遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
クリスマスや年明けに1本ずつ短編を投稿したかったけど叶わずで、ちょっと泣いてます()
さて、後半のハリーサイドの戦い、どうぞご覧くださいませ!
マクレーンが校舎内で走り回っていた時。
ハリーもまた撃っては走り、物陰に隠れるを繰り返していた。
「先生!隠れてないで出てきたらどう?」
「抜かせ。そのヘイローを分けてくれたら考えてやるよ」
アビドスの生徒達もヘルメット団相手に奮闘している中、ハリーとラブはお互いに撃ち合っている。
彼は耳元のインカムに指を当てながらそっと呟いた。
「シロコ。ドローンはまだ使えるか?」
『ん。大丈夫』
「なら、ラブの背後に撃ち込んでやれ。ただし当てずにな」
『了解』
シロコの返事と共に、ドローンがロケット弾をラブに発射。
そのままラブにギリギリ当たらない距離に命中し、彼女を爆風で前に吹っ飛ばした。
「うわあっ?!」
突然の爆発で体勢が崩されたが、ラブは受け身をとって着地する。
そのままハリーのいた場所へショットガンを向けるが、彼はどこかへ消えてしまっていた。
「なっ!?どこに行ったのよ……?」
「ここさ」
背後で声がした。
彼女はすぐさま振り向こうとするが、ヘルメットのバイザーを勢いよく降ろされたので泡を喰ってしまう。
「うお、ちょっ?!」
「残念だがここまでだ。おやすみ」
ハリーはラブのバイザーに向かって3発ほど叩き込んだ。
流石の彼女でも.44マグナムの威力を前に成す術がなく、脳震盪を起こしてそのまま倒れてしまった。
「アヤネ。彼女を手当てしてやってくれ」
通信を飛ばしながら、今度はムツキの元へ近寄る。
ついさっきまで戦っていたとはいえ、ラブは本来ならこちら側の生徒だ。
ヒーラーのアヤネに治療を要請したのも、バイザー越しにマグナムを撃ち込んだのも、それはハリーなりの配慮だった。
とうのムツキはマクレーンに夢中なようで、ハリーが背後まで来ている事に気がついていなかった。
「ホールドアップだ。お嬢さん」
彼女の後頭部へ銃を押し付ける。
「あっちゃ〜、ハリー先生の事忘れてた!」
「そいつは悲しいぜ。ジョンに気を取られすぎたな」
「くふふ。それは先生も同じだよ?」
そう言えば、
その瞬間、彼の第六感は自分に向けられた殺気に気づくと、すぐに身を屈めた。
その直後に銃声と弾丸の音が聞こえてくる。
屋上を見れば人影がひとつ、スコープに太陽光を反射させてこちらを狙っていた。
「いつの間に……」
「私から目を離さないでよっ、セ・ン・セ・イ?」
「!」
ムツキのMG5がこちらに向けられる。
その後の動きを読んだハリーはすぐさま物陰へ隠れた。
すると、轟音と共に彼の頭上に弾幕が張られ、ハリーが顔を出す隙が無くなってしまう。
「あのパワーはどこから出るんだ?見習いたいもんだ」
ハリーは何か使えるものが無いかと辺りを見回す。
足元にはラブの手榴弾が転がっており、その向こうにいたホシノと目が合った。
──前に出られるか?
──任せて。
ほんの一瞬のアイコンタクト。
アビドス高校の最年長たるホシノと、数々の修羅場を潜り抜けてきた刑事が互いの意思疎通を図るには、それだけで充分だった。
彼女はライオットシールドを即座に展開し、ムツキの弾幕をものともせず突進していった。
「はろーおチビさん。おじさんを忘れてもらっちゃ困るよっ!」
例のカバンを2階へ投げ終えたムツキへ、ホシノがショットガンを連射していく。
「おやおや〜。あなただっておチビさんでしょ?この距離をショットガンじゃ無理があるんじゃな〜い?」
彼女の意識がホシノへ向いたその時。
ハリーはラブから有難く頂戴していた手榴弾を投げた。
それは真っ直ぐとムツキへ飛んでいく。
ホシノが爆風を避ける為にシールドの陰に完全に隠れたところで、ようやくムツキが振り向いた。
「んなっ……!?」
彼女は手榴弾を撃ち落とそうとする。
だが機関銃の大きさが災いし、動きが大幅に遅れた。
そして、爆発に巻き込まれていった。
「ぅ……けほっ!」
「爆弾使いが手榴弾にやられるようじゃ、世も末と言わなきゃならんね」
ハリーが近づいてくる。その背後ではノノミがミニガンで屋上へ牽制射撃をしていた。
「……強いなぁ」
「たまたま運が良かっただけさ。で、どうする?」
ムツキは傍に転がっていた愛銃を見る。
彼女としてはまだ勝負を挑む気でいたが、生憎とMG5はすぐに撃てるような状態ではなかった。
「私のかわいいMGは修理が必要みたいだね。今回は先生に譲るから、早くアルちゃんの所へ行ってあげて?」
「ああ。そうさせて貰うさ」
そして屋上。
ハリーが扉を開ければ、その先にはコートをはためかせた
「来たわね、先生」
「随分待たせちまったな。何しろ熱烈な歓迎を受けた所でね」
「数の暴力をものともせず突破……。コツはあるのかしら?」
「何事も経験さ。俺は大人だからな」
彼は数歩アルへ近づき、歩みを止めた。
「お前さん、どうしてそうアウトローに拘る?」
「そこまで大したきっかけじゃないわ。それに、先生も同じ事を聞かれて答えられるの?」
「ああもちろん。俺は
「そう。私も……一緒よ!!」
アルがライフルを構えた刹那、彼は咄嗟に物陰へと隠れる。
彼女が放った弾丸は、ソーラーパネルの支柱に跳ね返っただけに終わった。
ハリーも負けじと撃ち返すが、アルは避けてしまう。
彼らの攻防が繰り広げられる最中で、マクレーンはじめメンバー全員も屋上にやってきた。
「ほぉう……」
「えらく感心してるようだけど、どうして?」
マクレーンの上着に身を包んだカヨコが、彼に問う。
「んあ?あぁ。知りたいか?」
「勿体ぶらないでいいから」
「クールだねぇ。……おたくらの社長だが、ハリー相手にここまで粘るたァ……いい勝負してると思ってな」
彼の言う通り、ハリーはさっきからアルの攻撃を避けているだけだった。
彼女の武器がいささか取り回しに難のあるスナイパーライフルとはいえ、装弾数やそのセミオート機構を含めればアルに分があるのは明白である。
実のところで、ハリーも目の前の少女に押され気味である事は自覚していた。何か反撃の手立てがないか、辺りを見回す。
「もう降参かしら?」
「誰がそんなこと言った?相手を仕留めた手応えがあるまでは……」
アルが弾倉を外した瞬間を狙ったハリー。
彼女の足下の水道管へ、マグナムを撃ち込む。
穿たれた穴から急激に圧力が抜けていった水は、勢いよく少女に降りかかり、バランスを崩して尻餅をつかせる。
「んなっ?!何よこれ!」
それでも離していなかった銃の握把へ、もう一度発砲。着弾した衝撃で、持ち主の手からワインレッド・アドマイヤーがようやく離れていった。
「決して油断しないことだ。わかったかね?」
「う……」
彼女の額に、.44マグナムの銃口が突きつけられる。
しばし見つめ合う2人。
数十秒ほど時間が経ったところでハリーが切り出した。
「考えてる事は分かってるよ。俺がもう6発撃ったかまだ5発か……」
彼女は無言のまま、ハリーを見続ける。
「実を言うとこっちもつい夢中になって数えるのを忘れちまったんだ……。だがコイツはマグナム44と言ってキヴォトスの中でも強力な拳銃だ。お前の意識なんか1発で吹っ飛ぶぜ」
ハリーはそのまま続ける。
「楽に病院のベッドまで行けるんだ。運が良けりゃあな。……さあどうする」
アルは数回、視線をハリーの顔と銃口で往復させると、意を決したように呟いた。
「……だい」
「もう一度言ってくれないか」
「撃ってちょうだい。これ以上、仲間の前で恥を晒すわけにはいかないわ」
ハリーの顔が変わり、彼の指が撃鉄を起こす。
「アル!」
「アルちゃん!」
「アル様!!」
引き金にかかった指に力が掛かり、アルの頬を汗が伝う。そして───
撃鉄の落ちる音がした。
アルの瞳孔が小さくなり、目が見開かれる。
「……!!」
「これで今日の授業はおしまいだ」
彼は背を向け、銃を収めながら歩き出そうとする。
「……私は負けたのね」
1人の刑事は動きを止めると、肩越しに振り返る。
「いいや。お前さんの勝ちだよ、
便利屋の実力と、それを束ねているアルの覚悟を認めたハリーは、久方振りの笑みを浮かべながら、マクレーンたちの元へ歩いていった。
「随分楽しそうな顔してるじゃないか。え?巡査部長殿」
「おいおい。ここに来て階級を持ち出すのか?冗談よしてくれ警部補」
「そう言うなって。気に入ったんだろ?」
「まあ、ラブもそうだが……便利屋の実力は伸び代がある。それに彼女の……アルの人を束ねる力だが、敵にしておくには実に惜しいのは確かだ」
「だな。俺も久々に苦戦したぜ」
マクレーンがカヨコたちに目を向けると、3人はどこか照れ臭そうにそっぽを向いた。
ラブは満足げな表情だ。
「流石にバイザー越しでも.44マグナムは効いたわよ。ま、やっぱりここで先生達と拳を交えて正解だったわね」
「ラブ、それはどういう……」
「うちがキヴォトス中のヘルメット団の幹部なのは知ってるでしょ?」
「ああ」
返事をするハリーの横でマクレーンは、まさかと言う顔をした。
「それで、うちが率いているジャブジャブヘルメット団をもってしても先生達やアビドスに太刀打ち出来なかった。……これの意味するところは?」
答えは明白だ。この結末を知っている三下どもは、下手にこちらへ手出しできなくなる。
ハリーもマクレーンも、そしてホシノまでその意味をすぐに察した。
「おいおい、それじゃ君はその為に……」
「先生達に勝てるわけないでしょ。そんなの、柴関での大立ち回りを見て分かるに決まってるじゃん?」
彼女の口角が釣り上がる。ハリーはもう、ラブに対しては絶対の信頼をおく事に決めていた。
「それであのメールかい」
ハリーとマクレーンに届いた、ラブからのメール。
その内容は、
"情報を手に入れた。それを見せる代わりに、一度戦わせて欲しい"
と綴ってあった。
「そういうこと。でも、一度先生達と戦ってみたかったのは本当よ。他の団員達もそれを望んでいたし、負けても士気高揚には繋がるわ。……だからこそ、うちらは全力でぶつかった。便利屋のみんなもそうでしょ?」
ラブがアルに目を移せば、その先では彼女たちもうなづいていた。
「で、話は変わるけどさ。先生達が知りたがってた情報、持ってきたんだ」
ポケットからUSBメモリを取り出して、2人に見せる。
「コイツァ100点満点をやるだけじゃ足らんな。表彰状を贈りたいとこだが、生憎とそんなもんはない」
「気にしないでマクレーン先生。うちはそんな立派な身分じゃないよ。……その代わり、放課後の補習をお願いしてもいいかしら?」
「「お安い御用さ」」
そして、対策委員会の教室にて。
一同はプロジェクターから壁に映し出された、カタカタヘルメット団の収支記録を片っ端から閲覧している。
「スリにカツアゲ、挙げ句の果てに空き缶拾いか……」
「やってる事の割にはマメだな。……そういやあ以前ホリーに、給与明細は無くすなと言われた事があったっけ」
「学校を追われた不良といっても、色んなタイプがいるからね。これを見ると、カタカタはかき集めたお金で成績を競い合ってたみたい」
「なんというか、苦労してるんだねぇ」
頬杖をついたホシノがこぼす。
それに反応したラブは、たははと笑いながら呟いた。
「うちらの苦労をわかってもらえて嬉しいよ」
「ねえ、ラブさん」
先程から腕を組み、黙って見ていたアルがここで口を開いた。
「これはあくまで一般的な記録よね。とすると、本題はこの先かしら?」
「ご推察の通り。みんなに見て欲しいのはここからよ」
そう言って、ラブが画面を切り替える。
すると画面には、先程とは桁違いの金額の動きが映し出された。
「ほっほぅ」
「ジョン。気づいたか?」
「まあな、やっぱりといったところだ。なあアヤネ、今朝お前さん達があのクソったれ共に納めた金額はいくらだ?」
「え?えっとですね……」
彼女が具体的な金額を伝えると、マクレーンはラブから手渡されたレーザーポインターを画面に当てる。
「それなら……ほらお前ら。この金額見てみろよ」
「こ、これは……!」
「な?思った通りだ」
「俺達はこいつが見たくて、ラブに動いてもらったってわけさ」
画面上には、今朝アビドスがカイザーに納めた金額と寸分違わぬ数字が表示されていた。
ここでハリーが問う。
「ずっとこの金額で納めているのか?」
「もちろんよ!これは奴等が提示してきた金額でもあるんだから……!」
「なら、奴らは最初からこれを目論んでいたってわけだ」
ハリーが話し終えたタイミングで、今度はマクレーンがアビドスを1番知っているであろう生徒に質問をする。
「ホシノ」
「んあ?」
「ここアビドスにゃ、悪党が
「流石にそこまでは、おじさんもわからないなぁ」
「そうか……まあ、そうだよな」
溜息をついた彼は、背もたれにぐいともたれかかった。
「ねえ、ひとつ提案なんだけど」
ラブが口を開いた。
「この明細を見る限りじゃ、カタカタはブラックマーケットで物資を手に入れてたみたいね」
「……!」
アルがハッとする。
「便利屋の皆も
「ええ、もちろん」
「……はっはぁ、そういう事か」
「うん。そういう事」
「頼めるか?」
マクレーンが満足げにうなづき、ハリーも身を乗り出した。
「任せてよ。便利屋もうちらの事、手伝ってくれる?」
「もちろん。先生達には授業料を払わなきゃ、でしょ?」
「それだけじゃないよね〜?」
ホシノがゆらりと立ち上がる。
「避けては通れないとはいえ、便利屋さん達は、ちょ〜っと、暴れすぎたと思うんだなぁ……おじさんは」
「倒壊しなかったから済んだものの、あれはやり過ぎですね★」
「ん。あちこちボロボロ」
「あなた達。ただでは返さないわよ?」
「出来れば現金がいいですが……みなさん余裕がなさそうなので、身体で支払ってくださいね?」
アビドスの生徒達から、唯ならぬドス黒いオーラが放たれる。
「「「「ひっ」」」」
「なっ、ななな……なんですってーーーーッ???!!」
便利屋一同と、ラブまでもが顔を青白くさせる。
その様子を見た熟練の刑事2人もまた、苦笑するより他なかった。
こうして、アビドス混成部隊は次なる段階へと動き始めたのである。
いかがでしたか?
ハリーの決め台詞は絶対に入れると決めていたので、ここで登場させることが出来て非常に満足ですb
さて、次回からはいよいよブラックマーケットへ……
次回予告をどうぞ!
おう、ジョン・マクレーンだ。
俺達を襲ってきた奴らを返り討ちにしたのはいいが、なんと当人達が、どういうわけかこっちに寝返って来やがったんだ。
悪い気分じゃないんだが、どうしてこう、癖のある奴らばかりなんだろうな?
さて、そんな事より次回はいよいよ敵の本拠地に乗り込む。
その途中で、ハリーは思わぬ出会いをするし、不良に襲われてるお嬢さんを手助けもするってわけ。
次回、Dirty Abydos 3、よろしく頼むぜ!