ぽおくそてえです
少しずつ終着点が近づいてます
今回もどうぞよろしくお願いします
「ここが一番近い丘だね」
「祠が有るぞ」
「これは何を祀ってるのかしら?」
「おや?ここにおいででしたか」
「貴方は昨日の」
「ここは闇竜族への感謝の為の祠。英雄を輩出した事への感謝を示す為に建てられました」
「レンカ、でしたわね」
「ええ」
ここは魔王との最後の決戦に向かう戦士達が祈りを捧げた祠である。今もこうして信仰される闇竜族の霊が眼下に広がるナポレーの街を見守ってくれていると信じられているのだ。
「七英傑かあ」
「遠い昔の話でしたな」
「あれから2世紀以上、ここも
「あたしらはそんな彼らと同じ力を授かったのですか」
「その様ですね」
「封印の鍵はこの祠にも関係ありそうですね」
「お気づきでしたか?」
「何となくその可能性があるかもって程度ですぜ」
「そうでしたか」
「でも、今の話を聞いてはっきりしましたよ」
「ほほう」
「七英傑が態々立ち寄った場所ですからね。何も無いとは考えづらい」
「実は街の封印と6つの祠で固めてます」
「やはりそうでしたか」
だが、その幾つかは既に機能していないそうなのだ。司祭曰くこれらの封印の祠は幾つかの理由で既に存在していないか、機能していないという。原因としては破壊された。風雨に晒されて崩れた。魔力が尽きた。幾つか理由があるが、半数は動いていない状態だという。封印の再構築は出来なかったのか問うと、こう返ってきた。あれは彼らでは再現できない古代の代物らしく、微妙な物になるだけでほぼ意味を成さないだろうと。
「そういう事か」
「おそらく敵も狡猾に狙ってくるでしょう。我らの防御だけでは足りないですな」
「その為の俺らです、軍なのです」
「感謝しかありません。しかし、話に聞く限りでは残るのはこことウィルさんが守るグリニエの2箇所のみ。最早復活は止められないのだろうかと、不安を感じている者も街には居るのです」
「……奴が、魔王カリア・ハルトラーがもし万が一復活したのなら、俺らの手で止めてみせる。俺の信条、魔族と人間の共存への最大の障害ですからな」
「貴方の様な方ばかりなら、世の中良い方向に向かうかもしれませんがねえ」
かつて、魔王との決戦前は今に比べて多少なりとも交流があったそうだ。それが魔王誕生と共にじわりじわりと影響が出始め、気づけば人と魔族の対立構造となってしまっているのだ。だが、かつて出来た事で今出来ない理由になってはいけない。フィリーはそう思っているのだ。何故なら仲間に魔族の血を継ぐ者達が居るからだ。
「それで、貴方は本当に魔族と共存できると?」
「アニーもマリータも魔族の血を引く。そんな彼女らとやっていけているんです、本来なら手を取り合えるはずなんです」
「良き顔です。ならば、近くにある魔族の集まる街に行かれよ。そこで交流するべきです」
「おお、そうですか。そんな場所が」
「話は私から通しておきます」
「ここは軍に任せても良いでしょう」
街の裏手には鬱蒼とした森が広がっている。そこではあらゆる魔族達が集まって暮らしているらしい。司祭に案内されてやって来ると確かに様々な魔族が居るのが分かる。
「ここです。では私はこれで」
「感謝の念に堪えませぬ」
「おや?魔族と人間の血を継ぐ者がやってきたのか?」
「この2人は魔族の血を引いている。他の5人は純粋な人間だ」
「何故来た?」
「交流の為。もっと魔族について知る為。理由としてはたったそれだけだ。いつまでも対立してるのは如何なものかと思ってな」
「珍しい人間も居たもんだな」
「変わってるとはよく言われる」
「だがよ、対立のきっかけは人間側にもあるんじゃねえか?」
「言えてるかもな。だが、俺にそれを論ずるだけの情報はないな」
確かに魔王の封印に魔族が協力してくれていた一面はあるし、そこまでならある程度互いに交流できていただろう。しかし、歴史を紐解くと人と魔族の交流は分からない部分が多いからはっきりと言い切れない事もあると考えられる。それは当時の実情を知らないフィリーには議論できる余地は無い。人間側の歴史書も都合の良い様に脚色されてる可能性なんて幾らでも考えられるから尚更だ。
「あなた方が人間を恨んでる可能性がある。だから、会うべきか多少躊躇していたんだ」
「なるほど。でも、あんたらは他の連中とは少し違うね」
「ああ。互いを恨んで敵討ちの連続では、互いに傷つくだけで何の得にもないからな。必要のない討伐などはしないつもりだ」
「確かに、魔族の中には不必要に人を襲う輩もおろう。その一方で人間と交流した魔族も結構多い」
「らしいな。事実、魔族と人間の間に子をもうけたケースが散見される」
仲間内にそういうケースがあるのを知っているので、魔族に対して必要以上に警戒して遠ざけて傷つけるのは如何なものかと思っているのだ。仲間や民に手を出さない限り、殺すつもりもない。
「不思議な奴らだな。あんたら、俺達魔族が怖くないのか?周りは敵ばかりかもしれんのだぞ?」
「お互い生きるのに必死なだけの同じ生き物だからな。話し合えば分かると思ってる。もしかしたら、そうだと思いたいだけなのかもな」
「あんたみたいな奴は珍しいな。昔出会ったラーズ達にそっくりだ」
「ラーズは我が一族の祖だし、ここに居るのは七英傑の末裔達なんだ」
「あんたらが!?」
「ほれ、証拠に紋章が現れてんだ」
「本当だ、昔見たものと同じだな」
「あの、もしかして私達のご先祖様をご存じなのですか?」
「ここで会ったのが250年以上前だな。俺は特に長寿な一族だから知ってんのさ」
聞く限りでは魔族と人間の共存という理想郷を作り上げようとしたものの、一部の魔王派から反対を食らって隠れ里以外作れなかったという。彼ら七英傑が今の状況を見たら何と言うだろうと残念がっていた。特にマオとレンカは魔族出身だから尚更だろう。
「そうか。魔族と人間の共存を図ろうと……」
「だが、魔王の封印で相手方についた一部の魔族が暴徒化。それ以来互いの関係は冷え切ったままだとさ」
「なんか悲しい話だね」
「そうさ、エルフの嬢ちゃん。だが、今更この流れや人魔の関係が大きく変わるとは思えねえんだ」
「いんや、だからこそ変えてみせるんさ。魔王を復活せしめようとする輩を俺らが倒す」
「出来んのか?」
「ああ、やるんだよ」
「……つくづく変わった男だ、あんたは。分かったよ。魔王が万が一復活したら俺らは協力する」
「良いのか?」
「あんたを気に入った。理由としては充分だろ?」
「ありがとな」
「へっ、まだ何もしてねえぞ?」
「それでもさ。じゃ、俺らは帰るよ。またな」
「ああ」
隠れ里を離れてナポレーの街へと戻る最中に、チームから驚きの声と、心配する声が挙がっていた。あんなに大きな依頼を簡単に請け負って良かったのかと。
「いずれそうなるのは見えてたから」
「でもよぉ」
「……悪いね、巻き込む形になっちまってよ」
「しゃあねぇな。リーダーはお前だからよ」
「助かる」
「あたしらはついていくだけさ」
「よっしゃ、街に戻ろうか」
ナポレーへと向かう際、上から目線が注がれていた。残る二つの星、闇の星で姉のヴァークス、そして雷の星で弟のラークスだ。封印の解除と七英傑の末裔の抹消を目的として動いているのだ。
「……アレが、敵?」
「ああ、そうだ、ヴァークス姉さん」
「強そう」
「この
「そうね……」
「とりあえず後を追うべきだ」
「ええ、あたいもそう思う」
「おいら達は最後の星々。勝とう」
静かに、そして素早く影に潜んで伝いながら移動する。だが、ここでもアニーがこれを察したのか、後ろを振り返りながら街へと帰っていくので、フィリー達は何かを訝しむ。もしや、来ているのかと。
「……」
「どうしたアニー?」
「まただよ。また気配が……」
「……残りの奴ら、来てるのか」
「またですか」
「やれやれだわ」
「しかも二つ感知した気がする」
「するってぇと、あいつら同時に攻めてくるつもりだな?」
「魔獣も来てるかもしれませんね」
「クソが」
宿に到着して夕飯を終えた一行はいずれ来るだろう六芒星の生き残りが、いつ来ても良い様に夜の間も交代で警戒に当たる事にする。夜の間も交代で見張の番をする事で、即時対応出来る様にする為だ。フィリーらギルドの三傑は3時間おきに交代する。ナンナらもアニー以外はそうしようとなった。アニーは申し訳なさそうにしていたが、成長期の子供は寝て育つべきだ。大人のメンバーは大丈夫だから彼女にはゆっくり寝てもらう事になった。とりあえず大人2人組で対応する事となった。
「あいつら、いつ攻めてくるか分かったもんじゃねえからな」
「そうだな」
「まずは俺とナンナだな」
「頼むぞ、フィリー。3時間したら交代するからよ」
「ナンナ、私も後で行くから」
「ああ」
スタートは街の明かりも消えかけた夜9時からだ。最初の2人はナンナとフィリー、2組目はマリータとジョージが。最後の3時間はカトレアとヘンリーが警備を務める事と相なった。3時間の間、ただ警戒しているだけでは疲れるだろう、雑談でもしながら進めていく。
「……」
「なあ、フィリー」
「どうしたよ?」
「フィリーは好きな人居んのか?」
「おいおい、なんか唐突だな」
「暇なんだよ、端的に言えばさ。こういう手合いの色恋話は世代問わず盛り上がるだろ?」
「まあ、そうだな。ギルドでも傭兵団でも皆からこの話が出てたな」
「だろ?」
「ま、良いか、話しても」
普段ならあまりしないだろう色恋沙汰を話した所で何かが減るものでもなし、別に構わないだろうと判断して少しばかり話題を提供していく。ナンナもこの手の話に興味があるのだなと、少しばかり驚きながら。おそらく義賊時代にこう言う手合いの話が良く良く出ていたのだろう。
「俺はまだその手の話はあまりねえな。誰かを守れる程強くねえからさ」
「意外だね。あんた程の男なら、見合い話の一つも無いのかい?」
「来ても断ってる。前に貴族の娘さんを見ただろ?ああいう態度を取る貴族のご令嬢には全くもって興味無いんでね。相手を選ぶなら信頼できる対等な立場を取れる人が良い」
「ふうん?(まだあたしにもチャンスはあるのかな?)」
「何だよ、納得した表情してよ。そういうお前は?」
「あたしかい?そりゃあ好きな人の1人や2人くらい居るさ。でも誰かなんて言わねえ」
「ほほう?それこそ意外だな。その相手はギルドに居るのか?」
「まあな。でも、それ以上は言うつもりは無いねえ」
「なんでい、釣れないなあ」
目の前の一番好きな人に、そんな簡単にポロリと話してたまるかと思っている。言うにしても生きて全てを終わらせてからだ。その時は今では無いだろうと思っている。その頃まで生きているか分からないというのは思ったにせよ、言って死んだら相手に重荷を背負わせてしまうのは重々承知の上だ。明日も知れぬ世界で生きてきたから、そこら辺はよく分かっているつもりだ。想いを伝えるのは魔王関連が今の世代で終わってからでも充分間に合うと思っている。
「魔王を倒したり平和になったりしたら誰かと付き合うつもりは?」
「ああ、それならあり得るな」
「へえ?」
「その時は『一緒に仕事の出来る人となら』だけどな」
「そうかいそうかい」
「何だよ、嬉しそうだな」
「むふふ、それならあたしにも可能性はあるって事だな?」
「ん?まあそうなるな」
「おう(やべっ、口が滑った。流石にバレたか?それにしても、脈ありと捉えて良いのかなあ、こりゃ?)」
「ま、俺を想ってくれるそんな相手が果たして居てくれるかねえ」
「そりゃ居るさ(良かった、バレてねえみたいだな)」
夜の10時半頃、街を巡回しながら様子を見ると、やはりというべきか、飲み屋以外はほぼ電気が消えている。明日仕事が無かったり、この時間まで働いていた人々くらいしか居ないと思われる。ここだけ見れば平和そうな光景だが、敵の足音はすぐそこまで来ていると考えておかねばならないのが辛い所だ。だが、この巡回もその平和を守る為なら意味はあると感じる。夜更けの眠気を少しでも覚まそうと自販機にある缶コーヒーを買ってみた。後でやって来るだろうジョージ達の分も買っておく。
「ほれ、缶コーヒー。眠気覚ましにはもってこいだろ」
「お、ありがとね」
「もう少し街を歩きながら様子見するぞ」
「そうだな」
「どうだ?ギルドでの生活は」
「楽しいよ。でもさ、時々思うんだ。あたしの様な元盗賊がこんなに楽しんでて良いのかってさ」
「その心を忘れなきゃ良い。自責の念に駆られすぎるのも如何なものかと思うが、忘れずに前を向くべきなんだ」
「そう、だよな」
「俺がリーダーとして側に居てやるからよ」
「へへっ……分かった、ありがとな」
過去を顧みて未来へと繋げる。これこそが人間のあるべき姿だ。2人が宿に戻ってきたのは丁度針がテッペンを刺そうかという時間だった。宿の前には既にジョージとマリータが待ち構えていた。
「戻ったか」
「ちょうど良かったわ、交代しましょう」
「ありがとな。じゃ、寝てくる」
「お疲れさん」
「また朝にな」
「缶コーヒー持っとけ」
「あいよ」
ナンナとフィリーを見送り、まずは宿の前で待つ事になった。7人一緒に居ると特定のペアで組む事はあまり無いから、こういう機会が無いとあまり親睦を深める事も出来ない。
「俺ら2人だけで組むって珍しいな」
「そうね、普段はチームで動いてるものね。ジョージは最近まで臨時チームばかりだったんでしょ?」
「そうそう。色んな属性の人と組んでベストな対応を出来る様に、実力を伸ばす為だな」
「へえ。向上心が強いのね」
「上には上が居るのは常々思っててさ。フィリーやヘンリー、リュートさんにマスターと狭いギルドの中だけで何人も居る」
「確かにそうね」
ギルドだけで数名居るのだ。他のギルドや国の魔導士、他の大陸まで目を向けると上には大勢の実力者ばかりが居る。あのリュートでさえ自分自身は平凡だと思わされると言っているのだ、それにすら到達していないとなると尚更そう感じる。
「フィリーとナンナ、上手くくっつくかしら?」
「さあて、どうだろうな。ああいう事には鈍感だからな、フィリーは」
「……ふふ、そうね」
「そんなあいつをどう思う?」
「そうねえ」
「……」
「変わった所もあるけど頼れる人、って感じかな?」
「そうか。で、俺やヘンリーは?」
「質問ばっかりねえ。うん、2人とも皆の手本になる人で漢気あふれる人。そういう強さに少し憧れがあるわ」
「そうかい」
「まさか貴方からそんな話が出るなんて」
「仲間の評価が何となく気になっただけだ。色恋沙汰は盛り上がるだろ?」
「確かにね」
彼の話し振りからして誰か気になる人でも居るのかと問われるが、まだ居ないという。仲間から信頼され、一応は貴族の子息だしギルドでも有数の実力者だ。言い寄って来る女の子達も多いに違いないが、気になる子は未だ現れていないとか。そんな彼の事を少しばかり気になっている人の1人がマリータだとは本人は気づいていない。
「おう、交代だ」
「お疲れ様でした」
「うむ」
「じゃ、また朝にな」
「ええ……」
「ああ、疲れた」
「聞こえちまったな」
「ですね」
「俺の想像が間違いないとしたら意外だなあ。マリータはジョージが気になってんのかねえ」
「そうだとしたらまさかですよ」
「ま、あいつらなら何とかなるだろ」
色恋沙汰は人間の興味を惹く何かがあるのだろうが、まさかチーム内でそういう話が2つも出てくるとは思わなかった。
「いやあ、ナンナがフィリーの事気になってるって言ってたが、まさかマリータがなあ」
「びっくりしましたねえ」
「そういうカトレアは気になってる人居るの?」
「わ、私ですか?」
「そんな流れでしょ」
「そうですねえ。気になる方というより目標や憧れに近いですが」
「それでも良いぜ」
カトレアがそういう視線を送るのは師匠のフィリーはもちろんの事、ヘンリーとジョージの
「ははは、カトレアを好きになった人が越えなきゃならねえ壁は高いなあ」
「そうでしょうか?」
「そりゃそうさ。自分で言うのも何だが、リュートさん含めた俺らはギルドの四強だぜ?他の人からしてみりゃ相手が悪いよ」
「むう、そうなんですね。そういうヘンリーさんは?」
「俺か?俺はなぁ、一生懸命な可愛い子だな。それか互いを信じ合える相手か」
「随分アバウトですね」
「それくらいで良いのさ。兄貴と義姉さん見てると特にそう思うな」
「お兄様ご結婚なさってるのですか?」
「ああ、そうさ。兄貴の一つ年下の可愛い嫁さん貰ってな。2人が幸せ全開なのを見てるとさ、やっぱりそういう相手が良いなと思っちまうんよ」
兄や義姉の仲の良さを見ると、互いに惹かれ合う何かがなければ、いつまでも仲良しのままの気持ちで果たして居られるだろうかと思ってしまう。2人は結婚して数年経つが、未だに付き合い始めた頃の気持ちが薄れる事はないという。2人は弟のヘンリーを気に入っているのか、いつも心配して手紙を送ってきてくれているとか。
「なるほど、仲がよろしいのですね。お兄様達とは」
「仲悪いより断然良いがね」
「まあ、そりゃそうですね」
「家を継ぐとしたら兄貴達だろう。俺の役目は外から家を守る事」
「ヘンリーさん、貴方はそこまで……」
「その覚悟はあるつもりだ。出来る事は限られるだろうがな」
「あまり、1人で抱え込まないでくださいね」
「頼らせてもらうぞ、カトレア」
気づけば日も昇り始めており、フィリー達も目覚めて外までやってきていた。朝飯の時間となったのだが、ここまで何も無かったか問われると、特段今の所問題はなさそうである。まだ攻め込んできてはいないのか、様子見を決め込んでいるのかわからないが。それならば良し。面倒事を押し付けてしまった事を詫びていたが、これもチームの連携上必須だ。
「で、これからどうする?」
「戦力を分断するつもりはねえ。奴らはここに来る、間違いなくな」
「グリニエに行く可能性はないのか?」
「軍を大規模動員している場所に無闇矢鱈と突っ込むとは思えねえ」
「おいフィリー。ここを若干手薄にしているのは、もしや?」
「そうだ、誘い込みだ。奴らなら乗ってくれると賭けてな」
「危険な賭けよ?」
「それでもだ。賭けなきゃならねえ状況に追い込まれてんのよ、俺らは。残る封印も僅か、敵の戦力は未知数。ならばせめて六芒星だけでも片付けておきたい」
「師匠……」
チームの
「さあて、動くか」
「無茶だけはするんじゃないよ?」
「それは分かってるつもりだ」
「私達で支えるわよ。彼、かなり神経を尖らせてるわ」
「そうだな」
「お兄ちゃん、心配だよ」
「俺らでも戦える事、示すしかないな」
「おうし、まずは中央市場に向かおう。そこに現れる可能性が高い」
そこで得た話として、前は昼間に小翼竜を近場で見たという。ならばここで待ち構えようとなった。既にカトレア達が避難誘導をしてくれたので、心置きなく戦闘に取り組める。非常事態に遭遇してもパニックにならなかったのは事前に町長や司祭辺りが協力してくれたからだろう。
「『いつか』に備えてた感じだな」
「俺の勘が当たれば……来る」
「へえ、やっぱりそうだったんだな」
「読まれてた」
「へっ、お出ましかい」
現れたのは最後の星々、姉弟の星達だ。片や自信満々な表情を浮かべており、もう片方はそれとは正反対に全く自信が見受けられず、暗い表情を浮かべている。
「ふふふ、おいら達と戦おうなんて。雑魚の考える事は分からないね」
「あたいは、自信ないけど」
「なんだ、随分弱気な奴だな」
「油断するな。魔力で分かる、今までで一番強そうだ」
「その通りだ。『能ある鷹は爪を隠す』ってな」
「そうね」
「六芒星の最後の2人だ。心してかかれ」
「姉さん、おいらが先に行く」
「ええ」
名乗っている訳ではないが、今までの事を考えて総合的に判断するに、闇と雷を扱うと考えられる。そして彼らはその通りに堂々と名と属性を名乗った。弟は雷の星ラークス、姉の方は闇の星ヴァークスだというのだ。今更だが、全員ちゃんと名乗る事に驚きを隠せない。それでもフィリーら七英傑の末裔程度になら勝てると暗に示しているのだろうが。
「言っても言わずとも大差ないからね」
「そうかよ。舐められたもんだぜ!」
「じゃあ勝ってみせなよ、人間風情が」
「ラークス、油断大敵」
「そう気にせずとも勝てるから。姉さん、前の3人を頼める?」
「自信ないけど、やるしかないのね」
「ごめんよ」
「ううん、弟と主の為ならば」
「じゃ、行ってくる」
互いに干渉できない様にする為か、2人の間に闇の壁を張り、戦力の分断を図る。今までの仲間がそれでも負けているのを知っているから、少しでも勝率を上げる為に取れる手段は取ろうというのだろう。
「闇の壁ねえ。戦力を分断してきたか」
「ならば私が先手を。琥珀の雷枝!」
「ははは、それはおいらも出来るぜ。おらあっ!」
「これならどうでい、風刃・十字切」
「喝!」
「おおう、危ねえな」
「もらったぜ」
「ぐっ……死角からの魔法か。やるね」
分断されてもこちらには4人揃っている。死角からの攻撃もお手のものだ。それを理解しているからこそか、分断や各個撃破を狙ってきているのだろうが、そう上手くはいかないのも理解している。
「雷鳴神楽。やってやるさ」
「雷雲?」
「来るぞ、広範囲攻撃じゃねえか」
「お兄ちゃん達、気をつけて」
「あの雲流せねえか、やってみるぞ」
「風で飛ばすのか」
「ああそうさ」
「させるか。おらぁっ!」
「やべっ」
「相殺します。極雷球!」
雷雲から降り注ぐ多くの粒を相殺する様に攻撃を当てていく。少しでも当たる数を減らす為にはカトレアに頼らざるを得ないのだ。
「へえ、流石は七英傑の末裔だね」
「テメェに褒められても嬉しくねえよ。カトレア、ジョージ、一発頼むぜ」
「おう。合わせるぞ」
「はい。冷たい光の声、
「竜巻息吹!」
「その程度でどうにか出来るとでも?」
「だろうな。火の鳥よ、現れよ!」
「ぬおっ!?」
「風纏うヌンチャクだ」
「くっ……」
「はいやっ!」
「むう、面倒だな。まずは後ろの……」
「来たね?」
「むっ?これは!」
「光の縄だよ」
「トラップか、くそ」
「いつの間にそんな技術を」
「俺の拳を喰らえよ。どらあっ!」
「ぶっ!」
「今のうちに離れるぞ」
「うん」
アニーも戦う為に勉学に励んでいたのは知っていたが、まさか光属性を習得しているとは露知らず、こんなトラップを仕掛けられるまでになっていたとは。嬉しい成長だが、戦いで使わせてしまっているのは申し訳ない。
「へははっ、やってくれるな」
「テメェら六芒星をこのまま生かしてはおかねえ」
「おう。消し去る」
「ほう?出来るかな?」
「油断してると足元掬われるぜ」
「くくく、そうであるか」
「けっ」
「ふふふ、終わるのはおいら達じゃねえ。お前らだ。舞え、雷蝶弾」
「雷光壁!」
カトレアを最前線に、続くフィリーとジョージで少しでも抵抗してみる。彼らは人類の希望とも取れる存在だ、ここで負けては人類は終わるかもしれないのだ。その一方で、闇のヴァークスは自信が見受けられない割にはかなりの実力者だ。六芒星の切り札として最後に向かわせただけある。
「あの子、大丈夫かな」
「なんだこいつ、結構強いのに陰気だな」
「魔力の吸収、やはり闇属性の力なのね」
「そんな事が出来んのか?」
「ええ。幻覚も見せるらしいから要注意よ」
「あの子の事守れるかしら……ああっ」
「黒い水?」
「やばい雰囲気を感じる。氷球壁!」
「
「大丈夫、私が対処するわ。はあっ……」
「吸収?そう、貴女も……」
「ええ、闇の使い手よ。てやぁ!」
「私の魔法を私の魔法で相殺?凄いわね」
まさか目の前に同じ属性の使い手が居るとは思わなかったのだろう。こちらが仕向けた行為力の水魔法を相殺されて、自信をどんどん失っていく。
「はあ、勝てるかしら」
「なんであんな落ち込んでいるんだ?」
「さあ?」
「気をつけて。魔法の属性や威力は精神に引っ張られやすいそうよ。闇属性とあの性格、相性良いんじゃないかしら?」
「はああっ……」
「来るぞ!」
フィリーでさえ放てるだろうかというほど広範囲の黒衣の炎と呼ばれる魔法を放つ。ナンナの放った鋼の壁で守りつつヘンリーの水とマリータの魔法でなんとか相殺した。
「ヤベェな、黒色の炎だったのか?」
「なんとか相殺出来たな」
「助かったわ、2人とも」
「やっぱり私には……」
「厄介な奴だぜ、あいつ」
「何とかして倒さなきゃ合流できないわ」
「はあ、私なんてどうせ」
「ええい、こっちが陰気になりそうだ!さっさと片付けるぞ!」
「ああ」