答えた。
「場所は?」
「リュート殿にも教えたが、ここだ」
「池の奥地か」
「街の奥地だから狙わないと思ってたが、話を聞く限りあり得そうだね」
「皆、ついて来てくれるか?」
「当たり前だろ」
街から少し離れた池のある場所には既に崩された封印の塔があった。時既に遅し、といったところだ。その付近には怪しげな人物が2人居た。まるでここに来るのが分かっていたかの様に笑みを浮かべている。
「ほほう、やはり現れたか」
「誰だ、テメェは」
「ワシはワルツ・バートレーだ」
「へえ、そちらから顔を見せるとはね」
「ワシの自信作を幾度となく退けて来た一行の顔を見ておきたくてな」
「余裕があるみてえだな、その態度」
「ワシが直接戦う訳ではないからさ」
「んだと?」
「レニー、相手をしてやれ。ワシは研究に向かう」
「ははっ」
ワルツの部下であり、魔獣以上の戦闘力を持つ彼女レニーがフィリー達の前に立ちはだかる。ワルツを安全な所まで避難させると共に、七英傑の末裔達を抹殺せんとする。後ろに見える塔の近くにいた辺り、彼らが壊していったのだろう。
「まさかテメェらがここの封印を……」
「だとしたらどうすると?」
「許さん。テメェらは人を傷つける事に協力してんだからな」
「ならば倒してみよ」
「ジョージ、合わせろ!やるぞ!」
「おう!」
「「緋翠の息吹!」」
「むっ!?」
火と風の合わせ技で有無を言わせぬ速攻を見せる。お互いの調子は良好、まだ鎧は纏っていないがそれなりに威力は出ている筈だ。これで少しばかりダメージを捻り出す事は可能だ。他の仲間との連携は出来ないが、手を出させないのが狙いだ。
「いきなりぶっ放したな」
「流石の連携力ね。付け入る隙が無かったわ」
「もう、準備くらいさせてくださいよ」
「へっ、これで片付くほど簡単な相手じゃねえだろうがよ」
「ほう、気づいていたか?」
「少しの傷程度か」
「では、こちらから攻めるぞ」