爆裂道中英雄記   作:ぽおくそてえ

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どうもです、ぽおくそてえです

少しずつ進めていきたいと思います


第九話 火の鎧

『まずはオープン戦!大会初参加、ダークホースたりえるか!?フィリー!』

「来た!」

「初戦からいきなりか」

『対するは、前回大会ベスト4!流星拳と称される高速拳の使い手、ランダー!』

「強そうですね」

「相手、自信ありげよ」

「がんばってね!お兄ちゃん!」

 

初戦も初戦、開幕戦を任された以上は良い所を見せる他ない。ここで魅せる戦い方を出来れば推薦してくれたセイラ嬢に依頼された仕事はこなせるだろう。上位進出、あわよくば優勝を狙いたい。初戦の相手は去年良い所まで行っているらしいので、油断は大敵だ。

 

「テメェが初戦の相手か?」

「その様だな。ランダー、よろしくな」

「へっ!速攻で終わらせてやるぜ!」

「来い」

『レディ……ファイッ!』

流星・瞬撃拳(メテオラッシュ)!」

「おっと」

「オラオラオラァ!」

「速いわね」

「でも全部防ぎきってるよね?」

「命懸けの戦ばかり経験してるから、ゾーンに入って見切れてるんだろ」

 

早いだけの拳なら危険な魔物や魔導士相手に戦ってきたフィリーなら真新しくないのだ。単純な攻撃ゆえに見切れている部分もあるが。かれこれ数分間、ただひたすらに殴りにくる相手をいなしていくと、少しずつスピードが落ちてくる。

 

「くっ、当たらねえ!」

「見える見える。このままじゃ、無駄に体力を使うだけだぞ」

「クソがあ……」

「どうした?少しずつスピードが落ちてるぜ」

「この!」

「ほっ、とっ、よいせっ。おら、どうした!こんなもんか!?」

「な、なんでだ!なんで当たらねえ!」

 

ずっと攻め手を行なっているからか、少しずつ息も上がり、スピードも威力も段々落ちてくる。最終的には余裕をもって全て捌き切れるくらいにはなっていた。

 

「ぜ、ぜはーっ!」

『なんとなんと、全て防ぎ切ったぞお!』

「もう終わりか?ならこちらから行くぞ」

「ひいっ!」

「パンチってのはこう放つんだ。直線爆拳!」

「がはっ!」

『い、一発失神K.O.だあ!』

「残念だったな。誰かこいつを医務室へ」

「は、はい!」

『負けた奴は即脱落!フィリーは次のステージへGOだな!』

 

開幕戦は呆気なくフィリーの勝利で終わった。次の試合に向けて準備が進む中、気絶したランダーを医務室へと運ばれていく。フィリーの圧倒的な実力に会場にいる観客や貴族達は興味を示している。こうやって依頼に繋げていくのだ。

 

「あの人凄えな」

「良いとこまで登り詰めるかも」

「あのランダーが手も足も出なかったぞ」

「一発で沈めるとは、見所がありそうだ」

「分かってねえな、あいつら」

「どういう事?」

「正中線へ拳で一発、同時に放った爆風二発の合計三発。正確にはそれだけ撃ち抜いてた訳だな」

「さ、三発をあの一瞬で!?」

「俺の目じゃなきゃ見過ごしてたね。あいつ、上級に上がった頃に比べて段違いだ」

 

騒つく会場を後にして控え室に戻ると見知った顔に声をかけられた。ユウギリ・ブレイブ、この国でも上位に位置するほどの大魔導士だ。リュートと同じ6つの属性を満遍なく操れる老人だ。

 

「おお、誰かと思えばお主か」

「ユウギリか。数年ぶりってところか?どうしてここに?」

「そうじゃな。ワシもこの大会に参加してくれと依頼主に呼ばれたのさ」

「依頼主ねえ。どうせ貴族なんだろ?」

「まあのう。お主もそうじゃろ?」

「そうだ。ここに来てる輩は貴族や成金との繋がりを求める奴が多い。だからそいつらを利用したい貴族達とは互いにウィンウィンな訳だな」

「否定は出来ん。決勝で会おうぞ」

 

いざ出陣、という感じだ。この試合が一回戦最終戦となる。ユウギリは余裕綽々といった雰囲気で前へと進む。

 

『さあ、1回戦最後の試合に突入だあ!』

「ほっほっ、楽しみだねえ」

「あ、あの方は!」

「ユウギリの親分!」

『ユウギリ対ブロンズ!さあさあさあさあ!盛り上がろうぜえー!』

「知ってるの?」

 

彼は伝説の魔導士、七英傑の師範たるバレット・ブレイブの子孫でその再来と謳われるほどの人物だ。この世の理、森羅万象の力とも呼ばれる六道魔法、即ち基本6属性が使える御仁である。6つの属性全てを使えるのは聖属性使い並に希少な存在だ。

 

「へっへっへっ、お前を倒しゃ俺の名も少しは売れるだろ」

「ほっほっ、そうだと良いのう」

「行くぞお!」

「……獄炎鳥」

「ぶふおっ!」

「火の鳥を飛ばした!?」

「壁に叩きつけやがったな」

 

まずは後の先で水魔法に対処せしめた。水をかければ消えるだろうと雨を降らせると、その雲を借りて『迅雷流裂』、即ち空さえ割く鋭い雷を喰らわせる。

 

「あばばばばっ!」

「やはり上手いな、闘い方が」

「クソがあ……水大蛇!」

「ほっほう?隆土鉄壁」

「速いな」

「経験値が違いすぎるわ」

 

伊達に数十年魔導士として働いておらず、格の違いを見せつける。闇の矢に水の砲弾、火の玉と次から次へと魔法を使って相手の攻撃をいなしていく。相手も全力で対応するが、相手が悪い。そして最後には、呆気ない幕引きが起こる。

 

「おおおっ!」

「嘯風弄月」

「突風!?」

「おごっ、ぐはっ……」

「流石だな」

『決着はあっさりついちまった!』

 

ユウギリが戻るとフィリーと先程会った巨人が迎える。相変わらずえげつない戦法だと感嘆するばかりだ。本人は闘うのは得意では無いと申してはいたが、誰も信じないだろう。

 

「何言ってんだこの人は?俺なんかもっと苦労したんだが?」

「さっきの巨人君じゃな?」

「バース・ギガースってんだ。よろしくな」

「なかなかに気骨のありそうな奴だぜ。こいつも順調にいけばユウギリと4回戦あたりで当たるだろうな」

「一応土属性に分類されてるんだが、砂魔法の使い手でね」

「どうだ?この闘技大会が終わったらウチのギルドに入らねえか?」

「いやいや、そんな勿体無い」

「試合見させてもらったが、実力なら充分だろうぜ」

「ワシも同感じゃな」

「考えとくよ」

 

はてさて、これで1回戦を終えた。数分の休憩を挟んで2回戦へと突入だ。1回戦を勝ち抜いてきた相手は生半可な存在ではあるまい。

 

『さあ、続いて2回戦!爆風(すさ)ぶ炸裂弾、フィリー!』

「来たよ」

「今度はどう闘うんだろうか」

『相手は骨魔法の使い手ガーテン!』

「さっきの試合、長期戦に持ち込んでたね」

「守りに(まさ)る奴の様だな」

『レディ!ファイト!』

「ほああっ!」

「くっ!(やはり速い!)」

「爆炎脚!」

「骨の盾と剣、召喚!へいやっ!」

「おっと」

 

油断ならんと判断したのだろう、今度はガーテンが攻めに転じた。盾で殴りにかかり、防いだ隙に剣で捌く。対するフィリーも剣を避けては爆破で応じ、盾で防がれては格闘戦で立て続けに攻め立てる。

 

『これは鬼気迫る攻防!どちらが勝ってもおかしくない見事な戦ぶり!』

「やるね、お前も」

「我が魔法は土属性の一端だ。この程度ではないぞ」

「来い。跳ね返してやる」

 

互いに一進一退となる中、ガーテンは少し距離を取って骨で出来た弓を手にする。ならばと射抜いてきた矢を弾きながら前進していく。

 

「やりおる……散骨矢!」

「砕空破!そこから、飛刃・爆爪斬!」

「くっ、早めに決着はつけられそうにないね」

「お前の魔法、遠近両用だな」

「どちらかといえば遠距離が得意だね」

「なら、これならどうだ!烈火の肘打ち(エルボーストライク)!」

「がっ!(なんだ!さっきより……速い!)」

「勢いをつけて、ヒール・ドロップ!」

「くそっ!」

「あいつも対応してるぞ」

「さ、どうするフィリー?」

 

肘打ちに踵落とし、更に踏みつけや炎の球を発射したりと色々な攻め手を実践してみるが、相手の防御は固く、側から見れば攻めあぐねている様に見える。

 

「砕空破!」

「見える。ほいっと」

「ならこれはどうだ?ステップからの、最速砕空破!」

「は、速っ!ごふっ!?」

「1回戦で見せた技だ」

「テメエ……骨槌!」

「おっと。爆風烈哮・龍吟!」

「骨盾!」

「へえ、やるね……ぬっ?」

 

この時確かに感じた。心の奥底から燃え上がる何かを。今までに感じた事の無い熱き血潮を。知らない力が、燃え盛る物が、魂に訴えかける何かが確かに感じられる。

 

「この感覚、今まで無かったぞ?」

「今のうちだぜ」

「ゆっくりしてらんねえってか?」

『聞こえるか。我は……炎獣王……』

「っ!?炎獣王?」

『久しぶりに一族の魂に浮上できたと思ったら大会中か』

「ちっ、面倒な事になったな。おい、何用だ?」

『我はお主の力になりたい。我が力を使い熟せるか、見届けよう』

「なんだ?……があっ!」

 

荒ぶる力が内から外へと溢れ出す。その時、右手に紋章が現れ、体を緋色の気迫が覆う。何事か理解するには情報が足らなすぎるが、不思議と痛まず、猛る炎の様な力を纏っているというのに何故か平静で居られる。

 

「全身に炎を纏ったぞ!」

「……痛くねえ。なんだこれは?炎獣王、何処かで聞いた異名だが」

『なんだ!急に覚醒でもしたか!?』

「申し訳ないが、今なら勝てそうだ。オラアッ!」

「ぎゃあ!」

「一振りの拳から連続爆破!」

「パワーアップしてねえか?」

「フィリー!」

「いや、冷静さは残ってるしあいつ自身へのダメージは無いみたいだ。大丈夫だろ」

 

摩訶不思議な力に呑まれる事なくその力を扱う。謎の多い力と先程現れた魔獣。聞きたい事は多くあるが、今は目の前の対戦相手に勝つことが最優先だ。爆破によるダメージを受けながらも大剣を振りかざして突貫してくる。

 

「大剣・骨斬破!」

「ほっ」

『す、素手で止めたあ!』

「爆っ!」

「折れた!?」

「畜生!」

「力が溢れる。だが、これに溺れてはいかんな」

 

攻め立てる力だけではなく防御力も若干ながら上がっている事に驚きを隠せない。これなら勝てる。この力を与えた相手はこちらを知っているみたいだし、後で詳しく聞いてみる他ない。

 

「おおおっ!爆炎剛拳!」

「ばはっ!?」

「そこまで!この試合、そこまで!」

『レフェリー・ストップが入った!』

「はあ、はあ!なんだこの力は……」

「お前大丈夫か?」

「ああ。急に力が出始めたよ……お、消えた?」

「意識とかは大丈夫かね?」

「聞こえてるし、痛みもなく、ちゃんと話せてるから大丈夫みたいだ。声が聞こえたんだ、炎獣王と名乗る声が」

「もしや炎獣王フォルテか。かつて魔王と戦った英雄ラーズの精神世界に現れたと聞くのう」

 

かつて魔王カリア・ハルトラーの封印に関わった七英傑と呼ばれる英雄達はその心に魔族を住まわせていたという。基本的にはその子孫が扱えるらしいが、詳しい事は分かっていない。その一頭がフォルテと目されており、右手に現れた紋章にユウギリは歴史書で見覚えがあるという。

 

「なるほど、フォルテと思しき者に力を授けられたと」

「何が起こったのか俺自身も分かってねえ」

「その紋章は何なんだ?」

「俺もさっぱりだが、伝承に出てくる七英傑の紋章と似てるな。あの時6つの腕を持つ魔物が現れた様な……」

「6本腕の魔獣。間違いなかろう、フォルテじゃな」

「そうかい」

「よし、次は俺の2回戦だな」

「頑張ってこいよ」

 

2回戦、次の試合の組み合わせがコールされる。西方のゲートからはバースが意気揚々と現れた。歓声の起こる中で緊張しすぎず、気負う事なく望めている。

 

「あの巨人族の人、気合い入ってるわね」

「フィリーとは馬が合いそうだな」

『対する東方!絡繰(カラクリ)人形師、ロウガ!』

絡繰(カラクリ)人形師。確か闇魔道の系譜だったっけ」

「ああ。操作する糸が闇魔法で、絡繰(カラクリ)内部の仕掛けは様々な属性を内包している」

「私も出来るわよ。人形じゃなくて人間相手に使う感じだけど。基本2体以下を操るんだけど、同時に全ての手の指で10体も操れる人が居たら驚くわ」

「人形の仕組みを理解してなきゃ出来ねえ魔導だな」

 

この人形を操れる数で闇魔導士として、そして人形使いとしての力量が測れると言われる難しい魔法だ。一つが普通、二つで上等、三つ以上でかなりの腕前と言われている。

 

『試合、開始!』

「召喚。夜叉丸、緋扇」

「2体か。おおう、ゴツいな」

「行くぞ」

「ちっ、考える暇もねえか」

「気をつけろ!毒を持ってる可能性がある!」

絡繰(カラクリ)人形は属性が豊富じゃ、要注意じゃな」

「分かってる」

 

召喚したのは二つの絡繰人形だ。まずは一つで攻めて、後ろから援護射撃を行う。砂の盾で防げば、今度は左右に展開して次の攻撃を仕掛ける。無駄のない洗練された動きは1回戦同様であり、片方から火、もう一方からは風を放つ。

 

「火炎放射、そして烈風扇舞」

「まずい……」

「発射!」

『おおっと、火と風の組み合わせだあ!果たしてバースは無事かあ!』

「……むっ!」

「おっと、避けたか。砂防壁からの砂刃、よく見抜いたな」

「殺気を感じ取った」

「へえ、そうかい」

『なんと砂の壁で防いだ!防御から攻めに転じる流れ、良いぞお!』

「俺の砂魔法、どこまで防げるか試してやる」

「来い」

 

まずは砂で出来た大鮫を数匹ぶつけてみせるが、土の盾を発動して防がれる。器用だなと感じるが、これは絡繰の複雑さが起因している。絡繰の弱点は関節の詰まりと聞く。ならば、砂を使う方法が見つかったが、やりたい様にはさせない。それが戦いの基礎だ。

 

「ふむ」

「(先発と後詰か。何を考えてる?)」

「ほれ」

「見え見えのパンチならよけやすいんだよ」

「気をつけろ!暗器だ!」

「発射」

「うおっと!」

「後詰の一発は当たらずか」

「危ねえ、毒でも塗ってそうだな(目を逸らした隙に後ろから発射するとはね)」

「ならこれでどうだ」

 

暗器を内蔵した人形と複数の属性道具を内包する人形が連携しながら迫ってくる。どちらから攻撃してくるか予見しながら行動しなければならず、不用意に動けない。

 

「せい」

「砂壁!む、煙玉?」

「隙だらけだ」

「危ねえ、毒苦無(クナイ)かよ!」

「そこだ」

「(ち、砂の壁を出させて三方を囲み、後ろから攻撃するつもりか)なら……」

「?気配が消えた……(警戒せねば。奴が打つ手は限られる)むっ?砂嵐?」

「後ろ取ったり!」

「しまっ……がはっ!」

「へへ、砂に潜っといて正解だったぜ」

『なんと囲まれた段階で地中に隠れ、背後を取ったあ!』

「貴様……ならば」

「おっと、動かさない方が良いぜ」

「なんだと?」

「よく見やがれ」

「砂が、関節に!」

「さっきの砂嵐で詰まらせておいたのさ。これで作動しねえ。おらぁっ!」

「が!ぐふっ……」

『勝者!バース!』

 

粘り勝ちだ。油断した隙をついて、主力の人形を機能不全に陥らせて直接本体を狙う。絡繰人形使いへの理想的な勝ち筋と言えよう。

 

「やったな」

「なんとか勝てたぜ。ひい、しんどかった」

「良きかな良きかな」

「ユウギリの出番も近いんじゃないか?俺に感心してる場合じゃねえと思うが」

「分かっておるわい」

「俺も3回戦へ準備しなきゃな」

「とりあえず少し休んでくるか」

 

ユウギリが試合に向かって数試合が経過した。そろそろ3回戦に突入しようかといったところだ。

 

「そろそろ3回戦です。フィリーさん、準備は万端でしょうか?」

「来たか。バース、また後でな」

「行ってこい。お前の実力を発揮してくるんだ」

「待機場所まで案内します」

「よろしくな」

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