爆裂道中英雄記   作:ぽおくそてえ

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どうもです、ぽおくそてえです

お待ちいただきました、第五話です

では、早速どうぞ


第五話 異変

「フィリー!」

「ジョージじゃねえか!仕事を無事に終えたと聞いちゃいたが、元気そうだな」

「お前も元気だな。これから仕事か?」

「仕事は5日後だ」

「そうか。ヘンリーに聞いたぜ、俺が仕事に行ってる間にメンバーが増えたんだって?」

臨時メンバー(ヘンリー)を含めて3人だな」

「お前のチームはいつもメンバーが出たり入ったりだからな」

「教官役に適任だとマスターに頼まれちゃってるからねえ」

「高難度に挑戦可能になったこの6年で10人も上級チャレンジャーを輩出してるから頼られんのも仕方ねえよ」

 

そう、フィリーは上級チャレンジャーの育成係を頼まれているのだ。ギルドに所属して以来最速規模のスピード出世を果たした彼は人望も実力もあるし、ギルドに顔を出す頻度も多いから頼られる羽目になっている。だがジョージもギルド三傑の一員であり、ギルドの各チームに顔を出して成長させている影の功労者なのだ。

 

「そういえば怪しい力の正体を探ってるんだって?」

「常闇の因子。魔王絡みである事以外はさっぱりでね」

「この世界に幾つかあるとされる封印の(くさび)が大陸のどこかにあるらしいな。それと関連してるんだろうか」

「古文書に封印について記されてるんだ。無関係とは言い切れんな」

「今回の魔物も普段以上に強かった。赤い蒸気を発している個体が一頭いたな」

「本当か?」

「おう。様子がおかしかった」

 

多分そいつは常闇の因子に罹患していると思う。よく対処できたなと感心するばかりだ。ジョージに言わせれば極論だが、当たらなきゃ問題ないとの事だ。すごい台詞だが、自由に駆け回る風に溶け込み動くジョージにしてみれば当然だったかもしれない。

 

「お、ジョージ。フィリーも」

「ヘンリーか」

「何しに来たんだ?」

「仕事の準備をしようと」

「お前は俺以上の実力がある。だからこそ慎重に、用意周到に行動するんだな」

「高みにある戦士は常にあらゆる危険に対応するという。強い戦士は俺の目指す道だ」

「良いねえ」

 

3人揃い踏みとなって観光を兼ねてちょっと遠出、探索してくる事となった。暇なので折角だからと言う事だ。あまり遠出はする予定ではなかったのだが、グラン・フィレーン駅から列車で一時間、アリアテ森林にまで来てしまった。

 

「結構来ちまったな」

「ここには人が近寄りづらい洞窟があるって話だ」

「貴重な植物やら何やらがありそうだ。宝探しでもするか……ん?何だ、あの馬車一行は?」

「ちょいと離れながら様子を見よう」

「山賊か?」

「分からん」

「服装や装備は国軍などの公共のそれとは違うな」

 

遭遇したのは馬車に檻に人が入れられていた光景だ。この怪しい光景を放っては置けない、そう感じて後を追う事を考えつく。しかし、ギルドの許可なしで仕事を勝手に行なって良いのかという問題が出る。だが見るからに怪しい存在だ、放置するのはよろしくない。軍や貴族ではないだろうし、対処できるのは出掛けている彼らのみ。

 

「俺らだけで戦うか……よし、三傑の出番だ」

「一緒に来たのがお前らで良かったぜ」

「俺の風魔法であいつらから見えない上空を行く」

「あいつらの会話などの内容次第だが、もし相手が相手なら周りの護衛から仕留める」

「任せとけ」

 

上空から怪しい軍団の後を追っていると、風に乗って会話が聞こえてくる。どうもきな臭い話だ。

 

「へへへ、こんな辺鄙な場所には軍も来ねえから楽勝だったぜい」

「あんな村に労働力、そして商売道具が沢山いるとはなあ」

「こいつらを売り捌くのは何処でしようかねえ?」

「親父曰く闇市場は一昔前に比べてめっきり数が減ってきてるらしいぜい」

「確かになあ。30年前から色々と手が入っているから」

「(闇市場か。前王陛下の元でかなり駆逐されたと聞くが……まだ残っていたか)」

「ここいらで休憩だぜえ」

「(止まった。相手は15人、かかれ!)」

「何だ?風?」

「ぎゃっ!」

「ぐえっ!」

「おい、お前ら!」

 

上空から爆破と氷の刃、そして風圧を仕掛けられ、混乱しきりの敵軍だ。更に仕掛ける様に飛び降り、上空から奇襲攻撃で追い討ちをかけていくのだ。15人の小隊では防ぎきれないだろう。

 

「誰だ!何しやがる!」

「そいつらを解放するんだな」

「テメェら、何者だ」

「急に現れたぜえ」

「ただの通りすがりの魔導士さ」

「俺らの商品に手ェ出そうってか?」

「人を何と心得る?貴様らは我が魔法の餌食となれ」

「殺すなよフィリー」

「フィリー?こいつは確か……」

「想像の通り、貴族でギルドの魔導士だ」

「畜生が!」

「無駄な降伏はよせ。抵抗しな」

 

本来なら投降を促すところだが、外道の輩に対してそんな優しさは皆無だ。抵抗したところで無駄なのだろうが。三傑による怒涛の攻めで盗賊か闇商人と見られる集団は敢えなく瓦解した。たかが15人程度で大ギルドの上澄の連中3人に勝とうというのが無茶な話なのかもしれない。

 

「これで全員倒したか」

「おい。テメェらの本隊は何処だ?吐きやがれ」

「いや、それはいかん。案内しな。口先だけじゃ幾らでも誤魔化せる」

「くっ……」

「やる気か?死にたい様だな」

「わ、分かった!案内する!」

「それで良い。その前に捕まってた人達を解放するぞ」

 

まずは人質を解放し、すぐにでも本拠地へと向かう。その頃、外道の輩の本拠地では……総大将が稼いだ金を前にご満悦だ。人を人として扱わない、フィリー達が嫌うタイプだ。

 

「ぐへへ、今月も大儲けだ」

「流石はボスです。ただ、噂によればリチリー村の奴らが壊滅したとか」

「あいつらが?俺ら以上に用意周到に準備してたのにか?」

「ええ。海賊と魔導士にやられたと(もっぱ)らの噂ですぜ」

「目立たねえ闇市場はまだ幾つか残ってる。摘発されにくいから大丈夫だろ。おいチビ!」

「は、はい」

「あっちの掃除でもしてろ」

「はい」

 

リチリー村。それはこの前フィリーがナンナ達と共に壊滅させたギャングの拠点となっていた村だ。そこが壊滅したとなるといよいよ警戒せねばならない。そんな時でも冷静を保とうと人質となっている少女に掃除を命じる。

 

「ぼ、ボス……」

「おう、帰ってきたか……おい、その傷は何だ?商売道具は?」

「そ、それが」

「案内ご苦労」

「潰されちまいました。こいつら魔導士です」

「何だとお!テメェら、やっちまえ!」

「全員潰す」

 

闇商売を行う輩は徹底的に潰す。それが国に貴族として認められ、ギルドで強者として働く男達の矜持だ。国や街、そこで暮らす民達の安寧の為なら戦うほかない。

 

「10人がかりで行け!」

「へへへ、魔道剣の相手ができるか?」

「ふっ、生温(なまぬる)い。円撃烈破!」

「ぐわっ!」

「ぎえぇっ!」

「この野郎、ただの魔導士じゃねえな」

「隙ありだぜ、水砲!」

「ぶべっ!」

「風刃」

「あぎゃ!」

 

爆風に水の大砲、切り裂く風が魔法弾の弾幕をすり抜けて次々に闇商人達を駆逐していく。善良なる市民に手を出す者達を許しはしない、そういった覚悟を示すかの様にどんどん倒していく。攻めで駄目なら守るまで、そう言って鉄の壁ならどうだと言わんばかりに複数人で錬成杖を使って作り出すが、それも無力と言わせる。

 

「貫風弾」

「うわっ!」

「足がっ!」

「射抜いたか」

「死にたくなきゃ引っ込んでな」

「ひっ!」

「ええい!こいつを喰らえ!」

「大氷壁」

「あべっ!」

「けっ、跳弾か」

「やるね、流石だ」

 

数十人から100人近くはいるだろう本隊だが、たかが3人に次々と倒されていく。たった3人に何をそんなに苦戦しているんだと怒号を上げるが、この3人があまりに強く、遂にはボスを含めて10人程度まで数を減らされていく。特にフィリーの剣幕にはボス以外はビビり上がっており、最早降参するしかないと言わんばかりだ。

 

「お前がボスか?」

「くっ……」

「あ、あう……」

「丁度良い所に。この小娘を殺されたくなきゃ手ェ上げな!」

「きゃ!」

「く、人質か」

「仕方ねえな。無益な殺生は好まぬ故」

「へへっ、そのまま動くなよ」

 

先程掃除を言いつけられていた奴隷の様に扱われていた少女を盾にして逃げ仰せようとしていた。あまりにも外道だ。そう思ったが、ここで冷静でいられたのは己の魔道に自信があるからだ。大将の油断を誘って少女を傷つけない様にする為、ここは耐え忍ぶしかない。ボスが洞窟の入り口まで辿り着き、手を少女から離した。

 

「へへっ、ここまで来れば……がっ!」

「空気有る所即ち我が領域。空の見えざる手は風使いの特権たる魔導」

「の、喉が……」

「今のうちだな。ほれ」

「く、くそ!」

「振り向きざまに、砕空破!」

「ぎゃあ!」

 

危険が及ばないと判断した瞬間、ジョージはあのギャングの使った風の魔法を使い、喉を掴んで武器が少女に触れないところまで持っていった。そこへフィリーがすかさずに間へ割り込んでいき、少女を救い出しながら爆砕した。

 

「あう、あの……ありがと」

「よいせっと。良いってもんよ」

「この子はどうするんだ?」

「おそらく闇商人どもに無理やり連れられてきたんだろ。元いた村や町に返すか?」

「やれやれ、そうせざるを得ないか」

「ううっ……」

「怖がられてんな」

「無理もねえよ、彼女からしてみれば大人の男は恐怖の対象だろうさ。時間が解決してくれりゃ良いが」

「君、名前は?」

「アニー、です」

「そうか」

 

アニーに話を聞こうにも怖がられている可能性が充分あり、このまま話しても効率も良くないだろう。むさい男どもじゃあまり話してくれないかもしれない。カトレアあたりに来てもらうかと話になる。ナンナも頼れる姉御肌だ。意外といけるかもしれないし、マリータでも良いかも。そんな話になっていると、アニーが声をかける。

 

「あの、あの……」

「うん?どうした?」

「お兄ちゃん達、誰?」

「名乗ってなかったな」

「そうだな」

「俺はフィリー。こいつらはヘンリーにジョージだ」

「俺達はギルドの魔導士なんだ」

「ギルドの魔導士?ギルドって、何?」

「皆が集まって仕事に向かう場と集まる所だね」

「そうなんだ」

「とりあえずギルドと国軍に連絡しておく」

「頼む。こういうのはフィリーの役目だろう」

 

とりあえず軍に捕縛の為の動員をお願いした。これで闇市場がまた一つこの国から無くなるだろう。更にギルドの方にも連絡を入れてアニーの事を伝えた。詳しい事情は分からないが、女の子が闇市場に売られかけたとなればすぐ来てくれるだろう。

 

『そういう事情かい。分かった。あんたら、頼んだよ』

『はい。師匠、グラン・フィレーン駅で待ち合わせましょう』

「勝手に出掛けておいてこれで申し訳ないね」

『全くさね。本来なら依頼を通さずに勝手に仕事したから罰則事項だよ』

「罰は甘んじて受けるつもりだ」

『今回は緊急事態だし、見逃すつもりだよ。それにいつもの事だし』

「感謝する」

『軍にはもう伝えてるんだね?』

「今大急ぎで来てる」

『後は任せるべきだね』

「そうだな」

 

ギルドにも伝えて一回アニーを保護するつもりだ。それを誰かに伝えるべきか思案しているとヘンリーとジョージが地下に50人くらい捕まってたのを発見しており、解放してきたのだ。

 

「皆様ありがとうございます」

「皆さん近くの町や村の出身ですか?」

「近場の3つの村から連れられてきました。秘境に近い村です。無事だった者が今どうしているか……」

「十数人が売られていく姿を見ました」

「むう、闇商売はまだ根絶されてないか」

「そこら辺の調査は国軍に任せよう」

「アニー」

「どうしたの、おじいちゃん?」

「彼らについて行きなさい」

「でも」

「私達と居るより君の成長の為にもなるのさ」

「あうう」

 

この子は魔導士なのか。老人達の口ぶりからそう感じ取った。性格もあってか攻撃は苦手な様だが、回復魔法に強化と弱化などが扱える聖属性を持っている。聖属性は全属性の中で最も珍しいとされ、魔導士の中でも数十人も居るかどうかと言われるくらいには少ない。それ故に狙う者どもが多いと聞く。この子の為にも連れて行ってくれないかとお願いされる。後はアニーの判断になる。このままギルドについていくか、それか国軍の施設で保護されるか。

 

「さあ、俺の手を」

「アニー、頑張りなさい」

「うん。よろしくね、フィリーさん」

「良く勇気を出した。君の幸せの為なら協力を惜しまないよ」

「フィリー殿」

「国軍の到着だな」

「彼らに引き継いでおこう」

「カトレア達とは首都で待ち合わせだ」

 

アニーの手を引き、近場の駅から首都へと移動を始めたが、彼女は人の多い状況に慣れていないみたいで、どうも列車に乗る段階から既に緊張してしまっている様だ。それはグラン・フィレーン駅に着いた時に悪化してしまう。

 

「あう、すごい人の数」

「こういうのには慣れてなかったか。手を離すなよ」

「うん」

「そうやって見てるとまるで兄妹か親子だな」

「そうか?俺はもう25だが」

「私、7歳」

「ふむふむ」

「学校に通ってるべき年齢なのか」

「兄貴や姐さんは居たが、男世帯だったことが多かったから同年代はいても妹みたいな存在はおそらく初めてだな。どう接すれば良いものやら」

「なに、お前なら普段通りに接すれば良い」

 

グラン・フィレーン駅に到着すると、流石は国の首都が置かれて国王城が配置されているだけあって、そこは人で溢れかえっていた。怯えるアニーの手をゆっくり引きつつ、待ち合わせのホームへと向かう。

 

「師匠」

「急に来いって言うから何事かと思えば」

「来てくれたか」

「あら、随分と可愛い子を連れてるのね」

「し、知らない人が」

「怖がらせてしまったか」

「闇商売で売られかけたんだ。怖い思いをした大人に慣れろと言うのに無理がある」

「心配するな。この兄ちゃん達やあたしらがいつでも助けになるから」

「うん……」

「まあ、いきなりそう言われてもって感じか」

 

少しずつ慣れていくしかない。ここから更に移動してギルドに戻る。そこで連絡を受けたマスターが待ち受けていた。彼女が生活できる様にこのギルドに入る手続きを行うのだ。

 

「これが、ギルド」

「おかえりの様だね。初めまして、とりあえず挨拶と行こうか。私は天使の涙のマスター、カリナ・フェイルノートさ」

「えっと、アニーです」

「うんうん。ここでの過ごし方はそこのフィリーやカトレア達に頼ると良い」

「はい」

「リーダー、生活のケアなどは頼んだよ。心のケアは我々ギルドも支援する」

「できる範囲で良ければやろう」

 

まず手続きとして名前と住所を書き記しておかねばならない。まだ戸籍が完璧に普及してない村や町も存在しており、全員がちゃんとした住所や苗字を持ち合わせている訳ではない。

 

「どうするね?」

「そうだなあ。アニー、今日から俺の家に泊まると良い。いきなりで済まないが、1人で暮らせる様になるまででもね。ナンナあたりでも良かったんだが、一人暮らしで限界だから難しいってさ」

「良いの?」

「もちろん。部屋なら幾らか空きがあるから、プライバシーはちゃんとしてるはずだ。マスター、住所は俺ん()でどうだ?」

「ありがとう」

「そうだね。それが良い」

 

苗字もとりあえずはフィリーの家族として同じ物にすると決めた。これでギルドへの登録と戸籍の変更等は任せておく事になった。

 

「不安な事、足りない事があればいつでも相談してくれ。家族や仲間と同じ家で過ごすなんて10年ぶりだからな」

「う、うん」

「じゃ、ちょっと出掛けようか。色々と買い足す必要が出てきた」

「うん」

 

====

 

「お、フィリーにアニーじゃん」

「お姉ちゃんはギルドの……」

「ナンナ・ガレシアだ。改めてよろしくな」

「丁度良い所に来てくれたよ」

「どうしたんだい?」

「今、ギルドでもらってきた服で代用してんだが、新しい服とか歯ブラシとかベッドが入り用でね。歯ブラシはそこらへんで買えばまだ良いとして、服とかよく分からんのよ。手伝っちゃくれないか?」

「あたしで良いのか?」

「なんだかんだで頼りになるのは分かってるからな。とりあえず俺は仕事用の寝袋で凌ぐとして、ベッドも欲しいね」

「そうと来たら、あたしにドーンと任せな」

「やはり持つべきは友や仲間だな」

 

外出した先で会えた頼れる仲間に買い出しの協力を依頼し、当面の生活に必要な物を揃えていく事となった。とりあえずは服からだろう。

 

「アニー、まずは服を買いに行こう。お姉ちゃんと手を繋ごうか」

「うん」

「慣れてるな」

「まあな。少し前まで大所帯のリーダーだったからね」

「それもそうだな」

「リーダー。かっこいい響き」

「そうだろ?」

「頼れる姉御だぜ」

「フィリーは仕事じゃ頼れるが、こういう私生活ではズボラな面もあるみたいだからね」

「誰に聞いたよ」

「ヘンリーやジョージから」

「あいつら……ったくよ」

「ふふっ」

「お、笑ったね」

「え?笑ってた?」

「おう。可愛い顔してんだから笑ったほうが良いよ。フィリーもそう思うよな?」

「もちろんだ」

「そう、なんだ」

 

まず立ち寄った服屋で1週間分の服を用意しておく事となった。彼女は可愛い服に興味を示している。アニーは村に居た頃は今まであまり着飾れてなかったのか尋ねたら、服屋での選択肢が少なく、少しだけだったらしい。金ならある。値段とか気にせず買いたいやつを買いなさいと伝えると頭を抱えて迷っている。そこでナンナが代わりに選んであげる事となった。その後に食器や歯ブラシ、ベッドなどを頼んでいき、生活に必要な物資は数日程度で揃う。

 

「ベッドは明日届くってさ」

「助かったよ。ありがとな」

「気にすんな。この子の為でもある」

「アニー、ナンナにお礼を」

「ありがとう、お姉ちゃん」

「どういたしまして。じゃあな」

「良い人」

「だろ?元海賊だとは思えねえ」

「海賊だったの?」

「つっても義賊、人の為に戦う海賊だった」

 

日も暮れて夜の帳が下りる頃、ナンナとはここで別れた。後は飯を食ってから帰るか、帰ってから夕飯の準備をするかといった感じになった。

 

「あっ……」

「はは、すごい腹の虫だな。何か食いたいものはあるかい?」

「私、もういないお母さんの作ってくれてたご飯以外あまり良く分からないの」

「じゃ、ここにしよう」

「ダイニング・ギリー?」

「俺の(ダチ)の店だ。ギリー」

「フィリーじゃんか。どうしたんだ?」

「飯食いに来た」

「料理屋に来てそれは愚問だったな。あれ、お前妹なんて居たか?」

「ああ、この子はだな」

 

アニーのこれまでの生活に関して聞いてきた事をかい摘んで説明していく。親は既に亡くなっている事、家族と呼べる村の人達に支えられてきた事。そして二、三ヶ月前に闇商人に捕まった事などだ。

 

「大変だったんだな。親御さんが亡くなっていたとは」

「病気でだそうだ」

「あのギルドには結構親の亡くなった人が多い。だから、街の人含めて皆で協力しあいながら生活してんだな。いつでも俺達を頼ってくれよな」

「ありがとう」

「よし、今日はたくさん食べてってくれ」

「腹一杯食ってくれ。遠慮はすんな、今日から俺の家族だから」

「家族……では遠慮なく、美味しく、いただきます」

 

仕事で得た金は大半が貯金に回っていく生活を送っていたフィリーにとって、誰かの為に仕事して金を使う事はあまり無かった。これからは新しく迎えた家族の為に使っていこう、この可愛い妹分の為に頑張っていこうと思っていた。

 

「本当に良かったの?私を迎え入れてくれて」

「困った人を見かけたら助ける。それが俺達の生き様。昔俺を引き取ってくれたギルドや傭兵団みたいにな」

「お兄ちゃん……」

「へへ、お兄ちゃんか。悪くない響きだ」

「えっと、その、これからよろしく」

「おう。さ、もっと食べようぜ」

 

満腹まで食べ切った2人は、ギリーに会計頼む。今日だけ特別に5%引きで会計をしてくれた。ダイニング・ギリーや居酒屋バルボを普段から良く使ってくれてるかららしいし、新しい顧客への先行投資みたいなものだという。この街は食うに困らないくらい店も多いから暮らすにはもってこいだ。

 

「じゃ、明日ギルドに行くか」

「うん」

「ゆっくり寝て元気になろう。おやすみー」




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