爆裂道中英雄記   作:ぽおくそてえ

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みなさんおはようございます。あるいはこんにちは、こんばんは。

ぽおくそてえです

次回から週一に変更です


第七話 目標

「今回のミッション、どんな代物(しろもの)なんだい?」

「雷光明電の異名を取る半人半魔の頭領が率いるグループの壊滅が目標だ」

「半魔か」

「私と同じ魔法の使い手でしょうか?」

「異名通りなら可能性は高い」

「ならカトレアを先頭に陣形を組むべきね」

「耐性を考えるとそれが妥当な所だが、決めんのはフィリーだ。どうする?」

「行動の癖の読み取り、スピードに威力などの計測。範囲が何処らへんまであるか。耐性を利用した防御。そこらはカトレアが一番見やすいし、やりやすい。その大役を任せても良いんだな?」

「はい」

「よく言った。皆も援護を頼むぞ」

「任せておけ」

「よし、飯食ったし寝よう。明日朝には着いてるからな」

「分かったよ」

 

相手との相性で考えるならここはカトレアの出番が多いだろう。彼女のやりやすい戦闘方法で行く。そうと決まれば食堂車で飯を食って体力を温存する為に早めに休息を取る事となった。8時間ほどゆっくり休息を取り、朝早く起きて朝食を取る。

 

「おはよう」

「ん?もう朝か?」

「早いね」

「ほれ、そっちの部屋のメンバーも起きな」

「眠い……」

「あと2時間で乗換駅に到着する。食堂車で朝飯を食うぞ」

「は、はい」

 

夜行列車でかれこれ1日と数時間。やってきたのはグリニエの駅だ。風光明媚な所で木々が紅や黄色に染まっている。秋も中盤、紅葉の最盛期ともあり、少し肌寒い。それに水の涼しさが加わるから尚更な所で渓流のせせらぎが落ち着く場所だ。昼飯と少しばかりの休憩を挟んでそこから更に2時間、グリニエの街では依頼人達が今か今かと待ち侘びていた。

 

「来てくださいましたか。お待ちしておりましたぞ」

「お待たせして申し訳ありません」

「いえいえ、予想より早かったくらいですよ。今日来ていただけるとは。明日の昼までに来ていただければ御の字でしたからな」

「夜遅くになってしまったんですがね」

「どうかお気になさらず。お呼び立てしたのは我々なのですから」

「そうですか。では、早速仕事の話と参りましょうか?」

「どうぞよろしく」

 

ここから具体的な依頼の説明に移る。その内容は渓流を通る商業隊の襲撃に対して捜査してほしいとの事だ。以前より減ったが、珍しくもない話だ。軍の目が届きにくい場所であるから、どうしてもこういった類の連中は現れやすいのだ。最近は軍備を少しずつ減らしている部分もあるから尚更だ。比較的平和な世の中だから余計な軍事費を削らなければならない部分もある。外部との戦争は可能性が低く、内側も反乱は今の所無い。あるのは魔物や盗賊との闘争くらい。そこら辺もギルドがあるから軍縮路線になりつつある。三方海に囲われたハルモニア王国で国境と言えるのは北部と南部のみ。北部にあるハルキリー国とはリオレン氷山を超えねばならず、相互不可侵条約を交わしてるから戦う事はほぼ無いので、北方基地も専ら対魔物用だ。南の国境に位置するガラゴリア大陸とは海を挟んで結構離れていて外部には敵のいない状況だ。今は様子を見ながら、医療制度や子育て支援などにお金を回す為、如何に軍事費を安く抑えるかを思案しているのだ。

 

「経営って大変なんだな」

「領民や配下、仲間に出来るだけ豊かな生活をさせる。抱えてる面々に少しでも多く食わしていかにゃならんからな」

「俺達もマスターや経理の人達、仕事を集めてくれてる人々、紹介してくれる受付などのお陰で暮らしていけてんだ」

「ありがたい限りね」

「海賊時代を思い出すね」

「私も、みんなの役に立ちたい」

「良い心意気だ。まずはそこからさ」

「うん」

「で、雷光明電の一行を倒せば良いんですね?」

「ええ、その通りでして。ここいらを通る商隊を襲うので国軍にも依頼したのですが、あまり成果は出ておらず……」

「ふうむ、そこで我々ですかい」

「奴らのボス、チャーリー・ベトゥーを捕まえれば自然崩壊するでしょう」

「チャーリー・べトゥーか。ふむ」

 

見た目や魔法などについて詳しく教えてもらえないか、そう頼むと襲われた者達の証言からこのような顔をしていると思われるという絵を見せてもらった。三十代くらいの男でカトレアと同じ雷系統と光系統を基本としているという。そうとなると後方への影響を減らす縦一列か、バリアーを張って後方に逸らしつつ皆で協力しながら戦う扇型となる。

 

「それなら扇型でどうだ?」

「連携を取りやすいぜ?」

「そうだな。そうとなると、まず扇の要の先頭はカトレア」

「はい」

「その真後ろの両翼を俺とヘンリー。俺らは攻撃を主に行うぞ」

「おう」

「俺ら2人の間にアニー。俺ら3人でお前を守りやすく、尚且つカトレアに守りの強化(バフ)をかけやすい位置に居てもらう」

「うん」

「一番後ろで後方支援をナンナとマリータだ。客観的に様子を見ながら防御や攻撃の支援をして欲しい」

「了解」

「任せなさい」

「これが大きなギルドの優秀な魔導士のチームリーダーですか。判断が早い」

「これくらい直ぐに出来なければ生死に関わります。じゃ、出発するぞ」

 

グリニエの街から1時間、敵のアジトと思われる場所へと到着した。人数にして120人ほど。隊列を崩さず、敵中突破を狙う。

 

「ここか」

「まずは俺の魔法で。氷塊雨弾」

「ぎゃっ!」

「て、敵襲か!?」

「……よし、混乱してるな。進もう」

「なんだこいつら!」

「さっきのはこいつらか!」

「慌てるな、敵は6人。数の上では優位ぞ」

「はっ」

 

冷静さを少し取り戻したチャーリーの軍団相手にまずは広範囲に爆撃を加える。その為の鉄の弾丸をたくさん用意してもらい、ばら撒いてみせた。そしてそれらが着弾したタイミングで爆破せしめた。

 

「弾丸乱爆!」

「ぐぎゃあ!」

「あべひっ!」

「やるではないか。こちらからも仕掛けようか。はぁ……双雷槍」

「ここは私が」

「雷の壁で掻き消すとは。あっしと同じ属性か」

「見かけ上簡単に放ったのに、結構威力がありそうです」

「そうなると相殺は連続では厳しいな」

「私は大丈夫ですが、強化(バフ)をかけてるアニーが心配ですね」

「ならばアニーを中心に十文字を組め」

「はい」

 

こうなったらアニーを守りつつ敵と相対する陣形に変え、フィリーは1人でチャーリーと戦う準備に入る。こうする事で勝率を少しでも上げるのだ。

 

「お前の相手は俺だ、チャーリー・べトゥー」

「あんたの力は伝え聞いてるよ、フィリー・ゲイル」

「お前らにまで知られてるとはね」

「大手ギルドの三傑ともなれば名は売れてるからね。噂くらいには聞くのさ」

「お前について少し調べさせてもらった。雷虎族の血を引くそうだな」

「そう、あっしは雷虎族の半人半魔。あっしら半魔が食っていくには流れの盗賊などになる事が多い」

「そうかい。まだ偏見が残ってるみたいだし、やむを得ないか。だが、これを解決するには何かしらのきっかけを以てして人間と魔族の共存が無ければ難しいな」

「あんたのような人間と魔族ばかりなら話は簡単だがな。お互いがお互いを憎んでる節がある」

 

長い歴史の中で魔王とそれを封じた七英傑を筆頭に魔族の大半と人間は永らく対立関係にあった。その中で恨みつらみも募っていき、一部を除いて殺し合いをしてきた時期もあったのだ。だが、フィリーはそんな事は更なる怨みしか生まないから、そういった歴史から生まれるお互いへの差別や偏見、争いは好まない。

 

「お前に怨みはねえが、これも仕事だ。殺しやしねえが捕縛させてもらうぜ」

「やれるもんならやってみい。あっしはヤワじゃない」

「行くぞお!」

「おおっ!」

「飛刃・爆爪斬!」

「雷虎爪!」

「うわっ、すごい威力!」

「爆風が!」

「あの爆風、普段以上だな」

 

互いの全力がぶつかる。引けない所まで来ているのだ、出せる力は全て出す。それにしてもここまで全力を出すのはお互い珍しいのか、それぞれを良く知る仲間達は驚きを隠せない。連続爆破の息吹、爆風烈哮を差し出せば雷光の砲弾を打ち出して相殺していく。それぞれにかなり力を使わせる爆風と雷光。こうなれば遠距離は厳しいと判断したのか、フィリーは突っ込んでいくしかない。

 

「直線爆拳!」

「がっ!くそ、雷鳴轟け!」

「うおっ!」

「油断も隙もあったもんじゃないね。あっしに本気を出させるとは」

「そらぁ、俺の台詞だ」

 

フィリーからしてみれば至近距離の爆破を狙う他ない。爆破の力は対象物との距離が近付けば近付く程威力が猛烈に上がるからだ。チャーリーからしてみれば知らないとはいえこれは危険と判断できるくらいには鉄火場を潜り抜けている。

 

「つぇあ!」

「おっと。はあっ!」

「けっ、後頭部から狙うとはな。そらよ、円撃烈破!」

「くっ」

「やるじゃねえか」

「あんたもな」

「さあ、続けようぜ」

「楽しいねえ。ここまで張り合いのある相手は久し振りだ」

「そうかい。爆炎砲!」

「うおっ!」

「燐粉九撃・無念無想!」

「ちっ、連続拳とは」

「二撃、三撃……」

「くそ、やばい!ばはっ!」

「なんだあれ、ただの爆裂拳じゃないのか!」

「当たり出したな。あれは体力と魔力を大幅に消費する代わりに威力が跳ね上がる魔法だ」

「四撃!」

「ぶふっ!」

 

3発目から当たり出した連続拳。9連撃はこの段階で当たり始めれば莫大なダメージを与える事となる。4発、5発とどんどん当たっていく。そして……

 

九撃(終焉)!はあ、はあっ!」

「がふ、ごほっ!な、なんださっきのは!」

「連続爆裂拳だ。通常以上に強力だが発動後は連続で出さねえと止まらんし少しの間、手や足から爆撃が出せなくなる弱点付きだぜ」

「ケリをつけに来ていたのか」

「出来れば使いたくなかったがな」

「……ふっふっふっ、そこまで覚悟を決めた男に敬意を表してあっしも大魔法を発しよう。受けた傷と同等かそれ以上のダメージを狙ってやろう(保ってくれよ、あっしの体!)」

「来い。受け切ってやろう!」

「雷光明電の異名、それはこの技から来てる!雷光明電・紫電!」

「っ!があっ!」

「フィリー!」

「あれは、紫の雷?」

 

高電流を喰らっても尚、立っていられる。これもフィリーが今まであらゆる魔法を喰らってでも立ってきた証。耐性が上がっているのだ。だが、それで以てしても意識を失いかける。

 

「ぐぐぐっ……近寄るなよ、絶対に!こいつは俺の獲物だ!」

「お兄ちゃん!」

「危ないよ、アニー」

「大丈夫、あいつなら死なないから」

「ぐぬぬ……はあっ!」

「全身起爆!?くそっ」

「その手があったかい!」

「はっ、はっ!死ぬかと思った!」

「この技を受け切った輩はあんたが初めてだ」

「全身痛みやがるぜ」

「ふう、はあ、無理しすぎた」

「あの2人、今にも倒れそうですよ」

「だな」

 

ふらつく2人は魔力の籠っていないただの拳で殴り合う。倒れるまでひたすらに殴る蹴るを繰り返す。互いに叫び声を上げながらただひたすらにぶつかり合う。そろそろ止めるべきじゃないかと声もかかるが、決着をつけるまで続けるべきとの声も出た。

 

「そうなのか?」

「男同士の誇りと仲間の命を()した戦いだ」

「私達には分からない世界ですね」

「大将……!」

「頑張ってくれ、我らが大将(リーダー)!」

「フィリー!頼むぜ!」

「頑張って、お兄ちゃん!」

「互いにこれだけ人望があるとはね」

「これで、終わりだあ!」

「ごふっ……ら、ラリアットか」

「か、勝ったか。おおう、目眩が……」

「お兄ちゃん!」

「あんた、なかなかやるね。あっしの負けだ」

「なんだ?根は悪い奴じゃ無さそうだが」

「暮らしていくにはこれしか手段が無かったのさ、我々には」

「きっと変われる。俺はお前ら半魔や魔物も生きやすい共生社会の為に働く。ようやく目標が出来た」

「良いのか?そんな約束をしちまってよ」

「種族の共存は在るべき物だ」

「変わってるね、あんたは。分かった。あっしらの未来、あんたに託そう」

「2人とも回復するね」

 

今までのらりくらりと金稼ぎの為に働いてきた部分があったが、ここにきて目標が一つできた。魔族と人間の共存だ。決して簡単な目標じゃないのは重々承知の上だが、それくらいの目標でなければやり甲斐はないだろう。

 

「とりあえず国軍に事情を伝えてこい」

「ああ。十数年は牢屋行きだろうね」

「到着しましたぞ、フィリー殿。後は我々にお任せを」

「頼んだよ。お手柔らかにな」

「はっ」

「無茶したな」

「仕方ねえだろ、ヘンリーよお」

「お兄ちゃん」

「な、なんだいアニー?随分とご立腹だが?」

「怪我したら治すって言ったけど、こういうのは少し違うと思うの。分かる?」

「お、おう」

「分かれば良いの」

「(すごい圧だったぞ!高難度常連の俺ですら恐れを感じた!)」

「(後ろに炎が見えたが!)」

「今怖いとか思った?」

「まさか」

「……今回は信じてあげる」

「おう」

 

回復を済ませて立ちあがろうとすると、ふらついてしまった。ナンナとヘンリーの肩を借り、なんとか歩けるくらいにはダメージが残っているのだ。果たして魔族と人間は共存できるのか?それを出来る様にするのも自分の務めだという。この大陸で、同じ国で暮らす者同士だから。理想論と言われて笑われる可能性があるが、理想を語れぬ世界なんぞあってたまるかと考えている。それも道理だ。帰ったら修行する。この程度で疲れてちゃ護るものも護れないと感じたからだ。

 

「戻ったぞ」

「依頼成功の様だね」

「まだまだ足りない部分が多いと感じたよ」

「そうかい」

「そうだ、俺にも(ようや)く目標が出来た。夢物語と笑われるかもしれんが」

「聞かせてもらえるかい?」

「人間と魔族の共生だ」

「良いじゃないか。誰にも笑われない様、努力しなさい」

「ああ」

 

それから数日、ようやっと傷が治った。そこでこの日は修行に行ってくると近場に居たカトレアに伝えた。

 

「鍛えるんですね?じゃあ私が相手を務めますが?」

「基礎訓練だ。多分大丈夫だろ」

「そ、そうですか?」

「だが、来ても構わんよ。いつもの所に行く」

「はい」

 

カトレアから他のチームメンバーに伝えられるが、回復は済んでいるのかヘンリー辺りは疑問に感じている。

 

「あん?修行に行ってくるだあ?」

「らしいですよ。まあ、いつもの事じゃないですか」

「じゃあ、あたしが様子を見に行ってくるよ。無理してないか、っていうのをね」

「いつも通りの修行場所ならギルド近くの小さな広場ですね。地図でいうここです」

「相分かった。じゃ、飯の差し入れがてら行ってくるかね」

「頼むぜえ〜……で、なんでナンナに行かせたんだ?」

「私には分かるんです。あれは恋をしている顔です」

「へえ」

 

そういえばああいうのがタイプだと言っていたなと感じながら見送る。ギルドの近くではフィリーが修行を始めようとしており、そこへ食べ物を持ってきたナンナが様子を伺っている。

 

「ふう、始めようかね」

「(ここか。ちょいと様子見てから声かけるかねえ)」

「ふぅ……」

「(さあて、どう声かけたもんかねえ)」

 

はてさて、彼女は一体どうやって声をかけるのか……。




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