ぽおくそてえです
一気呵成に更新します
では、どうぞ
「ふあ……目が覚めちゃった」
「お、早いね」
「ナンナさんこそ」
「つっても起きたのは15分くらい前だが。ちょうど出来たんだ、コーヒー飲む?」
「お願いします」
これでも早く起きたと思っていたが、先にナンナがコーヒーを淹れて待っていた。早速温かい淹れたてのコーヒー頂き、他の2人が起きてくるのを待ちながら他愛のない話をしていく。すると良い匂いに誘われたのか、2人も起きてきた。
「おう、皆起きたか」
「おはよ。お兄ちゃん達はどうなんだろう」
「一杯飲んだら行こうかしら」
「そうですね。報告しなければならない事もありますから」
「そうなのかい?」
「ええ。後で話しますね」
この流れでナンナは察しがついたが、ここはカトレア自身の口から告げるべきだし、皆が揃った場所で話すのが一番だろう。コーヒーを一杯頂いた後でロビーに向かうとそこでは既に男性陣が待ち構えていた。この後は朝食だ。
「来たな」
「朝飯食いに行こうぜ」
「はい。と、その前に」
「どうしたよ?」
「私の背中。腰の辺りに紋章が現れてませんか?」
「っ!まさか」
「ええ、私の元にも来ました。契約の紋章です」
「これで6人目か」
「まさかカトレアが……ご家族は普通の一般家庭の方では無かったか?」
「それがですね」
この力が解放されるまでの経緯を知る限りで話す。やはりというべきか、話題は先祖返りになる。数代に渡って誰も魔導士でなかったのに、カトレアが突如として魔導士として産まれた事は大変珍しい現象だ。
「なるほど。先祖返りか」
「確かに先祖が魔導士でも子孫が必ずそうなるとは限らないものね」
「魔導士自体が珍しい国だからな」
「他国ではどうか知らんが、ハルモニアでは確かにそうだな」
「そこら辺の事情、ご存じなんですか?」
貴族や魔法の使い手の歴史書を探ると、一般市民の血が混じると子孫は魔導士になりにくい。そういう傾向は顕著に現れているのだ。だから魔導士の血統を絶やさない為に貴族同士で結婚させる事は普通にあるし、魔導士を迎え入れて養子にする事も良くある。
「そういうものなのか?」
「貴族の子は魔導士としての才能を持つ者が大半だ。魔力を持たない者は一市民になる場合が殆どでさ」
「そんな勝手、許されるわけ?」
「魔導士でなければ領民や国民を守りづらい。領民を守る務めを果たす為でもある。まあ、今は魔導道具が発達してそういうケースは減っているらしいがよ」
はてさて、封印はどうなってるか街に繰り出してみる。まず最初は近くの人に声をかけて情報収集、あるいはその人から更に詳しい人に繋いでもらう事だ。
「おや?貴方達は……」
「ギルド天使の涙の者です。少しよろしいですかな?」
「首都近くのギルドの方でしたか。ええ、私で分かる事であればお答えします」
「実はここに魔王の封印が為されていると聞きまして」
「なるほど。分かる者を呼んできますね」
「お願いします」
連れてきてもらったのはここの歴史に詳しいご老体で長老の1人だ。彼なら他の人より詳しいという事で紹介してもらったのだ。魔王の封印に関しての質問であったので、分かる範囲で大丈夫だから、教えてもらえないかと願い出た。それに関してなら、少し前に襲撃を受けた事を告げられた。なんとか守り切ったのだが、負傷者も多数出ていて、今後襲撃を受ければただでは済まないだろうとも。
「そうでしたか」
「話によればまだ近場に潜んでいるとかどうとか」
「ほほう?」
「またすぐ来る可能性がありますな」
「師匠、ここは我々の出番では?」
「そうだな」
「あれ?君は……」
「3年ぶりですね、カトレアです。そこに住んでるシャリア家の者で」
「ああ、やはり!ギルドに入っていると聞いてはいたが……」
「今回は調査名目で来ておりまして」
「いやはや良い顔つきになったね。協力できる事はしよう」
「あまり実家に帰ってなかったのか?」
「ええ。あちらから逢いに来ていた事が多かったですから」
この街の出身のカトレアの知り合いだった。よくよく考えれば、10年近く前までここに住んでいたのだ。顔見知りの1人や2人は居るだろう。そんな彼女の知り合いに連れられてやってきたのは封印の施されている場所だ。
「これがこの街の封印ですぞ」
「まだ無事の様ですね」
「だが人員の被害は甚大、と」
「複雑な魔法陣だね」
「闇魔法と聖属性に封印と解印というのがある。おそらく今までの所はそのどちらかの属性で壊してきてたのだろうぜ」
「いくら複雑にしようと時間さえかければ突破できない封印は無いと聞く」
「そうなの?」
「ああ。ここまで封印に手を出してなかったのも弱まるのを待ってたかららしいんだ」
「そんな事言ってた様な……」
「だな」
複数の絡み合う封印だろうと、一つずつ解きほぐしていけば解印出来るとされている。数百年の悠久の時を生きる彼ら六芒星ならば情報を集めて、時間をかけて解印する方法が取れるのだ。すると、外で大きな爆発音がして1人の若者が慌ててやってきた。
「長老、大変だ!」
「どうした?」
「この前の奴がまた来た!敵襲だ!」
「なんと」
「全員で迎え撃つぞ」
「はい」
やってきたのは六芒星の1人だ。上空から水の弾を発射していたらしく、近くの建物の幾つかに傷が出来ていた。こちらに気づき、視線を向けてきた。まるで良き敵でも見つけたかのような視線を送ってくる。
「ほうほう、あっしの敵はあんたらかね?」
「テメェも六芒星の1人だろう?」
「うむ。あっしは『水の星』のリーズだ。同僚が半数もやられたが、ここから盛り返してやろう」
「こいつは俺らで引き受けます。この付近にいる住民を安全な場所へ」
「は、はいですじゃ」
「主軸は俺と水使いのヘンリー、それと……」
「私も行きます」
「良いのか、カトレア?」
「どれほど力を使い熟せるか試したいので」
「ま、良いだろう。分かった」
敵に先手は取らせない。まず、カトレアが杏色の鎧を纏って動きを少し速めてから魔法を放ってみせ、以前より広範囲に広がるし発動速度が速い魔法が相手を襲う。
「先手必勝です。杏雷の鎧解放!穿て、琥珀の雷枝!」
「おっと」
「範囲が広くなってるか。火鼠追爆、発射」
「ほほう、ヤクスの時より成長しているな」
「テメェ、やる気あんのか?」
「様子見も戦略上重要なのをあっしは知ってるんでね」
「出来なくさせてやるぜ、氷塊雨弾!」
「おっとっと」
「降りたな?蹴り倒したる、ちぇいさー!」
「頭を!?くそ、危ねえ!」
急所がどこにあるか分からないが、とりあえず頭はその一つだろう。だからそこ目掛けて特大の上段蹴りを放つが、やはり避けられてしまう。だが、味方には既に6名の解放者がいるし、連携も取れている。続く攻撃が連綿と仕掛けられていく。
「雷光明拳!」
「ぐぉっ!?」
「やるじゃねえか。流石は俺の弟子だぜ」
「ふふふ、これは楽しめそうだ」
「やはり効いてないか」
「まだ使い始めたばかりですからね。召喚、雷帝偃月刀」
「よっしゃ、その太刀筋の軌跡、俺らが援護するぜえ」
「お前達は遠距離攻撃中心に頼む。接近戦は変わらず俺とヘンリー、カトレアで分担する」
「お願いします」
リーズはまだ様子見を続けるみたいで、先手で攻めてくる感じがない。おそらく更なる情報を集めて少しでも持ち帰るつもりなのだろうが、それが出来ないくらいに素早く叩き潰しておきたい。遠近様々な魔法や手段を使って追い詰めようとする。
「
「鱗粉九撃・無念無想」
「やるねえ、水喇叭砲」
「うおっ!」
「フィリー!くっ、厄介だな」
「霧散させます。たあっ!」
「弾けたか」
「あいつら、なかなかやるね。ナンナ、鋼の槍をいくつか作ってくれ」
「応ともよ」
「こいつを使って援護射撃と洒落込もうか」
放つのはただの槍ではない。これに風を纏わせて貫通力が増した状態で撃ち込む。しかも同時に複数個放つ事で次の魔法を避けづらくさせる効果がある。
「風纏う鋼槍だ!」
「
「隙あり、隼水弾!」
「おおう!」
「さっきはよくもやってくれたな。喰らいやがれ、火炎ビーム!」
「くそ、厄介だな。流されよ、水豪波!」
「囲うぞ、
ああすればこうする。手数の上ではフィリー達が優勢で、少しずつ様子見が難しい状況へと追い込もうとしている。流石にリーズもこれには焦りを感じたのか、大波で一気に周りの者を押し流そうとしてきた。
「街の方は平気か?」
「ええ、壁などのお陰で無事です」
「複数の下水道に一部を逃してもらったよ」
「なら良い。カトレア、まだいけるか?」
「問題あろうはずがございません」
「お前を中心に戦うから負担がかかるだろうが、俺らで精一杯支えるからな」
「ここは俺も攻めるぜ。散花氷弾」
「合わせます。鏡の様な氷を伝え、跳翼雷針!」
「なんと綺麗な魔法であろうか。だが、喰らうはずがなかろう。灼水!」
「熱っ!」
「火傷しちまった」
「傷は任せて」
「熱に強い俺ですら危険を感じるくらいだな」
氷と雷の細かい攻撃に対応したのは熱せられたお湯だ。高温に熱せられたそれは一瞬にして氷を溶かした。流石に雷はどうしようもなかったが、これで跳弾の動きが読み取りやすくなった。だが、それで終わる彼らではないのだ。次々と攻撃の手を緩めずに進む。
「風見鶏の鋭嘴!」
「闇爪!」
「偃月刀、雷を放て!」
「透過はさせんよ。粘水壁」
「なんじゃありゃ。魔法を食い止めやがった」
「水なら熱で蒸発させりゃ良い。事実、カトレアの雷が他より少し食い込んでやがる。灼熱放拳・焔!」
「あたしの砂でも乾燥させる」
「見抜いていたか。大正解なり」
「ここから突破して突き抜けていけ!行くぞ、お前らぁ!」
砂で水を吸い、火で蒸発させる。これで前に出来た壁は崩壊して一気に攻め立てる事が可能となった。それでもやはりリーズは静かな水面の様に冷静そのものだ。慌てふためく事なく次の攻撃へと移る。
「五月雨鮫弾」
「凍てつけ、氷雛」
「貫け、偃月刀!」
「がっ!か、肩が……」
「やりやがったぜ。へっ、俺も頑張らなきゃなあ!灼熱放拳・焔!」
「ええい!水流竜巻ぃ!」
「うわっ!」
「きゃあ!」
範囲攻撃をして一瞬の時間を作り、そしてその間に変身せしめた。剛力で知られるゴリラの姿こそ彼の本来の姿だ。
『ぐはは、これがあっしのもう一つの姿』
「ゴリラか」
『さあ来い、あっしが遊んでやろう』
「全員攻撃体制に入れ。一気に方を付けるぞ」
「はい」
これからが本番だ。まずリーズが攻撃を仕掛ける。降り頻るのは練られた水の塊の雨だ。水の塊はかなり痛むから気をつける様に指示したが、範囲が広く、何発か当たってしまうのだ。その隙を見逃す程敵も甘くない。
「うわっと」
「痛っ」
『水昇鳳!』
「今度は地面から鳥型の刃か」
「くそ、めんどくせぇ」
『こんなもんじゃないだろ?あっしの同胞を殺めた力は!』
「復讐のつもりか?」
『そんなチャチな感情じゃないさ。弱いんじゃ殺し甲斐が無いんでね』
「大変だ、封印の方に機械魔獣が!」
「テメェ、まさか時間稼ぎを……」
バレたかといった表情で飄々としている。彼の大きな目的、封印の解除は達成したから、本来ならフィリー達の相手はしなくて良いのだ。だが、最後まで相手してやろうという。次の目標、七英傑の末裔らを抹消しようというのだ。
「ナンナ、ジョージ、マリータ。あっちの対処は任せた。こっちは4人で片付ける」
「無茶しないこった」
「分かってる。それでもだ」
「こういう時は頑なに聞かねえから。行くぞ」
「へいへい」
例え封印が解かれようと、街を守るのは必要な事だ。有力な仲間を向かわせてこちらは残りの4人で手を合わせて戦うのだ。仲間を分散させる冷静さが残ってるとは思っていなかったのか、少し驚いている。
『あんたら4人は全員解放者か』
「ああ。相手に不足はなかろう?」
『ふむ。チームを戦力が均等になる様に分ける冷静さはある様だな。てっきり片方に集中させるとばかりに……』
「全員が一ヶ所に集まりゃ良い訳じゃねえからな。それにあいつらは倒してくると信頼できるからさ」
『よう言うわ』
「さてと、楽しみたいんだろ?まずは俺から行こう」
氷を足に纏い、周りの空気が凍りつくのではないかというほどに気温が下がるのを感じる。これも氷河の帝王と呼ばれ、水虎帝ワジールの力を解放しただけある。一瞬にして距離を詰めて蹴りを喰らわせる。
「氷冷上段蹴り!」
『氷を纏った上段蹴りか』
「うらぁ!紅龍翔撃!」
『ぬっ、やはり厄介なのはこっちの炎だな』
「斬り下ろします」
『ふふ、やるではないか。むっ?炎?』
「あれは、炎獣族と雷虎族か。何故ここに居る?」
「貴様、噂の魔族だな?このままでは我々の立場が危うくなる。今回ばかりは人間に協力させてもらうぞ」
「そいつは有り難え」
「今回だけだと思ってくれ」
「それでも良い。人間を信用できないのは歴史を振り返れば当然だからな」
本来なら憎き人間と手を組みたくはないだろうと推察される。だが、魔族と人間の関係が今のままで良いと思っていない一族もいるのだろう。だから、少しずつ手を組んで互いに信頼関係を築ければ良いと。こうして手を貸してくれるのは人間側のフィリーからしてみれば意外だが、有難い事この上ない。
「皆、狙え!」
「おおっ!」
『させぬ、水大蛇!』
「やらせねえよ。氷城壁!」
『これが噂に聞く英傑達の末裔の力か』
「上から降り注げ、雷明剣!」
『がっ!?』
「前より技の出が速いな」
『くそ、やりやがったな』
手数が増えた事と、狙う相手が増えた事で狙いが分散している。この状況で更に攻め立てる以外に選択肢はない。
『手広く攻撃しようぞ、水手裏剣』
「対抗しよう、氷苦無」
「皆、息吹を!ぶぅ!」
「「「ばはぁっ!」」」
『うおっと』
「危ねえな!」
「悪い悪い」
連携して攻め立てるが、まだ会って数分の味方では、阿吽の呼吸とまではいかないだろう。だがそれでも、即席の連携でも勝利に導いてこそ、あらゆるメンバーと組めるギルド三傑の名に相応しい活躍と言えるだろう。そう、誰とでも安定して戦えてこそ一流であろう。その中でも一年近く組んでいるカトレアとフィリーは流れる様に連携して魔法を発動する。
「雷蒼球、発射」
「手助けをする。捕えろ、火の鎖よ!」
『ぬぅ、その火、補助も可能なのか』
「攻撃だけが魔導に非ず!」
『ちっ、速い!』
「そこ!」
『ぐあっ!』
「うまく当たりましたか。誘導、感謝します。流石は師匠ですね」
「成功だ。そっちこそ、腕を上げたな」
『貴様らぁ』
遂に追い詰められていく。だからこそリーズは魔族としての本領を発揮していく。広範囲に高威力の魔法を発していく。まず狙うのは当然ながら中軸を務めているリーダー格のフィリーだ。
『終わらせる。水柱蓮砲!』
「ぐっ、がっ!」
「フィリー!」
「大丈夫。アニーのお陰で無事だ」
『ぬっ、やはり守りが硬いな』
「テメェこそ。当てられねえ訳じゃねえが、低空で飛ぶってんならコイツを使うぜ。爆雀弓」
「弓?その武器を使うなんて師匠にしては珍しいですね」
「飛べねえようにしてやるんさ。ほれほれ!」
『(凄まじい連射速度だな)すぅ……ボアッ!』
「水の息吹ですか。よいしょっ」
「後ろには逸らすなよ」
「分かってる。だが、街の人達なら避難してもらってるからよ。被害は建物くらいで済みそうだ」
『水の鎖鎌だ、避けられるかな?』
「今までの経験からして、二段構えか?」
『この瞬間にあっしの使い方を見抜くとは、伊達に何年も戦っておらんな』
「昔、一度似た戦法に出会ってな」
そう、かつて敵として相対した男に、鎖鎌の分銅部分を落として利用してくる輩が居たのだ。魔道士ではないが、武器の使い手としては一流だったその者が利用してきた手だ。その時に見抜けずに、軽かったものの傷を負った経験がある。経験則からこれを見抜き、少しずつ追い込むものの、最終的な決定打は打ててない。
「このままじゃお互いジリ貧だな」
『では、正面切っての一発勝負。魔力の激突と洒落込もうか』
「ここは私が行きましょう」
「各種
「頑張れよ。頼む」
「見守ろうぜ」
リーズとカトレア。正面からぶつかり、一発の拳で全てを解決しようとする。ありったけの魔力をその一発に込めていく。
「喰らえ!」
『我が渾身の一撃を!』
「ちぇいさー!」
『ゴアアッ!』
「(自分を信じろ、カトレア!)」
「だらぁ!」
『ぼあっ!?』
「はっ、はっ!」
「クソが……前見た時より成長して……」
「残念だったな。俺らも色々吸収して強くなってんのさ、色んな存在に助けられながらな。トドメ刺しな」
「はい。はっ!」
「うぐっ……」
これで残り2人となった。無事終わったところでナンナ達も戻ってきた。あっちは大変な事になった様だ。封印が解かれたかと聞くと、端的に言えばそういう事だそうだ。六芒星と機械魔獣が面倒な事を起こしたものだと溜息が出た。とりあえず協力してくれた魔族達に感謝を伝える。
「今回の協力、有り難かった」
「我らは本来人間とは相容れぬ存在。だが、各地で間接的に我々に利する行動を取ってこられた貴殿らなら協力を惜しまなかった。ただそれだけだ」
「困った事があればいつでも相談に乗る」
「左様か。では、さらば」
「こっからだとあと2ヶ所。片方は俺の実家のある場所グリニエ。もう1ヶ所は……」
「ここ?」
「はてさて、ここは。ナポレーか」
「ふむふむ。よし、向かおうぞ」