爆裂道中英雄記   作:ぽおくそてえ

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みなさん、あけましておめでとうございます。
ぽおくそてえです。

新年1発目となります。
今年もどうぞよろしく


第四話 酒を囲んで楽しもう

「ただいま」

「お疲れさん。詳しい事は依頼主から聞いてるよ」

「常闇の因子とやらもか?」

「あれは特殊な物で、私も名前を少し聞いた程度で詳しくは知らないのさ」

 

なんせ数百年以上前から存在する古文書にしか出てこないくらい昔々の出来事らしい。調べた結果、直近でも出現したのは250年位前、そこまで(さかのぼ)る。古文書を探った所、この因子は魔王の力の残留物か、血を継ぐ子孫から与えられた可能性がある。ただ、急に知らされたからこれ位しか分かってない。

 

「結局ほぼ分からずじまいか」

「調べたとて詳しい事は私には分からない可能性が高い」

「この手の事に詳しい御仁はいらっしゃらんかねえ」

「それを探るのは難しいだろうね。そう言えばあんたの後ろに居るのは……」

「おっと、そうだった」

 

案内したのは本来の依頼主で今日からギルドに所属したいと願い出た黄昏の大歌姫(トワイライト・ディーヴァ)のマリータだ。扱う魔法、ハーフである事などを伝える。この手の話には詳しそうだが聞いた話は先程の情報と相違ない事だけだと告げる。

 

「そうかい。そう単純な事ではないかね」

「お役に立てず申し訳ありません」

「気にする事はないさね。フィリー、あんたのチームに短期間で2人も新人が入るとは」

「これでだいぶ戦いやすくなったね。取れる選択肢も増えた。ソロの時より環境が改善されてる気がするよ」

「弱点を突きやすくなっただろう?」

「ああ」

「フィリー、折角だから交流会を兼ねて食事会なんてどうだい?」

「良いですね」

「ナンナもマリータも入ったしな。良いぜ、俺の奢りだ」

僭越(せんえつ)ながら私も少々出します」

「気を遣わんで良いよ。金ならあるから。これもリーダーや師匠の役目だろ?」

「流石だねえ、太っ腹だねえ。でも少し申し訳ないよ」

「良いんだよ、気にすんな。普段は金の使い道が限られてるんでね」

 

慰労会と歓迎会、今後の景気付けとしての壮行会を兼ねた酒宴はギルド側にある商店街の一角にある店舗で行われる事となった。ここはハルモニア王国に吸収合併される前に存在していた東方のサクラサカ公国に多く存在していたらしい店舗形態の一つ、『居酒屋』とやらだ。特にこの店、居酒屋バルボには良く呑みに来ている。

 

「私、初めて連れてきてもらった気がします」

「そうだったか?良い店だよ」

「入ろうぜ」

「おう。大将、居るかい?」

「お、フィリーじゃねえか。今日は3人も別嬪(べっぴん)さんを連れてるね」

「普段はヘンリーとかリュートさんとか野郎どもとばかり来てるからな。あ、紹介した方が良いか?」

「頼む」

 

大将のウィル・バードマンはかつて別のギルドの厨房で働いていた経験があり、仲間達に食事を振る舞いながら各地に旅して今の居酒屋稼業の資金を集めて開業した経験を持つ。そんな経歴を持つ彼にチームのメンバーを紹介していく。

 

「カトレアにナンナにマリータね。チームの壮行会か何かで来た感じか」

「まあ近いな」

「紹介が遅れたね。俺はこの居酒屋バルボの店主、ウィル・バードマンだ。店の名前の由来は親父バルボティの渾名(あだな)からさ」

「ここは手頃な値段で美味い飯と酒が呑み食いできる良い店だ。ほら、繁盛してるだろ?」

「確かにすごい人の数だな」

「広く市民の為に開かれた店って雰囲気ね」

「大衆店らしいぜ、居酒屋ってのは」

 

とりあえずフィリーは米酒と皆で食えるツマミを頼み、カトレアはビールをお願いし、マリータはラム酒を、ナンナはウイスキーを頼んだ。皆酒が好きなので色々な酒があるこの店は好都合だ。とりあえず人数分のお通しとして今日はポテトサラダが提供される。

 

「酒が来たよ」

「3人とも、とりあえずお疲れ様だったね。乾杯」

「乾杯!」

「お、美味い」

「やっぱり米酒は良いね」

「ツマミだ。ミートボールに鮮魚の刺身だよ」

「ありがとうございます」

「サラダも付けてある。ゆっくり楽しめよ」

「あ、あとギョウザを頼む」

「おう」

「ギョウザ?」

「確か東方の食べ物だったかしら?サクラサカじゃない?」

 

ギョウザはその隣国の料理だったと記憶している。サクラサカ公国の西方の隣国で旧ソンゴ王国、今のハクフ地方が発祥だと聞いている。フィリーが色んな歴史に詳しい事にナンナは驚きを隠せない。知識は傭兵時代に生き残る為に必要な地理と食い物、薬草の知識ばかりだけど仕入れている。魔族の歴史や魔法の体系・系譜なんかに関しては門外漢だと思ってるが。学者や知者の方が当然ながら詳しかろう。そこに現れたのはヘンリーだ。

 

「お、ここに居たのか」

「ヘンリーじゃねえか。1人か?」

「そうそう。今来た感じ?」

「まあ10分程度前からだな」

「俺も混ぜてくれよ」

「良いぜ」

「じゃ、麦焼酎炭酸割りで」

「あいよ!」

「渋いのがお好みなのね」

「ラム酒が好きなのもなかなかだぜ。あんた、新しいメンバーだってね?」

「ええ」

 

ヘンリーとマリータ、今日が初めて出会う記念の日となった。同じギルドの者同士、互いに酒を酌み交わせば正式に心通じる仲間への第一歩と言える。

 

「やっぱりここの店の物は美味いね」

「ほれ、ギョウザにサービスで玉子焼きだ」

「ありがたい」

「これがギョウザ。美味しそうですね」

「小麦粉の皮か?」

「その通りだ。この大豆で出来たショウユに付けて食べるんだぜ」

「中には何を入れてるのかしら?」

「店などによって多少の差異がある。ウチでは基本は豚ひき肉にニラ、ネギ、ショウガなどの野菜を組み合わせた物だ」

「本場だと焼いた物より茹でる物の方が主流だそうでね」

「へえ」

 

酒が進むとそれに合わせて作った肴もより一層楽しくなる。ギョウザはタレが少しピリ辛なだけあって尚更酒が進む。酒と肴の相互作用でどんどん酔いが進む。玉子焼きも美味しくて絶品である。なんでも海藻や魚など色々な物から取れるブイヨンに近いものを入れると美味くなるらしい。料理も奥が深いなあ、と感心している。これは確か東方では『出汁(だし)』と呼ぶらしく、具材が違うがブイヨンと同じ様に料理に奥行きを持たせる効果がある。いつもの料理とは少し違う。次に出てきた料理にも出汁が入ってる。フィリーとヘンリーの2人の好物のヤマタイ地方の名物アカシ焼きだ。

 

「んん〜、確かに美味い!」

「とろけるわね」

「出汁ひとつでこんなに味が変わるなんて」

「ブイヨンも一種類じゃないし、元の食材次第で味わいが変わるなんてよくあるだろ?それと一緒さ」

「メシを食らう時は幾つになっても楽しいな」

「ありがたいね。じゃ、厨房に戻るわ」

「そういえば聞いたか?」

「何をだ?」

「ジョージ達が3連高難度ミッションに成功したってさ」

「相変わらず無茶苦茶な受け方をしてるね。臨時チームなんだろ?」

「らしいぜ」

「ジョージさん、そろそろ帰ってくるって事ですか?」

「可能性はあるね」

「ジョージ?誰だ?」

「さあ?」

「おっと、言ってなかったな」

 

風の指揮者(コンダクター)のジョージ・フレディの存在は噂には聞いた事あるらしい。風魔法のエキスパートで、舞う様に風を放つ姿からそう名付けられた。かっこいい渾名だし、ヘンリーの『氷河の帝王』もフィリーの『炸裂弾』もカッコいいと噂されてるらしい。同い年なのだ。

 

「それ初めて聞きましたよ」

「言ってなかったか?」

「ええ」

「俺ら三傑は同期であり、それぞれ違う魔導を使う」

「そして高難度常連だ。分かりやすいだろ?だからそう呼ばれてんだ。っと、米酒を冷で頼む。後はネギチャーシューとサイコロステーキも」

「あいよ」

「その酒、好きだねえ」

「東方の酒はこっちのとは違う奥深さがあるからね」

「あたしも呑もうかな」

「すまん、お猪口をもうひとつ」

「OK。酒も2合入れておくよ」

「助かる」

「貴方達仲良いのね」

「まだ会って少ししか経ってないがな」

「そりゃだってさ、あんたが良い人だから。色んな悪人を見てきたから分かるんだ」

「それは言えてるわ」

「そうか?」

「自分自身じゃ分からねえだろ」

 

酒と飯が混ざり合って食べ進める事1時間、フィリーがお手洗いに行っている間に彼の事を話していく。

 

「ちょいとお手洗い行ってくる」

「おう……あいつは仕事以外だと能天気でズボラな性格だからか、女の子に声をかけられても友人以上になった試しが無いな」

「ああ、そりゃなんとなくは……」

「優しいし、度胸と実力もあるから皆に慕われてはいるんですがね」

「それに一番下の階級のナイトとは言え一応貴族で、しかも高難度常連。地位も金もあるわね」

「フィリーは俺と違って自力で貴族になった。平和な今、武で貴族入りした稀有な存在なのさ。実力は前国王陛下のお墨付きだ」

 

ナンナはフィリーみたいな気風の良い男は好みのタイプらしい。頼り甲斐のある所とか仲間思いな所とかが、特に気に入っているそうだ。

 

「へえ、ふうん」

「恥ずかしいから言うなよ?」

「分かってるって」

「戻ったべ〜。何の話してたんだ?」

「おう、お疲れさん。まあ、色々だな」

「そうか?まあ良いや」

「フィリー。少しだけで良い、チームに入れてくれないかい?」

「どうしたんだよ急に」

「俺もそろそろ次のステップに進みたい。その為にも連携の練習を取りたい」

「今でも他のグループと臨時チームを作って仕事をこなしてるじゃねえか」

「それでも良い。だが、『更なる高み』に到達するには練度の高いチームに入るべきだと感じてね。この前の話、受けたい」

「ふむ。お前の実力なら1人でも問題ないとは思うが……分かった。納得のいくまで組もう」

「流石我が友、決断が早いね」

「これからは5人体制で動く。属性は様々だから連携は難しいかもしれんが、頑張ろうぜ」

「俺は異名通り、そしてこの前ナンナに見せた様に水と氷の魔法を専門にしている」

「私は闇魔導が専門。それ以外も多少は使えるわね」

「闇は他の属性を飲み込む属性と言われてるな」

「飲み込むというより属性を内包していると言った方が正確かもね。だから多少使える属性もあるの」

「闇に雷光、水に爆破と鉄鋼。面白い組み合わせですね」

「言われてみれば確かにな。疲れも溜まっているだろうから、5日後に仕事に向かう。それまでは英気を養うなり修行するなりしておく事。良いね?」

「おう」




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